教科書デジタルデータ提供促進ワーキンググループ(第4回) 議事要旨

1.日時

平成20年7月23日(水曜日)15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)9階 共用会議室3

3.議題

  1. 教科書デジタルデータを管理する組織のあり方、ボランティア団体等へのデータ提供方法について
  2. その他

4.出席者

委員

田中主査、五十嵐委員、伊藤委員、今井委員、氏間委員、大旗委員、川戸委員、小林委員、柴崎委員、嶋本委員、末吉委員、中野委員、成松委員、花香委員、渡辺(哲)委員
千田座長代理、宇野委員、高柳委員、渡辺(能)委員

文部科学省

伯井教科書課長、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐、水野特別支援教育課専門官
黒沼文化庁長官官房著作権課課長補佐

5.議事要旨

 主な意見は次のとおり。

  • (1)教科書デジタルデータを管理する組織のあり方、ボランティア団体等へのデータ提供方法について

     大旗委員から教科書デジタルデータの流出防止方策について説明、事務局からこれまでの意見の整理について説明の後、意見交換が行われた。

    • <大旗委員の説明>

      【委員】

       デジタルデータをボランティア団体に提供する際は、拡大教科書作成のために編集可能な状態で提供する必要があるが、複製を制限する方法は技術的にないと思われる。そのため、情報に接する可能性のある人すべてに対して情報漏えいを防止する契約を結ぶことが必要。

      【委員】

       万が一、データが流出した場合、流出元や流出した原因を検証するためにも、提供するデジタルデータの中に個別の識別情報を入れた方がよいと思う。

      【委員】

       画像に個別識別子を入れるステガノグラフィーという技術は、電子透かしという形で一般的に使われるようになってきているが、これを用いれば、例えば印刷したり、編集してリサイズしたり、色変換したりしても埋め込んだ情報がほとんど消えない。

      【委員】

       この技術を用いて、提供元、教科書名、提供先、提供時期の4点を識別情報として埋め込むのがよいと思う。

      【委員】

       教科書データは随時更新される可能性があるため、データを常に最新の状態にメンテナンスすること、データに個別識別子を埋め込む作業を行うこと、提供したボランティア団体等に対して更新情報を届けることなどの体制を整える必要があると思う。

    • <自由討議>

      【委員】

       データの漏えいがあった時の罰則規定を作ることも有効な方法の一つではないか。

      【委員】

       全く教科書発行者の許可を得ないまま、教科書のデータを使用して商売をしている者も中にはいるので、教科書発行者の権利を守るため、データ漏えいの対策はやらざるを得ないと思う。

      【委員】

       電子透かしを手作業でやれば非常に手間がかかるが、例えばデータ提供先に対してデータのCD-ROMやDVDを自動で焼いて、発送伝票まで自動で印刷するという仕組みを導入することも考えられる。これは伝票を印刷するのとほとんど同じようなレベルで、PDFのデータの中に透かしを入れることができる。

      【委員】

       データ漏えいによる損害が発生した場合は、損害賠償請求ということもあり得ると思うが、次回はデータを提供しないということが抑止力になることもあるだろう。実際にはケース・バイ・ケースという面があり、このワーキンググループで具体的な罰則規定を決めるのは難しいと思う。

      【委員】

       現在のサーバーの性能では、ダウンロードする際にリアルタイムで認識情報を埋め込むことは困難だと思うので、データの提供はCD-ROMを渡す方法を前提として考えている。ただ、アメリカのNIMACでは、データを提供する場合は、申請に基づいて許諾をするが、許諾をした後にサーバーで自動的に埋め込み作業を行い、その後、ダウンロードできるという仕組みである。このような方法であれば対応は可能だと思う。

      【委員】

       電子透かしを入れたとしても、印刷物からは流出元は特定できないのではないか。

      【委員】

       コピー・アンド・ペーストができることを前提にデータの提供を考えているので、透かしを入れることによって自動的に何かが禁止されるというものではなく、基本的には悪用されないための抑止力と考えている。また、実際に被害が発生した時に、影響の範囲を限定することができ、データを提供する側が安心してデータを提供できればよいと思う。

      【委員】

       例えば、最初の1年間だけはボランティアのモラルに明確に働きかけ、データが流出するようであれば、電子透かしを導入する方法も考えられる。

      【委員】

       セキュリティの確保は大変重要である。個人情報の保護を含め、各企業はセキュリティを確保するためお金をかけざるを得ない状況にある。

      【委員】

       著作権の問題については、ボランティアに対して法令違反の例示をしたものを作って配付するなどして周知徹底を図ることも大事なのではないかと思う。

      【事務局】

       著作権法の罰則は、教科用特定図書を作るという目的以外に使用すれば何でも罰則がかかるというわけではなく、目的外で、かつ広く頒布した場合にしか著作権侵害にならないという現状になっている。

      【委員】

       一、二年の間は、オンラインやメール添付などはせず、CD-ROMやDVD等の郵送により渡し、きちんとした契約を交わして責任をしっかり認識してもらうというやり方がよいのではないかと思う。

      【委員】

       現状では、ほとんどの教科書発行者がDTPで教科書を作成しているが、写研システムやアナログで作っている教科書も数パーセント程度存在する。仮にこの教科書についても何らかのデジタルデータの提供が求められる場合、紙面をすべて画像化して画像データを作り、その画像データを求められる形式で提供するという方法が考えられる。実際に拡大教科書を作る場合、画像データについては、ボランティアは拡大コピーをしたり、OCRソフトで読み取るなどしているが、それよりは幾らかは使い勝手がよくなると思う。

      【委員】

       DTPデータをそのまま提供することは、各教科書発行者の企業利益を損なうことにもなりかねないため難しいのではないか。ただ、DTPデータを必要とする者が教科書発行者と個別に契約を交わすことは可能だと思う。

      【委員】

       データを管理する組織について、当面は教科書協会において実施するということが示されている。昨年、今年度用の教科書のテキストデータを教科書協会で管理して提供したが、非常に限られた42点というテキストデータであり、実際に提供をしたのは延べ19件であったため、教科書協会で十分管理できた。しかし今回は義務化されているため、義務教育だけで427点、高校で900点以上の教科書がある。しかも、PDFであれば、おそらく1点当たり数百メガバイトという容量になってくると思うので、それだけのものを教科書協会で管理することは、物理的に不可能。仮に教科書協会が引き受ける場合は、それだけの管理能力を持っているどこかに委託せざるを得ないと思う。実際にどれだけの要望があり、どれだけの量を取り扱わなければならないのかによっても大きく違ってくるが、仮に全点の管理をするという場合は、そういうことにせざるを得ない。また、教科書協会が対応可能な業者と委託することが適当なのか、文部科学大臣が直接契約することが適当なのかは、十分に検討することが必要。

      【委員】

       どこかに全部のデータを置いておくということは、データの管理や漏えいについて、リスクが高まることになる。ボランティアからデータ提供の申し出があったものについて教科書発行者が提供するということが原則だと思う。

      【委員】

       どのような方法で管理をするのか、その管理にどの程度負担がかかるのかという具体的な内容を議論しなければ、管理機関の主体は決まらないと思う。

      【委員】

       前回のワーキンググループにおいて、教科書デジタルデータをアクセシブルPDFやテキストファイル等に変換する機関等があってもよいのではないかという意見があったが、タグ付けされたものであれば、テキスト保存をした時に順番がきちんと配慮されるので点訳ボランティアにとっても使いやすいデータになると思うがどうか。

      【委員】

       PDFのタグ付けにはかなり時間がかるため、アクセシブルPDFにした後にテキストファイルに一括保存するよりは、PDFでコピー・アンド・ペーストを繰り返してテキストファイルで保存することの方が手間がかからない。

      【委員】

       再度確認するが、各教科書発行者から提出されるデータは、アクセシブルPDFではなく、テキストがコピーできるPDF形式ということでよいか。(委員異議なし)

      【委員】

       前回のワーキンググループにおいて、ボランティアとしてはPDFを活用しようという方向で報告したが、テキスト主体の教科書については、何らかの形でテキストデータも提供していただきたい。

      【委員】

       テキストに変換可能なPDFフォーマットになっているかどうかというチェックをすることも必要と思う。

      【委員】

       データ管理を平成21年度用教科書から実施しなくてはならないため、実際にデータを提供するまで半年もなく、電子透かしを入れるなどの対応は現実的にはなかなか難しいと思う。また、現行課程の教科書については、実際にデジタルデータの需要はかなり少ないだろうから、当面、平成21年度に向けては試行的な形で十分対応できるだろうと思う。しかし、新教育課程では、相当な需要になるため、それまでにしっかりとしたセキュリティの方法を確立しておかなければならない。そういう意味では、数は少ないが非常に重要な試行になると思う。

      【委員】

       おそらく平成21年度については、オンラインではなく郵送等によりCD-ROMやDVDをやりとりする形になると思うが、教科書発行者から多数のデータがきて、それをまたさまざまな組み合わせで送ることになるので、サーバー管理が望ましいし、効率的であると思うので、来年度からサーバーがある機関である必要はあるだろうと思う。その中でより効率的なセキュリティのあり方も研究していけるのではないかと思う。

      【委員】

       使われるかどうかわからないものに関して、最初からすべてテキストを用意するというのは、作業として非常に大変だと思う。明らかにもう使われる、この教科書を拡大したいということが決まったところで、それが数団体が同じ教科書を拡大したいという時に、何らかの形でテキスト化や画像の抽出を行い、それをデータ管理組織に戻すというような形にするのがよいのではないか。そのあたりは事前調査をうまく使えばよいのではないかと思う。

      【委員】

       来年度の教科書は、10月初頭から著作権の届出を行い、同時に原本教科書の提供依頼を出すことになる。実際にその原点の教科書が入手できるのは10月末から、遅い場合には大体12月の末ぐらいまでかかることになる。前年度の需要の状態や個々の児童生徒の状態を考えれば、ある程度の需要予測はできる。実際には拡大教科書の製作が10月から始まるため、それまでにデータを用意されことが望ましい。

      【委員】

       ボランティア等に対するデータ提供については、原本教科書とリンクした内容のCD-ROMやDVDで送ることが一番よいと思う。

      【委員】

       電子透かしを入れることについては、教科書発行者が必要というなら結構だと思う。

  • (2)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

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