資料2 小学校就学前の無償化に関する主な政策事例について

国により、無償化の対象となる年齢・時間、義務教育化の有無、行政の義務などに違いが見られる。

  主なポイント
フランス 全ての3~5歳児が無償
  • 主に3~5歳児を対象とした教育施設である保育学校は、無償の公立施設が99パーセント。
  • 義務教育ではないが、無償の、全ての希望する家庭に保障された教育。自治体に設置義務有り。
イギリス 施設類型を問わず無償
  • 1998年までに4歳児、2004年までに3歳児の無償化を実施。
  • 就学前予算が大幅に拡充されるとともに、2006年の子育て法制定により、自治体の提供義務などの就学前の法的枠組みを整備。
  • 就学前の2年間、親が希望すれば、週12.5時間(2.5時間かける5日)、年38週の幼児教育を無償で受けられる。
  • 公私立の別や施設類型を問わず、条件を満たしたものであれば、人数分の経費を保育事業者に支給。(例;保育学校、就学前学級、プレイグループ、認定保育ママ、チルドレンセンター等)
  • 無償化の条件として、保育事業者は、自治体の管理、共通カリキュラムの実施、教育水準局(Ofsted)の定期的な監査の受入れが必要
(・1997年からの政府主導の大規模追跡研究(EPPE)により、就学前教育の効果が検証されてきている。)
アメリカ 小学校就学前1年(5歳児)が無償
  • 州政府や学区教育委員会による就学前教育プログラムが実施されており、主に5歳児を対象とした公立のキンダーガーテンは無償。一部の州では義務化されている。
低所得層への教育支援
  • 主に4歳児以下の低所得層を対象とする連邦政府による保育事業(ヘッドスタート)がある。
韓国 低所得層から段階的に無償化
  • 保育所について規定する乳幼児保育法が1991年よりあったが、2004年の幼稚園単独法である幼児教育法の制定により、私立幼稚園に対する支援の法的根拠が確立。
  • 2004年に幼保制度が併存した形で、就学前1年(5歳児)無償の法定化を達成、低所得層から段階的に実施
日本(地方公共団体) 多子世帯の第3子以降等の無償化
  • 第3子以降の保育料を無償化(多数の自治体で実施)
全ての4~5歳児を無償化
  • 4歳児と5歳児の幼保の保育料を無償化(福島県田村市)
公私立幼稚園の保育料格差に対する補助
  • 私立幼稚園に通う幼児に公立との差額相当支給(江戸川区)
その他
  • 第1子以降に半額補助(秋田県)
  • 私立幼稚園に通う3歳児に一律年額23,000円(大阪府)
  • (注)自治体により所得制限や同時就園条件を設けている場合がある。

[参考]※「世界の幼児教育・保育改革と学力」(明石書店)、「アジアの就学前教育」(明石書店)ほか

(参考1)諸外国の主な関係法令について

フランス「教育法典」 抄訳

第1編 教育の一般原則

第1章 教育を受ける権利
第3節 就学年齢未満の子どもに関する規定
  • 第L.113-1条 幼児学級又は幼稚園は、農村部において都市部におけると同様に、義務教育の年齢に達しない子どもを入学させる。
  • 2.家庭が申請を行うときは、子どもはすべて、3歳で住所に可能な限り近い幼稚園又は幼児学級に受け入れることができなければならない。
  • 3.2歳の子どもの受け入れは、都市地域、農村地域若しくは山岳地域又は海外地域圏のいずれにおいても、社会的に恵まれない環境に置かれる幼稚園又は幼児学級を優先して拡大する。
第3章 就学の義務及び無償制
第1節 就学の義務
  • 第L.131-1条 6歳以上16歳未満のフランス人及び外国人の男女両性の子どもに関して、教育は義務である。
第2節 学校における公教育の無償制
  • 第L.132-1条幼稚園及び幼児学級において行う公教育並びに第L.131-1条に定める義務教育の期間に行う公教育は、無償とする。
  • 第L.132-1条 中等教育を行う公立のリセ及びコレージュの生徒並びに中等段階の公立学校におけるグランゼコール準備級及び高等教育準備級の生徒に関して、教育は無償とする。
第4章 公教育の宗教的中立性
  • 第L.141-1条 1958年10月4日付け憲法前文で追認した1946年10月27日付け憲法前文第13項に述べるとおり、「国は、子ども及び成人の教育、訓練及び文化への平等な接近を保障する。すべての教育段階で無償かつ宗教的に中立な公教育を組織することは、国の義務である」。
第5章 教育の自由
  • 第L.151-3条 就学前段階、初等段階及び中等段階の学校は、公立又は私立とすることができる。
  • 2.公立学校は、国、地域圏、県及び市町村が設立及び維持する。
  • 3.私立学校は、個人又は非営利社団が設立及び維持する。

第3編 学校教育の組織

第2章 就学前教育及び初等教育
  • 第L.321-2条 幼児学級及び幼稚園において行う教育は、読み書きの早期学習を必修とせず、子どもの人格の目覚めを促進する。この教育は、学習困難を予防し、障害を早期に知り、不平等を補うことを目指す。幼稚園の教育的使命は、知識の基礎的道具への最初の接近を含み、子どもに小学校において行う基本的学習の準備をさせ、かつ、子どもに社会生活の原則を教えることとする。
  • 2.国は、この教育活動に必要な教員を配置する。

[参考]教育調査第136集「フランスの教育基本法」(平成19年3月文部科学省)

イギリス「2006年子育て法」(Childcare Act 2006)

Part 1 - General functions of local authority: England

7 Duty to secure prescribed early years provision free of charge
  • (1) An English local authority must secure that early years provision of a prescribed description is available free of charge for such periods as may be prescribed for each young child in their area who-
    • (a)has attained such age as may be prescribed, but
    • (b)is under compulsory school age.

韓国

「幼児教育法」(2004年制定) 抄訳

  • 第24条(無償教育) 初等学校就学直前一年の幼児教育は無償とし、大統領令が定めるところによって順次実施する
  • 2~3 略

「乳幼児保育法」(2004年改正) 抄訳

  • 第35条(無償保育の特例) 初等学校就学前の一年の幼児及び障害児に対する保育は無償とし、大統領令が定めるところにより順次的に実施する
  • 2~3 略

参考2 イギリスにおける近年の就園率の状況

ポイント

  • 3歳児の無償化が進められた時期において、就園率が急激に上昇している。
  • 特に3歳児について、一定の基準をクリアした無償化対象事業者への就園が拡大している。
  1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
3歳 合計   86 90 90 98 102 102 100 100
(うち無償化対象施設への就園)   44 59 71 87 93 96 96 96
4歳 合計 100 100 101 101 103 105 104 104 103
(うち無償化対象施設への就園)   98 98 98 101 101 101 100 100
全体 合計   93 95 96 101 103 103 102 101
(うち無償化対象施設への就園)   71 78 85 94 97 98 98 98

[出典]「Provision for Children under five Years of Age in England」(英国DCSF)

参考3 主要国の合計特殊出生率

日本 1.22
アメリカ 2.10
イギリス 1.66
ドイツ 1.41
フランス 1.98
韓国 1.29
スウェーデン 1.67
フィンランド 1.73

各国とも2008年推定値
[出典]「The World Factbook」(米国CIA)

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初等中等教育局幼児教育課