全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議(第15回) 議事要旨

1.日時

平成21年11月27日(金曜日)10時~12時

2.場所

旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.出席者

委員

 梶田座長、荒井委員、上月委員、坂本委員、柴山委員、清水(静)委員、清水(美)委員、曽我委員、田中委員、田村委員、土屋委員、野原委員、福田委員、耳塚委員、宮田委員、八島委員、吉賀委員

文部科学省

德久審議官、岩本参事官、三宅専門官、田中主任視学官、吉川視学官、作花教育課程研究センター長、梅澤研究開発部長、森下学力調査課長 他

4.議事要旨

(1) 事務局より、平成22年度における新たな調査方式について(案)についての説明及び本調査に対する行政刷新会議ワーキンググループにおける評価結果等について報告があった。その後、以下のような意見及び質疑応答を踏まえ、平成22年度調査について、新たな調査方式の考え方を基本としつつ、詳細については、技術的な問題への対応や今後の予算折衝の結果によるところもあるので、最終的な扱いは座長一任とされた。(○:委員、●:事務局)

○ 今回の仕分人やマクロの立場から議論する人は、全国学力・学習状況調査について、国、都道府県、学校設置者である市町村が、それぞれのレベルで課題を明らかにする行政調査であるとの理解があるようだが、本調査を悉皆調査にして、記述式問題まで入れた趣旨は、学校の教育的な取組が事実に即した取組となるよう、その推進役になるということである。目がきらきらとか、みんな生き生きとか、印象で教育を語られたり、誠心誠意とか、子供に寄り添ってとか、信条で語られることがあった。悪いことではないが、ほんとうに子供に力をつけるためには、エビデンストベーストで取り組む必要があるということである。子供たちが抱えている課題を、生活習慣などその背景になる面から明確にして、学校の取組につなげる。これをやらなければ、日本の教育は、国際比較で課題を抱えている現状から抜け出せないのではないかという議論がある。関連して、学力向上は重要な課題であるという現場、教育界全体、社会全体に対する一種のメッセージもある。学力を上げるためには、授業のあり方も大事だけれど、例えば「早ね早おき朝ごはん」に象徴されるような家庭生活のあり方、学校外のかかわりが、学力に影響を与えるというメッセージである。学校が勉強するところだということがややもすると軽んじられる時期もあったが、学校というのは、いつの時代であろうと、どこの国であろうとも、勉強して子供が賢くなるところである。それ以外に、第一の使命はない。5年前からこの会で議論してきた考えが十分にご理解いただけなかった点もあって、今回の仕分けで厳密な経年変化ができないとの指摘を受けたり、・・・当初から、経年変化をみる調査設計ではないのに、・・いろいろと理解にくい違いが生じた。今後、財務省との折衝があるが、文部科学省としては、この調査の意義の継続を大前提に抽出調査と同時に希望利用を認めて、希望する市町村や学校法人には十分な便宜を図っていく。抽出調査と希望利用で、5年間ここで議論してきた調査の意義は守りたいとなっている。本日は、このような点を念頭に置きつつ、来年度調査について具体的な意見をいただきたい。
○ 前回の意見がまとめられており、内容的な論点はほぼ尽きている。私見では、来年度は無理に調査を実施せず1年間の準備期間をとって検討を深めてはどうかと考えている。3年間の経験は、大変意義があり、3年間の経験を有効に生かすための方法を見きわめるには相応の時間がかかる。仮に1年見送っても、3年間の結果を踏まえどういう標本抽出が全体を一番反映できるか検討を行えば、有意義な分析、次に対するデザインができる。多くの自治体から、引き続き一定の信頼性を確保できるデータをとりたいという要望が寄せられているとの話もあったが、サンプリングの専門家がいるので十分に検討した上での議論かもしれないが、異なる母集団に対するサンプリングを重ねる形が、的確なデータとなるか疑問がある。全国調査と都道府県レベルで行う調査は、目的、内容、レベルも違う。両者の目的を明確に区分けすることが誤解を招かないこととなる。悉皆調査の趣旨等について、行政調査として問題点を探る部分、学校の教育的な努力を把握、社会全体へのメッセージ性の3つに分けられたが、本来は、目的別に組み立てることが望ましいのではないか。全国調査としては、全国調査としての体裁、ねらいが盛りだくさんでない形で実施せずに、経費面、コストパフォーマンスの面で標本調査をどう有効に使っていくかということ、国家的な調査として時系列的に学力水準がどう推移してきたのかの2つを把握できるデザインにする必要がある。国が行うべき調査と、都道府県レベルあるいは地域で行う調査は、目的、調査できる内容も変るので、その区分けをいろいろな分野の専門家の検討を反映する形をとるべきである。
○ 国際比較のPISA、TIMSSもあれば、成人調査も始まる。10年ぐらいやってきた教育課程実施状況調査、特定課題についての調査等いろいろとある。一度どこかで整理をしなければならない。来年度以降の検討をする中できちんと整理し区分けをし、もう一度全体としての設計を見直すことも含め検討したい。
○ 新たな調査方式においても、効果の上がる仕組みづくりに努力していることに敬意を表したい。感想と論点整理と今後の提案の3点を簡潔に述べる。感想は、調査に対する事業仕分けの方々とズレがあり残念に思う。例えば、学力観は時代に合わせる必要があるから不要だと言われても、この調査は21世紀に求められる活用力という、新学習指導要領で求められる新しい学力を反映し、PISA型の読解力にも焦点を当てている。その基礎をとらえる質問紙調査にも時代の新しい要請を取り入れ、これ以上新しくするのは不可能であるぐらいの新しい学力観などを入れているのに、まだ学力観が合っていないと言われると、そうなんだろうかと思う。目的が明確でないと言われても、実施要領には、各学校における学力の向上、授業改善に資するという、目的まできちんと書いている。2点目は、都道府県間、学校間の学力の差が思っていたほど大きくないという点が確認できたとまとめられているが、各学校の結果を視覚化するチャートを作成、提供し、各学校の実態の診断分析、解明を支援するシステムをつくって分析をした結果では、学力のパターン、A問題系、B問題系の違いやずれ、質問紙調査では、生活指導面、学習習慣、授業改善の状況等のさまざまな変数、要因が各学校においてほんとうに違う。だから、学力に課題がある学校の要因も個々の学校において相当違うし、学力の高い、成果を上げている学校でも、その成果を上げている要因とみなされる変数が相当違う。各学校、各学年、各学級で学力実態が違う、パターンが違う、変数が違うことが明らかになった中で、希望参加でとれる可能性が残っているが、学校ごとのデータが十分にとりにくくなると研究成果が十分に踏まえられなくなり残念である。全国を回って、幾つかの市区町村の域内での結果チャートを見る機会があったが、やはり相当違う。指導主事が域内の各学校を回って、結果チャートを使って、学校ごとの固有の課題と性格に基づいた、学力向上の取組のアドバイスをする地域も増えてきた。ようやく定着しつつあるこのような取組ができにくくなること、個々の学校ごとの学力のタイプが違うという認識が広く浸透しなかったことは、非常に残念である。学校間の違い、パターン上の違いが非常に大きいという事実確認は再度しておきたい。実施要領に示されている各学校の取組は原点である。ほんとうの学力向上は一人一人の子供が学習改善であり、やる気を起こして、やり方を教えるのは、一人一人の教員である。その教員が頑張らないと、学力は上がらない。希望利用方式により、学校に負担をかけず、各自治体がある程度の予算を確保して、統計的な信頼性や採点上の基準も保ちつつ、各教員、各学級、各学校に何らかのデータが戻されて、一人一人の子どもや教員が頑張れる、発奮材料にする、そういう設計方式の検討をお願いしたい。結果チャートの提供は継続するようにしてほしい。さらに、結果チャートについては、各学校が自校のデータ、結果に基づいて、クリックするといろいろなグラフが目的ごと出てくるようなシステムも開発中である。来年度以降の検討課題としてもよいが、各学校が自校データを用いて、学力向上アクションプランをつくり、改善が進む、研究成果が学校に提供されるようなシステムも検討する必要がある。
○ まだ学力調査というと、学力水準、何点満点で何点あたり、平均ぐらいしか頭にない。これは古いテスト観、学力調査観である。単に50点でも、何はできていて、何はできていないと、パターンが違う。同時に、それに何がかかわっているかを質問紙でとった。ただ単に水準で言うんではないことが、当たり前の話になってきたはずなのに、何点満点の何点いう古い考えにいまだにになっている。実はこの調査の設計のほうが進んでいた。それが学校レベルでわかってきて、設置者である市町村教育委員会がそれを活用して、「あなたの学校はこういうパターンだから、こういう課題がある」と指導できた。各学校の課題の中身が違えば、取組方も違う。これはとても大事なことなので、何度も確認し合いながらいきたい。
○ 計量心理学、教育測定論の立場からデータ分析について気づいたことを述べたい。この調査は、プライバシー保護のために、子供のデータと個人が照合できない制度設計としているので、19年度の子供達を22年度まで追えるようになっていない。悉皆調査であれば、関連する集団で対応づけができ何とか追えるかとも考えたが、抽出調査では困難であり、本来の調査目的の質的な変化を認識せざるを得ない。また、学校の格差はかなり大きいので、母集団を学校単位とした場合には、相当のサンプル数が必要になることを懸念している。行政刷新会議の事業仕分けの中継を見て、43年前の歴史を再び繰り返してはならないと感じた。この調査のように、国が、国民へのアカウンタビリティーとして果たしていく調査は何らかの形で継続する必要がある。この43年間にテスティング技術はすごく進んでおり、例えばPISA、TIMSS、来年度から実施するPIAACや、TOEIC、TOEFLもその技術が用いられている。国際スタンダードのテスティング技術を導入すれば、事業仕分けで指摘のあった、年度間の比較、経年比較も可能である。国際スタンダードでは、この種の調査は、子供の負担を考慮し1人1時間ぐらいしかとらない。ところが、今は4時間もの負担をかけている。すぐに導入することは困難だが、そういうことも念頭に置きながら調査方法を考えたほうがよいと思う。○ 3年前のデータも、個人固有のコードは振っている。実施主体は名前がわからないが、児童生徒本人はわかる。手数はかかるが、本人であれば、来年度の調査の結果も含め、照合させることはできる。したがって、1年か2年後、必要ということになれば、今回サンプリングの部分、場合によっては希望利用の部分も含めて、ある町はとか幾つか選んで、同じ子供の経年変化が理屈の上ではできる。ただ、どこまで手数がかかるかという問題がある。
● 調査における個人の情報は、実施要領等も定められてきていたように、個人の情報の扱いについて非常に厳しく行っており、学校や本人以外、どの個人がどのデータかはわからないようになっている。当然、22年度の調査においても同様の形になるので、文部科学省のデータだけで個人をつなぐことはできない。設計上そのようにしている。実際に19と22年度の個人のデータをつなぐためには、教育委員会、学校、個人等の協力が必要になる。また、専門的な課題分析に関する調査研究等をこれまで実施しているが、そういう枠組みの中で協力いただけるところについて分析を行ったり、もっとマクロなレベル、教育委員会、地域レベルでの分析の方法について検討を進めている。
○ 文部科学省として発表するデータにそれを入れられるは別の問題である。希望利用も含めて、設置者の市町村教育委員会にお願いして、専門家会議でデータを活用できるようにしてほしい。これができれば、個票のレベルで全部、名前とコードとの突き合わせができる。文部科学省というよりは、専門家会議の責任で、新たにプロジェクトチーム、ワーキンググループをつくることで可能となるだろう。
○ 22年度の調査に絞ってお尋ねする。都道府県の知事や教育長からの強い要望があったとあるが、その理由を整理しているか。また、来年度は希望利用方式を提案しているが、どの程度の規模で希望があると考えているか。B問題の採点はきちんとできるのか。
● 都道府県からの要望は、刷新会議で説明した資料にも記載しているが、見直しの議論が進展して、文部科学省から概算要求を出し直した以降に相当数の知事、教育長が、大臣、副大臣を訪ねている。議会で意見書を議決して出しているところもある。要望書という形で寄せられているものもある。現在、8県ぐらいが、従前どおり、悉皆調査を続けてほしいという要望で、その他のところについても、これまでの調査を踏まえ調査を継続し、学力の状況を把握できるよう要望するという趣旨である。3年間の悉皆調査において、それぞれの学校、児童・生徒の学力の状況を把握して、課題を分析し取組みを積み重ねているので、来年度も調査を実施し、特に市町村別のデータ、学校別のデータを把握できる道が欲しいという要望が強い。このため、来年度の調査に、希望利用方式が必要であると思われる。希望利用方式により、全国や都道府県別のデータとの関連も整理できる。文部科学省におけるいろいろな調査結果の分析と照らし合わせて判断することは有益だという受けとめ方をしている。個々の学校や児童・生徒が調査を受け、それで学力向上策に取り組むという経験則がこの二、三年のうちにできており、それを続けたいということである。抽出調査でも全国的なデータを、個々の指導や学校での取組みに生かしてもらいたいので、授業アイデア例とかいろいろな分析を広報し、仮に抽出調査の対象にならなくても、それぞれの指導、各学校の授業改善に役立ててもらいたい。それでも、やはりみずから受けないとという意識があるようだ。平成19年度、20年度に、いろいろな手立てを講じてきた。その成果について、説明しなければいけない段階に来ている。例えば都道府県の段階で、ティームティーチングや少人数学級を入れるプラスアルファの財政措置を講じた場合、教員のスキルアップに予算措置を講じている場合、非常に取組が困難なところがどれだけ改善されたか等、オープンな形で分析する必要がある。そういう意味から、来年度、再来年度については、今までの調査目的を踏まえてほしいというのが、要望の趣旨である。活用問題の採点がきちんとできるかは課題と思っている。懸念は聞いている。今のは、調査のシステムの見直しに関する各都道府県の要望である。希望利用方式にどの程度需要があるかは、今の段階では、各市町村が希望利用方式をとったときにどんな影響があり、どう責任を負うのかを整理中で、まだ十分決め切れていない段階である。意思決定はしていないが、希望利用方式を検討したいというところが多い。全然考えていないというところも一部あるが、今のところは、かなり検討しているようである。ニーズはあるが、採点、事務負担の問題等を検討している状況である。
○ 希望利用に関する自治体の需要は相当あると思うが、B問題の採点の統一性が懸念される。客観式テスト場合、テストの精度をあらわす指標である信頼性は、大体0.7から0.8だが、科学研究費で活用型の採点の場合の信頼性を調べたところ、説明を受けて普通に採点した場合でも0.4から0.5と下がってしまう。オーセンティックアセスメントではどうしようもない部分ではあるが、自治体における採点に資するように、解説を充実しルーブリック(評価基準表)を作成・提供するなど、可能な限り採点者の主観の影響を受けないように配慮する必要がある。
○ 全国版の学力調査に参加したい、それを継続してほしいということは当然の要求としてあると思う。この会議でも、昨年度は44の都道府県・指定都市が地域の努力として学力調査をやっているという報告を受けたが、各地域が独自に悉皆的に学力調査を実施すると、大変なエネルギーと経費を要することは理解てきる。その一方で、国としてのスタンスについて、地域独自の学力調査を支援する必要があるのだとすると、果たして、盛りだくさんの目的を持つ全国調査を続けることが、それぞれの地域における独自の調査の発展を支援することになるのか否かを考える必要がある。希望利用方式について、60年代の全国一せい学力テストのときも、文部省は、自主的に参画を募ったことがあるが、学校が態度を決める際に、知事や地域の首長がこういうデータはぜひ欲しいと述べた場合などで、政治的、社会的な問題に巻き込まれやすい部分がある。自主選択方式は、一見、非常に望ましいように見えるが、その裏側でいろいろな軋轢を生む危険もあることを十分に考えて、希望利用方式の検討を進めていただきたい。
○ 希望利用の採点基準を、各学校が考えなければならないのでは学校の負担にもなる。自治体によっては、記述式問題の採点を専門機関に委託するということもあるだろう。そこで、例えば、抽出対象校の記述式問題を文科省の受託機関が5%~10%採点した段階で、微妙な問題は具体例も示した採点のためのガイドブックを渡すなり公表するなりして、希望利用校が統一性を保ちつつ採点できるようにするなどの支援策を検討いただきたい。
○ 希望利用は、採点その他については、設置者の責任と費用負担で行うということであるが、問題用紙については、文部科学省が費用を負担するのか。希望の場合の申し込みは、教育委員会の管轄下にない私立はどうするのか。
● 12月末に、抽出対象校を示すことができればと思っている。その上で、希望利用方式をとるかを学校の設置管理者に判断してもらう。私立は学校法人に対して、これまでもいろいろ協力依頼などをしているので、希望利用についても、同じようなルートで照会したいと思う。費用負担の問題については、調査問題の作成、印刷も、国費を前提で概算要求している。問題の配送も国費で、4月20日の前日に抽出調査と同じタイミングで配送するように概算要求をしている。ただし、行政刷新会議でも、財務省から希望利用方式における問題の印刷、配送を国費で負担するのはいかがなものかという論点が出された。刷新会議の1時間余りの場ではそこまでは議論がなかったが、予算折衝の過程で財務省から話があると思う。ただ、実際にそれぞれで印刷するとなると、問題が事前に明らかにならないような工夫が必要だし、学校現場等で、精神的、物理的、金銭的な負担が生じる。配送に関しても、調査日の前日に届くことが必要である。事後にやる分は、既に問題がオープンになっているので、指導の面では生かせるかもしれないが、把握という意味においては信頼性が低減する。そういう意味で配送に関しても一括してやる必要があると考える。財務省は、地方が負担すべきという議論であるが、悉皆調査において、市町村別、学校別の結果の提供まで、義務教育の水準の維持、向上という国の責務に基づいてやっていた。今回、希望利用方式は、採点、集計結果の取りまとめ等をそれぞれの市町村、学校設置者でやることになるが、国としての支援、場の確保については国費でやるべきという主張をしている。この点についても、財政当局等から具体的な問題提起もあるが、この会議で実務的、専門的見地から見ての話があれば、十分踏まえたい。
○ 国公私別の成績ををうたっているわけだから、私学まで公立学校と同じ精度で求める必要があるのか。都道府県、市町村の教育委員会からすると、希望利用方式にかかわって、費用、労力等、さまざまな問題が山積している。二の足を踏む向きも多いのではないか。希望利用方式をとるなら、利用方式、費用等の諸条件を文科省の側で明らかにしないと、参加数が増えないのではないか。学力テストの利用に関して、全国を見た場合に、非常に積極的なところもあるし、一方で、まだ十分な取組みができていないところもある。その温度差が希望利用方式を導入した際に反映し、あまり利用されない場合あるのではないかと懸念している。そうならないよう、希望利用方式の条件はきちんと明示していただきたい。
○ 全国学力の結果が、教員数の増減に随分影響していると思う。ただ、現場は、希望にしろ、抽出にしろ、そろそろガイドラインに基づいて学校評価を行い、次年度の教育課程を編成していく時期になる。来年の4月に学力調査があるかないかで、学校にとってはいろいろなものに影響するので、早目に検討して、現場に開示するよう要望する。
○ 行政刷新の作業分科会で、学力調査がどうなるのか報道されることで、PTAは、右往左往してしまう。学力調査が復活する前に、PTAもアンケート調査をして、多くの方々の意識をきちんと確認し、やり方を理解し、公表のされ方も順位づけにならずに一人一人の子供たちに返っていく学力調査にという願いと了解のもとに進んできた。今回、方式が変わるのは仕方がないが、保護者にそれを伝えて、学校と連携して一人一人の子供が変わっていく形を国としてどうサポートしていくのか。地方分権の中で、地方とどう連携をして改善していくのか。国がやらなければ地方もできないようでは、すべて終わってしまうので、ぜひその辺を文部科学省として保護者にも伝わるようにしてほしいし、日本PTAにも説明してもらいたい。
○ 第1回目の調査があったときに小学校長をしていたので、この調査が現場へのメッセージでもあることを実感した。子供たちが一生懸命、45分間、ひたすら鉛筆を動かしていたという実態を見てそのことを感じた。19年度以前に他の学力・学習状況調査をしたが、本調査とは問題が全く違う。行政調査の意義もあるが、現場の教員が調査の問題をどう受けとめるかが重要である。教育委員会としては、問題を何度も印刷して、行政の場、新人研修の場、あらゆる場で使いながら教員に話をした。学力の一部であるが、新しい学力の考え方を悉皆で示した3年間の意義はほんとうに大きかった。今後は、国や県の動向を見ながら、市町村としては、現場につないでいくような、次の施策に生かすことを考えたい。現在、芦屋市では教育基本計画を策定中だが、長い、5年、10年のスパンで考えていきたい。調査の目的や方法や対象が変わっても、問題の持つ意義を意識して持ち続けることが必要である。
○ 教科と学年は、来年度はほぼ決まっているようなので、今から蒸し返すという意味では全くない。来年度でも再来年度でも何年度以降でも結構だが、今まで、もし抽出にするなら、教科、学年を増やしてはどうかという議論もあった。現文部科学大臣が就任演説で、教科、学年を増やす話が出ているのも承知していると話した経緯もある。予算の削減もあるが、学校では、理科、社会科の活用の問題について、国が良問を示してほしいと思っている。国語、算数、数学では非常に良問をつくって、学校や教育委員会の指針になっている。これによって授業改善が明確になった。教科、学年が増えると、さらに教員に、学力観、授業のイメージが明確に伝わると思う。来年度は無理にしても、抽出のメリットで、教科、学年等についても継続的な議論をお願いしたい。
○ 前回から引き続きということで、事務局から、かなり詳細に説明があったので、来年度の調査のイメージはある程度クリアになった。最終的には財務当局との折衝があり、ここで出た考え方を踏まえた上で具体的な設計にし、固まった段階でまたこの会を開催するというイメージを持っている。
○ 来年4月の実施が決まっており、12には輪郭をはっきりさせて、抽出もしなければならない。希望利用についても、各学校設置者に照会しなければならない。その場合に、条件や具体的なやり方について詰めなければならない点がたくさんあるが、大筋はいけるのではないか。まだ、最終的な条件は明示できないだろうが、大臣、副大臣も基本的な考えを堅持したいと述べておられると聞いている。本日の意見も念頭にお取組願いたい。

(2) 事務局より、平成22年度調査における質問紙調査の項目についての検討方法等について説明があった。

(3) 事務局より、全国学力・学習状況調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究の推進状況について説明があった。

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初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)