高校における弱視生徒への教育方法・教材のあり方ワーキンググループ(第1回) 議事要旨

1.日時

平成20年5月27日(火曜日)10時~11時30分

2.場所

文部科学省東館3階2特別会議室

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

香川主査、大内委員、大賀委員、太田委員、齋木委員、土屋委員、永田委員、橋本委員、松浦委員、村上委員、守屋委員、安元委員、大旗委員、柴崎委員、渡辺(能)委員

文部科学省

伯井教科書課長、永山特別支援教育課長、水野特別支援教育課専門官、池尻特別支援教育調査官、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐

5.議事要旨

  • (1)事務局から、拡大教科書普及推進会議座長の香川委員が本ワーキンググループ主査に指名された。
  • (2)事務局から資料についての説明の後、4名の委員から高校及び特別支援学校(視覚障害)におけるこれまでの取組について説明があった。説明の概要は以下のとおり。
    • ア A高等学校
      •  2学年に1名の弱視生徒が在籍している。座席を窓際の前列にしたり、大きな机にするなどの配慮を行っている。拡大教科書については、ボランティアの方により、昨年度は5教科作成したが、今年度は現時点で2~3教科作成したところである。拡大教科書が作成されていない教科については、ルーペ・単眼鏡・拡大読書器を使用している。拡大教科書にかかる費用は、昨年度は保護者負担であったが、今年度は一定額までは公費で措置している。学校では年度当初に職員会議で、教材制作の際の文字の拡大や板書時のチョークの色など、当該生徒を指導する際の配慮事項について確認を行った。
    • イ B高等学校
      •  1学年に1名の弱視生徒が在籍している。世界史、化学1、英語1の3教科について、それぞれ別のボランティアが拡大教科書を作成している。この3教科以外については、ルーペ・単眼鏡を使用している。また、教科書の拡大コピーや試験問題用紙の拡大などを行っている。
    • ウ C高等学校
      •  2学年に1名の弱視生徒が在籍している。拡大教科書は使用していない。生徒の希望を踏まえ、座席を1番前にしているほかは、特別な配慮を行っておらず、日常生活は他の生徒と変わらない。
    • エ D特別支援学校(視覚障害)
      •  特別支援学校高等部(本科)在籍生徒25名のうち、12名が弱視の生徒である。そのうち8名が高校と同じ科目を学習しており、1名が教科書の文字を16~22ポイントに拡大した拡大教科書を使用し、7名が部分拡大した検定教科書とルーペ・単眼鏡・拡大読書器を活用している。専攻科では理療科教科書が16ポイントで作成されていることから、この教科書とルーペ等で学習している。高等部段階における膨大な知識量を、拡大教科書として活用することは困難と思われる。
  • (3)議題について自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。

    【委員】

     特別支援学校(視覚障害)高等部と高校に弱視生徒はどのくらいいるのか。

    【事務局】

     高校の弱視生徒数については把握していない。また、特別支援学校(視覚障害)については、弱視と全盲の生徒を併せた数は把握しているが、それぞれの数は把握していない。

    【委員】

     特別支援学校(視覚障害)全生徒の約6割が弱視の生徒と言われている。

    【委員】

     本県の公立高校についてみれば、視覚障害に関して入試時に何らかの配慮が必要となった生徒が各学年2名ずついる。

    【委員】

     公立高校では、弱視生徒であっても、入試の成績が一定以上であれば、障害という点は考慮せずに合格という取扱いをしているのか。

    【事務局】

     各都道府県では、障害のある生徒の高校入試に当たっては、中学校と協議しつつ必要な配慮をしていると聞いている。

    【委員】

     高校の拡大教科書については、小中学校の拡大教科書のノウハウを生かした上で、高校の特性も踏まえて作成をしてはどうか。多様な種類の教科のすべてに対応することは困難なため、教科に応じた基本的な原則を明示してはどうか。生徒一人一人のニーズに対応するためには、通常の教材をいかに効果的に活用するかが大切であり、そのための配慮事項を整理してはどうか。

    【委員】

     高校の教科書は種類が多く、拡大教科書として紙で対応するのには限界がある。このため、デジタルデータやPDFなどによる措置について検討してはどうか。

    【委員】

     教科書の内容のデジタル化も一つの考え方だと思う。

    【委員】

     高校の普通教科の教科書指導書には、ほぼデジタルデータ(本文のテキストデータ)が添付されており、これをボランティアが購入して活用することも考えられる。テキストデータ提供の仕組みはあるが、あまり活用されていないのが実情である。高校は小中学校に比べて多様化しており、一つのシステムだけでは対応が難しいことから、どのように高校の支援をしていけばよいか、この会で検討していただきたい。

    【委員】

     高校の教科書は種類が多いので、ボランティアだけで対応するのは困難である。小中学校の教科書であればボランティアでも内容を理解することができるが、高校になると理解できない場合も考えられる。高校の教科書の内容の量が多いので、短期間で拡大教科書を作成することは困難である。デジタルデータの提供だけでは、どこまでカバーできるか疑問である。

    【委員】

     特別支援学校(視覚障害)高等部と高校では、拡大教科書の使用について、生徒の考え方や支援の仕方など条件が異なってくると思う。そのため、生徒が必要とするものは何か、デジタルデータはなぜ使われないのかなどの情報を集める必要がある。

    【委員】

     日本の大学・短大における障害者の占める割合は米国に比べてかなり少ない状況にある。東京大学の先端科学技術研究センターでは、障害のある学生に対して、コンピュータや支援機器を提供するプログラムがある。こういったものを参考にして、今後はパソコンを使った学習もあり得るのではないか。

    【委員】

     高校での拡大教科書の実物を見て、その上でどこまで対応できるのか検討してはどうか。拡大教科書などの印刷物でなくてはいけないのか、データを提供し、パソコンを使った学習をすることはどうかといったことについて検討してはどうか。

    【委員】

     単純拡大であれば授業に差し支えないが、レイアウトが変わった場合にはどうするのか。PDFのデータをパソコン上に表示すれば必要な大きさに拡大でき、レイアウトも変わらないので、その方が良いと思うが、生徒の使い勝手はどうか。社会に出た時のことも考慮すれば、PDFの活用について検討してはどうか。

  • (4)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

(以上)

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