拡大教科書標準規格ワーキンググループ(第3回) 議事要旨

1.日時

平成20年7月4日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省東館3階1特別会議室

3.議題

  1. 拡大教科書の標準規格について
  2. その他

4.出席者

委員

千田主査、市川委員、宇野委員、遠藤委員、金子委員、小宮委員、齊藤(美)委員、澤田委員、鈴木委員、高柳委員、武内委員、手塚委員、細谷委員、渡辺(能)委員
大旗委員

文部科学省

伯井教科書課長、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐、水野特別支援教育課専門官

5.議事要旨

 主な意見は次のとおり。

  • (1)拡大教科書の標準規格等について

     ボランティア団体作成による拡大教科書の文字の大きさとこれまでの意見等の整理について説明の後、意見交換が行われた。

    • 自由討議

      【委員】

       拡大教科書を作成した経験のない教科書発行者が多いため、詳細な情報は必要だが、教科書発行者が拡大教科書を作成する努力義務を果たしやすいようなものが必要。その意味では、標準規格は、ある程度概括的で、様々なバリエーションが認められる余地のあるものがよいのではないか。一方で、よりよい拡大教科書を作成するため、事例集や参考仕様などにおいて様々な詳細な情報や提案を盛り込まれるようにすることが必要。

      【委員】

       基本的にどの会社も共通的に守るべき事項と、質の向上のため努力すべき事項という形で分類し、モデル集ではレイアウトの方法などを具体的に示せばよいのではないか。

      【委員】

       判の大きさと文字のポイントは、原本教科書の判の大きさをベースにすると説明があったが、教科書の判は概ね大判化に向かっており、大きさもB5やA4など違いがあるため、それをベースに22ポイントで作成すると、オンデマンドの効果が出にくい。例えば、A4の教科書をB4まで広げると、現実的には大き過ぎる判になってしまう。まちまちな原本教科書の判の大きさをベースにするのではなく、弱視児童生徒の多くのニーズに照らし合わせた上で考えていくべきではないか。

      【委員】

       B5の22ポイントで作成したものは、A4にすれば26ポイントになる。そのような、ある程度共通的なルールにした方が、実際に教育現場や教育委員会などで事務処理をする際にも扱いやすいのではないか。

      【委員】

       22ポイントの1種類を作成するということについては、非常にもったいないと思う。オンデマンド印刷を利用すれば、教科書発行者に大きな負荷をかけずに1種類作成したものを一回り大きく、又は小さくできる。

      【委員】

       標準規格における弱視児童生徒の主たる対象を、視力で表示するのではなく、ある程度大きくすれば見やすい人たちということで提示していることについてはよいと思う。

      【委員】

       B5を標準にしてオンデマンドで拡大、縮小することで、文字のタイプを多様にできるということは、大変効率的なよい案だと思う。一方で、現状では、ほとんどの教科書がB5判だが、一部にA4判やAB判、B5判よりも幅の広いB5ワイド判という判型の教科書も増えてきている。このような教科書が、A5判という二回りぐらい小さな拡大教科書になることが適切かどうか疑問がある。16ポイントから30ポイントまでの3タイプを用意することを義務づけると対応は苦しくなるであろうから、標準として22ポイントとするのがよいのではないか。

      【委員】

       B5判をA4判にすると文字の大きさは16ポイントになるが、18ポイント以下の使用率は非常に低い。

      【委員】

       誰を対象にするかと考えた場合、弱視児童生徒だけであれば1,700人強だが、これに学習障害等の人も含めると文字の大きさ自体も変わってくるのではないか。

      【委員】

       発達障害の児童生徒は拡大教科書が使いやすいという声も聞いているが、発達障害の児童生徒にどのような教材を提供することがいいのかということは、法律においても今後研究していくこととされたところであり、まずは弱視児童生徒をターゲットを絞った議論をすべきではないか。

      【委員】

       単純拡大では軽度の弱視の児童生徒しか対象とならないということは明らかであり、レイアウトを組み替えたものが、拡大教科書の標準規格のメインになると思う。

      【委員】

       教科書出版者がレイアウトするのは1種類であり、オンデマンド印刷で3種類を作るというもの。3種類の判で作成するということは現実的ではないと思う。

      【委員】

       低学年で26ポイント、高学年で22ポイントと分けられているが、オンデマンド印刷であればまとめて作ることができるため、低学年、高学年というくくりも必要ではなくなる。低学年でも、26ポイントでは大き過ぎる場合もあるし、22ポイントでは十分読めないという高校生もいる。学年によってポイント数を組み替えるのではなく、できる限りたくさんの種類を作成して、大きな受け皿を作っておくことが大切。

      【委員】

       メインは22ポイントや26ポイントということになるが、16ポイントや18ポイントが適切な児童生徒の教科書を22ポイント判を一回り小さくした形で作るのか、原本教科書の判を大きくしたもので16ポイント程度を作るのかということについては、教科書発行者に大きな負荷とならない方法で対応すればよいと思う。

      【委員】

       1,739人のうち、拡大教科書を給与されている634人以外の児童生徒は、おそらく軽度や中度の弱視者だと思う。この児童生徒も対象となることを考えれば、16ポイントや18ポイントのものをどのように作るかということについてもきちんと標準規格に盛り込むということが必要ではないか。

      【委員】

       単純拡大コピー判の場合、例えば脚注部分や新出単語が小さかったり、まちまちのレイアウトの不便さも出てくると思う。22ポイントを小さくしたものであれば、ほとんど同じポイントで、きちんとゴシック体等で書かれた文字が並ぶので、レイアウトを理解する上でよいというメリットもあると思う。

      【委員】

       22ポイントをベースにしたオンデマンド印刷については、おそらく教科書発行者にとって、大きな負荷はないと思う。ボランティア等については、現状でも30数ポイントとか、場合によっては40数ポイントのものを手書きしたり、パソコンで作っている現状がある。教科書発行者ベースで保証しにくいところはボランティアにデータ等を利用して作っていただく必要があるが、あくまでもメインは、教科書発行者ベースで保証すべきと思う。

      【委員】

       B5判、22ポイント拡大のレイアウトし直したものを作れば、それからいろいろなサイズのものをオンデマンドで印刷すること自体は、確かに追加コストはほとんどかからないと思う。ただし、判のサイズが変わった場合の著作権補償金の取扱いについて留意が必要。

      【委員】

       文字や分冊などについて細かく規定されると、巻末資料や分冊の扱いなど、本当に使いやすい本ができないことになるので、細かい内容については、参考仕様として示す方がよい。

      【委員】

       弱視児童生徒の見え方等を配慮して、ぜひ共通に盛り込む必要があるという絶対的なことは、一般原則として盛り込んだ方がよいと思う。

      【委員】

       標準規格に行間のことを全く記載しないということになれば、どのような行間がよいのか迷う。例えば、22ポイントの場合、行間は33ポイント程度がよいとするなど、多少柔軟性を持たせる形で表記をしておく方が、作りやすいのではないか。

      【委員】

       字体は、原則ゴシック体がよいと思っていたが、国語については、平仮名や新出漢字だけではなくて、本文も含めて教科書体の方がよいのではないかという声が、ボランティア及び教育関係者にもあるので、国語については教科書体をベースとしてはどうか。

      【委員】

       丸ゴシック体と角ゴシック体については、原則ゴシック体という表現にとどめ、あとは各社が持っているフォントを利用すればよいのではないか。

      【委員】

       標準規格の幅を大きく広げるべきだと思う。標準規格として決まる項目が多いという理由だけではなく、レイアウトなどで教科書発行者が編集する際、判断しながら作成しなければならない部分が多く、おそらく迷いながらやることになる。

      【委員】

       レイアウトは、弱視児童生徒が教科書をきちんと理解する上で非常に重要な部分。文字、図、イラスト、吹き出し等がいろいろある場合、学習の順序に従って、原則的には上から下、左から右というように読み進めて情報が入ってくることは、非常に大事なこと。編集担当者が配置を考える際に参考となるものを、モデル集などに示す必要がある。

      【委員】

       分冊は、持ち運びがしやすいように、厚さが2、3センチになるようなものは避ける必要がある。標準規格案にあるような、意味のまとまり、章段落の区切りという意味的な切れ目を考慮する必要があり、これ以上は分厚過ぎるという目安は示しておく必要がある。

      【委員】

       国語に関しては、教科書体を使い、児童生徒たちにきちんと日本の文化を伝えていく必要があると思う。

      【委員】

       レイアウトは、できる限り原本教科書の内容に沿ってというのは基本だと思う。しかし、拡大した場合には、必ずしもそのとおりいかないケースが出てくるため、配置の変更については、その教科書の教え方に則して行うこととするなど、比較的フリーハンドの部分を残しておく形がよい。

      【委員】

       章の表題を必ず左ページ行頭に配置するとあるが、右あけ・左あけ、縦書き・横書きの場合で異なるため、配慮する必要がある。

      【委員】

       図と写真の修正が必要だということはよく理解できるが、教科の特性によって、相当困難な教科が出てくると思う。共通事項としてあまり細かく規定されてしまうと、なかなか対応が難しくなってくる場合がある。標準規格は、品質を向上させるという面と、教科書発行者にとっては縛りになるという側面がある。標準規格や参考仕様、モデル集の内容を振り分ける際には、できるだけ現実的な形を考えるべきではないか。

      【委員】

       実践的モデル集については、教科書発行者が作るという表現になっているが、規模、時期、経費的な面も含め、ビジョンを明らかにする必要があるのではないか。

      【委員】

       添字という問題がある。例えば、漢文のレ点、一、二点、それから数学の指数、対数、化学のH2(水素)のような下付き文字、ルビもだが、そのようなものをどのくらいの大きさの文字で記載するのかということは、おそらく教科書発行者も非常に困ることではないか。大多数の弱視児童生徒の最大視認値、最大視認力、最小可読指標などの最大公約数的なものを参考にする必要があるが、以前調べたデータでは、割と多くの児童生徒が見えるのは、大体9ポイント、10ポイント程度だったと思う。見た目のバランスは変になるかもしれないが、重要なところであるので、何らかの形で規定する必要がある。

      【委員】

       字間は文字詰めをしないということについては、現在出版されている拡大教科書でさえ、様々な字間、行間がある。視覚障害教育関係者がきちんとある程度妥当な数字を出し、「なになに程度」という表現で示す必要があるのではないか。

      【委員】

       表紙と裏表紙に関する表記がないので、原本と同じものにして、分冊数は明記するということを標準規格案にも載せたらどうか。

      【委員】

       標準規格案は、これまでの議論が反映されており、よくできていると思う。このように、ある程度概括的に示し、細かいところは各社の工夫やモデル等の中で例示するということがよいのではないか。

  • (2)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

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