教科書デジタルデータ提供促進ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成20年7月9日(水曜日)15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)13階 共用第1特別会議室

3.議題

  1. 教科書発行者が提供するデジタルデータの種類・方式について
  2. その他

4.出席者

委員

田中主査、五十嵐委員、伊藤委員、氏間委員、大旗委員、大場委員、川戸委員、小林委員、柴崎委員、嶋本委員、末吉委員、成松委員、花香委員、渡辺(能)委員
千田座長代理、宇野委員、高柳委員、守屋委員、伊東協力者(東京書籍印刷株式会社)、大塚協力者(株式会社光陽メディア)

文部科学省

伯井教科書課長、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐、黒沼著作権課課長補佐

5.議事要旨

 主な意見は次のとおり。

  • (1)教科書発行者が提供するデジタルデータの種類・方式について

     PDFデータから拡大教科書を製作する作業等について渡辺委員、嶋本委員、花香委員から説明があった後、意見交換が行われた。

    • <渡辺委員の説明>

      【委員】

       教科書協会において実施した調査によると、現時点では、教科書発行者が保有している提供可能なデジタルデータは、教師用指導書にデジタルデータを添付して指導書として販売しているものなどであるが、小中学校のものに関しては全体のごく一部。また、高等学校では、デジタルデータが添付されている教師用指導書は6割弱であるが、いずれも本文、注、キャプションなどを除いた本文のみに限定されている。

      【委員】

       また、教科書発行者が、今後、提供用のデータを新たに作成する場合の望ましいとするデータ形式は、負担の面からPDFデータとの回答が多数を占めた。

      【委員】

       DTPのオリジナルデータを提供することが望ましいと回答した教科書発行者は約1割であり、逆に、小中高それぞれ7割程度が困難だと回答。これは、発行者にとってDTPデータは版権そのものであるから、データ管理上、第三者に提供することは困難という考えが多いということだと思われる。

      【委員】

       テキストとJPEGの形式によるデータ提供も、7割以上が困難と回答。これは、実際の作成面、負担面から考えると現実的ではないということだと思われる。

    • <嶋本委員の説明>

      【委員】

       現行教科書のDTPデータは、QuarkXpressというソフトを使用している場合が大多数だが、作成手順は、PS(Post Script)のデータを作成し、それをAcrobat Distillerで変換し、PDFを作成する。このPDFデータをボランティア等に提供することを考えている。

      【委員】

       具体的には、まずQuark上で使われているものをPSに移すためにフォントを指定する。例えば外字などをそのまま変換した場合、文字化けをしてしまうため、フォントの設定が必要となる。

      【委員】

       PDFデータは、画像編集用ソフト等がインストールされていない場合は、取り出せない図版が混在している。それは主にIllustratorというソフトで作ったものに起こりやすいようであるが、その対策として、念のためにJPEGも作成しておくということを考えている。PDFとJPEGの2つのデータがあれば、画像データは完全に使用できると考えている。

      【委員】

       教科によってそれぞれファイルの作り方が異なる。例えば、国語の場合は大体単元ごとに作成されているが、理科や社会科の場合は見開きごとに作成されており、そのファイルの数だけ同じような作業をする必要がある。

    • <花香委員の説明>

      【委員】

       3社の教科書発行者から提供されたテストデータに基づいてテストをしたが、PDFは、原点教科書の情報がそのまま表現されているとともにテキスト及び画像ファイルが含まれていること、文書を電子的に配付するためのツールとして普及しており、表示・印刷をするためのソフトが無償配付されていること、ボランティアのパソコン等の整備状況に応じて様々な活用が可能であることなどの利点があると思われる。

      【委員】

       ボランティアとしてもPDFデータを積極的に活用していくという姿勢で臨む必要があるのではないかと思う。

      【委員】

       本年度試行的にテキストデータが完成された形で提供され、今後種類が拡大していくという期待感があったが、PDFデータからのテキストの抽出のしにくさがあることについては、やや期待が裏切られるという思いをするボランティアが少なからずいるのではないか。しかし、画像が手に入るメリットは大きいと思う。

      【委員】

       PDFデータの活用法を示した簡単なマニュアルの作成とともに、必要に応じて講習会、説明会の開催などにより、啓蒙を図ることが必要であると考える。また、テキストデータの補足手段として、小学校の国語、中学校の国語、英語、理科、社会については既存の本文データの提供などの措置を講ずるべきと考える。

      【委員】

       サンプルデータについては、画像処理ソフトやOCRソフトを用いずにテストを行ったが、これらのソフトをうまく活用することにより不具合の多くは解決するものと考える。

    • <自由討議>

      【委員】

       フォントを認識させないでPDFデータを作ってしまった場合は、文字が画像になってしまい、データを提供しても活用できないということがあった。PDFデータを提供するに当たっては、ボランティア団体等がきちんと使える形式になっているかをどこかで必ず責任を持ってチェックをする必要があるのではないかと思う。

      【委員】

       外字と呼ばれているもの等の中にはテキストが抽出できないものがあるが、これは教科書発行者がデータを作成する際、市販されているフォントの書体をアウトライン化して画像情報として作成しているためかもしれない。

      【委員】

       一般的なウィンドウズの装備を前提に考えれば、おそらくIllustratorの編集はできないと考えられる。Photoshopなどのソフトが入っているパソコンであればPDFは処理できるが、できない場合に備えてJPEGにする必要があると考える。

      【委員】

       PDF1.3以上の規格であれば、Illustratorのデータは編集して使用することは可能だと思うが、形式はあまり高度なものにせず、データ提供を受ける側の環境を考えて最善策を検討する必要があると思う。

      【委員】

       現状では、InDesignやQuarkXpressなどのデジタル化が進んでいる一方で、写研システムやフィルムで作業をしている教科書発行者もあると聞いている。PDFデータの提供を省令等で義務付けるに当たっては、こういったことにも留意が必要。

      【委員】

       フォントを認識させてPDFデータを作るということは最低限のルールになるが、現行は、多少の困難性はあるとしても、PDFでデータ提供をするということについては、概ねこれでよいと思う。

      【委員】

       PDFデータをコピー・アンド・ペーストする際に範囲指定が大変だということについては、この2、3年の間で、教科書発行者もしくはデータ管理機関がアクセシブルPDFにするための順番をタグ付けすることができれば、さらによいと思う。

      【委員】

       現在、ボランティアが作成している紙媒体の拡大教科書は全体の80パーセントを占めているが、教科書発行者が作成するものと逆転を図っていただきたいと心から願っているし、フルカラーでより大多数の子供たちが選択できる拡大教科書を作っていただきたいと思っている。そうすれば、例えば30ポイントや40ポイントの文字を必要としていたり、色覚の特性に配慮しなければならない児童生徒に対して、我々の原点であるプライベートサービスに回帰できると思う。

      【委員】

       まずPDFデータを提供するということでよいのではないかと思う。ただ、時代により、新たな形式が出てきた場合は、その都度修正をする必要があると思う。

      【委員】

       これまでの会議で意見が出された電子教科書、ワンソース・マルチユース、教科書データのサーバーでの集中管理などを実現することができれば、障害を持った方々だけではなく、一般の方々にもメリットがあることだと思ので、そのような研究をする必要があるということを提言してはどうか。

      【委員】

       文字認識されたPDFデータの提供については、多少の困難はあっても、教科書発行者としては対応可能であるという話であったと思う。さらにデータにタグ付けをするということについては、現行教育課程の教科書で考えてというのは難しいかもしれないが、新教育課程教科書では対応すべきではないか。また、マークアップ言語を導入すれば数種類の拡大教科書も作りやすくなるし、マルチメディアデイジーへの対応も容易になると思う。

      【委員】

       教科書のユニバーサルデザイン化につながるようなマークアップ言語で書かれたデータの作成については、将来的な研究課題としては当然必要だと思うが、新教育課程は平成23年度の実施となるため、来年の春に教科書検定に出すことを考えれば、もう1年を切っている。各教科書発行者の現状や期間的なことを考えると、努力目標として提示することはできるが義務として課すことは、現実的にはかなり難しいと思う。

      【委員】

       将来的にはワンソース・マルチユースという考え方は、当然持っていなければならないが、各教科書発行者の事情や経営戦略によるところが大きいため、今から標準化をして決めていくというのはなかなか難しいのではないかと思う。

      【委員】

       一般的には、最終的に新年度の4月から供給される教科書の内容と全く同一のデータを全部そろえるということを考えれば、ボランティア等に対してPDFデータを提供できるタイミングは、平成23年の1月か2月になるのではないか。しかし、それでは今回の趣旨に沿わないため、教科書発行者が100パーセントとは言えないまでも提供できる時期と、ボランティア等がデータを必要とする時期について、しっかりと調査をする必要がある。また、その後何らかの変更があった場合に、その変更の情報をどのように伝えるかということも重要。

      【委員】

       新教育課程に向けたデータ提供方法については、教科書発行者の間で統一したマークアップ言語を導入することの可能性などを含め、引き続き詳細に調査研究を行うべきではないか。

      【委員】

       既に小学校の教科書は作り始めているということであれば、小学校はあきらめて、来年中学校を作り始める段階から、新しいルールに基づいてよりよいものを作っていくということも考えられるのではないか。

      【委員】

       XMLであれば、そこからPDFにも変換でき、現行教育課程でPDFを渡すことと同様に新教育課程でもボランティア等に渡すことができる。

      【委員】

       各教科書発行者によって、ページや章のつくりが異なることが考えられるので、マークアップ言語によるファイル形式を用いる場合には、そのタグ付けに関することについて各社共通のルールを定めなければならないと思う。その際、どこかが取りまとめをして、このタグは何を付けるということを決めなければタグ付けはできないため、簡単にはできないのではないかと思う。

      【委員】

       教科書発行者にとっては、提供したデータを不正流用されないよう管理していくということが一番大きな問題であり、そのようなことが保証されなければデータを提供することについてはかなり危惧をするのではないかと思う。

  • (2)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

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初等中等教育局教科書課