資料6 これまでの主な意見の整理(案)

これまでの主な意見を基に、事務局において意見を整理したもの。

1.無償化の意義及び必要性

  • 国際的にみて、日本の幼児教育に対する支出は低いのではないか。
  • 幼児教育は社会全体で取り組むべきものであり、無償化についても、国全体として一定の質が確保されるシステムを整備することが必要ではないか。
  • 日本では、高齢者に対する社会的給付と比較して、子どもへの社会的給付は少ないのではないか。
  • アメリカでは、幼児教育の経済的効果は高いという研究成果がある。日本でも、幼児教育の効果の研究や調査が必要ではないか。

2.無償化の目的

  • 無償化の目的は、国家・社会を維持する人材を育成するための幼児教育の振興か、子育てをする保護者の負担を軽減するための少子化対策か(幼児教育の振興を目的とする場合と少子化対策を目的とする場合とでは、無償化の対象が異なるのではないか)。
  • 多くの国では、幼稚園及び保育所を文部科学省が所管しており、幼稚園及び保育所は、社会福祉政策ではなく、教育という位置づけとなっているのではないか。
  • 国際的にみると、重なっている年齢を複数の役所が管轄するのは日本の特殊事情であり、これが幼児教育の無償化を難しくしているのではないか。
  • 無償化は、保育サービス(少子化対策)という捉え方であれば、事業主拠出を含めた財源となり、幼児教育という捉え方であれば税財源ではないか。

3.無償化の対象(対象施設、対象年齢及び対象者の所得)

(1)幼児教育の振興を目的とする場合

  • (幼児教育の振興を目的とする場合)幼児教育の範囲を明確にすべきではないか。
  • 幼児教育の範囲については、中教審の答申では、家庭で育つ子を含め全ての就学前児童となっている一方、学校教育法では、3歳から就学前までが幼稚園での教育の対象となっている。
  • 無償化の対象とする幼児教育とは、施設教育・集団による教育すべきではないか。
  • 集団による教育とした場合には、まずは3歳から5歳を対象とすべきではないか。
  • 保育所の場合、保育の中に養護と教育が一体となっていることから、保育所を無償化の対象とする場合には、年齢制限すべきではないのではないか。無償化を優先すべき年齢を考えるとすべきではないか。また、4時間など時間で切り分けることは、不可能ではないか。
  • 日本においては、幼稚園と保育所の就園率が3歳児で75パーセント、4歳以上児では95パーセントである状況を考えると、まずは4,5歳児を優先すべきではないか。
  • 早く教育を始めると投資効果があがるのであれば、3歳からとすることが重要ではないか。
  • 福祉政策ではなく、教育として、機会均等、平等を目指すべきではないか。
  • 対象とする所得階層については、教育の一環として考えると、対象を限定すべきではないのではないか。
  • 財源が限られている場合には、費用対効果を勘案してターゲットを絞る、又は段階実施とすべきではないか。

(2)少子化対策を目的とする場合

  • (少子化対策を目的とした上で)無償化の範囲については、在宅サービス、通園施設、養護施設、無認可施設など、子どもの生活する場であれば、教育・療育を問わず、子育て全般について、無償化の対象とすべきではないか。
  • 年齢を問わず、広く就学前の児童を無償化の対象とすべきではないか。
  • 女性が働きやすくなることにより、日本全体の生産性が上がる効果があるのではないか。
  • 所得階層別とするか否かは、(福祉政策としての)所得の再分配システムの一環として考えるかどうか。所得の再分配政策については、経済学的には、現金給付の方が効率的であり、現物給付とすることは、特別のメリットがないと難しいのではないか。

4.無償化の条件

(1)義務化の有無

  • 義務化は、外部性が強い教育であり、義務教育によって日本人全体が得をすることが大きいことから、無償化されている。無償化したときに、教育を受けさせない親が出てきたときに、そのデメリットが大きい場合には、義務化すべきではないか。
  • 現在の義務教育は教科書に基づく教育である一方、幼児教育は異なるが、既に90パーセントが参加している中で、義務教育になじむのか。
  • 義務教育とすることと、教育の内容は異なっており、義務教育とした上で、発達段階に応じた教育を行えば良いのではないか。
  • 義務化としたときには、保育所の扱いをどうするかが難しい問題ではないか。また、家庭教育を選択する子どもをどうするか。
  • 日本では、私学の自主性等の問題など外国とは異なる社会文化の状況があり、その違いを踏まえるべきではないか。

(2)教育の質の確保

  • 教育の質が悪いと効果があがらないので、無償化は質の確保と併せて議論すべきではないか。
    質の確保のうち、条件・構造の質が最低基準であるが、それだけでは不十分ではないか。
  • 保育所においては、自己評価の共通基準は、保育所保育指針であり、幼稚園では幼稚園教育要領ではないか。幼稚園教育要領等は告示されており、国は、当事者評価及び当事者評価を基礎とした第三者評価により、当事者が考えることを援助する仕組みを設けるべきではないか。
  • 国として質を確保する場合には、比較的客観的な指標とせざるを得ない。同時に個別の園のサポートと評価を組み合わせるとすれば義務ではなく、自己改善をサポートする機関に依頼する仕組みをつくるということではないか。
  • 質の担保といったときに、行政が基準を定め、公的関与を行うといった仕組みとなるのではないか。
  • 質の担保がされないことを理由に、認可外施設を対象外とすると、認可外施設の子どもがより厳しい状況となるのではないか。
  • 認可外も対象とすべきという議論もあるが、質の確保の観点からは、基準を満たすきちっとした施設に援助するという考え方が必要ではないか。

5.その他(国と地方公共団体の役割など)

  • 幼稚園と市町村の関係を強化する必要があるのではないか。(保育所は児童福祉法上、市町村に保育サービスを提供する義務があるのに、幼稚園に関しては市町村に何ら規定がない。私立幼稚園は都道府県の所管とされているが、市町村の関与がないため、住民に近いレベルで幼児教育を総合的にみることができていない。保育所のように、市町村に対して幼児教育の提供義務を課す必要があるのではないか。)
  • 就園奨励費を出していない市町村があるが、問題ではないか。(幼児の就学機会に地域格差があっては不平等であり、例えば、就園奨励費の法定化を検討するなどの必要があるのではないか。)
  • 諸外国では、無償化については、私立学校であったとしても、公的な教育の一部分を担っていることから、対象としている。
  • 幼稚園の専門性を求めるのであれば、職員の待遇改善が必要ではないか。他方、経営の観点からは、長期間勤務の職員が多くなると、経営上厳しくなる。
  • 無償化の対象経費としては、人件費など教育の根幹となる部分とするべきではないか。(例えばクレヨンなど個人の私物になるようなものや、スクールバスなど個人の事情によるものは対象から外すべきではないか。)
  • 幼児教育の無償化は将来に対する先行投資であるが、その実現のためには、幼児教育の重要性を国民に理解していただくことが不可欠であり、啓発に取り組むことが重要ではないか

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