今後の幼児教育の振興方策に関する研究会(第1回) 議事録

1.日時

平成20年5月20日(火曜日) 17時~19時

2.場所

文部科学省6階 6F1会議室

3.出席者

委員

 無藤座長、稲毛委員、岩立委員、岩淵委員、柏女委員、佐藤委員、森上委員(欠席:秋田委員、大竹委員)

文部科学省

 金森局長、布村審議官、田河幼児教育課長、大谷幼児教育企画官

オブザーバー

 厚生労働省杉原保育課長補佐

4.議事録

  1. 金森局長挨拶、委員の紹介、事務局の紹介が行われた。
  2. 議事非公開(傍聴者退出)で、委員の互選により無藤委員が座長に選任された。座長から、秋田委員を副座長に指名したい旨の発言があったが、秋田委員欠席のため後ほど本人の了解をとって指名することで了解された。また、会議の公開の取扱いについては資料1の通りとすることで了解された
  3. 再び議事公開(傍聴者入室)となり、事務局より、資料2,3に基づき本研究会の趣旨、論点等について説明が行われた。次回以降、資料3の論点に示された事項に沿って、事務局及び委員による提出資料やヒアリングにより議論を進めていくことで了解された。
  4. 幼児教育の現状等について、資料4に沿って事務局から説明が行われた後、以下のやりとりがあった。

【委員】
 江戸川区は人口は67万人であり23区では4番目。一方、小学校就学前の子どもは3万9千人で23区の中では1番。18歳までとしても1番多い。昭和40年代の終わりぐらいから、私学にいろいろやってもらいながら、そこに助成をしていくことによって、公立幼稚園、私立幼稚園のどちらも選べるように、親の経済的負担軽減を手厚く取り込んできた。これから先、取組みについてお話させていただく機会もあれば、一般的かどうかはともかく、我々はこういうふうにやってきたということをお話しさせていただきたい。

【委員】
 保育者の質、保育の質の確保に一番興味がある。無償化すれば出生率が上がるのかといったことには疑問があり、無償化と同時に保育・教育の質をいかに確保していくのかということを同時に議論していかないといけない。アメリカの公立小学校のキンダークラスを見させていただいた。読解も算数も最終的にワークシートに行く部分は子どもはついて行きにくいだろうなと感じたが、教育の質は良く、先生の技量は優れていると思った。そこの公立のキンダークラスは多くの人種を抱えているが白人はほとんどいない。近隣の白人の多くは私立に行っていた。無償化して進めていく中でも、いろいろ総合的に検討していく必要がある。
 また、実証的な研究が必要であると思う。質という点で、幼児教育は実証的に示しにくいということはあるが、いろんな変数を検討しながら、日本でもできればいいと感じている。そんなところに興味がある。このような議論ができることに非常に期待と希望を感じている。

【委員】
 これまで20年くらい少子化対策に取り組んできた。いろんな審議会などに参加しているが、なぜか全ての会議はだいたいゼロから始まって、ある程度の到達点に達して報告書を取りまとめるとそれで終わりということになり、だいたい次からはまたゼロから始まることになる。
 そういった中で、この会議は今までになかった角度から別の話題を中心に考えられるので、新鮮な気持ちでいる。私の立場としては、少子化対策の中での位置づけというものがやはり念頭にある。経済的な負担で言うと、教育費の負担は重くなっており、大学生の仕送りも細ってきているようだが、世界の中でも韓国に次ぐくらいに教育費の公的負担が少ないのではないかと思う。当然ながら、各国の場合も財源をどうしているのかということを入れていただきたい。なお、幼児教育については各政党が選挙公約や提言などを出しているので、そうした内容についても報告してほしい。
 もう一つ、今回のこの研究会についても財源その他の問題がある。厚労省では「保育に欠ける」という規定の見直しを検討しており、その影響を懸念されている方もおられるかもしれないが、保育を含めた子育てサービスが不足しており、待機児童がたくさんいる状態である。本来は総掛かりで取り組むべき喫緊の課題である。ここは些末なことを抜きにして、小学校入学前の教育費を共通の課題として軽減していくということが一つの大きなねらいであるので、スクラムを組んでやっていただきたいというのがお願いである。

【委員】
 幼児教育の無償化は、年齢やサービスの類型、子どもの状態、保育時間といった問題で分断されることがないような仕組みを考えたい。就学前の子どもがどのような場所にいるのかと考えれば、幼稚園や保育所が多いわけだが、特別支援学校の幼稚部もあるし、あるいは通園施設や入所型の施設、社会的養護の場である児童福祉施設や乳児院といった場所でも子どもたちは生活している。また、家庭的保育事業のなかでも、「幼児教育」ではないかもしれないが、子どもたちが「幼児期の教育」を受けている。全ての子どもという観点では、いろんな場にいる子どもの保育をどう保障していくのか、そこを考えていきたいと思っている。
 今回は幼児教育の振興方策ということだが、そこが幼児教育ということなのか、「幼児期の教育」なのか、そういう意味では教育の定義といった部分にも関心がある。さらに、先程の事務局の報告のなかに、就学前教育に対する投資が将来の貧困を防止するという一面があるという話があった。大切だとは思うが、子どもたちの中には障害を持った子どもなど経済性のみでは計れない視点がある。そういった子どもたちにも幼児期の教育を保障していく、そういった視点に立って、無償化という議論を考えていかないといけないのではないかと考えている。そんな視点から、この研究会に関わりたいと考えている。

【委員】
 高知県34市町村のうち、9市町村が教育委員会に行政窓口を一本化した。その中には、保育所しかないという市町村も教育委員会で所管している。高知県は保育所が多いが、幼保支援課に来て、現場にいたときにこうあって欲しいと考えていたことを施策にしていこうと考えた。
 まず、課の方針の1点目は、保育所、幼稚園や市町村が制度の違いを超えて、就学前の保育・教育の充実が図れるよう支援をしていこうということである。2点目は子どもの育ちを危惧していたので、乳幼児期の子どもに生きる力の基礎を身につけさせたい、そのためには、子どもがどこにいても質の高い保育・教育を提供したいと考えた。3点目は、保育所、認可外保育施設も所管しているので、県民のニーズに応じた保育サービスの充実を図っていこうということである、これら3点の方針で取り組んでいる。
 現在、一番力を入れていることは、保育士・幼稚園教諭の資質・専門性の向上である。そのために、平成17年度からは保育士と幼稚園教諭が対等に研修を受けられるようにするとともに、新採、5年、10年、15年、主任・教頭、所長・園長といった学校の先生のような年次基本研修を整備し、教育センターで集合研修として行っている。幼保支援課からは、保育現場に指導主事が出向き、幼稚園教育要領や保育所保育指針の理解が深まるよう支援を行っている。また、小学校に円滑に接続させることが課題となっているので、現在、保・幼・小連携推進モデル事業を3年計画で取り組んでいる。
 このほか先程指摘があったが、子育て親育て支援ということで、昨年から子育て支援アドバイザーを保育所、幼稚園や地域子育て支援センターに派遣して、親が親として育っていくために大切なことを周知している。
 子どもがよりよく育ち、将来の県を担い、日本を背負っていける子どもを育てていくために、試行錯誤しながら取り組んでいるところである。

【委員】
 昔、欧州の幼児教育の視察に行ったが、その時の状況と今の状況では今昔の感がある。当時は、イギリスは、子どもが生まれたらすぐにナースリースクールを予約しないと入れないというぐらい、幼稚園に入れない状況があった。そのかわり、プレイグループなんかがたくさん溢れていたが、幼稚園やデイケアはほとんど無い状態であった。
 保育者養成に関わっており、四十数年やったと思っているが、当時、全国の幼稚園や保育所の大会に呼んでもらったが、知事や市長は必ず幼児教育は人間形成の基礎を培う重要なものだ、三つ子の魂百までだから大事にしたいとおっしゃる。しかしおっしゃるものの、前向き行動は全くなかった。ただしそれは仕方がない。当時はいまほど危機的な状況ではなく、財源の問題もあるし、さらに行動計画などのどういうふうにそれを実現していくかという戦略がなかったということが大きいだろう。今回、そういうことをこの場で議論できるなら、かなり前向きなのだろうと思っている。
 私も無償化だけではだめだと思っている。これはアメリカはじめ様々なところの追跡調査を見ても分かるように、質が悪いと全く効果が上がらない。だから、質の議論と一緒に行わないとだめである。質とは何かと言えば、情動の話が出ていたが、アメリカなどのデータを見ても、文字を覚えるなど認知的なものは、どんなやり方でも教えればだいたいできる。日本でも漢字を幼児に教えるとこんなに覚えたというものがあるが大したことではない。しかし、人間関係だとか、情動的な部分は、質の高い幼児教育でないと養えないといったデータが出ている。そういう研究が日本で行われると良いと思うが、日本でも大阪レポートと、兵庫レポートがでているが、あの中には幼児教育の視点が入っておらず、どちらかといえば子育ての視点である。
 沖縄は5歳児は義務化はしていないが義務化と同じ状態。保育所に行っていても、5歳児になると幼稚園に行くという。義務教育だと親が思っている。また、いまの国際連合になる前の国際連盟の時代に、ユネスコの前身の国際公教育会議が開かれ、各国の文部省に対して、幼児教育について勧告している。幼児教育は全員に受けさせるのが望ましいが、義務教育化することには疑義があると書いてある。今後そういうことも含め議論されるだろう。
 これまで幼児教育が大事だと言いながら、実は大事にされてこなかった。スローガンとしては言われてきたが。ここで具体的な行動計画や戦略を立てるということによって、包括的に議論できるといいと思う。

【委員】
 親の保育料負担に関する調査がいくつかあるが、特に私立幼稚園に子どもを入れている場合、かなりの所得格差によって教育費の支出具合が違う。江戸川区は例外だと思うが、私立幼稚園は2万円~2万5千円を出すわけで、共働きでフルタイムという家庭の子どもは大多数が保育所に行くが、幼稚園は片方が働いている場合が多い。収入はピンからキリまでだが、かなり低い場合にも、幼稚園に入ってくる場合がある。就園奨励費も国から出しているものの、自治体による差が大きいなど援助の在り方も異なる。家庭における親の支出についてみれば、塾とかの支出をどれだけ肯定するかの議論があるが、単純な教育費支出としてくくってみれば、かなりの格差がある。いまいろんな意味での格差の問題が指摘され、中学や高校のあたりで問題になることが多いが、家庭による格差は幼児期から始まっている。それが子どもの成長にとって重大な影響があるかということについてはいいデータがないが、それが一つ気になるところ。
 次に、私立幼稚園の教職員の待遇の問題。私立幼稚園もいろいろあるので一概に言えず、地域差もかなりあり、給与格差もあるが、大雑把にいって5年も勤めれば私立幼稚園では中堅になるが月給で20万円は行かない。10年勤めてもほとんど上がらない。経営者が暴利をむさぼっているわけではなく、かなり切り詰めても、今の給与額を大幅に上げるのは困難だろう。幼稚園に勤める人は子どもが好きだからやっているので、高い給料であるべきだとは言わないが、やはり世間並ぐらいであるべきではないか。
 さらに、大きな問題だが、幼稚園の先生に専門性を求めるならば、ある程度の経験を通じて専門性は向上するのだろうし、ベテランの先生の全員が優れているかどうかは別にして、その中にこそ優れた方がいるはずだと考えられる。経験年数は大事だと思うが、例えば10年20年勤めている人が、例えば私立幼稚園で20人勤務する中に10人程度いるとすると、その私立幼稚園はつぶれてしまう。さらに、地方の一部県では初任給は低いけれども、経営側から見ればしょうがない、それ以上は出せないんだということになる。
 さらに、研修の問題。保育所でも幼稚園でも大切な問題だが、研修を進めたいといった場合、公立幼稚園と私立幼稚園ではかなり格差がある。公立幼稚園も最近は小学校と比較しても厳しい状況があるが、私立幼稚園は更に厳しい状況。私立幼稚園団体でかなり努力されているが、例えば勤務を休んで行ける状況ではなかなかないだろう。代替教諭の確保が難しく、出張費も厳しい。制度として研修機会があったとしても中身があるものにするためには、各園の努力や団体の努力だけでは難しい面がある。そのあたりも考える必要がある。
 もう一点は、様々なデータが欲しい。研究者として反省しているが、いろんな面で十分なデータがないように思う。その意味では、調査を支援する体制が重要かと思う。一番大事なのは、子どもが幼児教育を受けて、小学校になって、大人になるまでをフォローすること。産業構造審議会で引用されているアメリカの研究というのは、経済学者のヘックマンがまとめたものだが、さらにそのベースとなっているのは、ヘッドスタートプログラムの子どもたちを大人になるまでフォローしたデータである。ざっと二十数年間のフォローである。そういったことは滅多にできないし、今から始めても結論は二十数年後では困る。しかし包括的な長い目での調査も必要だが、それ以外にも様々に、短い時間スケールでもできることがある。例えば、沖縄の例で言えば、一年保育と二年保育と三年保育になっているが、それは意味があることかどうかとか。また東京学芸大学で幼児期の運動能力調査をやっているが、それだと保育のスタイルによって運動能力に差が出るのか、遊び中心の保育の方が運動能力が高いといったデータを出していたが、そういう形の実証的なデータというものも、十分なサポートがあればできることがあると思う。長い目では必要であることを指摘したい。

【委員】
 何人かの先生方から、縦断的な追跡研究の必要性という指摘があった。社会保障審議会の統計分科会では、ミレニアムベビーを毎年フォローアップしている。最初は3万人くらいで、今では少しずつ少なくなっているが、それでも1万人以上の子どもの追跡ができている。今その子たちが小学校に入っている。
 少し前にその子どもたちの生活の場で、幼稚園にいるのか、保育所にいるのか、それ以外かということが項目の中に入っていたので、その部分について分析をしていけばどうかなと思っている。今回は厚労省の方もオブザーバーで入っているので、そういう分析をやってみたらどうかと申し上げたい。協力してやっていただければよい。
 また、データを研究者に開放して、研究者にテーマを出して分析を募集するなどをして欲しいと言ってきた。省庁間でそれができるといい。

【委員】
 いま幼稚園と保育所の別について追跡しているとの御説明があったが、アメリカの研究でも家庭とキンダーガーテンに分けてやっているが、幼稚園か保育所かではなく、そこでどういう保育を受けているかということがその中に入っているか。

【委員】
 入っていない。公私別などは分かるかもしれない。年度ごとにやっているのでいくつかの要素をクロスさせていかないといけない。例えば幼稚園だと3歳から行っている子どもと4歳から行っている子ども、とか。やりようによってはやれることもあるか。ただし、その中でどういう教育が行われているのかといった中身は取っていない。

【委員】
 例えばクラスの大きさといったものは有効な質の指標となるという研究もあるので、何かあればよい。データを取るというのは難しい面があるが。

【委員】
 研究者としてのコメントだが、国際的には教員一人当たりの教員の数は重要だと言われているが、例えば小中学校の学力調査があるが、単なるクラスサイズはあまり関係がない。冷静に考えれば、へき地などが全部入るから、経済的にかなり厳しい状況ではクラスサイズは小さくなるので統計上のコントロールをかなりやらないといけない。

【委員】
 ミレニアムベビーをある構造的な視点で分析していくのはかなり重要な視点。ただやはり学術誌の施設保育のところを見れば、保育の質を捉えていくことが重要だとの指摘があり、なおかつ保育の質だけではなく、保育の効果は家庭の変数との間で相互作用があるとのこと。もし今後、縦断的な研究をスタートさせるのであれば、家庭の変数なども提示してやっていくのも重要かと思う。つまり、こういう質の保育をしたら結果的にこうなるということではなくて、家庭がどうなのかということが相互作用してくる。
 研究会については、このような動きが出てきているというのは非常に好ましいことで期待をしている。しかし、制度が改革されていく、幼保が一緒になって全ての子どもに同じ保育が保障されていくということはいいのだが、実際に現場と接していると、二元化の歴史も長かったので混乱がある。そういうところをサポートしていけるようなソフトの支援も一緒に考えていかないといけない。県で一人一人の先生がきめ細やかに現場を回っているとのお話があったが、指導主事の先生の研修や、専門性の保障はどこでなされるのか、そのへんも調査していかれるといいのかと思う。

【委員】
 研究というよりは、実際の行政の問題として幼稚園の経営者などと関わっているが、話を聞きながら考えることも多い。江戸川区は子どもの人数は多いが、4歳、5歳になれば大半の子どもは幼稚園ないしは保育所に通っているというほぼ準義務教育的な状況。3歳児は9割くらい。そういう状況の中での在り方を考えていくことが重要な視点なのではないかと考えている。私立で1万人を超える子供を預かっているが、学校法人もあれば、宗教法人もあれば、個人立もあり、いろんな個性を持ちながら経営し教育をしているということなので、親御さんはそのなかで選択している。幼稚園全体のレベルアップが必要である。月に一度は園長さん方と顔を合わせている。そんな立場で幼児教育の在り方を考えていきたい。

【委員】
 今回の研究のテーマが幼児教育ということであるが、「幼児教育」の定義は行政にあるか。それを伺いたい。

【事務局】
 幼稚園、保育所を通じたもの。

【委員】
 幼児教育の定義がはっきりしないと論点がずれていくのではないかと思う。なぜかと言えば、中教審の答申で幼児教育の定義がなされているが、そこでは、家庭で育つ子どもも含めて、幼児教育だという定義がされている。研究会の資料を見た際に、ここでいう幼児教育とはどこを指すのかと疑問に思っていた。事務局の回答だと、3歳児以上を指しているのかと聞こえたが、どうか。

【事務局】
 そこもまさに議論していただきたい。諸外国の例では一般に3歳から5歳までを対象としており、その理由についても諸先生方の御知見をお借りしたいが、集団的教育に着目しているのかと思う。

【委員】
 行政の会議にいくつか関わったが、定義としては、就学前の全ての幼児という意味で幼児教育という用語が使われていたかと思う。しかしここではいわゆる施設保育ということか。アメリカの児童心理学ハンドブックでは施設保育か非施設保育かに分けていて、後者に家庭保育も含めるが、ここでいう幼児教育は施設保育を指すのではないかと思っていた。

【委員】
 幼児教育という用語は曖昧な部分を含みながら今まで使われてきた。だからここで幼児教育は何かを明確にすることは無いかと思うが、先程の説明資料の範囲でいえば、御指摘にような幼稚園、保育所をイメージした施設での教育ということか。そこを主に考えていくのかと。無償化の対象とするような幼児教育はまさにそこを指している。家庭での保育に保育者が入るような場合も、視野には入れてもいいのではないかと思う。あまり厳密に範囲を決めなくてもいいかと思う。

【委員】
 なぜこのようなことを言うかというと、財源をどこに求めるのかという議論と直結するのではないかと思っている。社会保障審議会における制度設計の考え方などでは、就学前保育の財源は社会全体での費用負担ということで、事業主等の拠出なども念頭に入れてやって行くとのこと。その中では「保育サービス」という捉え方。もし「幼児教育」ということで教育の保障となればそれは税財源となる。そうなると財源構成が切れていくということにならないか。それがいいという考え方もあるが、例えば認可外保育所と幼稚園ということになれば、認可外保育所に通う子どもたちは幼稚園の1割の20万人いるのだが、そういった子どもたちの幼児教育をどう保障するのかといった問題もあるのではないか。さらに児童養護施設に通う子どもたちは幼稚園に通うことを保障されていないわけだが、その子どもたちにも幼児教育を保障していくということになれば、措置費の中で幼児教育分をみていかないといけない。こういったいろんな問題が発生してくるのではないかと思う。このような意味で、幼児教育の定義は大事な問題ではないかと思う。

【委員】
 財源の問題、財源の以前の枠組の問題、例えば学校教育の中で考えるのか、もっと広く考えるのかといった問題は、広く義務教育化するのか、少子化対策なのか、という形での疑問も出されているが、委員会の議論での重要な一部となると思う。我々委員は財源は心配しないのだろうが、幼児教育なり、無償化なりをどういった枠組の中で考えていくのかは重要な議論のポイントかと思う。

【委員】
 自分は認定こども園に関わることが多いが、認定こども園はいわゆる保育所籍の子どもと、幼稚園籍の子どもがいるが、今までは、幼稚園と保育所はいろいろ違うという話でやってきたが、認定こども園にいると、もろに同じ場所で生活している親同士の話が出てきてしまう。その場合、保育所は全て保育料に含まれていてそれ以外徴収してはいけないということになっているのに対し、幼稚園は同じ施設なのに教材費も給食費も取るし、消費税もついてくる。さらに預かり保育の代金も払っている。そうすると、親からは「保育所籍にならないと損だ」という声が現実的に出てくる。
 つまり、保育サービスをどういうふうに考えるのかということ。例えばフランスの場合だと、エコールマテルネル(幼稚園)が無償だが、16時半頃までやっている。それ以降の分は何とか補助できないかと今議論が出ているところ。保育サービスと幼児教育は違うのかということについて、議論を詰めていかないといけないのかと。

【委員】
 全くその通りである。認定こども園は2,000という目標も出たが、事務局では何か検討するのか。

【事務局】
 要望もいろいろあることを踏まえ、また地方分権改革推進委員会からの御指摘もあり、文科省、厚労省の局長レベルの検討会を立ち上げ、夏までに改善方策を取りまとめようとしているところ。

  1. 事務局より、次回会合は6月12日(木曜日)17時からを予定している旨説明があった後、閉会となった。

以上

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課