拡大教科書普及推進会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成20年4月25日(金曜日)15時~16時30分

2.場所

東海大学校友会館 朝日の間

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

香川座長、千田座長代理、石津委員、市川委員、宇野委員、大賀委員、太田委員、大旗委員、小林委員、齋藤(肇)委員、齊藤(美)委員、末吉委員、高柳委員、田中委員、土屋委員、花香委員、守屋委員、安元委員、山田委員、渡辺委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、布村審議官、伯井教科書課長、水野特別支援教育課専門官、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐
山下文化庁長官官房著作権課長

5.議事要旨

 主な意見は次のとおり。

(1)座長・座長代理の選出

 座長に香川委員、座長代理に千田委員が選出された。

(2)議事の運営について

 「拡大教科書普及推進会議の運営について(資料2)」が了承された。

【委員】

 ワーキンググループで検討した事項は、基本的にこの会議で報告があり、最終的にはこの会議で承認するという進め方であると考えてよいか。

【事務局】

 ワーキンググループで議論いただいた内容を推進会議で了承いただくことになる。

(3)拡大教科書の現状等について

 「拡大教科書の現状及びこれまでの取り組み(資料3)」、「推進会議における検討事項(資料4)」について、事務局による資料説明の後、意見交換が行われた。

【委員】

 盲学校の高等部段階では、出版ベースで保証されているのは1冊もない状況。なぜ、中学部まではあって、高等部には何もないのか、という生徒や保護者からの意見がある。盲学校といえども、全員に行きわたっている状況ではない。

【委員】

 児童生徒それぞれの見え方によった拡大教科書を、希望どおり迅速に、正確に、安価で提供できる方法を模索しているが、第一に弱視児童生徒の見え方を把握し、経験と確かな理論と方法を提供できる人たちで知恵を絞れば、自社出版も難しい問題ではないと感じている。標準規格の対象となる児童生徒をどのように選ぶかということについては大きな問題。視力の低い子ではなく、授業中に、実際に教科書の記述を見にくい子を選ぶということが必要と考える。弱視の子どもたちは、日に日に成長しており、速やかに方針を出していただきたい。

【委員】

 一人一人の見え方が違うため、弱視児童生徒全員に拡大教科書が必要というわけではないと思う。拡大教科書の使用が望ましい場合、原本教科書でも大丈夫な場合、原本教科書を視覚補助具を用いて見る場合など、いろいろなパターンがある。そのような現状をしっかり把握し、共通理解しておくことは非常に大事なこと。

【委員】

 拡大教科書を使うか、ルーペ、拡大読書器等を使うかということは、二者択一ではなく、弱視児童生徒の選択の自由を確保することが重要。子どもたちは、拡大教科書を一生懸命ボランティアに頼んでも断られて、どうしようと困っている。憲法にある教育を受ける権利や機会均等に係るような重要な問題。できる限り早く我々が結論を出し、セミナー等を開催して普及啓発を図る必要がある。

【委員】

 教科書協会では昨年度、拡大教科書の普及推進のための調査研究委員会を設置し、拡大教科書の普及充実に向けて取り組んでいる。拡大教科書の自社版の発行については、責務として十分認識している。推進会議あるいはワーキンググループの検討をとおして、少しでも拡大教科書の発行に努めていきたい。

【委員】

 教科書出版社とボランティアが協力して拡大教科書を作るという方策もあるのではないか。

【委員】

 拡大教科書を作る際、ベースとなる教科書があまりに細かく記述されていたり、盛りだくさんであることから悩むことが多い。ベースとなる教科書が少しでも見やすく分かりやすいものになることが、より多くの子どもたちの学習の保障になると思うし、発達障害等の児童生徒も多くおり、視覚に障害がなくても、見やすく分かりやすい教科書を求めている。拡大教科書の作成に関するノウハウを一般の教科書作りにも反映する提言を行う必要があるのではないか。

【委員】

 拡大教科書を発行した経験から申し上げると、拡大教科書は一般の教科書と別々に作っていたのでは、費用や労力の面で割が合わないので、今回の会議でまとめられる拡大教科書の基準に合わせて一般の教科書を作っていく必要があると考える。拡大教科書を作ることは教科書会社としても反対ではなく責務というくらいに考えるが、予算を含め、条件整備は必要。

【委員】

 教科書出版社が拡大教科書を発行する上では、特に著作権、知的財産権、データの不正使用の防止が前提となる。

【委員】

 現場では、弱視の児童生徒以外にも、たくさんの発達障害の児童生徒がおり、分かりやすい教科書が必要であると感じている。

【委員】

 弱視教育において開発したノウハウは、他の障害のある児童生徒にも生かせる可能性はあると思う。

【委員】

 拡大教科書を普及推進する際、ボランティアが取り組んでいくべき内容とどのようにバランスをとっていくのかに留意しながら議論に加わりたい。

【委員】

 教科書会社以外の民間企業が拡大教科書を作るという仕組みの構築に関しては、営利企業である民間会社の活動に対し、ガードを外からいかにかけるかということも考える必要がある。

(4)ワーキンググループの設置について

 「ワーキンググループの設置(資料5)」について、事務局による資料説明の後、意見交換が行われた。ワーキンググループについては、事項毎に検討・作業を行う「拡大教科書標準規格ワーキンググループ」、「教科書デジタルデータ提供促進ワーキンググループ」、「高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループ」を設置することとなった。

【委員】

 標準規格もデジタルデータも高校が関係するが、高校段階のワーキンググループはなぜ独立させるのか。

【事務局】

 標準規格、デジタルデータの提供について、高校を除外するという意味ではない。一方で、発行される教科書の種類やあり方が義務教育段階の教科書とは異なる等のことから、高校段階における弱視生徒の教育方法、教材のあり方というものをしっかり議論し、その上でどのような支援方策が必要なのかということを御議論いただければと考えている。

【委員】

 児童生徒が成長するにつれて、自分の眼疾患について正しく理解すること、自分の見え方の特性を知ること、視覚補助具を使って上手にものを見ていけるようになることは重要。実際に高校段階で拡大教科書のようなものを必要としている生徒がどれくらいいるのかということを踏まえて、出版ベースでどうしていくべきかをよく考えていく必要があるので、検討は非常に大事だと思う。

【委員】

 現状を見ると、幼小中というのは、かなりいろんな支援体制が充実してきている。大学も、各大学で障害学生支援室というものを設けるなどしている。ただ、どうしても今のところ高校のところがエアポケットのようになっている現状がある。高校を取り残すような結論は出すべきではないと思う。

【委員】

 小学校の児童には拡大教科書は是非必要であるが、社会に出てからのことを考えると、皆と同じような教材をいかに視覚補助具を駆使していろんな情報を得ることができるかという教育も大事。学校では視覚補助具の使い方についても十分にトレーニングしていただき、必要な場合は拡大教科書も用意してもらえるという方向がよいのではないか。

【委員】

 高校段階のワーキンググループを作ることは適切。小中学校の教科書の数は限られているが、高等学校の教科書は多岐にわたっており、義務教育段階の教科書に対するサービスの方法とでは違った対応が求められ、別の視点からの検討が必要になると思う。

【委員】

 拡大教科書の標準規格ワーキンググループの中に、現場で実際に弱視の子どもを指導している先生方の意見が入ることにより、よりよい教科書ができるのではないか。

(5)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。