資料3 子どもの徳育に関する懇談会「審議の概要」の骨子イメージと取りまとめに向けての検討事項例(論点整理)

はじめに

・ 懇談会設置の背景、趣旨

・「審議の概要」をとりまとめる趣旨
〔検討事項例〕
◆「審議の概要」は、誰に向けての報告・提言とするのか。
→ 各界・各関係者に向けた訴えか、行政向けの施策提言か。
→ メッセージは大人社会に向けてのみか、子ども向けにわかりやすいメッセージも盛り込むべきか。

◆ 「審議の概要」では、現在の徳育等をめぐる状況に対しての問題提起や課題の整理、今後の対応の在り方に関する基本的な方向性の提示等に主眼を置くものとしてよいか。
【参考】
家庭・学校・地域(大人)に向けたメッセージ形式の審議会答申の例
*「『新しい時代を拓く心を育てるために』-次世代を育てる心を失う危機-」(平成10年6月30日 中央教育審議会答申)

子どもに向けたメッセージの例
*福沢諭吉「ひびのおしえ」
  ※明治4年に福沢諭吉が2人の男児(6歳・4歳)に対して一日ごとに書き与えた家庭でのしつけや徳育に関する教訓集(「うそをつかない」、「天道さまを畏れ、これを敬い、その心に従いなさい」など)
*「『ふくしま子ども憲章』みんなで考えよう!大切にしたい7つの言葉」
  ※「命を大切にする」、「ありがとうの気持ちをわすれない」など6つの言葉と「自分で考えたこと」を書き加える7つめの言葉

1 徳育に対する基本的な認識

[時代・社会を超えて]

・通時的視点から(どの時代、どの社会においても徳育は行われてきたということ)
〔検討事項例〕
◆ どの時代にも、どの社会にもある徳育の普遍性について、どのように示すか。
→ 徳育の普遍性については、次のような観点から説明してはどうか。
* [徳育の機能面からの説明]
 どの社会にも、そこで共有される一定の行動様式(慣習)や規範があり、その継承を担ってきたのが徳育であること(その意味において、どの社会にもある普遍的な営みであること)
* [徳育の歴史についての説明]
 内容・形式を変えつつ、時代を超え、徳育が行われてきたという歴史が実在すること(その例示)。

・共時的視点から(諸外国及び我が国の徳育をめぐる近年の動向)
〔検討事項例〕
◆ 諸外国の徳育に関する近年の動向については、次のような捉えでよいか。
* 諸外国においても、教育が国家の重要課題と位置付け、各般の教育改革に取り組んでいる。
* 主要国においても、様々な観点から、徳育の強化が図られている。
【 諸外国の徳育に関する近年の動向例 】
 ・ 建国の精神の教育、人格教育やコミュニティ・サービス(ボランティア)の推進《アメリカ》
 ・ 学校における公民教育の必修化(従来からの宗教教育(必修)、人格・社会性・健康教育(準必修)に加え)《イギリス》
 ・ 学校における公民教育の強化、共和国の精神の伝授(共和国のシンボル(三色旗など)を教える)等《フランス》
 ・ 教科「徳育」における人格教育の理念の導入、道徳的問題解決の重視《韓国》
◆ 我が国の徳育に関する戦後の動向については、次のような捉えでよいか。
* 昭和33年の学習指導要領の改訂において、道徳教育が学校の教育課程に位置付けられ、その要となる「道徳の時間」が設けられたこと。
* 臨教審の設置(昭和59年)以降、明治以来の第三の教育改革が議論されるようになったこと。
* 中教審でも、「幼児期からの心の教育の在り方」についての審議が行われ、平成10年に答申を取りまとめていること。
* 平成18年には教育基本法が60年振りに改正され、これからの教育の新しい理念が定められたこと。さらに、これを受け、学校教育法において各学校段階の目的・目標規定が改正され、新しい学習指導要領が平成20・21年に告示されていること。

[徳育のとらえ方]

・「徳育」の語の意味
〔検討事項例〕
◆ 「徳育」を通じて育むべき「徳性」には、様々な要素が含まれ得るものであるが、「徳育」の語の意味については、次のように捉えてよいか。
         ~ その国、その時代の理想とする人間像を求めて行われる人格形成における要素

・徳育を通じて身に付けさせる資質・能力
〔検討事項例〕
◆ 徳育の機能・内容については、様々な捉え方があるが、どのような観点から捉えるか。
捉え方の例】
 [機能分類として]
  生活習慣の確立、社会性・人間関係能力の育成、規範意識の醸成、道徳的価値観の形成、自己の生き方の探求、情操の涵養 など
 [内容分類として]
  自己に関すること、他者とのかかわり関すること、集団・社会へのかかわりに関すること、自然や崇高なものへのかかわりに関すること
 [指導原理として]
  知的側面(知ること)、情意的側面(信じること・感じること)、行動実践的側面(行うこと)
   → 身に付けさせるべき「習慣」、「規範」、形成すべき「道徳的価値」とは具体的に何か、育むべき「情操」とはどのようなものか等にまで踏み込んで記述するか。
【参考】 教育基本法における「教育の目的」と「教育の目標」
 (教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
 (教育の目標)
第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。豊かな情操と道徳心、自主及び自律の精神、勤労を重んずる態度、正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神、に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
【参考】 新学習指導要領における道徳教育の「内容」
 → 別 紙

・社会的存在、自然・環境の中に生きる存在としての人間と徳育
〔検討事項例〕
◆ 徳育とは何かについて考える際には、「社会的存在としての人間」、「自然・環境の中に生きる存在としての人間」という視点が重要になるが、このような視点についても言及する必要はあるか。
→ 例えば、これまでの会議でも指摘された以下のような事項について盛り込んではどうか。
* 生まれたばかり子どもは、動物的本能や衝動、快と不快の感覚的欲望のみに従って行動するが、他の人間とのかかわり、社会の中での経験を通じて学習を重ね、私的なわがままの制限や自己抑制、他者との利益調整に基づく行動なども行えるようになる(自然児から社会的な存在としての人間へ)。
* 子どもは、発達に応じて、大人の権威に依存した道徳的価値判断から、徐々に、社会の規範を内面化し、自己の道徳的価値観を形成していき、やがては、自らの確立した道徳律をもって社会に対しても主体的に関わるようになる(他律から自律へ)。
* 個人は、社会における様々なかかわり中に生き、自らを取り巻く自然や環境とのつながりの中で生活するものである。よって、十全に自己実現を図るためにも、社会や自然・環境との調和が必要となる。

 ・知育・体育・食育との関係
〔検討事項例〕
◆ 徳育と、知育・体育・食育との関係についても、言及する必要はあるか。
→ 例えば、徳育と知育・体育・食育との関係について、次のような捉えでよいか。
* 「徳性」の涵養に当たっては、例えば、様々なきまりの存在や意義を知識として知ることも必要であり、知的側面を有するものであるので、徳育は、その対象において知育・体育・食育と重なり合う部分もあること。
* 論理的・合理的な説明だけであれば、知育・食育でもできるが、「わかっていてもそのとおりに行動できない」矛盾と葛藤に満ちた領域にこそ、徳育固有の領域があること。

2 現代の子どもの成長と徳育をめぐる今日的課題

○社会構造の変化と子どもの成長・徳育への影響
〔検討事項例〕
◆ 現代の子どもの成長と徳育をめぐっては、これまでの会議でも指摘されてきたように、基本的な問題認識として、次の2つのレベルの課題があるのではないか。
 1) 個々の大人のモラル、意識・自覚の問題
 2) 個々の大人のモラル等のみには帰し得ない大きな社会構造の問題
 → 大人社会のモラルの問題が大きいことを踏まえ、以下のような事項について、指摘・訴えを行うか。
 ・ 大人が教えなければならないことを、しっかりと子どもに教えておけば、子どもは社会の中で正しい視点を持って行動できるようなり、大人社会の問題に対しても的確な批判を行えるようになること。
 ・ 子どもの問題は大人社会の問題の投影であり、まずは大人自信が自らの行動を振り返り、社会全体のモラルを問い直す必要性があること。
 → 現代の子どもの成育環境において、かつての世代が当たり前に享受していた前提が失われていっている現実を見据え、子どもの徳育・成長に望ましからぬ影響を与えていると考えられる社会変化について、以下のように具体的に列挙していってはどうか。

[科学技術の進展を背景として]
 ・メディアの発達  など
〔検討事項例〕
◆ メディアの発達が子どもの成長に与える影響について、次のような捉えでよいか。
* ネット社会の進展が、1.子どもを巻き込む有害情報の問題に止まらず、2.匿名性の情報発信がもたらす問題、3.依存性の問題などと相まって、これまでにはなかった問題状況を生みだしている。
* とりわけ、様々な器機が、人々のコミュニケーションの形を変え、家族のありようにも影響を及ぼしている事態(自己中心的な人間関係の助長、家族の会話等の時間の喪失など)に至っている。
→ 特に、現代の子どもは、我々大人と異なり、生まれた直後からメディア環境に晒されて育つこととなるのであり、その影響については、十分な注意を払っていく必要あるとの訴えも必要か。

[家族・地域社会等の変容を背景として]
 ・直接体験の機会の減少 など
〔検討事項例〕
◆ 家族・地域社会等の変容の影響について、次のような捉えでよいか。
* 核家族化や少子化の影響により、子ども同士の切磋琢磨や、祖父母から学ぶ等の機会が少なくなっている。
* 地域社会の変容により、地縁的な連帯が弱まり、人間関係の希薄化が進むとともに、子どもの生活体験・自然体験の機会が失われていること。
* 都市化の進展により、子どもの生活スタイルが、生き物としての自然から遊離してしまっている。

[社会思想等の潮流を背景として]
 ・個人主義の進展、価値観の多様化、社会規範の弱体化・流動化、「自分さえ良ければ」の風潮など
〔検討事項例〕
◆ 社会思想等の潮流を背景とした影響について、次のような捉えでよいか。
* 個人主義の風潮が強く、「公」に対する意識が希薄化し、関心の範囲が、自己の周囲のみへと縮小する傾向が見られる。
* 伝統的な価値観が揺らぎ、経済的な価値・利便性や効率性のみを追求する傾向や自己中心的な行動、刹那的な行動等が増加している。
* 以上を背景として、子どものしつけや徳育に対する大人たちの自信が喪失している。

○困難を抱える子どもの存在
〔検討事項例〕
◆ 例えば、児童虐待を受けている子どものように、特に大きな問題を抱える家庭環境に育ち、成長する上での基本的な環境さえ奪われている子どももいるが、これらの子どもへの対応については、「審議の概要」において、どう位置付けるか。
→ 本懇談会においては、「徳育」・「子育て」一般の在り方等を主な検討テーマとするが、このような子どもに対する特別の支援や、このような問題の予防のための親等への対応が必要であることについても、言及することが適当でないか。

○社会全体で、いま直ちに子どもの徳育に取り組む必要性
〔検討事項例〕
◆ 以上を踏まえ、社会全体による徳育の推進の必要性について、強いメッセージを発することとすることでよいか。
→ 例えば、次のような危機意識を、改めて表明することとしてはどうか。
* 「子どもを大切に」と声高に叫ぶ裏で、社会の実態は「大人中心」になっている。
* 大人が子どもに対し、社会のきまりや、社会の一員としての役割を教え、価値を伝えるといった、自然かつ基本的な営み、すなわち徳育の営みが見失われている。

3 子どもの各発達段階ごとの特徴と重視すべき課題

 ○子どもの発達の視点

・子どもの成長過程における一定の発達課題の存在

・現代の子どもの発達(つまずき)の特徴を踏まえた対応の必要性

(1) 乳幼児期

〔検討事項例〕
◆ 乳幼児期については、1)のような発達特性があり、現代的特徴として2)のような状況が指摘されていることも踏まえ、その成育をめぐり特に重視すべき課題として、3)に掲げる課題が挙げられるとの認識でよいか。
1)乳幼児期における発達の特性
・ 特定の大人との間に情緒的な絆(愛着)を形成し、そこで育まれる安心感や信頼感を基にして、人間関係を広げ、外部への探索行動を行う。
・ 食事、排泄、衣服の着脱などの自立が可能となるとともに、食事、睡眠等の生活リズムが定着しやすい時期でもある。
・ 幼児期の特徴でもある「自己中心性」があるが、生活の繰り返しの中で、徐々に世界に対する認知を広げ、他者の存在・視点にも次第に気付き始める。遊びを中心とした友達とのかかわりあいを通じて、道徳性や社会性の原型といえるものを獲得していく。
2)現代的特徴として指摘される状況
・ 親子の関係をめぐり、多様な問題が指摘されている(子育てへの無関心、子どもの放任、過保護・甘やかせすぎ、過干渉、感情的な子育て、虐待など)。
・ しつけの不在から、基本的な生活習慣・生活リズムの乱れが見られる。
・ 少子化の影響等もあり、地域の中での子ども同士のかかわりが減少している。
3)重視すべき課題
・ 愛着の形成(人に対する基本的信頼感の獲得)
・ 基本的生活習慣の形成・生活リズムの確立
・ 道徳性・社会性の芽生え(遊び等を通じた「子ども社会」への参入)

 (2) 学童期

[小学校低学年]
〔検討事項例〕
◆ 小学校低学年の時期については、1)のような発達特性があり、現代的特徴として2)のような状況が指摘されていることも踏まえ、その成育をめぐり特に重視すべき課題として、3)に掲げる課題が挙げられるとの認識でよいか。
1)小学校低学年の時期における発達の特性
・ 大人が「してはいけない」と言うことは、素直に「してはいけない」と思うなど、教師や保護者の言いつけに従いやすい。よい・悪いの判断を、「なぜそれをしたか(行為の動機)」よりも「それをしてどうなったか(行為の結果)」に基づいて行う傾向が強いが、してよいことと・悪いことについての理解はできるようになる。
・ 活動の範囲が広がり、言葉と認識の力も高まって、ある程度時間と空間を超えた見通しが持てるようになり、自然等への関心も増す。
2)現代的特徴として指摘される状況
・ 社会規範が流動化し、良いこと・悪いことについて、親や教師、地域の大人が自信を持って指導できなくなっている。子どもが基本的なしつけを受けないままに入学し、集団生活のスタート時点で問題が顕在化するケースも多くなっている。
3)重視すべき課題
・ 善悪の判断や規範意識に関する基本的な尺度・枠組みの形成
  -「人間としてしてはならないこと・しなければならないこと」に対する知識と感性の涵養
  - 集団や社会のきまりを守ろうとする態度の育成
・ 自然や美しいものに感動する心などの育成(情操の涵養)

[小学校高学年]
〔検討事項例〕
◆ 小学校高学年の時期については、1)のような発達特性があり、現代的特徴として2)のような状況が指摘されていることも踏まえ、その成育をめぐり特に重視すべき課題として、3)に掲げる課題が挙げられるとの認識でよいか。
1)小学校高学年の時期における発達の特性
・ 物事をある程度抽象化して認識することが徐々に可能となり、その能力が増す。自分のことも客観的に捉えられるようになるが、その能力の発達には個人差も大きい(9歳の壁)。
・ 身体的にも知的・社会的にも成長し、有能感を持つ時期であるが、その間につまずきのあった子どもは、劣等感を抱くようにもなる。
・ 徐々に集団の規則や遊びのきまりの意義を理解して、集団目標の達成に主体的に関わったり、共同作業を行ったり、自分たちできまりを作り守ろうとしたりすることもできるようになる。ギャングエイジを迎え、学級においては、幾つかの閉鎖的な仲間集団ができる。
2)現代的特徴として指摘される状
・子どもの成育環境の中で、メディアを通じた疑似体験・間接体験が多くを占め、人・モノ・実社会に直に触れる直接体験の機会が減少している。
・我が国の子どもについては、他国と比べ自尊感情に乏しい傾向が強いとの指摘もある。
3)重視すべき課題
・抽象的思考への適応、、「他人が感じること・考えること」を思いやって行動する能力の発達(←→9歳の壁)
・自尊感情の育成、他者との関わり、集団の中における協力等に係る態度の育成
  - 自他の尊重、他者への共感(思いやり)等の意識の涵養
  - 集団における役割・責任の自覚と実践
・現実世界への興味・関心、意欲の涵養

(3) 青年前期 [中学校]

〔検討事項例〕
◆ 青年前期については、1)のような発達特性があり、現代的特徴として2)のような状況が指摘されていることも踏まえ、その成育をめぐり特に重視すべき課題として、3)に掲げる課題が挙げられるとの認識でよいか。
1)青年前期における発達の特性
・ 内省的傾向が顕著になって自意識も一層強まる。自意識と実態との差に悩む時期でもある。様々な葛藤や経験の中で、自分の生き方を模索するようになる。
・ 親や教師の存在は相対的に小さくなり、特定の仲間集団の中に安息を見出すようになる。広く他者と意思疎通を図ることには意識が向かわない傾向もある。
・ 具体的な事柄に関して首尾一貫した思考が可能であるだけでなく、抽象的な事柄についてもかなり深い思索ができるようになり、多くの人々からなる社会の存在を認識し、個人と社会との関係等についても理解できるようになる。
2)現代的特徴として指摘される状況
・ 「思春期」の荒れとして問題行動等が表出しやすいのもこの時期であり、不登校になる子どもの率も近年上昇している。これらの問題の背景に、社会性や人間関係能力が育っていないことがあるとも指摘されており、そのことが、さらに青年期全般における「引きこもり」等の問題にもつながっていく。
3)重視すべき課題
・ 自己についての思索
・ 社会の中で自立して生きるために必要な技術(知恵と態度)の向上
・ 法やきまりの意義の理解 

(4) 青年中期 [高等学校]

〔検討事項例〕
◆ 青年前期については、1)のような発達特性があり、現代的特徴として2)のような状況が指摘されていることも踏まえ、その成育をめぐり特に重視すべき課題として、3)に掲げる課題が挙げられるとの認識でよいか。
1)青年中期における発達の特性
・ 生活空間が飛躍的に広がり、それに伴って情報も生活体験も格段に拡充する時期である。
・ 自分は大人の社会でどのように生きるのかという課題に出会い、真剣に模索し始める時期であるが、真剣に考えることを放棄して、目の前の楽しさだけを追い求める者もいる。
2) 現代的特徴として指摘される状況
・ 近年においては、将来に展望を持たない刹那主義的な傾向の若者が増えている、小さな仲間集団の中では濃密な人間関係を持つが、その外側には無関心となる傾向が強くなっている(社会や公共に対する意識・関心の低下)等の指摘も。
3)重視すべき課題
・ 自らの生き方についての選択・進路の決定
・ 社会的に責任のある行動の遂行

 4 徳育の充実等に向けて  

(1) 今日的課題を踏まえたこれからの徳育等の在り方

〔検討事項例〕
◆ 今日的課題を踏まえ、これからの徳育等においては、何を、どの時期に、どのような方法で教え・身に付けさせていくことが必要か。
参考】 徳育を通じて教え・身に付けさせるべき内容(これまでの委員意見から)
・自らを律すること(精神の鍛錬)
・教えられたルールに従うこと(親を尊敬し、目上の人の言うことに耳を傾けること)
・規範の意識 (してはならないこと・してよいこと・しなければならないことの認識)
・ルール以前の「してはならないこと」、善悪に対する知識と感性、人としての基本的なモラル
・生活習慣・社会習慣
・うまく生きること
・相手を思いやれる想像力、他者と共感できる力、感謝する気持ち
・社会性、相手との関係を調整していく力、コミュニケーション能力
・情報倫理、メディアとの接し方・使い方についての新しい常識
・マナー・公徳心
・社会的存在としての自己認識(アイデンティティ)、市民性、共同性・公共性への志向、社会的信頼

〔検討事項例〕
◆ 発達段階に応じた徳育等の充実を図る基本的な方向性は、どのようなものか。
→ 例えば、次のような観点を示すことについては、どうか。
【観点例】
 * 乳幼児期からの基本的生活習慣の形成
 * 幼児期から学童前期における「人間としてしてはならないこと・しなければならないこと」についての重点的指導、「心に響く指導」の継続的実施など、基本的な道徳心の醸成
 * 学童前期からの社会や集団のマナー・ルールに関する繰り返しの指導、発達段階に応じた法やきまりの意義の理解など、規範意識の確立・市民性の涵養
 * 幼児期からの多様な体験を通じた社会性の涵養、発達段階に応じた人間関係能力の学習
 * 学童期からの自己有用感の育成、思春期・青年期以降における自らの生き方・在り方を選択する力の重点的な育成
 * 各発達段階にわたる豊かな情操の涵養

(2) 家庭・学校・地域の役割と社会総がかりによる徳育の推進等

1) 家庭・学校・地域の役割
 ・役割分担についての考え方
〔検討事項例〕
◆ 家庭・学校・地域の役割分担として、それぞれの特性を踏まえ、それぞれが何を担うべきか。
→ 例えば、家庭・学校・地域のもつ次のような特性を踏まえる必要があるのではないか。
[家 庭]
  - 特定の大人との愛着形成が重要となる乳児期、基本的な生活習慣の形成が進む幼児期の子育てを主として担うこと
  - 生活体験の場そのものであること
[学 校]
  - 同年齢・異年齢の子どもによる集団生活が営まれる場であること
  -  体系的・系統的なカリキュラムに沿った組織的な教育活動が可能であること
[地 域]
  -  多様な大人との交流の機会を提供し得ること
  -  自然体験、社会体験等の多様な体験の場を提供し得ること

2) 社会総がかりによる徳育の推進等のために講ずべき方策
〔検討事項例〕
◆ 社会総がかりによる徳育の推進等のために、どのような有効な方策が考えられるか。
【講ずべき方策例】
*親子の健やかな成長のための家庭支援と家庭教育の充実
 ・一人一人の子どもの適切な理解とサポート、孤立しがちな親等への適切な支援
 ・家庭における基本的なルールづくり(親と子の約束)の推奨
*学校における道徳教育等の充実
 ・教材の充実
 ・校内における道徳教育推進体制の充実
 ・「道徳の時間」の指導の改善・充実
 ・多様な学習活動の展開
*地域の教育力の再生
 ・地域ぐるみで子どもを育てる環境づくり
*子どもの多様な活動の場・体験の機会の整備
 ・子どもと大人の交流の場、ボランティア等の地域活動の場の整備
 ・親子の共通体験、自然体験、社会体験等の体験活動の機会の整備
 ・読書活動の推進
*メディア社会における課題への対応
 ・子どもとメディアとの望ましい関係づくり
 ・情報モラル教育の推進
*社会全体で子どもの成長を支える体制づくり
 ・関係機関の連携
 ・子育て・徳育への社会全体の関心の喚起

おわりに

・今後の検討課題など

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課