拡大教科書標準規格ワーキンググループ(第2回) 議事要旨

1.日時

平成20年6月19日(木曜日)15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁)9階 共用会議室3

3.議題

  1. 拡大教科書の普及推進について
  2. その他

4.出席者

委員

千田主査、宇野委員、遠藤委員、金子委員、小宮委員、齋藤(肇)委員、齊藤(美)委員、澤田委員、鈴木委員、高柳委員、武内委員、手塚委員、細谷委員、山田委員、渡辺(能)委員、大旗委員

文部科学省

伯井教科書課長、矢崎教科書課課長補佐、松木教科書課課長補佐

5.議事要旨

 主な意見は次のとおり。

  • (1)拡大教科書の現状等について

     「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」、ボランティア団体の作成による拡大教科書の文字の大きさ、これまでの意見の論点整理について事務局による説明。金子委員による「拡大教科書作成マニュアル」の基本的事項についての説明。また、これらについて意見交換が行われた。

    • <金子委員の説明>

      【委員】

       国立特別支援教育総合研究所において、外部の協力者、先生方の意見などを踏まえ、理科、社会の拡大教科書作成に関する研究をもとにマニュアルを作成した。

      【委員】

       対象となる弱視児童生徒の視力の程度については、それ以前の調査において非常に多かった視力0.1前後の児童生徒を対象とした。

      【委員】

       版の大きさは検定教科書と同じ大きさにした。例えば、A4判は見開きでA3判になるが、扱う際に厄介であるため、検定教科書と同じB5判とした。

      【委員】

       文字の大きさについては、これまでの研究を基にして、小学校の低・中学年では26ポイント、小学校4年生以上では22ポイントを中心にした。書体については、中太の丸ゴシック体を使うことを基準とした。

      【委員】

       社会や理科の教科書はカラーでないと理解されないものがあるので、フルカラーで編集することとし、印刷は、必要としている児童生徒に対応できるよう、オンデマンド印刷という形で行うこととした。

      【委員】

       見開きにした際、紙面が全部フラットになるということ、あるいは書見台に置けるということを考え、製本の方法については、リング製本とした。

      【委員】

       原本教科書の趣旨を損なわず、可能な限り原本に忠実に作成することとした。ただ、写真や図表等の内容に即して、必要最小限の加除・修正を行うこととした。
       具体的には、原本の1ページの本文、解説文、ルビなどの文字要素を字体、大きさ、字間、行間などを規定のものに拡大、修正した上で、それ以外の要素としての写真、図などを内容に応じて、拡大・配置し、全体として数ページにおさまるようにした。

      【委員】

       1ページを何ページぐらいに拡大していくのか。1ページを2ページにということもあるだろうが、現実的にはおそらく1ページを数ページに拡大するという話になるだろうと思う。

      【委員】

       色については、何らかの基準を示す必要があると思うが、マニュアルでは、原則的に色をそれほどにいじるのではなく、多少コントラストを上げるという程度にした。その上で、色の違いがわかりにくい場合に、必要な箇所の修正を行うこととした。

      【委員】

       レイアウトについては、基本原則として、できる限り原本の流れに忠実にレイアウトすることにしているが、場合によっては配置を変更することとした。

      【委員】

       写真と図の解説文については、写真と図の理解を先に行うため、最初の方に置くこととした。

      【委員】

       写真、図などの拡大については、全てを一律に拡大するのではなく、詳しく情報を読み取る必要のあるものは拡大率を高く、そうでないものは拡大率を低くしたり、原本と同じ大きさにすることとした。

      【委員】

       マニュアルは、社会・理科中心であるが、教科によってそれぞれ違う部分があるため、それぞれの教科についてどうするのかということを考える必要がある。

  • (2)自由討議

    【委員】

     「拡大教科書作成マニュアル」は大変参考になる。しかし、最近の教科書は表現上の工夫もしてあり、構造がかなり複雑になっているため、例外的な事項が非常に多い。できれば標準規格の原則は原則として、あまり制限的なものが多く入らない方が、むしろ実践的なものができるのではないか。

    【委員】

     「拡大教科書作成マニュアル」は、平成14、15年の時点でまとめたものを、平成17年に一般にもわかりやすくなるようにまとめたものである。したがって当時とは、DTPの作業やデジタルデータの処理については大きく変わってきていると思う。

    【委員】

     「これまでの論点整理」の案は概ねそのとおりだと思う。ただ、疾病や学年が進むにつれて、もっと大きい字でなければ見えなくなる児童生徒もおり、個々人に合わせた字の大きさで作るということも重要。

    【委員】

     教科書発行者の編集者の意見を聞きながら、また編集者に弱視のことについて十分理解を深めていただきながら進めていただけたらよいと思う。

    【委員】

     標準規格の標準をどこに合わせるかということを議論していかなければならない。弱視の児童生徒一人一人の対応方法が違い、後天的、先天的な弱視の場合で異なる。その児童生徒一人一人にできるだけわかりやすい、見やすいというのが原則。各教科書、教科ごとにもそれぞれ違いがあるが、それをどのように包括しながら提示できるか。

    【委員】

     標準規格に基づく拡大教科書では十分に対応できない児童生徒に対してはボランティア団体がオーダーメイドで作成とあるが、ボランティア以外にも、社会福祉法人や拡大教材製作会社において、現に拡大教科書の作成を行っているので、必ずしもボランティアでなければならないと読める表現は避けた方がよいと思う。

    【委員】

     拡大教科書の標準規格の対象を視力0.1とすることについては、0.1が標準とは言い難いので、今までボランティア及び出版社が作っているものを見渡した結果、多くのニーズに合致するのがこのあたりだろうということを示せばよいのではないか。

    【委員】

     主要教科のほかに、音楽、図画工作、美術、生活科など、写真やイラストが中心になる教科があるが、これらの標準規格をどのようにするのか。

    【委員】

     7割、8割の弱視の児童生徒に対応できるようなものを1つの目安にする必要がある。

    【委員】

     前回の会議で自社出版のための3つの案を提案した。A、Bタイプは出版社が作り、Cタイプはボランティアにお願いしてもよいが、タッチパネルを使用した方法も考えられる。

    【委員】

     漢文のレ点や、一・二点、数学の指数、対数、英語のフォント、aとoの区別、大文字のIと小文字のl、音楽の楽譜の問題など、それぞれの教科固有のものがある。標準規格という最終的な提出文書は、全教科にわたる標準規格案を示すべきと思う。

    【委員】

     オンデマンド印刷を使えば、版1つで、2、3種類ができる。文字の大きさが22ポイントで、1種類というのは問題ではないか。

    【委員】

     字体については、角ゴシック体がこれまでよく使われており、今でも角ゴシック体とゴシック体とが併用されている。人の好み、弱視の児童生徒の好みによっても多少違うが、おそらく丸ゴシック体よりも角ゴシック体の方がニーズが高い。もっとも国語については、ゴシック体よりも、教科書体がいいのではないかという議論も出ており、そのことも併せて検討が必要。

    【委員】

     リングファイルのメリットは、開いたときに閉じないということ。他方で、例えばリングで手をけがしたとか、ばらばらになって元に綴じられなくなったなど、児童生徒から評判が悪い話もよく聞く。ボランティアの製本で、リングを使ってはいないが開いてもほぼ元に戻らない製本を既にされているものもある。多くの出版社は、無線製本で製本をしていると思うが、現行の多くの検定教科書でも、リングファイルを使っているわけではない。
     クータバインディングシステムは、本の裏にすき間を作り、非常に広く開くように工夫されている。このようなシステムを使えば、わざわざリングを使わなくても、きちんとした製本ができるので、リングファイルについては再考の余地があると思う。

    【委員】

     丸ゴシック体、リング製本で表紙にカバーをつけて拡大教科書を作成した。書見台に載ること、載せて手で押さえなくてもいいこと、また盲学校にはすべてリング製本機が存在し、もしばらばらになっても、すぐ綴じられるということで作成した。

    【委員】

     ボランティアが作っている拡大教科書の製本について、のりづけ製本であるのでアイロンをかけて開けないとしわしわになって見えないことや、破けたときにはもう1回製本、のりづけしてもらうしかないという意見もある。

    【委員】

     DTPを活用して、様々なバリエーションで作るということは有効であると思うが、発行者のDTP環境はまちまちである。また、教科書もいろいろな判型があり、単純にB5、A4という対応ができるというわけではない。
     ベースとなる標準規格は、一番推奨できる規格をしっかりと定めていただきたい。その上で、可能なバリエーションの対応は、状況に応じていろいろと検討できると思う。

    【委員】

     オンデマンド印刷で、明朝体をゴシック体に変えるというのは簡単だが、それは一括で変えることが簡単ということであり、例えば1つのページの中にいろいろな書体が入っていたときには、また個々に1つずつ変えていかなければならない。A5などの場合は、活字を変えると、がらがらページが動いてしまい、全くそのままオートマティックに判が拡大できるということでもない。

    【委員】

     美しい文字をきちんと書かせなければならないと思う。国語は、教科書体をきちんと使わせて書かせるということは義務教育の段階では絶対に必要であると思う。

    【委員】

     児童生徒が使いやすいということと同時に、教師が指導しやすい教科書という観点が必要。

    【委員】

     本人、保護者、先生とも、どの大きさの文字が一番効率的に読めるのかということが把握できていない場合がある。センター的機能の1つとして、特別支援学校(盲学校)にすべての拡大教科書が常備されていて、試しにある程度利用でき、一番見やすい文字を児童生徒本人も使いながら確定していくということも将来的には必要ではないか。

    【委員】

     特に緑内障の児童生徒などまぶしさが問題となる児童生徒は、紙が上質で、写真の発色がよすぎると、反射でまぶしく光るため、正面から見ることができない。紙の質も含めて、まぶしさに対する対応が必要。

    【委員】

     確かに緑内障をはじめ、白内障とか、白子の児童生徒も含め、まぶしさというのはかなり問題になっている。今の新しい上質紙ではなく、わら半紙が一番よかったと言う生徒もいる。

    【委員】

     通常の教科書では「さ」や「き」の下の部分は離れているが、丸ゴシック体はくっついている。私が関わっている児童生徒には、丸ゴシック体はあまり喜ばれていない。

    【委員】

     穴が丸ではなく角になっているリング綴じは、角が破けやすいということがある。家に持って帰ったときに、一部のページが抜けているということがあるようだ。

    【委員】

     標準規格は、完全に版を組みかえた、レイアウトをゼロから組みかえたものになると思う。拡大教科書の使用で最も多い22から30のポイント数にどう合致させるかというところに焦点を絞った方がよいと思う。原本を単純に版を大きくして、軽度の人に多少なりとも使えるものにするか、それとも完全なる22ポイントの版を作って、それを一回り小さくした18ポイントや26ポイントを作るか。そのようなことを共通見解にすべきだと思う。

    【委員】

     教科書の大きさは他の友だちと同じものがいいという意見もあるかもしれないが、そこに目を向けてしまうと、B5ありきで、B5の中で22ポイントや28ポイントの版をそれぞれ作ることになり、現実的に非常に大きな負荷となる。大きさはA4ぐらいであれば対応可能なので、A5、B5、A4、この3種類をどのように22ポイントから30ポイントに合致させるかということに絞って議論を詰めた方がよいのではないか。

    【委員】

     今までは障害の程度が重度で、視力0.1以下の児童生徒が拡大教科書の対象の中心であったと思うが、中度・軽度の児童生徒も拡大教科書が必要との声も出始めている。原版を一回り大きくして、ページの数を変えない形での対応がよいのか、22ポイントの版を一回り小さくして、18ポイントのA5判でいくのかということが、軽度の弱視を救う1つのバリエーションになるのではないか。

    【委員】

     インクのオイルレスというのはワックスが入っている。斜めから見ると、反射して天井が映ってしまうものはオイル込みのもの。それは高速機に多く、超高速で動かすので、粉が飛び散っても大丈夫なようにとか、定着しやすいようにとか、そういうことが理由のようだ。最近は高速機でもオイルレスになりつつあるが、ワックスが入ってないインクを使うべきという言い方もあるのではないかと思う。

    【委員】

     レイアウトについては、元々の教科書を作成する際に配慮しておかなければ、拡大をする際に影響が出るのではないかと思う。例えば、画像については、今扱っている解像度の数値よりも少し高いものにしておかなければ、拡大の時点で画像が使い物にならない可能性もあるのではないかと思う。

  • (3)事務局より今後の日程について説明があり、閉会となった。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課