特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第19回) 議事要旨

1.日時

平成21年11月13日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

中央合同庁舎第4号館123会議室

3.議題

  1. これまでの主な論点について
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配布資料の確認が行われた後、説明が行われた。

(3)事務局より資料1及び資料2に基づき説明が行われた後、自由討議となった。討議等の概要は以下のとおり。

 〔概要〕
○:委員△:事務局

○特別支援教育コーディネーターについては、民間主催のコーディネーターの研修会なども開催されつつある。教育委員会などの教育現場だけで研修に取り組むとなると、非常に限定的なものになってしまうので、このような取組は上手に活用する必要がある。特に、個別の教育支援計画や指導計画については高い質を求められ、作成や活用が大事と言われているが、適切に活用されているかについては検証が行われにくい状況なのではないか。各教育委員会などではフォーマットを作成し各教員に配布するところまでは進んでいるが、作成後の活用についての検証は十分ではない。活用の結果を具体的に検証するなど、研修の内容を質的に変えていかないと次の展開が見込めないのではないか。

○個別の指導計画や教育支援計画が保護者との共通理解の下に適切な形で作成できるというケースは極めて少ないが、それが可能となれば、ある程度の支援は完成したも同然という感触を持っている。しかしながら実際の現場では、健康診断などで職員が子どもの障害に気づいただけでも、保護者からは大きな問題とされることも多々ある。

○ある学校では、教育支援計画も指導計画も校内委員会終了後に全部を回収し、金庫に保管してしまう。論点整理で活用が大事とあるが、このような状況ではなかなか活用が図れないのではないか。指導計画や教育支援計画を、もう少し連携指導のための共通理解を図るベースにできないかと思う。例えば、保護者に見せることを前提に、詳細な実態を記入するのではなく、指導の手立てや目標などを記入して、連携指導カードとして使用するなどはどうだろうか。そうすれば、それほど情報管理に神経をとがらせる必要はない気がする。そうした日常的な活用方法を提示していかないと、活用は難しいと思う。

○子どもの一番弱いところにどのような形で手立てをしていくかということは、共通理解を図れるところなので、指導計画自体は金庫の中にしまっても、計画の内容は表に出して、学校全体で共通理解を図りながら指導しないと、計画を作成したまま活用しないのはもったいない。例えば、個別の指導計画や個別の教育支援計画の研修会で、各学校から提出された計画を検討しようというときに、提出できないとなると研修会の意味がなくなってしまう。どのような手立てや課題があるのか、また子どもがどのような支援を必要としているのかという点は、学校全体で共通理解する内容であると思う。

○ある地域の小・中学校からなる連盟では、毎年特別支援教育に特化した研究大会を開催しているが、先週開催された大会では、特別支援学級や通級による指導、さらに通常学級における障害のある子どもの授業を公開した。その際に、特別支援学級の担任教員から、指導案以外に個別の指導計画が公表された。もちろん、子どもを特定できないよう名前は匿名であり、また、個人情報のため管理には注意するよう但し書きが付されていた。個人情報の管理という点では、教員間や地域間で意識に差があるのかもしれないが、そのような地域もある。

○平成12・13年ごろ、ある県の特別支援学校では、指導計画などを全て金庫に保管するという状況があった。このため、個別の指導計画を利用しようとしても、その都度校長の許可が必要であり、非常に活用しにくいという話を聞いていた。しかし、現在では日常で活用しやすいようにと、要約ペーパーなどは金庫には保管していない。個人情報の管理については、研修の実施などで教員の意識が高まればある程度解決していくのではないかと思う。

○個人情報の管理と計画の活用とのバランスの問題があると思う。

○学校で個別の教育支援計画を作成する際には、まずは保護者との連携が必要であるという考え方があると思う。例えば、ある学校では、個別の教育支援計画の本体を保護者が持ち、学校の担任はコピーを持つという形をとっているが、そのような形で保護者と情報を共有することを考えれば、個人情報の問題や保護者とのトラブルは起こらない。また、そのような情報共有を考えていかないと教育支援計画は活用できない。ただし、外部の者に開示するとなると、また別の議論が生じるとは思う。一方、個別の指導計画については、あくまでも指導計画なので、学校の責任において保護者からの情報を得ながら作成すべきものと思うし、このため、指導計画は情報公開する必要もなければ、公表する必要もない。

○小・中学校の特別支援教育について、私立学校の中には大変熱心に取り組んでいる学校もあるが、論点整理の「現状・これまでの取組」の箇所で明確に示されているように、私立学校に対する取組は絶対的な量が少ないと思われる。また、東京都などのように、私立の小学校や中学校への進学が急速に高まっている地域もある。その観点から、全ての学校で特別支援教育に積極的に取り組むということで、私立の小学校や中学校に対する考え方を含めることが適当であると思う。

○ある地域では、就学移行期の支援計画の一貫として就学支援シートの作成が取り組まれているが、その地域では教育委員会がその取組に対して消極的になってしまっている。具体的には、就学支援シートを希望する保護者が子どもの通っている幼稚園や保育所にシートを提出し、その後、幼稚園や保育所がシートに記載を行い、そのシートを保護者が小学校の教員に提出することとなっているが、この流れにおいては教育委員会の関与はほとんど無いに等しい。その中のある地域では、私立幼稚園等との間で調整がつかず、公立だけが実施した。公立幼稚園が12、保育所が20程度あり、保護者全員にシートを配布したところ、希望する保護者は幼稚園においては1人もおらず、保育所は2人のみであった。移行期の支援というのは、やはり教育委員会が関与しないと機能しない。

○前回の学習指導要領改訂において特別支援学校の指導計画の場合、重度重複に関係する部分と自立活動に関係する部分の2点については個別の指導計画を作成することとされた。しかし、新学習指導要領では、全体を通じて個別の指導計画を作成することになったと思う。何故、前回の学習指導要領で自立活動と重複障害の指導に重点を置いたかというと、個別の指導計画の作成はこの2点だけでも大変であるという見解があったからだと思う。今回の場合のように、全般にわたって個別の指導計画を作成するということになると、教員はどう取り組めば良いのか。例えば、段階的に指導を進めるという場合には個別の指導計画は非常に重要であり、それと同時に具体的な指導へつなげていくことが非常に大事であるが、それらをどのように質の高いものに変えていくか、また、作成・活用などをどう展開していくか、さらには、どのようなグループ・指導集団で実施していくかなど、そういうところもつなげていかないと、この個別の指導計画は独り歩きしてしまう。もう少し表現上の工夫があっても良いのではないかと思う。

○個別の教育支援計画や個別の支援計画は障害者基本計画などにも示されており、特別支援教育の要であるとともに、一人一人のニーズに応じた教育を実施する上で必須であると思っている。

○「PDCAサイクルの確立」については、子どものためでもあるが、それだけではなく、指導方法の知見の集積やその効果についての研究、教員の指導力向上などにもつながるものである。

○個別の教育支援計画の作成が始まってから個人情報保護法が施行され、各官庁では様々なガイドラインが示されているが、少し過剰に反応しているところもあるのではないかと思う。例えば、個別の教育支援計画は、医療機関や福祉機関、労働機関等との連携に活用することを目的としているので、そのような関係機関に提供しないとなると連携はできなくなってしまうが、個人情報保護法では、基本的には提供してはならないとなっている。提供するためには、提供先を定める、あるいは保護者の同意の下に提供するなどのガイドラインを作成することが良いと思うが、それがされずに金庫に保管されているというのは、少し疑問に感じる。

○最近では、サポートファイルなどの保護者が携帯するタイプのものも多くの地域で取り組まれている。このような各地域で取り組まれているサポートファイルなどは、個別の教育支援計画とどうつなげていくべきか。現在は過渡期的なものと思うが、正しい在り方としては、おそらく指導する側が責任を持って保管し、個人情報保護法に謳われてはいないが、その保管や管理、廃棄などが適切になされるよう、文部科学省などからガイドラインを示すべきものと思う。

○個別の指導計画の活用というときには、授業がベースになる。この授業に関して、若い教員のみならず、ベテランの教員においても、個に応じた指導の充実の視点からの授業の実施はなかなか進んでいないのではないかと感じている。新しい学習指導要領でも、分かりやすい授業や個に応じた指導、また特別支援教育については非常に充実している。しかし、まだまだ多様なニーズに応じた授業が行われてないというのが現状である。新しい学習指導要領が現場の授業の中で徹底されていくことがまずは大事であると思うし、校内研究や授業改善の研修などでも、そのようなことがベースになると感じている。

○個別の教育支援計画については、子どもの生き方の展望を見極めた上で作成しなければならないので、学校側だけではなくて、福祉機関、医療機関、保護者等との連携から作成することになると思う。教育活動であるので、保護者との信頼関係がないと全てが成り立たないのが現状であり、またそれがベースであると思う。それをベースにした上で、個別の教育支援計画を作成する必要がある。その後で、個別の指導計画を作成して、個に応じた教育活動を進めていくということになると思う。金庫に保管してしまう個別の教育支援計画もあるわけだが、個別の指導計画についても、それを校内委員会で再度持ち出して、低・中・高学年の代表並びに特別支援教育コーディネーターが再確認するための資料として用いることができるのではないかと思う。このため、活用が難しいというのではなく、どう活用していくかを各教育委員会に示してしていかなければ、この会議の趣旨が伝わっていかないと思う。

○学校組織の中には相談窓口が必要であると思う。それが特別支援教育コーディネーターである。経験の浅い教員も経験豊かな教員も迷いが生じた際の相談先をあらかじめ意識し、そのようなときはコーディネーターに相談する。コーディネーターは必要に応じて校内委員会を開催する。そして、その場で個別の指導計画並びに教育支援計画を基にして、その子どもの教育計画を再確認するということが必要ではないかと考える。

○個人情報の管理の仕方については、この会議からも示していかなければならないのではないか。個人情報の管理に対して少し厳しくなり過ぎているのではないかという考え方もあるが、やはり現代社会の中ではそのことも必要と思う。

○これまでの議論や学習指導要領では、「個別の指導計画」と「個別の教育支援計画」がセットで示されているように感じるが、このことは混乱のもとではないか。個別の指導計画は学校の指導のために作成する計画であり、教育支援計画は関係機関と連携して生涯を通じた視点から作成する計画である。この点を書き分けると混乱は少なくなるのではないか。個別の教育支援計画を基にしながら個別の指導計画を作成することは間違いないが、併記する際はもう少し整理して示したほうが、分かりやすくなるのではないか。

○課題整理メモP2の「NPO等の連携、活用」について、1から5までの項目の後にNPOが続くとなると、少し違和感がある。例えば、学校教育や財政状況などの諸事情から、外部の力や民間の力を活用するとの考え方もあるし、また、特別支援教育の観点からは非常に高い専門性が要求されるため、教員の専門性を高めるとともにOT・PT・ST・心理職などの外部の専門家を活用しなければならないとの考え方もある。さらに、アメリカなどの外国の例では、もう少しボランティア的な者や半分有償的な者などが学校現場に入っているところもある。そのようなテーマが課題の中にあって、NPOとの連携や活用は、その一つとして捉える方が良いと思う。また、OT・PT・STや心理職の専門家について、役に立たないという考え方もあるかもしれないが、非常に活躍されている事例もあるので、今後はおそらくそのような外部の専門家を学校の中で活用していくことが必要となってくると思う。

○論点整理P5の特別支援教育支援員について、やはり学校の所管の問題がある。私立の小・中学校の所管は区市町村教育委員会ではなくて、都道府県の知事部局である。このため、今後区市町村の教育委員会がコーディネーターの役割を果たしていく上で、私立の学校が取組から漏れてしまうということも生じかねない。その点について配慮事項が示されても良いのではないか。

○新採の教員においても支援員を経験している者が多いように、支援員の普及が進んでいるが一点気がかりなところがある。それは、支援員を配置した結果が、「大変な子どもの面倒を見てくれて安心した」、「授業が実施しやすくなった」ということだけで終わってしまうことである。一人一人の子どもに応じた成長や発達を保障していくという観点から支援員の動きを生み出すことは難しいと思うので、校内委員会やコーディネーターが機能する中で、支援員を方向づけていかないと支援員は動けない。そういう意味で、論点整理P1の「(1)校内体制の整備」に関連するが、支援員を含め教員全員が、この子どもはどの段階まで進んでいるのか、次の課題は何か、さらには必要とする支援の内容は何かなど、これらを共通理解しながら進めていかないと先に進まない。このため、「(5)特別支援教育支援員」の項目にも、そのような内容を示した方が良いと思う。

○過去に、肢体不自由を対象とした学校で、学習介助・通学介助・身辺介助・その他の介助を行う介助職員を導入した時期があった。しかし、最終的には、介助職員の代わりに教員を採用するという形で介助職員を解消した。どこまでが教員の仕事で、どの分野を介助職員に任せるのか、また、任せ方や取り扱い方、さらには包み方など最終的には管理上の問題があり、必ず事故が発生した場合にどうするかなどの問題は生じてくる。また、子どもの指導に関して教員の思いと介助職員の思いの間に差異があると、身辺自立や社会参加に関して問題になる。このため、支援員を配置することによってどのような影響が出るのかを検討すべきである。

○小学校に比べ、中学校の通級指導教室対象の子どもは非常に少ない。議論をする際に、小学校と中学校を1つにまとめて良いのかどうか。中学校になると、多くの子どもは実際には通級の対象とはならない。今後、高等学校も、議論の中で出てくるかと思うが、そのような小学校との相違がどうなのかというところが気になる。

○「(6)特別支援学級、通級による指導」の課題の「知的障害を引き続き固定式の学級に対象とするのか、通級による指導の対象とするか」について、今の子どもの実態からすると、特別支援学級に在籍している知的障害の子どもは、知的障害特別支援学級の中で教育を実施しなければならない状況はあると思う。さらに、通常の学級に在籍している発達障害の子どもの手立てをどうするかという際には、通級による指導を考えることになると思うが、この線引きについては、現在の置かれている固定式の知的障害学級についての指導計画、並びに個別の指導計画、その他全体を踏まえることが必要ではないかと思う。また、校内通級か他校通級なのかも課題となるのではないか。

○論点整理P6の「知的障害を引き続き固定式の学級に対象とするのか、通級による指導の対象とするか」について、知的障害のある子どもは、現在、固定式の学級しかないのだが、IQでボーダー域の子どもは必ずいるが、そのようなボーダー域の子どもは、固定式の特別支援学級で教育を受けるか、また通常の学級で教育を受けるしかないが、中には算数が弱い子どもや読みが弱い子どもなど、様々な子どもがいるので、通級による指導などのように弱い部分のみ別の教室に通うという方法があっても良いのではないか。

○平成14年に実施された全国調査ではLDやADHD、高機能自閉症等の在籍率が6.3%程度と報告されているが、通常学級の中には、おそらくボーダー域の子どもや、学習についていけないIQレベルの子どもがおり、その中には、LDやADHD、高機能自閉症ではないが、少しの時間、個別に指導することで効果のある子どももいると思われる。そのような子どもは、通常学級に在籍するとなると、通級による指導のような特別の教育課程を受ける場がない。固定式の学級が必要な知的障害のある子どもは固定式の学級でも良いが、通常学級に在籍しながら、一部別のところで指導を受ける方式があって良いのではないか。

○特別支援教室に関連して、通級指導の指導時数については現行制度上限定されているが、特別支援教室構想ではこの課題をどう整理するかはポイントである。多くの時間を特別支援教室の中で過ごす子どもについても、教育課程上の位置付けをどうするかという点が、ポイントになってくると思う。その際の時数カウントなどは柔軟にしなければならない。どこが責任を持って子どもを指導するかというような、指導の案分なども念頭に置きながら、この教室構想を整理する必要があると思う。また、この点については、在籍する学級と特別支援教室の関係について整理することも考えておかなければならない。それは教育課程の編成、実施、評価ということに関わるのだが、そのようなところが特別支援教室構想では大きな課題になると思う。

○論点整理P7の「(7)特別支援教室構想」の「教員配置システムの在り方(学籍がない「教室」への教員配置システム)」について、標準法や在籍の問題は、この際、根底から見直してはどうかと思っている。小・中学校では、すべての子どもは通常の学級に在籍するとして、特別支援教室で指導を受ける時間を積算すると、必要な教員数を算定できると思う。そのような計算方式をしないと教員の必要数がおそらく算出されない。このためには、多くの制度改正や調査に対応しなければならないので、国立特別支援教育総合研究所においては、そのような研究をお願いしたい。

○特別支援教室構想は非常に豊かな構想と思うが、適切に実施しないとこれまでの取組全部が崩れてしまう要素も持っている。このため、全体像をまとめる際は、これまでの特殊教育から特別支援教育への変遷の中で積み重ねてきたものや、特別支援教育に変ったことで生じた効果などをうまく反映させていかなければならない。その点をチェックしながら、再構築しなければならない。特別支援教室構想は、特別支援教育の大きな流れになる可能性があるので、国立特別支援教育総合研究所では、ご指摘のとおり諸研究を実施したいと思うが、その中では、従来のものを適切に位置付けながら進めることが必要だと思う。

○教員配置システムの具体的な課題について、市町村教育委員会においては、これまでの議論のように個別の教育支援計画を作成して就学指導を行ったとしても、4月になってすぐに指導時間や指導内容を判断することはできないと思う。そうすると、4月の段階で特別支援教室に何人、どのような教員を配置するのかという積算は、実質上は難しい。例えば、指導時間数を積算して必要時間を算出して教員数を判断するとなると、5月か6月、さらには8月まで教員配置が長引いてしまうこともあり得る。そのような状況になると、入学後数ヶ月間、実質的に指導ができなくなってしまう。非常に難しい技術的問題であるが、その点を克服していかないと、学籍に基づかない教員への教員配置システムはうまくいかないと思う。

○その点については、就学指導の段階で急に決めるということをやめて、早期から個別の教育支援計画を適切に作成した上、早い段階から教育委員会が関与することで予測を立てることが可能となるのではないか。

○確かにそのとおりであると思うが、現状の市町村教育委員会の力を見ると、非常に不安がある。

○論点整理P9以降の「5.特別支援教育担当教員の専門性に関する現状と課題」について、その中の「(2)小・中学校の特別支援学級担任及び通級指導担当の教員の専門性」と関係するが、特別支援教育コーディネーターという項目を立てる必要はないだろうか。特別支援学級担任の教員がコーディネーターに指名されていることもあるし、小・中学校でコーディネーターや特別支援学級、通級指導を担当している教員数は少なく、そのような状況下では、P13に示されているような「免許状を取得しに行けない環境にある」という状況は、共通していることであると思う。その現状を踏まえると、コーディネーターという大項目を立てるべき、もしくは(2)の中に、コーディネーターも含めるべきだと思う。

△コーディネーターについては、P2の「特別支援教育コーディネーター」の項目で整理しているところだが、どこで整理すべきということは、ご意見をいただきたい。

○どこで整理するにしても、コーディネーターの専門性を含めていくことは大切なことと思う。

○専門性ということでP9以降に「5.特別支援教育担当教育の専門性に関する現状と課題」がまとめられており、またコーディネーターの果たす役割が非常に重要な課題になっているので、5においてもコーディネーターの専門性について触れた方が良いと思う。

○既に示されているところとの関わりは別途考えるとして、5にコーディネーターの専門性の項目を立てるということで整理をお願いしたい。

○論点整理P9以降の5の「(1)特別支援学校教員の専門性」で、教育職員免許法附則第16項の廃止が示されているが、これは幾度となく議論されてきた。また「(3)小・中学校等の通常の学級担任の専門性」に関連して、平成10年の教育職員免許法改正では免許状を取得する全ての者に、障害のある幼児、児童生徒の問題についての学習を課すことになったが、その際にその内容を明確化すべき、また、そのような科目を独立させて必修化すべきという議論があった。

○特別支援学級の担任や通級指導の担任は3年から5年目の若手教員が中心になっているという現状を踏まえると、地区単位の養成というのか、教育委員会が中心となって授業力や学級経営力の育成システムをつくるべきと思う。ある市では、初任者から4年次までの特別支援学級担当教員の研究授業を年に2回開催して、その授業改善を通して、専門性を高めていくシステムができている。全くわからないままで配属される教員でも、経験年数を積み重ねるとそれなりの授業ができる。しかし、そこに人事異動が絡み、必ず通常の学級に戻ってしまう。やはり研修のシステムを地区単位で行うべきである。

○指導上の技術について、やはり教員の最も中心的な業務は授業の実施であり、授業中の板書、言葉かけ、集団の統率など、そのような指導上の技術を養成課程や任用前研修の中に含めていかないと、分かりやすい授業を実施することは難しい。

○専門性について、知識、理解、実践的指導力など示されているが、どのような授業を実施できれば専門性があると言うことができるのか、その点をもう少し含めた方が良いのではないか。

○特別支援教育コーディネーターについて、大学院レベルの高い専門性を身につけたコーディネーターなど、スペシャリストが各地区に1人でも2人でもいると、その地域の特別支援教育全体が推進されていくのではないかと思う。

△教育職員免許法に附則第16項について、そもそも教育職員免許法においては、教諭の免許状と特別支援学校教諭免許状の両方を持ってないと特別支援学校では教えられないという前提がある。しかし、附則第16項でそれを覆している。附則第16項の廃止についてはこれまでも議論がなされているところだが、論点整理P9の「(1)特別支援学校教員の専門性」で示されているように、特別支援学校教諭免許状保有率は69%にとどまっており、年々改善されているとは聞いているものの、本附則を廃止できるというある程度の見通しの上で廃止しないと、学校現場が大変混乱すると考えられる。
 P14「(3)小・中学校等の通常の学級担任の専門性」の課題に示されている「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」については、その内容を盛り込むことやその分量が十分なのかという議論、また内容がどうあるべきかという議論があると思う。特別支援学校の教員だけではなく、全ての学校の教員に特別支援教育の重要性が求められていることは示されているところであり、現在の教員養成課程の中でどこまで充実していくかということを考えると、最も理想的なのは、全教員が特別支援学校教諭免許状レベルの専門性を得ることである。しかし、それを実施するとなると、教員の免許状取得が進まないことも予想される。どこまでやるのかというところで、現在の状況になっているのだが、免許状取得を促進することと、その免許状の中身である特別支援教育を充実していくことについては、バランスをとりながら考えることが必要と思う。また、総理の教員の資質充実の方針の下、次年度、抜本的な教員免許制度の改革に着手する予定となっており、その中でも必要に応じてこのような内容も検討されていくと考えている。

○資料2P9以降の「5.特別支援教育担当教育の専門性に関する現状と課題」の全てに共通するが、現職の教員の専門性を向上するという観点からは、研修の在り方が問題になると思う。現在のところ、各教育委員会、地域単位で研修に取り組んでいるが、地域によってかなりの差が生じていると思う。また、地方からすると、中央の研修を受けることは、非常に良い機会となるが、研修のために外に出るとなると、それなりの時間や費用を要する。特に、特別支援学級などを1人で担任していると、2日も3日も外に出ることは困難である。このような状況のため、中央と比べると地方は研修の機会は少ないと思われる。研修の充実を考えると、ナショナルセンターという点からも国立特別支援教育総合研究所においては、国全体の研修システムを連絡調整する役割を期待したい。例えば県の教育センターや地方の大学と協定書に基づき連携するなど、中央の研修と同時に地方の研修の機会も、質、量ともに充実できるよう、公式的、組織的な連携体制で、地方の研修ネットワークなどを充実させていただきたい。また、外部からの総合窓口を設けるなど、外部の者が利用しやすい組織体制とすることも必要ではないかと思う。

○国立特別支援教育総合研究所としては、その点について考えなければならない。ただし、いわゆるナショナルセンターとしてのネットワーク構築については、現在、都道府県等の教育センターとのネットワークや小・中・高・特別支援学校等の校長会のネットワークに着手しているところであり、個々のネットワークを構築しながら、全体としてのネットワークの形に、切りかえているところである。特殊教育から特別支援教育へと制度が変遷する中で、盲、聾、養護学校などのいわゆる縦の軸を横の軸に直して、縦の軸を生かしながら横軸を生かすという形になった。いわゆる盲、聾、養護学校が特別支援学校へと名前に変えて、センター的な役割を担うこととなったことに対して、国立特別支援教育総合研究所として見本を示さなければならないというところがあり、横軸に変えて、縦そのものについても、実施していく必要がある。なお、現在、最も重点を置いて取り組んでいるのは情報発信であり、当研究所のウェブサイトにアクセスすると、簡単なところから深いところに徐々に進んでいくことができるようになっている。また、組織については、総合的に実施していくことを重点に置いて編成を行っている。特に、特殊教育が特別支援教育に変わったら発達障害に関することのみ取り組むのではないかと思われてしまうところがあるので、その点を配慮しながら編成している。

○特別支援教育の知見は、通常の学級の授業や経営を向上させる上で、必要なものと思う。この点については、これまでも議論されてきたが、論点整理においても、うまくまとめられている。

○本校では、聾学校での勤務を経験した教員がいるが、その教員のレベルは非常に高く、ほかの場面でも大きな役割を果たしてくれている。教員自身も非常に勉強している。しかしながら、現在の方向として、調整額や義務教育特別手当が毎年減額するなど処遇は悪化傾向にある。専門性の確保が必要であるのだが、この状況では特別支援教育担当への希望は増えないのでないかと感じている。このため、例えば、高等学校の教員においても特別支援学校を数年経験する仕組みを強制的に実施するなど、何らかの取組を大胆に行うことが、全体で進める上で有効なのではないかと思うこともある。

○支援員について、本年10月に急遽政府の緊急雇用対策の関係で、当校に週当たり27時間の進路指導支援員が配置されたが、そのような漠然とした支援員は、学校からすると非常に活用しやすい。放課後の生徒の授業サポートや、大学生ボランティアのコーディネートも行ってもらっている。担当が特別支援教育のみ限定されていると、活動も非常に制限されてしまう。様々な部署から縦割りに予算が来るので、このように活用に制限がかかる状況になってしまうが、学校としては必要に応じて様々に活用できる形での人の配置が理想である。先ほどの支援員も含めて、そのようなところを考える必要があるのではないかと思う。

△教育職員免許法附則第16項をどうするのか、これが一番の検討課題と思っている。そのためにも免許状保有率を向上させて、附則第16項を廃止できる方策を組む。その上で、免許状のレベルで何をすべきか、あるいは研修の場面で何をすべきか、免許状で仮に何か充実をするとした場合に、認定課程を有する855以上の大学すべてで必要な教員を確保できるのかどうか、それらの点を含めて検討を進めていくことが必要になると思うので、まずは免許状保有率の向上に力を入れる必要があると思っている。

○免許状保有率の向上は、任命権者の採用についてのポリシーとも深くかかわるものである。その点については、どう考えているのか教えてほしい。

△採用は最も重要な事項の一つであり、採用されるために特別支援学校教諭の免許状を取得して採用試験に臨む学生も多くいる。しかしながら、近年の、都市部を中心とした大量退職・大量採用の時代においては、小学校などでは極めて採用率が低く、教育委員会側も条件を厳しくして採用したいという気持ちはあるものの、それができないのが実態がある。そこを克服するため、都市部を中心に教師塾に取り組むなど、個別の対応がなされているのが現状と思う。

○専門性の問題というのは、やはり社会変動とのかかわりというものも視野に入れて議論する必要があるものと思う。

○課題整理メモ1の「(3)職業教育・就労支援」について、例えば雇用促進法などの影響から、企業も意識が変わりつつあり、障害者雇用に気持ちを向けてくれるところが多くなってきたと思う。ただし、企業は景気に左右されるところがあるので、特別支援学校自体が、教育委員会と合同で企業セミナーを開催したり、ハローワークと合同で学校見学会をやったりと取組を進めているところである。なお、その結果は、かなりの効果が出てきているものと思っている。また、最近では、障害者雇用を進めるためのノウハウなどについて、企業側から特別支援学校に相談が寄せられることも増えており、全般的には障害者雇用は進んでいく方向にあると思っている。このためには、理解啓発が大きな課題であり、学校、教育委員会、ハローワーク、職業センター等の関係機関が連携しながら企業への取組を進めていくことが、重要なポイントになると思う。

○「職業教育・就労支援」については、特に特別支援学校の高等部の教育課程の見直しなど、検討が必要と思う。具体的には、これまでの作業学習では木工や陶芸などが実施されてきたが、そのことが直接的に就労には結びつくことは少なく、全国的にはパンの販売やクリーニングなど、地域に応じた形で実施される傾向にある。そういう意味での教育課程の検討が、今後の大きな課題の1つになると思う。

○障害者基本法においては、障害者の地域生活や経済生活、社会参加を支援することになっている。その支援の際には、本人の参加などの自己選択・決定が基本にあると考える。その点は、職業教育や就労支援においても一番のポイントになるだろう。先ほども発言があったが、社会状況も変化しているので、その変化する状況に応じた学校の支援というものを念頭に置きながら、本人の参加をとらえていく必要があると思う。そのような意味から、知的障害などを対象とした特別支援学校等の作業学習などは大きく転換されつつあると認識しているし、そのことが重要であると思う。また、知的障害だけではなくて、ほかの障害種でも幅広く職域を拡大していかなければいけない。発達障害者の支援なども含めて、どのように充実させていくかを幅広く考慮しなければならないと思う。

△資料1の1の「(3)職業教育・就労支援」に関して、特に地方などで注意喚起をいただくのは、大都市圏では企業向けの理解啓発や雇用促進法に基づく取組は非常に有効であり、成果も上がっているが、地方都市では、雇用情勢そのものが非常に厳しく、地元企業も一次産業が中心となっているなど、大都市圏と地方都市とでは状況が異なるということである。そのような地域での実践性を高めながら、職域の拡大も視野に入れて職業教育・就労支援を考えたいと思う。この点についてはご意見をいただき、事業等に反映させていきたい。

○高等学校でも特別な支援を必要とする生徒はいるので、そのような生徒に対しては、特別支援学校の高等部と一緒に職業訓練の実施や求人の確保などが行えるような体制を構築する必要があるという話を聞く。また新しく改訂された学習指導要領でも多様化を追認するような内容となっている現状においては先が見えないようなところもあるが、特に職業教育の部分は、特別支援学校の高等部と実態が似ている状況があるので、最大の課題であると思っている。

○例えば、ある県では企業等の就職先が特に少ないという現状の中で、就労状況の改善が課題となっているが、その一方で、保護者や子どもが一定の福祉サービスや福祉就労に満足してしまうという現状がある。自ら働くという意識が低く、そこを高めていくことが最大の課題である。このため、昨年、学校の中で保護者や子どもに、その点についてキャリア教育を含めて指導することに取り組み、その結果、就労率が14.3%から25%と上昇が見られた。そのように、キャリア教育的な要素を含めて、早い段階から自己選択・決定というレベルから、自分の生き方や在り方等を含めて、自ら就職して働くという意識づけを行うことが必要ではないかと思う。

○最近では、就労移行支援センターなどとの連携により現場実習等の窓口が少し広がっている。そのようなところから、進路指導担当の教員が、企業、ハローワーク、職業センター等と連携して地域の情報の共有化を図るようになったなど、地域の就労支援ネットワークに動きが見られている。また、現場実習の開拓を進路指導担当の教員が足で稼いでいるという現状があるが、小さな企業では2年続けて就職できることはまず無いので、開拓は進まない。このため、ある県では、昨年から高等学校で就職専門員というような就職をサポートする専門の人材を配置し、そのうちの1人を特別支援学校にも配置した。就職専門員はハローワーク勤務を経験している者なので、面接の仕方や応対の仕方、そういうことも含めてサポートをいただき、その結果、現場実習の拡大に非常に効果が上がった。そのような就労をサポートする人材の配置は、就労支援に有効であると感じている。

△就職を支援する専門員というのか、コーディネーターについては、平成22年度概算要求で経費を要求している。このコーディネーターは学校単位に配置するのではなく、教育委員会単位で配置することを予定しているが、これは横のシナジー効果も期待してのことである。また、ある地域の取組においては、特別支援学校だけでの就職先の確保や実践的な実習コースの設定は大変ということで、志望者が減ってきていているが余力のある農業高校の教員を活用して、農業高校の圃場の共同使用や農業作業の共同実施を行っている。この取組は職域・職種も拡大するし、スタイルも新しいものではないかと思う。大都市圏では、学校の統合などで閉鎖された工業高校を活用して、チャレンジスクールという形で発達障害の子どもを含めて職業教育を実施しているところもある。

○ある地域では、入学者の減っている商業高校の校舎を活用して、1階から2階を特別支援学校、3階から4階を商業高校というように特別支援学校と高等学校が同校舎で活動することによって、共同で職域拡大を図っている例もある。

○改正学校教育法への対応ということで、センター的機能という新しいミッションができた。学校教育法第74条に関するこの部分を特別支援学校が実施していくためには、特別支援教育コーディネーターの専任化は必要であると思っている。課題整理メモの中には、大きな課題として含めることが必要ではないか。また、特別支援学校においては、関係機関とのネットワークの中心となって、様々なところで対応するような制度をつくることが必要であると思う。特に特別支援学校のコーディネーターの役割が、一層の拡大を期待されているので、各障害間の連携も含めて、課題整理に含めることが必要と思う。

(4)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)