資料4 特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議 論点整理(案)

(※注:「3.小・中学校における特別支援教育の現状と課題」及び「5.特別支援教育担当教員の専門性に関する現状と課題」については、前回資料からの主な加筆・修正箇所を下線で表記。)

 

1.特別支援学校における現状と課題

(1)改正学校教育法への対応

○改正学校教育法

  • 平成19年4月に改正学校教育法が施行され、従来の盲・聾・養護学校が特別支援学校として一本化され、幼稚園、小・中学校及び高等学校等の要請に応じて助言・援助を行う、いわゆるセンター的機能を付加。

○現状・これまでの取組

  • 「特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正について」(H18.7文部科学事務次官通知)において、次の趣旨の留意事項を提示。
  • ○1
    特別支援学校の設置については、設置条例等において当該学校が特別支援学校として設置されていることを規定する必要があるが、現に設置されている盲学校、聾学校又は養護学校を特定の障害種を対象とする特別支援学校とする場合は、「盲学校」、「聾学校」又は「養護学校」の名称を用いることも可能。
    ○2
    各特別支援学校においていずれの障害種別に対応した教育を行うこととするかについては、当該学校の設置者がそれぞれの地域の実情に応じて判断。その際、幼児児童生徒ができる限り地域の身近な特別支援学校に就学できるようにすること、同一障害の一定規模の集団が確保されるようにすること等を勘案しつつ、障害の重複化への対応という制度改正の趣旨を踏まえ、可能な限り複数の障害種別に対応した教育を行う方向で検討されることが望ましいこと。
    ○3
    特別支援学校の行う助言又は援助(いわゆるセンター的機能)に関しては、法律に規定されている「幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校」のみならず、保育所をはじめとする保育施設などの他の機関等に対しても同様に助言又は援助に努められたいこと。

  • 「特別支援教育の推進について」(H19.4初等中等教育局長通知)において、特別支援学校における取組について次のとおり指導。
  • ○1
    従来の特別支援教育の取組をさらに推進しつつ、様々な障害種に対応することができる体制づくりや学校間連携を一層進めること。
    ○2
    地域における特別支援教育のセンター的機能については、個別の指導計画や個別の教育支援計画の策定への援助も含め支援に努めること、保育所をはじめとする保育施設などの他の機関等に対しても同様に助言・援助に努めること、特別支援教育コーディネーターは関係機関、保護者、地域の各学校等との連絡調整を行うこと。
    ○3
    様々な障害種についてのより専門的な助言などが期待されていることに留意し、教員の専門性の向上を図ること。

  • 旧盲・聾・養護学校の校名変更の状況(H21.4現在)・・・・・・・・427校
  • 複数の障害種を対象とする特別支援学校の状況(H21.4)・・・146校
  • 特別支援学校のセンター的機能についての都道府県教育委員会の取組
    (平成19年度中)
    • 支援に関する指針(ガイドライン・要項)等を示している・・・26県
    • 旅費等について予算化している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35県
    • センター的機能に関する研修を実施している・・・・・・・・・・・41県

○課題

  • 特別支援学校の適正な配置と複数障害への対応
  • 特別支援学校のセンター的機能の取組の推進
  • 特別支援学校のセンター的機能に関する理解啓発
  • 特別支援学校のサテライト拠点の設置、関係機関とのネットワークづくり
  • 特別支援学校教員の専門性向上
  • 教員の増員やコーディネーター専任化などの人的措置

など

○協力者会議における主な意見

(センター的機能)

  • 小・中学校からの相談で、「就学や転学等についての相談・助言」や「他機関への支援の橋渡し」に関するものが増えており、特別支援学校から就学に関する情報や専門機関についての具体的な情報を得ることができるよう、センター的機能を設計することが必要。
  • 高等学校においてセンター的機能を活用するためには、特別支援学校の教員に高等学校の校内研修や授業公開に参加してもらい、日頃から高等学校の動きを理解してもらうことが必要。
  • 特別支援学校がセンター的機能を発揮するためには、在籍生への指導・支援の負担等を考慮すると、コーディネーターの専任化が必要。
  • 特別支援学校がセンター的機能を発揮するためには、特別支援学校免許状の取得等による教員の専門性の向上が必要。

 

(2)交流及び共同学習(副籍、支援籍等を含む)

○交流及び共同学習の意義

  • 特別支援学校や小・中学校等が、それぞれの学校の教育課程に位置付けて、障害のある者とない者が共に活動する交流及び共同学習は、障害のある児童生徒等の経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有しているとともに、障害のない児童生徒等についても、障害のある子どもとその教育について理解と認識を深める絶好の機会となることから、双方の児童生徒等にとって、意義深い教育活動。

○現状・これまでの取組

  • 障害者基本法(H16年改正)に「交流及び共同学習を積極的に進めること」を規定。
  • 交流及び共同学習の事例集(H19.3 全国特別支援教育推進連盟に委嘱)
  • 交流及び共同学習ガイド(H20.8 文部科学省ホームページに掲載)
  • 新学習指導要領等(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校)において、交流及び共同学習について規定。
  • 特別支援学校の児童生徒の居住する地域の小・中学校との交流(居住地校交流)を進める取組(東京都の副籍、埼玉県の支援籍、横浜市の副学籍など)

○課題

  • 特別支援学校児童生徒の居住地校との交流に係る理解啓発
  • 受け入れ側(小・中学校)のバリアフリー化
  • 直接交流として参加する授業の教育課程上の位置付け・評価
  • 直接交流に際しての安全確保(送迎・付添い含む)

など

○協力者会議における主な意見

(交流及び共同学習)

  • 特別支援学校には、基礎疾患や命に関わる重い障害を有する児童生徒が在籍しているので、交流に当たっては常に安心・安全の確保を考えることが必要。
  • 小・中学校の管理職や教員の理解がある場合は、優れた交流の取組ができる。
  • 中学校における交流が進まないのは、中学校の教育課程や教科担任制をとっていることなどが影響している。
  • 教育課程外の時間に交流することで、特別支援学校の教育課程の実施に影響せず、地域の子ども達とかかわることができている事例(特別支援学校の児童が小学校の通学班と同じ集合場所から仲間と一緒に登校、小学校の朝の会などの学級活動に参加した後、小学校近くの停留所から特別支援学校のスクールバスに乗って登校)あり。
  • 新学習指導要領において、「(交流及び共同学習を)計画的、組織的に行う」という表現があるが、教育課程への位置付けや突発的事故への対応も含めて、重視する必要あり。

(「副籍」等居住地校交流)

  • 「副籍」校での教育活動については、個別の指導計画の中に位置付づけているが、内容は学校行事への参加が多く、教科の授業への参加はまだ少ない。
  • 「副籍」制度による交流を進めるためには、施設のバリアフリー化も必要。
  • 特別支援学校の児童生徒の居住地校交流は、居住する地域の小・中学校の意識を変えることも大きな目的。小・中学校の教職員が、学区内における特別支援学校に通学する児童生徒の存在を知っていることが基本。
  • 特別支援学校の教員が居住地校交流に付き添う場合、特別支援学校側の体制が手薄になる。その際、教育委員会と社会福祉協議会が連携している学校支援ボランティア養成講座を修了したボランティアに学校に入ってもらうことにより、うまくいっている例がある。
  • 現行制度下における交流及び共同学習は、在籍校の教員が付き添うとなると頻繁に交流ができないこと、指導体制や教育課程上の問題など、様々な課題を抱えている。教育課程上の位置付けや学籍の取扱いなどを整理するなど、制度的に対応しないと実質的なものにならない。
  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画を使って、現行制度の中で現実的な対応を工夫することも必要。
  • 居住地校交流の際は、特別支援学校の教員の付き添いはさせず、地域の小・中学校の教員の下で指導を受けさせたいと考えている保護者もいる。
  • 障害のある子どもが地域の学校や住民にどこまで理解され、受入れられているかという点も踏まえ、制度についても検討すべき。
  • 地域の人々との交流も視野に入れ、地域の組織やPTAを活用した活動を拡大することも大切。
  • これまで行われてきた学校間交流や地域との交流と、居住地校交流のバランスなどを考慮して、トータルとして組織的・計画的に取り組んでいくことが必要。

 

(3)職業教育・就労支援

○職業教育・就労支援

  • 障害者が、生涯にわたって自立し、社会参加していくためには、企業などへの就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要であり、福祉から雇用に向けた施策を進めると同時に、職業教育や進路指導の充実など学校から雇用に向けた施策を進めるなど、教育、雇用、福祉、医療などの関係機関が一体となった施策を講じることが必要。

○現状・これまでの取組

  • 特別支援学校高等部(本科)の卒業生のうち、就職した者は23.7%(H21.3卒業)。
  • 「障害者福祉施策、特別支援教育施策及び障害者雇用施策の一層の連携の強化について」(H19.4 文部科学省通知)において、関係機関の一層の連携強化を求めた。
  • 文部科学省では、厚生労働省と連携し、特別支援学校における職業教育や進路指導の改善を図り、職域・職種を拡大するための方策など先進的な研究を行う「職業自立を推進するための実践研究事業」を実施(H19年度~20年度)。
  • 特別支援学校高等部学習指導要領(H21.3 告示)において、自立と社会参加に向けた職業教育の充実に関し、地域や産業界等と連携し、職業教育や進路指導の充実を図ることを規定。また、特別支援学校高等部(知的障害)の専門教科として「福祉」を新設。

○課題

  • 小・中学校段階からの職業体験の機会拡大等多様な就業体験の充実
  • 職域拡大・就労に向けた支援方法開発への取組の推進
  • 就労支援における「個別の教育支援計画」の活用(関係機関との連携強化、家族の理解啓発、個々の生徒の特長・障害特性の把握と必要な支援の提供など)

など

○協力者会議における主な意見

(教育課程・指導内容)

  • 職域の拡大もにらみつつ、時代のニーズに合った就労につながる職業教育の教育課程の見直しが課題。
  • 就労では学力よりも社会性をより多く求められるので、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を教育現場でも導入すべき。
  • 自ら働くことについての意識を生徒と保護者にもってもらうよう、キャリア教育的な指導が必要。
  • 作業技能検定については、学校独自に子どもの励みとなるような種々の取組を検定事業として実施している。具体的には、エプロンを後ろで結ぶ、靴ひもを結ぶ、電話で相手と会話ができる等の項目を設定して、生活検定を行っている。

(関係機関・企業との連携)

  • 都市部では、就労支援の考え方や仕組みが進んでいる、あるいは企業が多くあるなどで、障害者の就労に恵まれた環境にあるが、全国的に見ると必ずしもそうした状況ばかりではなく、地方部への配慮も必要。
  • 特別支援学校が教育委員会やハローワーク等の関係機関と連携し、企業セミナーや学校見学会を開催するといった取組が、企業の障害者雇用への理解を進める上で効果的。
  • 特別支援学校の進路指導担当教員が地域の就労支援ネットワークに参画し、ハローワーク、職業センター、企業等と情報を共有することが重要。
  • 特別支援学校に就職専門員としてハローワーク退職職員を配置し、現場実習の開拓、就労先の拡大につなげている事例がある。

(高等学校との連携等)

  • 特別支援学校の中には、専門高校と相互に生徒の受入れを行いながら職業教育に取り組んでいるところもある。高等学校に準ずる教育課程の特別支援学校においては、単位互換も含めた取組が進んでいると思う。
  • 特別支援学校が農業高校や工業高校等との連携を図ることは、指導の充実や職域の拡大に有効。
  • 高等学校における支援の必要な生徒に、特別支援学校が連携して職業教育や就労支援を行うことができるようなシステムが必要ではないか。
  • 知的障害のない高機能自閉症の生徒の受入れについて、高等学校でも体制整備を図るべきと思うが、実態としては難しく、特別支援学校高等部の問題と併せて検討すべき。

 

2.早期からの教育支援、就学指導

○平成21年2月、本協力者会議の審議の中間とりまとめ「早期からの教育支援の在り方について」において、次の事項を提言。

    ○1早期からの教育相談・支援の充実
    ○2就学指導の在り方
    ○3継続的な就学相談・指導の実施
    ○4居住地の小・中学校とのかかわり
    ○5市町村教育委員会等の体制整備
    ○6障害者の権利に関する条約

 

3.小・中学校における特別支援教育の現状と課題

(1)校内体制の整備

○校内体制整備

  • 発達障害を含む障害のある児童生徒に対して適切な教育を行うため、各学校において特別支援教育に関する校内委員会の設置、実態把握の実施、特別支援教育コーディネーターの指名、個別の指導計画の作成、個別の教育支援計画の作成、巡回相談の実施、専門家チームの活用、特別支援教育に関する教員研修の実施等の校内体制を整備。

○現状・これまでの取組

  • 小・中学校等において、発達障害を含む障害のある児童生徒等に対して適切な教育を行うことを学校教育法に規定。(H19.4)
  • 「特別支援教育の推進について」(H19.4文部科学省通知)において、各学校における体制整備等について指導。
  • 公立小・中学校については、校内体制について比較できる全ての調査項目で前年度(H19年度)を上回っており、全体として体制整備が進んでいる状況が伺える。(※)
  • 「校内委員会の設置」や「特別支援教育コーディネーターの指名」といった基礎的な支援体制はほぼ整備されている。(※)
  • 「個別の指導計画の作成」、「個別の教育支援計画の作成」についても進捗が見られたものの、未だ不十分な状況にある。(※)
    • (※)平成20年度特別支援教育体制整備等状況調査結果(文部科学省調査)より

  • 私立小・中学校については、全体的に体制整備の遅れが見られ、「校内委員会の設置」、「特別支援教育コーディネーターの指名」など基礎的な支援体制も十分とは言えない。

○課題

  • 障害のある児童生徒一人一人に対する支援の「質」の一層の充実
    • 校長の理解と正しいリーダーシップ
    • 校内委員会の実質的機能発揮のための全校的体制の構築
    • 個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用
    • 教員配置の検討
    • 教員の専門性の向上

など

○協力者会議における主な意見

(体制整備)

  • 特別支援教育はかなり進んだがまだ完成地点ではない。形や枠ができたところでありこれから実効性あるものにする必要がある。
  • 小中学校では形の上での体制整備はほぼ完了。コーディネーターや校内委員会も質を精査すべき時期。
  • 校内委員会は設置するだけでなく、実質的に機能していることが重要。
  • 私立の小・中学校についても体制整備を進めるべき。市町村教育委員会は私立の小・中学校にも配慮をすべき。

(学級規模等)

  • 教員はゆとりがなく特別なニーズのある子どもへの対応が困難。1学級の児童数も考えて欲しい。

(教員配置)

  • 特別支援教育のための教員の配置も考えるべき。
  • 発達障害のある児童生徒数は義務教育段階において約68万人と推計されており、今後も通級指導のための定数改善が必要。

(校長のリーダーシップ)

  • 特別支援教育の推進には校長の正しいリーダーシップが必要。

(その他)

  • LD、ADHD、高機能自閉症の子どもについて通常の学級における支援方策が課題。
  • 医療的ケアが必要な子どもが増加。保護者は、子どもが授業中席を外さずに医療的ケアを受け、皆と一緒に教育を受けることができる体制を望んでいる。

 

(2)特別支援教育コーディネーター

○特別支援教育コーディネーター

  • 学校内の関係者や福祉・医療等の関係機関との連絡調整及び保護者に対する学校の窓口として、校内における特別支援教育に関するコーディネーターの役割を担う者。校務分掌として教員が担当。

○現状・これまでの取組

  • 「特別支援教育の推進について」(H19.4文部科学省通知)において、各学校の校長は、特別支援教育コーディネーターを指名し、校務分掌に明確に位置付けることを指導。さらに、特別支援学校においては、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図るため、コーディネーターは関係機関や保護者、地域の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び他の特別支援学校並びに保育所等との連絡調整を行うとともに、専門性の更なる向上を図ることを指導。
  • コーディネーターの指名率(H20.9.1現在)

<国公私立別>

    (幼稚園)国立:67.3%、公立:74.4%、私立:28.8%、全体:46.4%
    (小・中学校)国立:77.0%、公立:99.8%、私立:22.4%、全体:97.6%

      (※)平成20年度特別支援教育体制整備等状況調査結果(文部科学省調査)より

  • 各学校における取組例
    • 特別支援教育コーディネーターの指名
      • 1校に複数のコーディネーターを指名(小学校等)
    • 養成研修・資質向上
      • レベルや経験、専門性、目的等に応じた研修内容
      • 地域でリーダーシップを発揮するコーディネーターの養成
      • コーディネーター同士が情報交換する場の設定
      • 不登校対応コーディネーターとの連携
    • コーディネーターが活動しやすくなる工夫
      • 管理職を対象に「特別支援教育・学校サポート」研修会を実施
      • 養成研修修了コーディネーターを学校に複数確保
      • 要請に応じて学校を訪問し支援する専門家の配置

○課題

  • 学校によりコーディネーターの経験や資質・専門性などの格差が大きい
  • 研修等を通じた人材養成の推進
  • 可能な限りコーディネーターが校務に専念できるよう必要な配慮

など

○協力者会議における主な意見

(配置関係)

  • コーディネーターを専任化すべき。
  • 複数配置により専門性をカバーし合い、学校として組織的・機能的に対応できるようにすることが必要。
  • コーディネーターは1年程度で替わることが多く、複数配置は支援の連続性の確保の観点からも重要。
  • コーディネーターにはソーシャルワーカーとしての役割と特別支援教育の専門家としての役割についてそれぞれ高い専門性が求められるが、これらの役割は本来分けるべきもの。複数配置により、それぞれの専門性を発揮することで全体的な専門性が確保できる。

(専門性の向上関係)

  • コーディネーターは配置するだけでなく実質的に機能していることが重要。
  • 特別支援教育コーディネーターについても専門性の確保が必要。
  • 民間主催の研修会や自主的な研究会を活用しコーディネーターの資質向上や連携協力を図ることが必要。
  • 大学院レベルのコーディネーター養成課程のようなところで高い専門性を身に付けたスペシャリストが各地域に1~2名いると、地域全体の特別支援教育の推進強化が図られる。

(その他)

  • コーディネーターについて保護者の認知度が低い。

 

(3)個別の指導計画

○個別の指導計画

  • 幼児児童生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう、学校全体の教育課程や指導計画、当該幼児児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえて、より具体的に幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法、配慮事項等を示した計画。

○現状・これまでの取組

  • 個別の指導計画の作成率(H20.9.1現在)

<国公私立別>

    (幼稚園)国立:30.6%、公立:42.9%、私立:20.0%、全体:28.8%
    (小・中学校)国立:26.3%、公立:80.9%、私立:8.1%、全体:78.6%

      (※)平成20年度特別支援教育体制整備等状況調査結果(文部科学省調査)より

  • 小・中学校の新しい学習指導要領において、必要に応じて個別の指導計画を作成する旨を明記。

○課題

  • 必要な児童生徒に対する個別の指導計画の作成・活用
    • 個別の指導計画の作成・活用に関する実態把握
    • 作成・活用のための専門性・ノウハウ
    • PDCAサイクルの確立
    • 特別支援学校のセンター的機能の活用のあり方

など

○協力者会議における主な意見

  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成・活用など内容が大事。
  • 質の高い個別の教育支援計画や個別の指導計画が作成されているか、適切に活用されているのかについての検証が課題。
  • 小・中学校の個別の指導計画の活用や評価についての具体的な検証を内容とする研修が必要。
  • 保護者との共通理解の下に作成できるか、如何に個人情報の管理を行うかが課題。
  • 個人情報として計画(票簿)の管理は適切に行わなければならないが、計画の内容(教育上の課題、具体的な指導内容、必要な支援等)については、学年間や学校全体で共通理解を図るよう工夫が必要。
  • 個別の教育支援計画については、保護者との共通理解の上に立って作成し、情報を共有するもの。一方、個別の指導計画は、あくまでも学校が指導するために作成する計画であり、学校の責任において作成すべきもの。
  • 個別の指導計画を立て、PDCAによりその効果を検証することは、支援の必要な子どもへの指導方法の知見の集積につながり、その効果に係る研究にもなる。
  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画については、使用者、保管法、第三者への提供の在り方等に係るガイドラインを示すべき。
  • 個別の指導計画を授業に活かすことが大切。新学指導要領でも「わかりやすい授業と個に応じた指導の充実」が強調されており、多様なニーズに応じた授業が行えるよう、校内研究や授業改善のための研修を進めることが大切。

 

(4)個別の教育支援計画

○個別の教育支援計画

  • 福祉、医療、労働等の関係機関との連携を図りつつ、乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立って一貫して的確な教育的支援を行うために、障害のある幼児児童生徒一人一人について支援の内容等を示した計画。

○現状・これまでの取組

  • 個別の教育支援計画の作成率(H20.9.1現在)

<国公私立別>

    (幼稚園)国立:16.3%、公立:28.6%、私立:15.9%、全体:20.7%
    (小・中学校)国立:21.1%、公立:52.3%、私立:6.7%、全体:50.9%

      (※)平成20年度特別支援教育体制整備等状況調査結果(文部科学省調査)より

  • 小・中学校の新しい学習指導要領において、必要に応じて個別の教育支援計画を作成する旨を明記。

○課題

  • 必要な児童生徒に対する個別の教育支援計画の作成・活用
    • 個別の教育支援計画の作成・活用に関する実態把握
    • 作成・活用のための専門性・ノウハウ
    • PDCAサイクルの確立
    • 特別支援学校のセンター的機能の活用のあり方
  • 保護者や福祉、医療、労働など様々な関係機関との連携・協力
  • 類似の計画(個別の支援計画、幼稚園の個別の教育支援計画、就学移行期の個別の教育支援計画、個別移行支援計画など)との関係整理

など

○協力者会議における主な意見

  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成・活用など内容が大事。
  • 質の高い個別の教育支援計画や個別の指導計画が作成されているか、適切に活用されているのかについての検証が課題。
  • 保護者との共通理解の下に作成できるか、如何に個人情報の管理を行うかが課題。
  • 個人情報として計画(票簿)の管理は適切に行わなければならないが、計画の内容(教育上の課題、具体的な指導内容、必要な支援等)については、学年間や学校全体で共通理解を図るよう工夫が必要。
  • 個別の教育支援計画については、保護者との共通理解の上に立って作成し、情報を共有するもの。一方、個別の指導計画は、あくまでも学校が指導するために作成する計画であり、学校の責任において作成すべきもの。
  • 個別の教育支援計画は保健・医療、福祉、労働等の関係機関と連携した支援のために活用するものであるが、これらの機関と情報を共有するためには、情報提供対象のガイドラインを作成するか保護者の同意をとって提供するかの対応が必要。
  • 相談支援ファイルを保護者に持ってもらう場合も、中に入れる個別の教育支援計画は写しとし、原本は作成する機関が責任をもって保管すべき。
  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画については、使用者、保管法、第三者への提供の在り方等に係るガイドラインを示すべき。

 

(5)特別支援教育支援員

○特別支援教育支援員

  • 障害のある幼児児童生徒の学校教育活動上の日常生活の介助や学習活動上のサポートを行う者。(食事、排泄などの補助、車いすでの教室移動補助、LDの児童生徒に対する学習支援、ADHDの児童生徒等に対する安全確保など)

○現状・これまでの取組

  • 特別支援教育支援員(介助員及び学習支援員等)活用状況(H21.5.1現在)
    (公立小・中学校)全体:31,173人(公立小・中学校設置数:32,018校)
  • 特別支援教育支援員の配置に関する地財措置を平成19年度より実施。
    平成21年度措置額:公立小・中学校/約360億円/約3万人相当
    (全公立小・中学校数に相当)
  • 文部科学省「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」による都道府県等での学生支援員の活用促進と特別支援教育支援員等への研修開催の促進。 

○課題

  • 特別支援教育支援員の配置促進及び地域格差是正
  • 特別支援教育支援員の役割の実態把握
  • 特別支援教育支援員の役割を果たす人材確保の在り方
  • 都道府県教育委員会、市町村教育委員会による特別支援教育支援員を対象とした研修、校内研修の実施促進
  • 教育委員会とNPO法人との連携及び役割分担の明確化
  • 学生支援員の活用促進

など

○協力者会議における主な意見

  • 特別支援教育支援員の活用は各々の区市町村の教育委員会が整理をしているが、今後は全体をうまく糾合する形の仕組みを作る必要あり。その中で、例えばNPOとの役割分担を考えていくことが一つの課題。
  • 障害のある子どもの指導・支援の方針について、全校の共通理解の下、校内委員会や特別支援教育コーディネーターが明確に提示しないと、特別支援教育支援員は適切な動きができない。
  • 教員と特別支援教育支援員との役割や責任の分担関係の明確化が必要。
  • 特別支援教育にだけ使える支援員ということではなく、必要に応じて様々に使える支援員が学校としては理想。

 

(6)特別支援学級、通級による指導

○特別支援学級

  • 障害の比較的軽い子どものために小・中学校に障害の種別ごとに置かれる少人数の学級(8人を上限)。知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害の学級がある。

○通級による指導

  • 小・中学校の通常の学級に在籍している障害の軽い子どもが、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状態等に応じた特別の指導を特別な場(通級指導教室)で受ける指導形態。指導の対象は、言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、弱視、難聴。

○現状・これまでの取組

  • 特別支援学級在籍者、通級による指導の対象者はいずれも増加傾向。
    • 特別支援学級数:40,004学級、特別支援学級在籍者数:124,166人(H20.5.1現在)
    • 通級による指導対象児童生徒数:小学校46,956人、中学校2,729人(H20.5.1現在)
  • 小・中学校の特別支援学級の担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率:32%(H20年度:対前年度微減)
  • 小・中学校特別支援学級における学級編制基準上の手厚い措置、小・中学校で通級による指導を行うための教員加配を実施。
  • 学校教育法施行規則を改正し、LD・ADHDを新たに通級による指導の対象として追加(H18.4施行)。

○課題

  • 特別支援学級担当教員、通級指導担当教員の専門性の向上と児童生徒の実態に応じた教育課程の在り方
  • 知的障害を引き続き固定式の学級の対象とするか、通級による指導の対象とするか。ボーダー域の子どもへの対応をどうするか。
  • 通級指導の指導時間数が限定されていることへの対応
  • 新たに通級の対象となったLD,ADHDへの対応
  • 自校通級に比し、他校通級が多い実態についての検討
  • 巡回指導の促進に係る検討
  • 院内学級の学籍異動手続き等についての検討

など 

○協力者会議における主な意見

  • 障害のある子どもは、必要に応じて個別又は少人数での特別指導が必要。
  • 少人数の特別支援学級において、小学校入学時から1人の教員が複数年1人の子どもを指導することが教育活動として適切か、社会性が身につくか疑問。今後特別支援学級の運営方法が課題。
  • 知的障害学級に発達障害の子どもが多く、教員の意見でも情緒障害学級の設置要望が高い。
  • 巡回指導は、子どもの変容を見取り教員との関係を構築するためにも年1、2回ではなく、月1回とするなど定期的に行うべき。
  • 中学校の通級による指導(教室・生徒数等)が、小学校に比べ少ないことについての考え方を示すべき。
  • 現在の知的障害特別支援学級に在籍している児童生徒の実態からいけば、引き続き固定式の学級において適切な個別の指導計画の下、教育していかなければならないのが現状。
  • ボーダー域の知的障害の児童生徒については、固定式の学級か通級による指導のどちらかではなく、通常の学級に在籍しつつ若干の個別の指導を受ける仕組みがあってもいい。
  • 院内学級について、短期間の在籍でも学籍異動の手続きが必要となること等の課題について検討すべき。 

 

(7)特別支援教室構想

○特別支援教室構想

  • LD・ADHD・高機能自閉症等を含め、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍し、教員の適切な配慮、ティーム・ティーチング、個別指導や学習内容の習熟に応じた指導などの工夫により通常の学級において教育を受けつつ、必要な時間に特別の指導を受ける教室。(H17.12中央教育審議会答申より)

○現状・これまでの取組

  • 小・中学校等における特別支援教育の充実(H17答申において指摘された現行制度の見直し)。
    • 交流及び共同学習の促進、特別支援学級担当教員の活用
    • 通級指導の見直し(LD、ADHDへの通級指導、制度の弾力化)など
  • 「特別支援教室構想」に関する研究(国立特別支援教育総合研究所:H21.3)。
  • 研究開発学校による特別支援教室構想に関する研究(学習指導要領によらない特別の教育課程)。
    • 五領小学校(大阪府高槻市:H17~19)
    • 小松島小学校(宮城県仙台市:H18~20)
    • 富士見中学校(埼玉県熊谷市:H19~21)
    • 岩井中学校(茨城県坂東市:H20~22)
    • 東小学校(岐阜県高山市:H21~23) 

○課題

  • 特別支援学級と特別支援教室の関係の整理
  • 教員配置システムの在り方(学籍がない「教室」への教員配置システム)
  • 教員の専門性の確保(特別支援教室及び通常の学級)
  • 対象となる障害種の整理(現在通級指導の対象となっていない(軽度の)障害のある児童生徒への支援の在り方)
  • 教育課程の編成・実施・評価(一貫性のある指導・支援、PDCAサイクルによる指導・支援の弾力的見直し)

など

○協力者会議における主な意見

(特別支援教室構想の在り方)

  • わかりにくい困難さを持つ子どもが多く、巡回相談で最初に上がってくる子どもは自閉症や学習障害の子どもではない。学習が遅れて先生が気付くのが実態。保護者の理解の問題もあり、特別支援学級や通級指導に結びつきにくいところもあり、移行の場としての特別支援教室は必要。
  • 特別支援学級と通級指導では落差がある。特別支援教育に転換された現在、落差のある制度をそのまま維持するのではなく、子どものニーズに応じて、指導時間においても連続性があるところで対応していくという制度にすべきである。
  • 特別支援教室について、それがあるという理由で障害のある子どもが一律に対象とされる恐れがあるが、それは特別支援教育の考え方ではない。
  • 特別支援学級を否定するのではなく、特別支援教室構想においても多くの時間をその中で過ごすという仕組みもあって良いと思う。
  • 定数上の扱いがクリアできるのであれば、すべての小中学校に特別支援教室を設置すれば様々な障害のある子どもへの対応が可能になるのではないか。

(特別支援教室構想の課題)

  • 特別支援教室構想は理想的ではあるが、逆に現在の法的な制度である特別支援学校や特別支援学級に対する定数措置の部分が弱くなる可能性もあるのではないか。
  • 特別支援学校の分教室と特別支援学級との兼ね合いをどう考えるかが課題。
  • 現行法制度の中では、指導要録の問題がある。
  • 特別支援教室においては、従来の特別支援学級での在り方と、通常の学級での授業形態や評価方法とを整理して制度化しなければならない。
  • 通級による指導の対象に知的障害はない。このため、知的障害のある子どもの教育課程をどう考えていくのかは検討課題である。
  • 知的障害のある子どもも通常の学級で学べるよう、教科によっては対応を考えるなど弾力的な仕組みをつくらなければならない。
  • 特別支援教室における指導時数の在り方、在籍学級と特別支援教室との指導・責任の分担等、教育課程の編成・実施・評価に係る事柄を整理する必要がある。
  • 教員数の算定については、個々の児童生徒が特別支援教室で指導を受ける時間を積算し、必要な教員数を割り出すような根底からの見直しが必要。
  • 新入生の場合、年度当初(4月)の段階で特別支援教室における指導内容、指導時間数を確定するのは難しく、教員配置の積算もできない。

 

4.高等学校における特別支援教育

○平成21年8月、本協力者会議高等学校ワーキング・グループ報告「高等学校における特別支援教育の推進について」において、次の事項を提言。

    ○1高等学校における特別支援教育の必要性
    ○2高等学校における特別支援教育体制の充実強化 
    ○3発達障害のある生徒への指導・支援の充実 
    ○4高等学校入試における配慮や支援等 
    ○5キャリア教育・就労支援等 

 

5.特別支援教育担当教員の専門性に関する現状と課題

(1)特別支援学校教員の専門性

○現在の免許制度

  • 特別支援学校免許状には5つの教育領域(視覚障害,聴覚障害,知的障害,肢体不自由、病弱)がある。
  • 幼・小・中・高等学校の免許状を基礎として特別支援学校教諭免許状を有することが必要。
  • ただし、幼・小・中・高等学校の免許状を有する者は、当分の間、特別支援学校教諭免許状を有しなくても教諭等になることが可能(教育職員免許法附則第16項)。 

○研修による対応

  • 国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修、都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により専門性の向上を図っている。

○求められる専門性

  • 5種類の障害種別(視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱)に共通する専門性として、特別支援教育全般に関する基礎的な知識(制度的・社会的背景・動向等)。
  • それぞれの障害種別ごとの専門性として、各障害の心理(発達を含む)・生理・病理に関する一般的な知識・理解や教育課程、指導法に関する深い知識・理解及び実践的指導力。
  • 通常の学校への支援に関する専門性として、センター的機能について総合的にコーディネートするために必要な知識や技能。 

○現状・これまでの取組

  • 平成19年4月の特別支援学校の制度化に伴い、盲学校・聾学校・養護学校ごとの免許状を特別支援学校の免許状に一本化。
  • 特別支援学校教諭免許状保有率69.0%(H20年度)
  • 国の取組
    • 各都道府県の教員等を対象にした専門性向上事業の実施。
    • 文部科学省「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」による都道府県等の研修開催の促進。
    • 国立特別支援教育総合研究所における指導的立場にある者を対象とした各種の研修実施。
    • 放送大学における特別支援学校の教諭免許状取得に活用できる科目の開設。
  • 都道府県等の取組
    • 各都道府県・指定都市教育委員会における特別支援学校免許状の保有率向上の計画について、中期計画(5年以内)として数値目標を設定している都道府県・指定都市→24県・市等
    • 特別支援学校教諭免許状に関する認定講習の開催。
    • 教育委員会主催の教員研修や校内研修の開催。

○課題

  • 特別支援学校教諭免許状の保有率の向上について、都道府県等の中期計画等に位置付けた取組の推進や免許法認定講習等の拡充
  • 教員が在籍する校種に対応した教育領域の免許状保有率の向上に加えて,将来の人事異動を念頭においた他障害種の免許状の保有率の向上(複数の教育領域の免許状の保有率向上)
  • 特別支援教育に関係する教職員の採用、配置、研修等を通じた専門性の向上
  • 当分の間、特別支援学校教諭免許状の保有を要しないこととしている教育職員免許法附則第16項について、時限を設けた廃止の検討
  • 教員の資質向上方策について抜本的に見直すこととしている。特別支援学校教諭免許状の在り方についてもその動向を踏まえる必要がある。

など 

○協力者会議における主な意見

(専門性)

  • 障害種別の枠を超えた特別支援学校として統合化を行う際、障害種ごとの専門性を担保することが必要。
  • 専門性を担保するため、養成、採用、研修の体系化を行うべき。
  • 学校組織としての専門性をどのように担保していくかについて、特に特別支援学校の場合は、組織体としてどのような体制整備を図り、専門性を担保していくか考えないと、専門性の発揮は難しい。
  • 学習指導要領が改訂され、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用のための体制についても、学校種を超えた様々な関係機関と連携できる仕組みを整備するなどの検討が必要である。
  • 通常の学校との間で異動の多いところでは、専門性を本当に身に付けるにはかなり時間がかかる。研修の充実に向け、国立特別支援教育総合研究所との連携も必要。

(教員免許)

  • 特別支援学校教諭免許状取得率向上のための仕組みや特別支援学級、特別支援教室構想という広がりを持つ中での免許状の在り方について検討する必要がある。
  • 大学院卒業レベルの専門性を求めたとしても、処遇に差がないのであれば2年余計に通学する学生はいない。
  • 教員免許更新制度に関して、教員からは大学に対しての専門性向上に関する講習開設の要望が強い。
  • 特別支援学校教諭の免許状を含め、一般の教員の免許状の中にも連携・調整能力を専門性の要素として盛り込んでいくべきではないか。
  • 特別支援学校教諭の免許状の各領域に共通する専門性や領域ごとの専門性を考えていくことが必要。
  • 特別支援教育の内容の更なる充実や単位増などの議論がある一方で、そもそも特別支援学校の免許状の保有状況が十分ではなく、教育職員免許法附則第16項に頼っているという現状もある。
  • まずは、附則第16項が不要となる環境を整備して、その次に内容の充実を図るという順番も考えられるのではないか。
  • 免許状取得過程において特別支援教育を38単位履修(全領域担当可能)と多く履修することは、その分教科に関する内容が薄くなるのではないか。教科の専門性をどのように確保するのかという点も非常に難しい問題。

(採用・人事異動)

  • 短期間の異動は、特別支援教育を推進する上では大きな課題となるため、担当年数については、異校種間の異動や、同一校内における教員の在職年数の延長など、人事上の問題を考慮しながら対応することが必要。
  • 特別支援教育の担任について、特別支援教育を志す教員の絶対数が少ないとの問題がある。
  • 専門性については、教員養成や採用、人事異動が強く影響する。特に、特別支援学校枠での教員採用を行っていない地域もあり、人事異動・採用の問題は大きな課題。
  • 人材が限られている分野については、広域単位での採用も検討すべき。
  • 自立活動を主とする教育課程の子どもの授業づくりについて、経験ある教員を育成すべき。教員の異動システムや年数的なものから保護者は不安。

(研修)

  • 通常の学校との間で異動の多いところでは、専門性を本当に身に付けるにはかなり時間がかかる。研修の充実として国立特別支援教育総合研究所との連携も必要。
  • 国立特別支援教育総合研究所には、国全体の研修システムを調整する役割として、例えば国の研究所と自治体の教育センター等との連携、大学との連携といった取り決め等に基づく公式、組織的な連携により、研修ネットワークの構築が期待されている。

 

(2)小・中学校の担当教員等(特別支援学級担任、通級指導担当、特別支援教育コーディネーター)の専門性

○現在の免許制度

  • 幼・小・中・高等学校の免許状のみ。特別支援学級等の専門性を担保する免許資格なし。
  • 幼・小・中・高等学校の教職に関する科目の「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を学ぶこととされている。
  • 実態としては、教科又は教職に関する科目の中で、特別支援教育に特化した内容の科目を開設している大学もある。 

○研修による対応

  • 国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修、都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により専門性の向上を図っている。

○求められる専門性

  • 特別支援教育全般に関する基礎的な知識(制度的・社会的背景・動向等)。
  • 障害種別ごとの専門性として、担当する障害の心理(発達を含む)・生理・病理に関する一般的な知識・理解や教育課程、指導法に関する知識・理解及び実践的指導力。
  • 通常の学級への支援に関する専門性として、勤務校の特別支援教育について総合的にコーディネートするために必要な知識や技能。 

○現状・これまでの取組

  • 特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率32.0%(H20年度)
  • 文部科学省「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」による都道府県等の研修開催の促進。
  • 国立特別支援教育総合研究所における指導的立場にある者を対象とした各種の研修実施。
  • 都道府県等の教育委員会主催の教員研修や校内研修の開催。 

○課題

  • 特別支援教育の専門性を担保するための特別支援学校教諭免許状の取得の促進
  • 現在教員が担当する障害種に対応した教育領域の免許状保有率の向上、将来他の障害種の指導を担当することを念頭においた複数の教育領域の免許状の保有率向上
  • 特別支援教育に関係する教職員の採用、配置、研修等を通じた専門性の向上
  • 特別支援学級及び通級担当教員の資格の在り方
  • 特別支援教育コーディネーターの校務分掌における位置付け、必要とされる研修等の在り方

など 

○協力者会議における主な意見

(専門性)

  • 特別支援学校の障害種別に対応した専門性は小・中学校でも必要であり、専門性を担保できる仕組みをつくるべき。体制が整わないまま一緒に学べる場を提供するだけでは適切な指導・支援を行うことは難しい。
  • 特別支援学級は特別支援学校並みの専門性を持つ場と考えるが、教員の専門性や校内での特別支援学級についての理解等の問題もあり現実的にはなかなか厳しく今後の課題。
  • 通級指導の教員の専門性の保証が必要。
  • 専門性を担保するため、養成、採用、研修の体系化を行うべき。
  • 学校組織としての専門性をどう担保していくか考えていかなければならない。
  • 学習指導要領が改訂され、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用のための体制についても、学校種を超えた様々な関係機関と連携できる仕組みを整備するなどの検討が必要である。
  • 特別支援学級が増加する中、若い教員は指導教官もおらず、誰に聞けば良いか、誰をモデルにすべきかなど現実的に厳しい状況にある。
  • 特別支援教育コーディネーターについても、専門性の確保が必要。

(教員養成・免許)

  • 特別支援学級担当教員にも特別支援学校教諭免許状が必要であるとの認識が高いにもかかわらず、免許状を取得しに行けない環境にあることが問題。
  • 教員養成プロセスの中で、板書、言葉かけ、集団の統率といった特別支援教育に係る基本的な指導技術をしっかり身に付けるようにすべき。

(採用・人事異動)

  • 短期間の異動は、特別支援教育を推進する上では大きな課題となるため、担当年数については、異校種間の異動や、同一校内における教員の在職年数の延長など、人事上の問題を考慮しながら対応する必要がある。
  • 特別支援教育の担任について、特別支援教育を志す教員の絶対数が少ないとの問題がある。
  • 特別支援学校の教員との人事交流により学校としての専門性の向上を図るべき。

(研修)

  • 特別支援学校の教員の専門性は向上しているが、特別支援学級の教員の専門性はまだ不十分。専門的な研修の場が少ないことが心配。教員免許の仕組みによりこの問題への対応を考えるべき。
  • 特別支援学級担任の授業力、学級経営力を育成するため、研究授業等を内容とする研修システムを教育委員会が中心となってつくるべき。
  • 特別支援教育コーディネーターも特別支援学級の担任や通級指導の担当教員と同様、人数が少ないがゆえに研修に出にくい、特別支援学校教諭免許状を取得しに行けないのが実情。
  • 民間主催の研修会や自主的な研究会を活用し、コーディネーターの資質向上や連携協力を図ることが必要。

 

(3)小・中学校等の通常の学級担任の専門性

○現在の免許制度

  • 幼・小・中・高等学校の免許状のみ。
  • 幼・小・中・高等学校の教職に関する科目の「幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」を学ぶこととされている。
  • 実態としては、教科又は教職に関する科目の中で、特別支援教育に特化した内容の科目を開設している大学もある。 

○研修による対応

  • 国立特別支援教育総合研究所における都道府県等の指導的立場にある者を対象とした研修、都道府県等の教育委員会主催の研修、各学校における校内研修等により専門性の向上を図っている。

○求められる専門性

  • 特別支援教育に関する基礎的な知識(障害特性、障害に配慮した指導、個別の指導計画・個別の教育支援計画の活用等)。
  • 教育基礎理論の一環として、障害ごとの専門性(障害の心理・生理・病理、教育課程、指導法)に係る基礎的知識を期待。

○現状・これまでの取組

  • 特別支援教育に関する研修を受けた者58.8%
    (国公私立小中計;平成20年度特別支援教育体制整備状況調査結果(文部科学省調査)より)
  • 文部科学省「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」による都道府県等の研修開催の促進。
  • 都道府県等の教育委員会主催の教員研修や校内研修の開催。 

○課題

  • 研修等による特別支援教育に関する基礎知識の修得
  • 小学校教諭等の修得すべき教職に関する科目等における特別支援教育に関する内容の位置付けの検討(具体例:「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」として取り扱うべき内容の明確化)

など 

○協力者会議における主な意見

(専門性)

  • 特別支援教育の視点だけでは特別支援教育の推進は困難。学級経営力、授業力、特別支援教育、人間形成力など教員としての基本的資質の総合力が求められる。
  • 特に学級経営力が大事。研修もより具体的で実践的な内容にすべき。現場では対応力が求められる。
  • 各教科などに特別支援教育の視点を加えた総合的な授業力や、特別支援教育について最低限必要な知識・理解の上での応用力・判断力・対応力なども非常に重要
  • 気になる生徒をピックアップし、教員と専門医が交流しながらケーススタディすることは、教員の理解を高めるためには効果的。
  • 専門性を担保するため、養成、採用、研修の体系化を行うべき。
  • 学校組織としての専門性をどう担保していくか考えていかなければならない。
  • 学習指導要領が改訂され、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用のための体制についても、学校種を超えた様々な関係機関と連携できる仕組みを整備するなどの検討が必要である。
  • 通常の学級の教員は、発達障害等の理解度や知識、経験が不足している場合が多い。多忙さも問題。

(教員養成・免許)

  • 教員養成時における特別支援教育に関する内容について検討すべき。
  • 特別支援教育についての基礎的知識の定着は不十分である。免許状で明確な位置付けをすべきではないか。
  • 教員免許更新制度に関して、教員からは大学に対しての専門性向上に関する講習開設の要望が強い。
  • 特別支援学校教諭の免許状を含め、一般の教員の免許状の中にも連携・調整能力を専門性の要素として盛り込むことを検討すべき。

(研修)

  • 一般教員を対象とした特別支援教育に関する校内研修や免許状更新講習を充実すべき。

 

6.外部人材や関係機関、民間団体等との連携協力

(1)学校外の人材の活用と関係機関との連携協力

○学校外の人材活用と関係機関との連携協力

  • 総合的な支援体制整備を進めるためには、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士等(ST)の外部の専門家の総合的な活用を図ることや、福祉、医療、労働などの関係機関等との連携協力を進めることが必要。

○現状・これまでの取組

  • 文部科学省「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」により、地域の関係機関の連携協議会、専門家による巡回指導等の体制整備の推進。
  • 文部科学省「PT、OT、ST等の外部専門家を活用した指導方法等の改善に関する実践研究事業」により、特別支援学校における医学、心理学などの専門家を活用した指導内容、指導方法等の改善についての実践研究。
  • 特別支援学校学習指導要領において、医療、福祉、保健、労働等の業務を行う機関との連携を図るために個別の教育支援計画を策定する旨規定。
  • 小・中学校等の学習指導要領において、必要に応じ、医療、福祉等の業務を行う関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成する旨規定。

○課題

  • 地域における医療、福祉、保健、労働等との効果的かつ効率的な連携・協働(連携協議会等)の在り方
  • 教員と外部専門家の連携・協力による指導の在り方
  • 外部専門家を活用した校内研修による専門性の向上
  • 生涯にわたり一貫した支援体制を確立するため、関係機関において作成される個別の支援計画と個別の教育支援計画の関係の整理 

○協力者会議における主な意見

  • ライフステージを通じた相談・支援について、移行期の支援が重要。支援の繋がりに切れ目が生じないよう関係者の連携強化が必要。また、どの時期に誰が責任を持ち担当するのか、窓口の一本化やサポートする者は必要か等、具体的な議論が必要。これまでの各自治体の取組状況を見ながら整理すべき。
  • 現在の制度や仕組みの中で通常の学級の教員に特別支援教育で要求されることをすべてやらせようとしても無理。通常の学級では、教員の資質向上だけでなく外部のPT、OT、ST、心理士の活用など教員を支えるシステム作りが必要。学校単位の専門性の担保、地域単位での支援体制を如何に整備するかを考えるべき。

 

(2)親の会、学校支援ボランティアやNPO等との連携協力

○親の会、学校支援ボランティアやNPO等との連携協力

  • 親の会、学校支援ボランティアやNPO等と連携し、その活用を図ることにより、学校全体としての支援体制の確立を図ることが必要。

○現状・これまでの取組

  • 文部科学省「発達障害を含む特別支援教育におけるNPO等活動体系化事業」により、民間団体における教育支援活動について、ネットワークの構築等団体間の連携、情報共有、支援活動の互助を推進。
  • 文部科学省において、発達障害教育・支援に関係する教育団体、関係機関、保護者団体等が一堂に会し、連携協力体制の構築のための情報交換等を行う「特別支援教育ネットワーク推進委員会」を開催。

○課題

  • 個々のニーズに応じた高度なサービス提供のための各地域における多職種の連携、NPO等の活用の在り方
  • NPO等の特性(機動性・先駆性等)を生かした事業展開
  • 地域において個に応じた支援を実現するための仕組みの構築及び地域における連携が業務として定着できるような予算措置、事業化
  • NPO等の育成・支援(企画力・組織・継続性に不安)
  • 教育機関や福祉等の関係機関、親の会、NPO等との連携と有機的なネットワークの構築
  • 学校支援ボランティアの育成 

○協力者会議における主な意見

  • 大学にNPOの事務局を置き、教育委員会の補助金等により学生ボランティアの派遣業務を行うという形で、教育委員会とNPOがうまく連携している事例がある。
  • NPO法人「エッジ」では、教育委員会と連携して学習支援員の養成研修を行い、成果を上げている。
  • NPO法人「アスペ・エルデの会」では、保護者のみをメンバーとし、専門家が指導者として入っている。学生ボランティアの養成から指導者(ディレクター)の養成までを手がけるとともに研究活動も行い、成果を上げている。
  • 保護者の立場にある者が中心となったNPOが行政において相応の役割を担うことは、保護者の新しい役割として高く評価できる。ただし、そのような団体は教育委員会と直接話ができるようになってきている一方で、学校とは本音で話しにくいところがあり、こうした点を改善していくことが必要。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)