今後の幼児教育の振興方策に関する研究会(第5回) 議事要旨

1.日時

平成20年9月29日(月曜日) 13時~15時

2.場所

文部科学省6階 6F3会議室

3.出席者

委員

 無藤座長、秋田副座長、稲毛委員、岩立委員、岩淵委員、大竹委員、柏女委員、森上委員(欠席:佐藤委員)

文部科学省

 金森局長、徳久審議官、濱谷幼児教育課長、大谷幼児教育企画官

オブザーバー

 厚生労働省今里課長、天野保育指導専門官、神代調査企画課長

4.議事要旨

1.保育所と幼稚園における評価の実施状況について資料1,2,3に沿って事務局からの説明が行われた後、以下のやりとりがあった。

【座長】
 事務局から保育園と幼稚園における学校評価の実施状況について説明いただいた。
 幼稚園と保育所とで評価の仕組み、評価項目が重なりつつ異なる部分もあるようだが、補足や意見、質問等はないか。

【委員】
 一つ伺いたいが、幼稚園の場合は行政による評価である監査と自己点検、自己評価との住み分けというのはどのようになっているのか。

【事務局】
 保育所の場合には行政の監査が定期的に入ることが義務付けられているが、特に教育関係、幼稚園だけではないが、私立学校には行政の監査が定期的に入るということが定められていない。そういった意味では監査との仕分けというのは、明確にはない。基本的な理念としては、自己評価はあくまで教育の推進と質の向上のための取り組みということであって、最低ラインを確保するということではない。自らのサービスの向上のために取り組むということでは、保育所の第三者評価、自己評価と同様の目的ではないかと考えている。

【座長】
 自己評価は設置者へ報告なので、公立の場合は教育委員会の責任。私立は学校法人が通常であり、学校法人の設置者の責任であるということになる。

2.資料4に沿って事務局から幼稚園と保育所に保護者が求めるものを問うたソニー教育財団アンケートについて説明が行われた。

【委員】
 本調査は、この春同じように、二千人規模で、保護者、園長、全都道府県の中の10県で、回答してもらった。細かな数値等は来春出ると思うが、出ている傾向の一つとしては、2002年度時点では、保護者の共働き割合が調査対象の中で14パーセントだったものが、現在は24パーセントとなった。預かり保育等でかなりの時間子どもを見てもらえるようになってきており、親の就労率が高くなるということによって、幼稚園の親も利便性やサービスとかある意味で保育所と似たような方向性を期待するようになってきているということが一つの大きな特徴だと思う。
 それからもう一点は、幼稚園教育要領、保育所保育指針の改訂の影響を極めて大きく受けているのだと思うが、小学校準備のために幼稚園、保育所があるというような準備意識というものが、親からも高く、幼稚園教諭でも高い。保育士にもこれをどう考えていいかということは難しいところだが、少なくとも回答の割合が高くなってきている傾向がある。幼稚園は親の満足度についてはあまり変わりないが、保育所については、やや保護者の期待ほど満足できていないということがこの対象園の中では、多少出てきているという特徴がある。全体として幼稚園も長時間の預かり等をすることによって、保育所に類似してきている面が大きくなってきているのではないかということは指摘できると思う。

【座長】
 この調査は平成14年のものなので、その間の変化があるかもしれない。
 素朴な感想だが、公立や私立、幼稚園、保育所とか期待もいろいろ違いがあるといえばあるのだが、特に最後の方で、遊びを重視するというようなあたりは共通性が高い。先生方と保護者の割合の差を取れば差はあると思うが、非常に大雑把に言えば、似たような傾向だというところが印象的であるがその点についてはどう考えるか。

【委員】
 全体として大きく求めているものには類似した傾向が出てきているのではないかと思う。ただ、それの具現化の方法として子ども一人一人が違うことをしながらも育っていくのが良いと考えるのか、一つのことをするのには、集団で全員が同じようなことをするのが良いと考えるのかという考え方の違いはある。むしろお稽古事的なものも長時間的であれば園の中でやってくれればよいのにといったニーズが、長いところほど出てくるというようなことはあると思う。全体の傾向としては類似してきているということが大きな特徴ではないかと思う。

3.事務局から資料5、6に沿ってこれまでの主な意見の整理の案について説明が行われた後、以下のやりとりがあった。

【座長】
 これまでの会合に出た主な意見をまとめて二つの資料に整理してもらった。各委員の発言をベースにしているが、違っている点、抜けている点、あるいは更に加えたい点等があったらお願いしたい。

【委員】
 二点ある。一点は私がずっと言ってきていることだが、障害を持った子どもたちや親の就労状況が非常に厳しい子どもたちのことについて、主な意見のところの1ページの一番下の「幼児教育の振興を目的とする場合」というところに入っておらずに、(2)のところに入っている。また、まとめの方でも少子化対策として捉えられているのだが、私はそうは捉えてはおらず、幼児教育の範囲の中から障害児を除外するのは、いかがなものかと申し上げている。日本は義務教育をつくるとき、重度の障害がある人たちを就学の猶予・免除という制度をつくって、教育から排除してきたという歴史がある。今回、幼児教育の定義から通園施設に通っている子どもたち、その他認可外の施設に通っている子どもたちを落として幼児教育の無償化の議論から排除してしまうことは、以前やってきた就学猶予・免除と同じことを今回も行ってしまうことになるのではないかということを私は非常に強く懸念している。そういう意味で全体を教育に入れて考えるべきではないかということを申し上げている。少子化対策を目的とすることも考えられるが、それだけではなく、幼児教育の振興ということを考えた場合にもそのような視点は必要なのではないかと思う。障害児は言うに及ばずだが、特に認可外保育施設の中には、なぜ認可外保育施設に行っているかというと、就労証明を求められると困る方々がいる。子どもがいるということが分かるとその会社を辞めさせられてしまう、そういう状況があるために、保育所に入にはその証明が必要となるので、それが必要ない認可外施設の方に入っているという状況もあるわけで、そうした厳しい状況下にある方々を無償化の議論から除外してしまうというのは、いかがなものかと思っている。
 次に、養成教育の話を入れていく必要が、質の担保のところであるのではないかと思った。養成教育の問題はどこかに入れていく必要があると思う。

【座長】
 養成教育の点についてもう少し踏み込んで御意見をお願いしたい。

【委員】
 保育士などの場合は、国家試験が免除されているわけで、免除されているがゆえに、養成教育の中でシラバスや授業の回数など、外形的に縛るという形の政策が進んでいるわけだが、それも一つの方法かもしれない。しかし、もう一つの方法は、国家試験を導入することによって大学間競争が働いていくこと、あるいは、国家試験の内容をしっかりしていくことによって養成教育が向上するような、インセンティブが働いていくような仕組みをつくっていくとか、そうしたことも合わせて考えていく必要があると思う。第三者評価は少なくとも評価のことを考えるのであれば、養成教育の向上のための仕組み作りということも合わせて考えていく必要があると思う。

【座長】
 教育の質の確保の中で、養成について一定の質以上を確保するということでよいか。

【委員】
 その通りである。

【委員】
 義務教育とするかどうかということと質の確保ということとは連動する点があるように思う。例えば、ペリー実験では、確か三つのプログラムを比較しながらやっている。そのときに、どちらかというと、学校準備型よりもホリスティックにやっているものに効果があったということであったと思う。義務教育ということになったときには、学校の準備ということで、確かOECDのStarting Strongの中でも議論があって、将来の準備型か、あるいは、今の幼稚園教育要領のようなホリスティックなものが良いのかという議論があるということが書いてあった。両方の議論があるけども全体的に捉えるホリスティックなものの方にやや軍配があがっているように私は読んだ。その辺のことについて、質とか義務教育にするかどうかと考えたときに義務教育にすれば一番無償化はしやすいのだが、そこらあたりの難しさがあるのかと思う。

【座長】
 これまでの議論では、少なくとも義務教育というときに小学校就学年齢を引き下げるという前提では一切ないと思うので、今の幼児教育のやり方を義務教育化するということを議論としては練っていたと思う。仮に義務教育化するとしたら小学校流というのが何を指すかというといろいろな考えがあるだろうが、そういったものを下の年齢に下ろしていくというような在り方なのか、今の幼児教育の在り方を多少変えるのかもしれないが、そうやっていくのか、もう一つ議論として入るということだと思う。
 もう一つ先ほどの主な意見にも入っていたが、義務教育というとき、特に保護者への義務ということにすれば、基本的に幼稚園、保育園に入れなければならない。別の言い方をすれば、例外は有り得るかもしれないが、家庭で養育したりするということは基本的には認められないということを行うのか、そうではなくて義務教育ではないが、無償化というのは、行政への義務として希望するすべての保護者に行って、例外的に特定の保護者が別の判断をすることは許容されるということもあり得るということにするのか。その辺は非常に微妙なところだということを思う。義務教育であろうと、義務教育でない無償化にしようと、恐らくこれまでの議論の流れでは今よりは幼児教育というもののある共通性、特に質、内容をある程度もう少ししっかりしようということはあると思う。そのしっかりという中身の方向は非常に重要な問題である。

【委員】
 保護者の義務かどうかという問題はあると思うが、無償化の意義というところで、3点目に高齢者と比較しての社会給付という問題が出ている。これは今後の資料で知りたいところだが、高等教育及び中等教育高校段階への教育投資に比べて、幼児教育への投資がどうであるのかということを考えたときに、高等教育はある意味で個別に自己選択によって、やっていくのに対し、幼児教育は、4歳、5歳の場合ほぼ全世帯が集団型の施設に入っているとするならば、そこへの投資というものはやはり税負担によってなされていくということが、教育という範囲をどうするかという問題に関してもっと詰めなければいけないことのうち非常に意味のあるポイントなのではないだろうか。全体としての教育にどこから税を使っていくのかといった場合に、高等教育に比べて幼児教育の現状は今どういうふうになっているのかというようなところや、高等だけでなく中等教育としての高校段階や、そういうものと比べての幼児教育の重みというものをデータで見たいと思う。

【座長】
 高校教育と比べた場合、どちらも義務教育の外に在るわけだが、幼児教育は非常に就学率が高い。しかし、保育料・授業料は無償ではない。現実的にはすべてを無償化するのがベストかもしれないが、恐らく選択しなければならない状況になったときに、特に高校教育に対して幼児教育をあえて優先する理由は何かということが問われるところだと思う。そのときに大竹委員から御紹介いただいたようなヘックマン教授による整理などは幼児期の投資が有効だということだと思う。そういう議論が一つある。高校レベルで言えば、少人数であっても、就職なりいわゆる高校教育でない各種学校というものを選ばれる方もいる。そこは自由であるので、幼児教育とはちょっと違うところであると思う。また、保護者の年齢を考えたときに恐らく世帯収入はだいぶ差があると思うので、そういった意味での保護者への負担感というものもだいぶ違うだろうと思う。
 そしてもう一つは、これまでにも出てきたが、特に幼稚園については、私立の部分が非常に大きくて、高校においてももちろん私立はあるわけだが、高校の場合は、原則として試験があるので全員無条件では無いが、基本的には公立高校を選ぶことができる。その中であえて私立を選ぶことがあるわけだが、幼稚園の場合には地域によっては、私立幼稚園しか無いわけなので、そういう意味ではだいぶ条件が違う。そういった意味でも無償化なりそれに近いことを幼児教育でまず行うべきだという理屈は有り得る。

【委員】
 教育の質の確保というところに、是非養成や研修の問題を入れてほしいと思う。特に私立の幼稚園では研修に出にくかったりするので、制度面での整備も入れていただきたい。資質向上の課題について検討したいとか問題意識があっても、向上するためのチャンスが得られないということもあるので、この辺の議論もここへ入れていただきたいというのが、一点。
 次にヘックマン教授のデータがよく言われて、3歳以降の教育を行うことは経済効果が高くなるというのだが、日本ではデータがないので、裏打ちされていないところが弱いのではないかと思う。今後そういった研究も行われていくとよいと思う。
 養成の面では、今のところ、同じような資質をもった人を養成してはいるが、アメリカなどでは様々な力量の保育者が様々な役割を果たしている。例えば大学院卒レベルで博士号を持った保育者、評価の面でも、保育の質の面でも改革を行っていけるような保育者の養成もあってよい。それからまた、学部卒レベルで今の実践において質をより高く保持していく保育者もいてよい。保育カウンセラーもそうだが大学院卒レベルの資質の高い保育者の養成も行われていくとよいと思う。教育の質の確保のところにこの養成や研修の問題は入っていないのだが、入れてもらえるとよいと思う。

【座長】
 保育に携わる教員なり保育士の全てが高いキャリアを持つべきだという議論ではなくて、それは一定の質を確保するとして、その中のリーダー層という人たちがどの程度高い学歴というのか訓練を受けるべきかどうかということについてである。幼稚園教諭の場合には、二種、一種、専修という免許の在り方がある中で、まだまだ修士課程を出る方は例外的かもしれないが、道が開かれている。それに対して、保育士の場合には、免許を資格上層化するべきかどうかについてはいろいろ議論があるだろうが、そういう道をどうやって作っていくのか。幼稚園教諭の場合は、例えば専門職大学院なんかでは、全国的にごく一部には幼稚園教諭も含まれているのだろうが、ほとんど義務教育ないし高校なのでやはり相対的に幼児教育について高い訓練、教育を受けた人というのは、非常に少ない。だから単に専修免許があるから大丈夫ということではない。その辺をどうするかをもっと議論していきたいと思う。

【委員】
 あまり色んな物が出てきてしまうと色んなことを考えていくときに難しさが出てきてしまう。行政の立場からするとシンプルであってほしいというのが、素朴な思いである。そういったときにどうやってそのシンプルさを作り出していくのか。例えばある種の類型化をしたときに幾つかの単純類型に分けられるとか、あるいはこうした理屈と理由からこうなのだということが多くの人に分かってもらえるようなことがあるなど、シンプルになるための何かがあってくれると大変ありがたい。
 もう一点、自分自身もそうだが、無償化と聞いたときに感じる言葉の刺激は「タダ」ということであり、本当に「タダ」なのかと思う。掛かっているお金にしても公立の幼稚園と私立の幼稚園では違うだろうし、保育園とも違う、地方と東京都でももちろん違う。色々な条件が出てくるときに、ただ無償化という言葉だけが出てくると、受ける印象は「タダ」なので、どうやってやるのかというのが、非常に疑問となる。これは無償化というのが、全額を「タダ」にするという意味ではなく、何らかの合理性の下にかかっている経費のうちのこの部分は負担軽減するということなのかどうか、聞かれたときにうまく答えられないということが今までの議論の中でも感じた。

【座長】
 専門的に細かい例外的なことまで入れていく中で、非常にややこしくなっているが、明快にする必要がある。
 二番目の論点は、まとめにはすっきりと書いていないが、確か議論はあったと思う。クレヨンがどうのという例がどこかに書いてあったと思うが、要するに教材費等は小学校と同じで有料でよいとか、給食費とかスクールバスとかという切り分けは義務教育に倣ってできると思うので、それをもう少し明快に書き表すということになると思う。確かに無償化という響きはあらゆるものが「タダ」になるという議論をしているような印象を与える点が問題かもしれない。

【委員】
 資料6の2ページ目についてコメントしたい。1ページ目の終わりからだが、幼児教育の振興を目的とする場合というのがあるが、振興ということであるので、幼児教育が行われていない所得階層、地域だとかいう人たちの幼児教育を増やすということであれば、現在行っている人たちというのは、あまり対象でないということになる。そこでどういった人たちの子どもたちが幼児教育を受けていないのかということをもう少し調べる必要があるような気がする。もし所得が非常に低い人たちの間で、幼児教育が十分でないということであれば、そういう子どもたちを中心にまず無料化を進めていって、そういう人たちの幼児教育を増やす。そうすると幼児教育が振興することで、人材育成に繋がるというストーリーが作れると思う。それだと所得再分配の効果と振興方策、もし所得階層別に補助率を変えるというふうなことを今まで以上に強化するという方向でいくのであれば、再分配と効率性の両方を達成できる手段ではないかと思う。
 もう一点は、コメントを少し修正させてもらいたい。2ページ目の一番下、所得階層別とするか否かというところで、現金がいいと言ったのだが、親に対する再分配として考えたらそうなのだが、子どもだとすれば、子どもは判断できないので、子どもが貧困で本来は幼児教育を受けた方がいいというときに、彼らの再分配政策と考える場合には、親の意思を通してはできないので、現物給付の方が望ましいという理屈が立つと思う。

【委員】
 沖縄などは認可保育所よりも認可外保育所の方が圧倒的に多い。そういった場合、認可外が外れてしまうと、無償化の利益をほとんど受けられないということになるので、そういうものにも出すという配慮が行き届かないと、本来的には、あまりいい教育を受けていないということになるわけだが、但し、それをそのまま認めてしまうと何でもよいという形になってしまうので、この無償化していく機会にこれだけの条件というか質は備えなければいけないという方向に誘導していく。必ずしも揃えるという意味ではないのだが、そういうことが必要で、これは非常に良い機会ではないかと思う。

【委員】
 幼稚園も保育所も認定こども園もその質の保証というものが、最低基準としての保育とセットにならなければならないと思う。認可外などの場合も先ほど養成・研修という話が出たが、保育所のほうの施設長の資格というものが、やはり教育的なある種の専門性を持った人であるということが必要。幼稚園であろうが、保育所だろうが、どのようなところであったとしても教育に携わる評価のヘッドである人がある種の要件を備える一定の水準の人であるということが、保育士も幼稚園教諭もそうであるが、施設長も園長も責任を負う主体として、重要ではないかと思う。

【委員】
 二人の先生の意見は分かるしそれも大事だと思うが、ならば、もしも今の認可保育所の中で幼児教育を行っているということを規定とするとするならば、そこに入れない状況を公的につくっておきながらその上で、認可外保育所へ行かざるを得ない人たちを無償化の議論から外してしまうということについてはどうなのか。障害児も同様で、保育所、幼稚園でできる限り受けていることは事実であるが、そこに就学できないという状況を公がつくっておきながら、そこに行っている人たちについては無償化の範囲の対象としないという議論はどうなのかということを思っている。

【座長】
 無償化というのが、今言われた範囲をまとめれば、一定の質の保育施設の中である3歳から5歳か年齢はともあれその年齢に属する全ての子どもについて、一定の質の保育を保証しようという発想がそこにある。もちろん障害のあるお子さんなり特別な事情のあるお子さんなりについてもその質を保証していかなければいけない。その質を保証できるものが認可保育所及び認可幼稚園であれば、そこに全員が入れる条件をつくることといわばセットであるということで、非常に重要な指摘である。

【委員】
 保育園の場合、認可施設と認可外の施設のある種の公的資金格差、これをどうするかということについては、厚労省の少子化対策特別部会で中心的なテーマになりつつある。これからの議論であるが、格差を放置したまま支援の拡大ということをやっていった場合に子どもにおける利益格差をどうするかということなど様々な問題があるが、そこのところは未だこれからの議論ということになっている。
 次にこの括りの仕方で単純化してくれという議論が強まっている中で言うのも何ではあるが、無償化の目的の中で、対象として幼児教育の振興を目的とする場合と、少子化対策を目的とする場合、対立概念とは言わないまでも仕分けした感じで捉えていくということが適切かどうかという問題がある。物の言い方といえば言い方だが、例えば、少子化対策を目的とする場合と、幼児教育の振興を目的とする場合、もちろん両方の目的があるわけなので、こういった仕分けをすると、どちらなのかと受け取られ走りがちになりかねない。どちらも必要なことであって、並列的なものではなく、重層的な概念であるというふうに思っているので、書き方をもう少し工夫してほしい。そうした場合、単純化とならないと言う方がいられるかもしれないが、物事を単純にしたらよいというものではなく、そこは子どもにとってどうかを中心的に捉えるべき。そして、2105年の労働力人口というのは、日本の参考推計であるが、約2千2百万人に落ちている。今8千5百万人くらいいるが、それくらいすごい落ち込みをしていくという状況の中で言えば、少子化対策、人材の育成という両方の観点から言ってもどちらの政策も当たり前のことであり、当然のことながら極めて重点を置いて取り組んでいく必要がある。

【委員】
 「今後の幼児教育の振興方策」の「幼児教育」とは何だ、ということへ戻ってしまうのだが、いっそのこと報告書のタイトルを変えて、例えば、「幼児期の教育等の振興と負担の軽減について」というふうに報告書のテーマを変えたらどうか。

【座長】
 どういう趣旨か。

【委員】
 つまり「幼児教育」と言ってしまった場合の定義の問題がある。「幼児期の教育」であれば、教育基本法でいう範囲がみんな入っている。つまり0歳から全部になる。家庭教育も含めた、どこまでどういうふうに含めるのかは私も理解していないが。そして「教育等」という形にしてそれ以外の人たちにも目配りというか配慮し、さらに「振興」というのが入って、「負担の軽減」というものを議論するのだという形で、報告の基本のところを据えてしまったらどうかと思う。

【座長】
 今の表題については、与えられていることというか、本研究会は教育の振興をベースにしているからなかなか厳しいところがあるが、指摘としては、幼児教育施設と限定しているとかその辺がきつすぎるのではないかということだと理解してよろしいか。

【委員】
 それを一緒に議論していくということにしないと、教育という概念の中から排除したものを生み出してしまうことに繋がりかねない。与えられた議題はそうかもしれないが、議論をしたことについては、そうではなく全体を視野に入れて全ての子どもたちを入れて議論をしたのだという形で提言をするのはどうかということ。中間まとめかもしれないが、そこのテーマについては「今後の幼児教育の振興方策に関する」とかにしなければならないことはないだろうからその辺で入れていったらどうかということ。

【座長】
 最初の段階の問題設定で全ての子どもということを何度も強調している。

【委員】
 「振興」という言葉がちょっと一般国民の感覚からどうなのか。業界の振興という用法が、これまでに随分使われてきているので、他に適切な表現があるのかどうかということはともかくとして、ちょっと抵抗を感じるといところは国民の中に残るのではないかというところである。

【座長】
 その辺の説明もいろいろ入れていきましょう。

【委員】
 質問だが、幼児教育をなぜ小学校以上とは違って無償化するのかという説明として、例えば、小学校以上と形態や指導法は違うが、集団教育をやることには幼児教育固有の意味があるため、集団教育を経験させることが重要だという議論が立つ一方で、例えば、療育のお子さんなどの教育も全て入れるべきだとも思うが、その場合には、集団だから意味があるという形ではない、幼児教育がどういった機能を全ての子どもに果たすから無償にするという説明がつかなければならないと思う。家庭とは違う教育、保育、療育等の専門家がある意図を持って行うことに効果があるというような説明をするのか。その辺をどう考えるのか。全てを入れた場合や集団の教育施設でないところまでを入れる場合の説明の原理としてどういったことを考えればいいのかということを伺いたい。

【委員】
 私は二つを考えていて、一つは委員がおっしゃっていること。専門家というのは必要なのではないか。そしてもう一つは、同年齢を含めてだが、多様な人との関わりというところが必要なのではないかと思っている。そういう場が、人の教育というか療育というかそれが行われる場なのだというふうに考えていけばよいと思う。家庭を訪問する訪問教育もあるが、ここまでを入れていくのかは、議論になるところではないかと思う。保健師の訪問とかそこら辺も議論になるところだと思う。

【座長】
 本日も意見がいろいろ出たので、事務局で資料を修正してもらう。

4.無藤座長より、次回は有識者2人からのヒアリングを行い、また、本日の議論をもとに今後の進め方等について検討することを予定している旨の発言があった。

 事務局より、次回は11月11日(火曜日)午前10時から、文部科学省内で予定している旨の説明があり、閉会となった。

以上

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課