特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第15回) 議事要旨

1.日時

平成21年7月21日(火曜日)10時~12時30分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 義務教育段階を中心とする特別支援教育の推進体制の充実について(教員の専門性の向上を中心に)○1事務局による説明 ○2木舩委員による説明 ○3山口委員による説明
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事要旨

(1)髙倉座長より挨拶が行われた。

(2)事務局より配布資料の確認が行われた後、説明が行われた。

(3)木舩委員より資料4に基づき発表が行われた後、山口委員より資料5に基づき発表が行われ、自由討議となった。討議等の概要は以下のとおり。

〔概要〕○:委員 ◎:ヒアリング者 △:事務局

(木舩委員発表)

○ 資料4の24枚目スライドに、特別支援学校教諭免許状の取得等に関して「通常の学校教員のニーズが高い」とあるが、この通常の学校教員とは、特別支援学級あるいは通級指導を担当している教員のことか教えてほしい。

◎ 明確に確認していないが、特別支援学級、通級に限らない。

○ 資料4の4枚目スライドにあるCECとは、どのような組織なのか。

◎ アメリカに本部がある国際的な組織。独立した組織ではあるが、アメリカの教育委員会や行政等と連携しながら教員の専門性向上に向けて活動している組織である。

○ 資料4の12枚目スライドの「『障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程』に特化した科目をプラスして開講している大学が複数ある」について、多いと考えるか、少ないと考えるか、教えてほしい。

◎ 多くはないと考える。

○ 資料1の2枚目の基礎理論について、一部の国立大学では、既に教員養成課程の中で特別支援教育概論や総論といった名称により、選択必修科目として位置づけている大学もある。今後そのような大学は増えてくると思う。

(山口委員発表)

○ 資料5の3頁の2教員人事・配置(1)採用方針で、「教員採用試験において特別支援に係る免許状保有及び取得の見込みのもので、加えて小学校または中学校の免許状保有者及び取得見込みのもの」と資格を示しているが、高等部については、どう対応しているか教えてほしい。

◎ 高等部に関しては、中学校の免許状を保有する教員の中に高等学校の免許状を併せて保有する教員もおり、そのような教員を配置することで対応している。

(自由討議)

○ 免許更新制等に関して、教員からは大学に対しての専門性向上に関する講座開設の要望が強い。

○ 免許更新制について、制度上は免許状を保有する教員自身に義務が発生するが、大学等においては、法的な意味での責務等は発生しない。しかし、免許状を保有する教員の義務のみでこの大きな問題を考えて良いのかという問題もある。

○ 教育職員免許法施行規則の「教育の基礎理論に関する科目」中の「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」についての講座数はまだ少ない。小・中・高等学校で特別支援教育の推進が明確に規定された一方で、特別支援教育についての基礎的知識の定着は不十分である。免許状で明確な位置づけはできないだろうか。

○ 特別支援教育の推進において専門性が大切であることは皆が認めているところだが、特別支援教育に関することのみに専門性を限定するのはいかがなものか。小学校の現場を見ると、算数や音楽などの教科について高い専門性のある教員は、発達障害のあるなしにかかわず、すべての子どもを包容できる力を持っていることが多い。逆に、教科の指導力が弱い教員を見ると、学級経営や学習指導に課題が見られる。

○ 現場では対症療法的な対応をしていることがある。例えば、特別支援教室的な教室を設けると当然ながら担当する教員を校内で配置する。しかし、そのことで通常の学級や特別支援学級が手薄になることがある。これについては、組織的に対応することが学校経営上必要である。

○ 専門性に関して、特別支援学校の免許状は必要な要件ではあるが、免許状だけではなく、センスも必要である。これらを両方とも兼ね備えるのは難しいが、保護者からすると、免許状の保有は当然のことであり、その上で、さらに免許状を活用できるセンスが必要であると思う。学校は授業が中心となる部分が多く、教科の専門性も非常に重要な部分であるので、専門性を広く考える必要がある。

○ 教育職員免許法施行規則における教職に関する科目の「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」については、数時間で修得することは難しい。このため、教職に関する科目のすべてに特別支援教育の視点を盛り込むことが望ましい。また、特別支援教育を視野に入れた教科指導や学級経営が可能となるような教職に関する科目を、あわせて検討していく必要がある。

○ 聾学校経験のある教員で、教科指導力から保護者対応までと幅広く専門性があり、さらに大学院に自主的に通学するなど専門性向上に取り組んでいる教員を知っているが、その教員が、他の者が気づかなかった視点から、保護者との間に入り、子どもの抱える困難を解決したことがある。教員は、様々なところと連絡をとることが多く、ソーシャルワーカー的な役割も必要であり、また、幅広く専門性をもつ教員というのは、他分野において広く専門性を発揮していけると実感した。

○ 校長が指導力のある人材を求める背景には、特別支援教育を要する子どもは指導力のある教員に担任させれば何とかなるという実態がある。しかし、コーディネーターを中心とした組織的な体制が求められてきているように、指導力のある教員に任せておいて済むような問題では無くなってきているのが現状。その点が新しく、専門性という意味で考えざるを得ない要因になっている。

○ 特別支援教育関係の教員だけではなく、一般の教員に最も求められる専門性として新たに浮上してきたのが、連携調整力である。近年では不登校や生活指導の問題が複雑化し、また「開かれた学校づくり」という視点から人材活用の幅も広がってきた。さらに特別支援教育の課題が大きくクローズアップされる中で、如何にして外部機関等と連携して学級の子どもの育成を図っていくかということが非常に大きな要因となっている。そのようなことから、特別支援学校の免許状を含め、一般の教員の免許状の中にも連携調整力を専門性の要素として盛り込んでいくべきではないか。

○ 特別支援学校の教員というのは、基礎免許状の上に専門の免許状を取得する仕組みになっている。基礎免許状で求められる資質は当然に求められ、基本的な対応はできなければならない。そのような複数の免許状から構成される免許制度であることも念頭に置きながら、特別支援学校の各領域に共通する専門性や領域ごとの専門性を考えていくことが必要である。各科目の中に特別支援教育の視点がある、あるいは各障害の特徴を押さえた教科の指導法の在り方を考えていくことが、特別支援学校の免許状の仕組みとして考えられていると理解している。

○ 現在の特別支援学校の免許状の中で、各校種に共通する専門性として、個別の指導計画、個別の教育支援計画の活用があるが、これは新学習指導要領の中に位置づけられ、小学校、中学校、高等学校においても作成が推奨されている。この活用や作成は、まさに外部との連携力や調整力といった能力が極めて重要になるものである。

○ 「通常の学校への支援に関する専門性」に関して、基礎となる特別支援学校の免許状の専門性についての適切な位置付けが必要ではないか。先ほどのセンスの問題や、能力の高い人は何でもできるという発言があったが、免許状は必要ないという事態になることは避けたい。

○ 資料4のセンター的機能にもかかわるコーディネーターの知識や技能について、先ほど発言のあった連携調整力も関係してくるのではないか。この連携調整力を教育職員免許法上でどのように位置づけるべきかは、今後の大きな課題である。

○ 資料4の4枚目スライド「CECにおける特別支援教育教員の専門性の考え方」に記載されている「ギフテッド」の概念については、日本においてはどう考えるべきかを検討す必要がある。発達障害で知能にばらつきがある者がこのような特色を持つことが多い。

○ ギフテッドの件は当会議で直接扱うべきという議論にまではなっていないと考える。

○ 教育職員免許法で規定されている内容は、学校現場の教員に求められる専門性を整理したものと考えるべき。教育職員免許法は、そこに示された内容を、教員になる者が専門的知識や指導法として修得すべきものとして位置づけていると理解している。

○ 免許状は、取得のために必要な単位数が定まっており、その最低限の単位は教壇に立つ上での最低限必要な知識・技能であると指導する側は理解する。そういう意味で、特別支援学級や通級指導の教員に基礎的な知識があるということを示す資格や免許状は、絶対に必要なもの。特に通級指導の対象となる子どもが急増する中、経験のない教員が通級指導を担当せざるを得ない状況も生じる。このような状況で、最低限の知識や技能を持ち、個別の指導計画を作成できる教員を配置するためには、免許状による知識・技能の担保が必要である。

△ 現行の教員養成課程については、特別支援教育の内容の更なる充実や単位数の増などの議論がある一方で、そもそも特別支援学校の免許状の保有状況が十分ではなく教育職員免許法附則第16項に頼っているという現状もある。この2点を一度に解決することは非常に困難。特別支援学校の免許状に新たな内容を追加する、あるいは単位を増やす場合、また通常の学級を担任する教員の通常の免許状に特別支援教育の内容を追加する場合においては、特別支援学校の免許状の保有率を下げかねないという懸念がある。まずは教育職員免許法附則第16項が不要となる環境を整備して、その次に内容の充実を図るという順番も考えられるのではないか。

○ 教員養成課程について、ぜひ普通免許状のところに特別支援教育の科目などを独立して盛り込んでいただきたい。例えば、小学校では、発達障害とは別に通常の授業についていけない子どもも在籍しており、そのような子どもは、教え方を工夫すれば、授業についていけることがある。そのような場合に、個々の子どもの特性や教育ニーズに応じた指導を行うという特別支援教育の考え方を応用することで、学力が向上することもあると思う。

○ 教育職員免許法附則第16項について、将来的な廃止は非常に重要。当市は平成18年度から、新規採用時において特別支援学校の免許状保有を条件としているが、このことにより新規採用者の力量が飛躍的に向上していることが見受けられる。

○ 採用される者の免許状は様々だが、教科の専門性からすると、免許状取得過程において特別支援教育を38単位履修と多く履修することは、その分教科に関する内容が薄くなるのではないか。教科の専門性をどのように担保するのかという点も非常に難しい問題である。教科の専門性について、採用の段階や人事異動による対応なども検討しなければならないと思う。

○ 特別支援学校において、知的障害のある子どもについては、特別支援学校の免許状のほか、幼・小・中・高等学校のいずれかの免許状を保有することで、免許状に相当する部以外の部においても教科を教授することができるが、教授できる範囲は「自立教科等以外の教科」に限られている。このため、道徳や特別活動など幅広く担当することが求められる学級担任については、他の部を担当できないのが実情である。例えば、小学部の教員の中には非常に専門性の高い教員もおり、そのような者が他の部でも学級を担任することができるように、免許制度に盛り込むことができれば、学校全体の組織としての専門性も高まっていくと思う。

○ 教員の専門性の点では、学校組織としての専門性をどう担保していくか考えていかなければならない。特に特別支援学校の場合は、組織体としてどのような体制整備を図り、専門性を担保していくかを考えないと、専門性の発揮は難しい。

○ すべての教員に求められる専門性について、学級経営、授業力、特別支援教育、人間形成の4点が必要。さらに、各教科などに特別支援教育の視点を加えた総合的な授業力や、最低限必要な知識・理解の上での応用力・判断力・対応力なども非常に重要となっている。

○ 特別支援学級及び通級指導の教員に求められる専門性について、特別支援学級はこの10年で、対象となる児童生徒の激増、障害の多様化、指導上困難な児童生徒の在籍など、状況が変化してきている。学習指導要領も、小・中学校の学習指導要領と特別支援学校の学習指導要領の二本を理解しなければならない。さらに、在籍学級の教員との連携や交流も求められる。このように、特別支援学校の免許状のみで対応できない部分が多く、免許状の細分化や、特別支援学級や通級指導の教員に求められる専門性の比重を増やすことなどが必要。

○ 特別支援教育の視点を取り入れた授業や生徒指導を進めるにあたり求められることは、各障害種に共通した部分を整理しながらその専門性を再構築することである。その各障害種に共通した部分は、特別支援学級や通級指導の教員にも求められるところであり、また通常の学校の教員に対する支援においても必要となるものなので、通常の学校においても修得しなければならない内容である。このため、都道府県においては、この内容を教員研修や校内研修により充実させている地域も非常に多い。そのような取組事例を積極的に紹介することも、各学校の組織としての力量を高めていくことにつながるのではないか。

○ 専門性について、学習指導要領が改訂され、個別の指導計画や個別の教育支援計画の作成・活用のための体制についても、学校種を超えた様々な関係機関と連携できる仕組みを整備するなどの検討が必要である。すべての教員が特別支援教育全般に関する専門性を高めていくためには、免許状や制度論を中心に添えながらも、全体を再構築しつつ、求められる専門性や専門性確保のための方策などをさらに検討していかなければならないのでないか。

(4) 事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)