高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループ(第7回) 議事要旨

1.日時

平成21年2月6日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2共用会議室

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

香川主査、大内委員、太田委員、齋木委員、土屋委員、永田委員、橋本委員、松浦委員、村上委員、安元委員、宇野委員、大旗委員、齋藤(肇)委員、齊籐(美)委員、花香委員、山田委員、渡辺(能)委員

文部科学省

永山特別支援教育課長、美濃特別支援教育課専門官、池尻特別支援教育調査官、新津教科書課課長補佐、三輪教科書課課長補佐

5.議事要旨

(1)事務局から著作権法の解釈について説明があった。

(2)議題に対する自由討議が行われた。主な意見は以下のとおり。

【委員】
 報告案に示された内容は、全体として、弱視生徒のニーズを踏まえた記述になっていない。また、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」や「国連障害者の権利条約」とも整合性がとれておらず、整理が必要である。さらに、例えば、来年度高校に入学する弱視の子どもをもつ保護者からは、拡大教科書の必要性が聞かれるところであり、実態を踏まえた対応が必要である。

【委員】
 全国盲学校長会のアンケート調査結果と私が勤務する学校の状況とを比較すると、類似の結果といえる。このことから、報告案は、弱視生徒のニーズを踏まえたものといえるのではないか。

【委員】
 これまで、この会議では弱視生徒に対して拡大教科書を提供したり、デジタルデータを提供したりするなどの対応策が検討されてきたところであり、これらについて、報告案にしっかりと明記されている。このことから、報告案で示された内容は、これまでの議論や弱視生徒のニーズを踏まえたものといえるのではないか。

【委員】
 拡大教科書の在り方について、視覚補助具やその他の情報機器等の活用と併せて、実証的な検証を行う必要がある。

【委員】
 弱視生徒の一人一人のニーズを踏まえて、環境を整備することが重要であり、優先順位が低いからといって保障しなくてよいということではない。

【委員】
 弱視生徒のニーズを把握して、段階的にその時点での状況を踏まえながら、具体的な対応策について検討を行うことが重要である。

【委員】
 確かに、弱視生徒のために環境を整備することは重要である。しかし、ニーズを把握するといっても、指導する立場や子どもの立場から、さらに、中・長期的な視点からなど、様々な観点からの調査が必要であり、容易ではない。そのため、今後の対応について慎重に検討する必要がある。

【委員】
 単純拡大教科書の作成を否定しているのではない。軽度の弱視生徒には有効な場合があるが、それだけですべての生徒に対応できるとは限らない。

【委員】
 具体的な対応策として、拡大教科書の作成についての記述があるが、単純拡大教科書についての記述しかないため、対応策がそれしかないという印象を与えてしまう。

【委員】
 数値などに最新でないデータが含まれているため、新しいデータに基づいて記載すべきである。

【委員】
 特別支援学校(視覚障害)については、全国盲学校長会のアンケート調査結果に基づいて対応策を検討しているが、高校については、現状を把握するために、実態調査を行う必要があるのではないか。

【委員】
 高校段階の特徴として、弱視生徒の特徴をより詳しく明記することで、拡大教科書について多様なニーズがあることを示してはどうか。そして、それらの多様なニーズに対応するため、単純拡大教科書を増やしたり、電子教科書を試行したりするなどの具体的な対応策につなげていくことが考えられる。

【委員】
 平成21年4月に教員に教科書デジタルデータを提供することは、法律上可能なのか。

【事務局】
 法律の解釈については、現在検討中である。ご質問の点は、法律に基づいて教科用特定図書等を発行する者として学校に教科書デジタルデータを提供できるかどうかによる。

【委員】
 高校において、特別支援学校(視覚障害)のセンター的機能を活用して、拡大教科書作成のための助言を得たり、生徒への拡大教材の提供を受けたりするなどの対応が考えられるという記述は、高校が受け身にならないよう、「積極的な対応が求められる」とすべきである。また、特別支援学校(視覚障害)高等部において、教員等がボランティア団体等を「積極的に」サポートする旨を記載すべきである。

【委員】
 法律で規定するデータ管理者は、文部科学省であると解釈してよいか。また、データ管理者から、各学校にデータを提供する際には、都道府県教育委員会を経由せずに行うのか。

【事務局】
 ご質問の点については、現在検討中である。都道府県教育委員会を経由する方法と、経由せずに直接学校にデータを提供する方法が考えられる。

【委員】
 可能であれば、都道府県教育委員会が関与する方向が望ましい。それに併せて、都道府県教育委員会が弱視生徒の状況を把握できるとよい。

【委員】
 データ提供対象者は「希望する高等学校」とされているが、範囲が広すぎるため、「教科用拡大教科書を独自に作成する高等学校」のようにしてはどうか。

【委員】
 セキュリティーの問題については、どのようなことを行うのかを具体的に記載しないと、発行者が実務的な面を先送りしてしまうという危惧がある。

【委員】
 PDF形式のデータの作成について、「教科書発行者にとっての負担が少ない」という記述があるが、これは、作業的な手間のことか、経費面のことか、あるいは両方を指しているのか。

【委員】
 教科書デジタルデータ提供促進ワーキンググループにおいて、PDF形式のデータの作成は、教科書デジタルデータの作成と比較して、時間的・経費的な負担が少ないことから、現状ではPDF形式のデータの作成が適切ではないかとの結論が出たという経緯がある。

【委員】
 これまでの経緯については、今のご説明のとおり、比較的負担が少ない方法として、PDF形式のデータが考えられてきたということである。ただし、比較的という文言がいつの間にか取れてしまったということを付け加えておく。

【委員】
 現在、PDF形式のデータへの転換は、ソフトで行えるようになっているが、教員はソフトの使い方が分からないことが多い。このような状況を踏まえると、PDF形式のデータだけでなく、テキストデータ、JPEG形式が教員にとって使い勝手がよいといえる。

【委員】
 PDF形式のデータを提供する際には、必要に応じ、JPEG形式による画像データを併せて提供するという記述があるが、「必要に応じ」とは、後からの要請があれば、JPEG形式のデータも用意すると解釈してよいか。

【委員】
 教科書会社のDTPソフトによっては、例えば、コピーができなかったり、テキストが入っていたりするなど、PDF形式のデータの質に差が出てしまうことがある。このため、まずはPDF形式のデータを作成し、それと同じJPEG形式のファイルを作成しておけば、PDF形式のデータからコピーができない場合でも、JPEG形式のデータから必要なデータを取り出すことができるということである。

【委員】
 教科書発行者が用意するデジタルデータは、PDF形式とJPEG形式の2つのデータであるということであれば、「必要に応じ」は削除してもよいのではないか。

【委員】
 特に国語、英語などの分量が多い教科を中心に、PDF形式のデータから、テキスト形式のデータを抽出した上で、ボランティア団体に提供するような支援策という記述があるが、高校の場合には、義務教育段階と比較して、すべての教科で教科書の分量が多いことから、特定の教科を例示する必要はないのではないか。

【委員】
 各学校で拡大教材を作成するに当たって、施設整備が必要となることから、予算措置が必要である。

【委員】
 データが第三者に流出した場合などについて、「違反者に対してはそれ以降のデジタルデータ提供を行わないペナルティ」と示されているが、本来ペナルティとは違反した者に対して行われるものである。原案のままでは、拡大教科書を必要とする生徒に拡大教科書が提供されないということになりかねない。また、発行者にとっての「ペナルティ」は、場合によって、損害賠償ということもあり得る。

【委員】
 デジタルデータの提供時期によって、学力に支障を来さないようにという記述があるが、この点は、制度上の問題によるところが大きいのではないか。

【委員】
 データ管理機関から教科書デジタルデータを受ける者は、認定ユーザーとして認定を受けるとあるが、認定ユーザーとして想定しているのは、校長か、それとも各教員か。学校で運用する際には、校長が認定ユーザーとなり、教員が必要なときに教科書デジタルデータを使用できるようにすることが望ましい。

【事務局】
 すでに実施している義務教育段階の状況をいえば、個別のボランティア団体を認定ユーザーとして認定し、各ボランティア団体に1つのパスワードを発行し、そのメンバーが共通のパスワードを使用するという方法で実施している。高校の場合も、学校を認定ユーザーと考えて、学校に1つのパスワードを発行することになるのではないかと考えている。

【委員】
 全国盲学校長会のアンケート調査結果にもあるとおり、教科書デジタルデータの提供に対する学校や生徒のニーズはかなり高いと考える。高校段階では、多くの生徒が自分でデジタルデータを活用する力は身に付いていると思われるので、将来的には、パソコンの画面上で自分でデジタルデータを操作しながら見るということが現実的になるのではないか。

【委員】
 校内で障害のある児童生徒に対する理解が進んでいないため、弱視の児童生徒が希望する支援を受けられない場合もあると聞いている。このため、該当の児童生徒が適切な支援を受けられるようにすることが大切である。

【委員】
 拡大教科書は、検定教科書に代わるものという扱いなのか、それとも副読本という扱いなのか。

【事務局】
 検定教科書に代わるものという扱いになる。

【委員】
 特別支援学校(視覚障害)については、無償給与制度があるため、検定教科書に代えて拡大教科書を使用することができる。これに対して、高校については、無償給与制度がないため、検定教科書又は拡大教科書を購入する際には、自己負担をしなければならいない。この状況がこの4月から始まるという認識でよいか。

【事務局】
 この点については、今後の検討課題であるが、特別支援学校(視覚障害)と高校における生徒の拡大教科書の取扱い、国と都道府県の役割分担などについて整理した上で、必要な予算措置を行うなど対応していきたいと考えている。

【委員】
 単純拡大のポイント数は、原本を1.2倍又は1.4倍にした場合には、12ポイント又は14ポイントになるということか。そうであれば、標準規格の場合、1.2倍にすると約4ポイント大きくなるが、原本が10ポイントであれば、2ポイントしか上がらない。また、30ポイントだと6ポイント上がる。さらに、原本教科書の1.7倍の拡大教科書を作成するのであれば、教科書を開くとB3版となり、机上でかなりの場所を占めることになることも考慮すべきである。

【委員】
 デジタルデータの提供時期として、「10月頃が望ましい」とあるが、この時期であれば、見本本のデータでも構わないということか。

【委員】
 学校では、供給本のデータ、つまり最終確定版でないと混乱してしまう。

【事務局】
 当該箇所は、義務教育の第一次報告と同じ書きぶりにしている。改訂期には、必ずしも10月に供給できない場合もあることから、「原則として」という文言を付け加えている。

【委員】
 供給本ができあがる段階のデジタルデータも提供してもらえるという理解でよいか。

【委員】
 高校において、提供されたデジタルデータを使って教員が教材を作成した場合は、法律の趣旨に反するのか。

【事務局】
 ご質問の点については、デジタルデータから教材を作成するという行為が教科用特定図書等の発行といえるかどうかということであり、現在検討中である。

【委員】
 高校で、特別支援学校(視覚障害)のセンター的機能を活用して弱視生徒の指導を行うのは困難ではないか。全国的に見ると、中学校や高校では、センター的機能を活用した指導はまだ十分に行われていない。このため、高校で特別支援教育を推進するためには、支援員を配置するなどの対応が必要ではないか。

【委員】
 高校等で特別支援教育に関する校内体制の整備を充実するに当たっては、大学や医療、福祉等の関係機関と連携を図りながら行うことを明記すべきである。

【委員】
 高校段階の拡大教科書等の普及推進のための財政支援とは、誰に対する支援を想定しているのか。学校に対する支援なのか、購入者に対する支援なのか、発行者まで含めた支援なのかが不明確である。特に、高校の場合には、無償給与制度がないことから、単純拡大教科書を作成するだけでも、実際には相応の費用がかかるという実態がある。

【委員】
 高校に教科書デジタルデータが提供されたとしても、教員がそれをしっかりと使いこなせないとあまり意味はない。また、希望する生徒に拡大教科書を提供するに当たっては、生徒の実態を把握し、それに基づいて適切な支援を行うとともに、その具体的な方法等についても検討する必要がある。

【委員】
 例えば、拡大教科書1冊につき、数百万円程度の基本費を保障するシステムをつくれば、出版社にとっても、売り上げをあまり気にせずに、レイアウト変更した拡大教科書の作成に着手しやすくなるのではないか。

【委員】
 高校では、校長の意思や教育理念等によって、障害のある生徒への対応が大きく変わってくると思われるので、特別支援教育に関する校内体制の整備の充実には、例えば、「校長をはじめ全教職員」のような文言を盛り込んで、校長を含めた学校全体で障害のある生徒に対する共通理解を図ることを示してはどうか。

【委員】
 高校の場合には、標準規格を定めていないと認識しているが、報告案で示されている「標準規格」とは何を示すのか。また、「単純拡大教科書」と「拡大教科書」の用語の使い方を整理する必要がある。

【委員】
 高校において単純拡大教科書の作成を想定しているのであれば、単に原本教科書を拡大しただけであるため、拡大教科書等の使用の手引きは必要ないのではないか。

【委員】
 拡大教科書を作成するに当たっては、少しでも多くの学校で活用されるようにすることが大切である。そのため、教科書目録や拡大教科書の目録に加えて、リーフレットを作成・配布するなどして理解啓発に努めることを盛り込むべきである。また、校内体制の整備については、特別支援教育の体制に加えて、教科書事務担当者の役割についても明記すべきである。さらに、高校における拡大教科書の作成に当たっては、モデル事業を実施するなど、継続的な検証を行うことが重要である。

【委員】
 「生徒の視機能を適切に評価した上で、拡大教科書を使用するか、それ以外の学校やボランティア団体等が製作する拡大教科書を使用するか判断する」という記述があるが、中学校では、視機能を適切に評価することが困難な場合も考えられることから、特別支援学校(視覚障害)のセンター的機能を活用して行うという視点を盛り込むべきである。また、都道府県教育委員会の教科書担当者に対して、拡大教科書の法制度、使用法などについて幅広く周知徹底に努めることが重要である。

【委員】
 特別支援学校(視覚障害)高等部の弱視生徒のニーズ調査を早急に実施したいと考えている。全国盲学校長会に実施してもらいたいが、本会議から要請してほしい。

【委員】
 弱視生徒のニーズは非常に多様であることから、全国的な調査を実施する場合、ニーズとは何かを明確にし、結果からそれが正確に判断できるようなものを実施すべきである。

【委員】
 調査については、全国盲学校長会の判断で実施していただいて構わない。

(3)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

(以上)

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