高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成20年7月14日(月曜日) 14時~16時

2.場所

金融庁9階 共用会議室1

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

 香川主査、大内委員、大賀委員、太田委員、齋木委員、土屋委員、永田委員、橋本委員、松浦委員、村上委員、守屋委員、安元委員、大旗委員、渡辺(能)委員

文部科学省

 伯井教科書課長、永山特別支援教育課長、水野特別支援教育課専門官、池尻特別支援教育調査官、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐

5.議事要旨

(1)事務局から資料についての説明の後、4名から特別支援学校(視覚障害)におけるこれまでの取組、高校教師用指導書添付デジタルデータの現状、小・中学校の弱視特別支援学級及び弱視通級指導教室の実態について

 説明があった。主な概要は以下のとおり。

ア A特別支援学校(視覚障害)

  • 高等部在籍生徒の約7割が墨字教科書を、約3割が点字教科書を使用している。
  • 学校卒業後は、すべての書物が拡大されているわけではないことを見据えて、自分の力でいろいろな機材を使いながら読み取ることを基本的な方針としている。
  • 自立活動や各教科の時間の中で、生徒のニーズに応じて、ルーペ・拡大読書器・ピンディスプレーなど様々な視覚補助具を活用しながら、教科書などを読むようにしている。
  • ルーペは、読むことはできるが、書く時に見えなくなるという欠点があるが、小・中学部段階からルーペを使った訓練をすると非常に速く読むことができるようになる。
  • 拡大読書器は、カラー、白黒、白黒反転ができたり、読む際に拡大するだけでなく、自分の文字を拡大しながら書いていくことができるなどのメリットがある。
  • 文字を拡大すればよいというわけでなく、真ん中しか見えない生徒の場合は、文字を小さく加工して授業を行うこともある。
  • デジタルデータをもとに、教材を拡大したり、縮小したりして活用している。できるだけ加工しやすいデータがあるとよい。

イ 高校教師用指導書に添付されているデジタルデータの概要

  • 高校は、小中学校に比べて、教員が自作のプリントや問題を作ることが多く、教科書デジタルデータの需要が大きい。
  • 高校普通教科の7割以上で教師用指導書にデジタルデータが添付されている。科目や書目によって若干差はあるが、何らかの形で拡大教科書などに使う場合にも転用できる部分が一定程度ある。
  • 教科書出版社からは、高校では、PDFに加えて、ワード、一太郎などの形式でデジタルデータを提供することが望ましいという回答が少なからずある。
  • 外字、漢文のデジタルデータ化については、各教科書会社で統一された方法がとられていない。
  • 外字については、JIS規格が変わり、これまで対応されていなかった字体の多くが、標準的に対応できるようになりつつある。
  • 数式や化学式は、ほぼワードの数式エディタで対応が可能である。しかし、長い数式など行替えが必要な時には対応が困難な場合もある。

ウ 小中学校の弱視特別支援学級、弱視通級指導教室の実態

  • 児童生徒の約9割が教科書において、普通文字を使用している。
  • 視覚補助具は、多い順に単眼鏡、近用ルーペ、拡大読書器が活用されている。何も使用しない者もいた。
  • 弱視特別支援学級の約4割、小学校通級指導教室の約7割、中学校通級指導教室の約6割が、単眼鏡と近用ルーペを併用している。
  • 小学生から中学生へと学年が上がるにつれて、拡大教科書を使わずに原本だけを使う生徒が多くなる傾向がある。また、小学校と中学校とを比べると、中学生の方が視覚補助具の使用が上手にできるという分析がされている。
  • 教科書の使用状況は、多い順に原本拡大教科書だけ、原本と拡大教科書の併用、原本と写本の併用となっている。

(2)議題に対する自由討議が行われた。

 主な意見は以下のとおり。

【委員】
 デジタルデータの提供は有効な方法であるが、通常の高校では、弱視の生徒がパソコンを持ち込んで勉強したり、デジタルデータから教材を作るのは負担が大きいと思われる。そこで、希望する生徒には紙媒体で教科書を渡すような仕組みがあればよいと考える。
例えば、まず、学校において生徒のニーズを把握し、どの教科で拡大教科書が必要かを都道府県教育委員会に伝える。そして、都道府県教育委員会からそれを文部科学省に伝え、文部科学省から教科書発行者に伝えるという仕組みはどうか。
また、高校では、教科書のレイアウトを変えず、そのまま拡大したものが授業の中で有効と考える。

【委員】
 高校の場合、教科書の使い方が様々であり、ページ数やレイアウトを変えない方がよい。現在、高校の教科書はA5判が多いが、それをA4やB4に単純拡大することは技術的に見てどうか。

【委員】
 教師用指導書には、PDFでデータを提供しており、プリンタが対応していれば必要な箇所を必要な大きさで印刷することができる。PDFデータがあれば、生徒の机上のパソコンで拡大表示することができるし、必要な時に必要な箇所だけを印刷することもできる。

【委員】
 単純拡大には、原本やPDFから拡大印刷する方法や発行者の持っているDTPからオンデマンド印刷する方法がある。発行者が拡大コピーをすると教科用特定図書に該当し、保障金がかかるのではないか。一方、発行者の提供するデータを活用して、ボランティアが作成する場合は保障金はかからない。そのあたりの制度的なことについても検討する必要があると思う。

【委員】
 単純拡大は、すでにボランティアグループで取られている方法であり、特別難しいことはない。ただし、単純拡大だけでは、生徒のニーズに応えられない。小・中学校では、デジタルデータを編集し直して紙媒体で提供している。このように、編集し直したデジタルデータを生徒に提供し、パソコンで見られるようにする方法も考えられる。

【委員】
 高校段階では、ボランティアがあまり介在しないため、コピー代が本人の負担になってしまう場合があり得る。費用の負担について何らかの支援はできないか。

【委員】
 以前、一般企業に勤める弱視の方の職種について聞き取り調査をしたことがある。多くの方が一般事務であり、拡大読書器やパソコンを活用しないと仕事がうまくいかないという状況であった。高校や特別支援学校(視覚障害)高等部において、必要な拡大を自分でどのように行うのか、どのように見やすくするのかという教育も必要ではないか。

【委員】
 高校の教科書は多岐にわたっており、すべてを拡大教科書で対応することは困難である。また、将来に備えて視覚補助具の活用も必要である。このことからすれば、生徒に必要なものは電子データである。なお、高校の教員が生徒の実態を把握していないことも想定されることから、デジタルデータを提供して、必要な部分をビジュアル化したり、コピーしたりしながら、生徒の実態を正確に把握することが大切である。また、教育委員会が中学校卒業か高校段階で生徒の実態を把握しながら、紙媒体で提供していく体制も必要ではないか。

【委員】
 高校生が自分で教材等を準備できればよいが、現実には教員が準備しており、支援対象者が増えた場合には、専門性を有する人を配置するなどの対応が必要となる。

【委員】
 最低限必要なのは、できるだけ原本を網羅したデジタルデータである。そのデータがあった上で、生徒の実態に応じて必要な拡大を行ったり、視覚補助具を活用したり、拡大教科書を作成したりすることになると思う。

(3)事務局より今後の日程について

 説明があり、閉会となった。

(以上)

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(初等中等教育局特別支援教育課)