全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議(第14回) 議事要旨

1.日時

平成21年11月17日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階1会議室

3.出席者

委員

梶田座長、上月委員、坂本委員、柴山委員、清水(静)委員、清水(美)委員、曽我委員、田村委員、土屋委員、野嶋委員、野原委員、福田委員、耳塚委員、宮田委員、八島委員、山崎委員、吉賀委員

文部科学省

岩本参事官、小松学力調査室長、三宅専門職、田中主任視学官、吉川視学官、作花教育課程研究センター長、梅澤研究開発部長、森下学力調査課長他

4.議事要旨

(1) 冒頭、岩本文部科学省初等中等教育局参事官から挨拶があり、新政権発足後、文部科学大臣、副大臣、大臣政務官において、全国学力・学習状況調査に関する様々な議論や有識者からの意見聴取を踏まえ、来年度の概算要求における基本的な方針を決定したことの説明と調査の詳細設計を詰めていく中で、多角的な観点からご助言を賜りたい旨の発言があった。

(2) 事務局より、平成21年度全国学力・学習状況調査結果の報告、「全国調査の結果を踏まえた授業アイディア例」及び「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究成果報告書」について説明があった。

(3) 事務局より、平成22年度調査における新たな調査方式に関する基本的考え方等について説明があり、各委員より意見及び質疑応答があった。(○:委員、●:事務局)

○ 政権交代の前後には情報が錯綜したが、文部科学省として来年度も調査を実施する方針が決まっており概算要求されている。国は都道府県別の一定の精度が保たれる抽出調査を行うこととし、地教委、学校法人等の設置者が、抽出調査と同様に調査問題を活用したい場合には、希望により利用できることとなった。この調査は単なる行政調査ではなく、学校レベルの教育実践を改善して子どもたちの学力を向上させる趣旨が含まれている。この点も含め、文部科学省全体として、これまでの調査との継続を保ち調査目的を維持するとしたことは大事なことである。
○ PTA・保護者としては、日本の国の子どもたちの状況を統計的に把握するだけではなく、子どもたちの学力向上のために調査結果が還元され、指導にいかされることの意義を100%認め、この調査に理解を示してきた。政権交代に伴う変更は仕方がないとはいえ、子どもたちへの還元が今後どうなるかとても気になる。抽出調査では抽出した学校にデータを返し調査を活用することもできるが、抽出対象から外れた学校はできない。そこで希望利用で実施するとなると国の費用で活用できるところと、そうでないところがでてくる。子どもたちの教育改善に資する環境を整えるために、これまで以上の知恵が必要であろう。また、来年度調査は平成19年度調査を小学6年生として受けた子どもが、中学3年生として受けるので、教育施策の効果を検証することが最も有意義と考えている。新たな調査方式においてもこの検証が可能となるようにするべきである。
○ これまでの調査と同じ程度のクロス集計は行われるのか、抽出調査の対象の子どもには個票が提供されるのか。そうであれば、希望利用の対象となった子どもと差が出ないよう、それに合わせたいと考えている。本市では、予算を計上しないと一切がゼロになるので、とにかく希望しておこうとなったが、必要な経費は、採点のみの場合と、個票を作成した場合、分析まで行う場合では額が異なるので難しい。抽出調査に切り替えられたことで、学校独自の主体性が失われないよう自治体として取り組む必要があると考えている。希望利用校分の採点を教員が行うことは、自ら課題を実感できるので有意義とは思うが、勤務時間の中での実施が難しい場合には、外部への依頼を考える必要があるなど、今後、検討を要することが多い。
● 個票の返却に関しては、ご意見をいただいた上で検討しなければならないが、抽出調査の対象になった場合、国の統計調査の基礎データとしての意味もあるが、抽出調査に協力してもらったということもあり、結果は個票で返す必要があると考える。希望利用方式は、役割分担として学校設置者の実施責任と考えているので、国で採点、集計することは考えてない。抽出と同じ個票を用意できるとは、今の時点では考えていない。クロス集計については、できる限りこれまでとの継続性を持ってしていきたいが、統計上有意な範囲に限られる。抽出調査なので、クロス集計をしたときの関連性を判断するときに、誤差の範囲なのか判断できない場合も想定する必要がある。一人一人に学力の状況についてフィードバックしていくことは重要と認識しているが、都道府県、地方独自で実施している調査や各学校が行う実力テスト等で把握することも可能である。それぞれの事情により、各児童生徒の学力の状況の把握は来年度においても従前と同様に必要だということであれば、各地域、教育委員会、学校等の判断により希望利用方式をご活用いただくことが考えられる。
○ 先日、ある地方の三つの県の教育委員会の方々と話をしたが、その中でも同じような話が出た。報道もされているが、ある県では、域内の全ての市町村が希望利用の意思をもっているのだが、内情を伺うと、先生方に採点等をすべてお願いせずにどこかにお願いしてやるとした場合、個票までとか、どのレベルまで分析して返してもらうかについて、自治体の財政事情もあるので、今後、詰めていく必要があると述べていた。ただ、非常に強い意欲があり、多少犠牲を払ってでもやりたい、学校、教室レベルでの授業改善には結びつけたいと述べていたことが印象的だった。○ 教育測定論、大規模テストのテスティング技術を専門にやっている立場からコメントと質問をさせていただく。数年前に、悉皆調査に対する批判的な論文を新聞に掲載したことがある。その時と基本的な考え方は変わっていないが、専門家検討会議に参加して、悉皆調査の利点も確かにあると認識した。平成19年度から3年間、日本の子どもたちの全国の学力分布を津々浦々まで把握したことは大きな成果だと思う。その意味では19年度に小学6年生として受けた子どもが、中学3年生として受ける22年度調査は悉皆調査が望ましかったのではないか。大規模テストを実施する上で、ポイントは5つある。1つが、国民へのアカウンタビリティーだが、これは43年ぶりに復活した悉皆調査により果たされている。次が「コスト削減、現場の負担削減」で、来年度調査の概算要求に向けた判断でそうなったと考える。残された問題は、年度間比較ができるかということ。そして、より広い出題範囲の問題がつくれるか。これは教科教育の先生の話を聞くと、時間的な制約、問題数の制約があり3分の2程度しかカバーできないということで、毎年その程度のカバー率で問題をつくらなければならないという問題である。それから、自治体テストと全国学力・学習状況調査の対応づけを考える必要がある。それぞれイクエーティング、マトリックスサンプリング、リンキングの3つの問題である。但し、これらの検討には時間を要し、来年4月の調査には制度設計上とても間に合わないので、今は、抽出調査をどうするのかに議論を集約する必要があるという指摘のとおりだと思う。抽出調査の精度を高めることは重要であるし、教育実践のための情報を返すという意味で、抽出単位を学校又は学級単位とすることはリーズナブルと思う。ところで、概算要求で示された40%の母数は何か。全ての学校から40%の学校を抽出して、該当したクラスに試験を実施するのか。児童生徒数に直すとどうなるのか、定義を示していただきたい。
● 抽出率は学級単位で計算している。全国の全学級に対して、抽出調査の対象の学級が大体4割ということである。児童生徒数でも大体のボリューム感は同様である。児童生徒数を母数として完全にランダムに抽出すると、抽出率はもっと低くてすむが、学級単位、学校単位で抽出するとなると、集団の偏りへの配慮が必要である。そこで専門的な助言をいただき、児童生徒単位でランダムに抽出したときに必要な抽出数に、約1.5倍の係数を掛けている。これはあくまでも概算で、今後、抽出調査の詳細設計によって変わる。なお、概算要求の段階では、すべての児童生徒の正答の分布、例えば、小学校、中学校、各教科のA問題、B問題と全部で8領域になるが、そのすべてのデータでなく、特定教科における各都道府県の平均正答率をもとに計算をしたが、現在、すべての生データを入れてどの程度偏りが出てくるのか、学級とか学校という集団にしたときにどのようになるのかを、データを入れて解析し、再計算をしているところである。精度についての考え方は変えないが、再計算の結果によって抽出率は変わり得る。
○ 本調査は未だ流動的な状況に置かれているようだが、少なくとも悉皆調査を実施するか中止かという粗っぽい議論ではなく、これまでの調査を継続するという意思決定がなされたことは重要なことであり評価したい。本調査には、様々なニーズや期待が盛り込まれていたが、調査方式の切替えを機に様々なニーズを玉虫色にして充足するのではなく、国として必要なデータは何かという観点から整理し、そのためにはどういう調査の設計が必要かという考え方で進める必要があると思う。抽出規模は、もっとスリムにできるのではないか。個々の子どもに調査結果を返すなど、悉皆調査が持っていたメリットは否定はできないが、そのような目的に即した調査を行うのに適した組織である地方の教育委員会に任せて、国は国として必要なことに絞り込んでいく方向が重要である。悉皆調査は現場に近い設置者が行うのが最も適切ではないか。また、全国学力・学習状況調査を含めて、どういうタイプの学力調査を、いつ実施するのか、何年に一度実施するのかという観点から学力調査の全体像を設計して、その中に本調査を位置づけることも必要である。少なくとも時系列的に比較ができるタイプの調査は不可欠と思うし、教科の隅々まで調査する教育課程実施状況調査の役割を果たす調査も、毎年ではないが必要だろう。高等学校の調査も検討課題である。国際比較調査やその時々のトピックについて集中的に調査をすることも必要だと思う。今回の文部科学省の決定により、これまでは悉皆調査の形で、地方にかわって国費で行っていた部分を引き受けなければならなくなる。その観点から、都道府県や市町村がどう行動するかは見ていくべきかと思う。
○ 標本調査に変わることを後退と捉えずに、悉皆調査ではできなかったが標本調査ではできることなどのメリットについて考えるべきである。悉皆調査では、重点が各学校での活用に置かれるが、標本調査では、全国、地域レベルの傾向把握、経年変化が重要になる。今後は、経年変化をとらえるために標本調査の特性をうまく使うことも必要ではないか。これまでの3年間の悉皆調査には幾つかの難点がある。その一つは、テスト問題が公開されているので、同じテスト問題で経年的な変化を追えないことである。先ほど、来年は3年前に小学校6年生として調査に参加した子どもたちが中学生3年生として受けるのでその検証のための重要な機会だったという話があったが、これまでの悉皆調査を続けたとしても、3年前の各児童生徒の変化を追える調査設計にはなっていない。経年変化を追う観点からは、毎年すべての標本を抽出するのではなく、例えば、標本調査の対象になった学校の半数は次年度も調査の対象にして、残りの半数は交代で変えていくというような調査設計も考慮する必要があるだろう。他にも標本調査のメリットとして、規模が小さくなるから、フィードバックを早くできることがある。希望利用分のデータについて、希望があったところについては全国の結果に取り入れられるような制度の設計も検討する必要があるのではないか。標本調査では、標本調査の対象となる場合も、ならなかった場合も、それぞれ不公平感が生じる可能性があるので、国として、基礎データを得るために必要であることについて理解を求める必要がある。最後に、誤差が±1ポイント以内という話があったが、都道府県別の差は大体5ポイント以内に収まっている。誤差が1ポイント以内では都道府県間の比較ができるのか。もっと誤差を小さくし、精度を高める必要があるのではないのか。
○ 国として発表できるのは抽出調査の部分だけになると思うが、この調査結果の分析と活用に関する専門家会議、あるいは、この後継組織ができれば、希望利用のデータもできるだけ広範に提供してもらい、プロジェクトチームをつくるなりして、抽出、希望利用を超えた結果の分析と活用できる方策について事務局で検討願いたい。希望利用を拒まないという柔軟な姿勢が政務三役から出ているので、教育そのもののために生かさなければと思う。
○ 国、地方がそれぞれ必要に応じ調査をすると、学校が幾つものテストを子どもに受けさせなければいけない。学力調査を一本化すれば財源も一つですむ。国はこの部分に対してこれだけのお金しか出さない、地方はこれだけのお金を用意しなさいということであれば、地方負担も軽減される部分は出るし、フィードバックもしやすくなる。この辺を考えないと、道路工事が何回も行われるのと同じように、学校はそのたびに振り回される。PTAとして学力調査の復活を積極的に認めたのは、子ども達に返ってくるところまで配慮があり、格差を是正することに役立つと認識していたからだ。データ作成に協力するためのテストをとなると、各地方自治体の協力体制はどのようになるのかなと思う。全国学力・学習状況調査がよい状況で機能し始めたのなら、国・地方を含めた財政負担が少なくなるようにするべきである。国の負担部分のみが減っても未来の子どもたちにお金を返したとは思えない。
○ 来年度もこの調査が実施され、趣旨も継続されると聞いて安心している。授業改善によって子どもに力をつけることに関心を持つ一人として、都道府県別に各教科のA・B問題の結果をトータルとして集計・公表するだけではなく、問題別の都道府県のデータを出すことも検討いただきたい。問題ごとに都道府県によって上、下にあるか違うと思う。元気が出る部分と出ない部分、両方あるので、両方をにらんでやればもっと元気が出る。問題別の結果がTIMSSのように公開されると、現場はもっと本気で対応できる。複数年度でも予算措置をすることが可能となったら、4年くらいのサイクルを設定して、入り口と出口は悉皆調査とし、その間は過去3回の調査で明らかとなった様々な課題について精密検査をしてはどうか。これまでの調査は人間ドックのような全体的なバランスのチェックだと思う。緊急を要する課題や根の深い問題などは特定課題としてやる。これを組み合わせて、4年間のトータルの予算を単年度の4倍とするという発想もあるのではないか。実現可能性はわからないが、授業改善と子どもに力をつけるという視点から申し上げた。
○ 県の教育委員会としての意見だが、本県も来年度、再来年度は、取組の成果についての検証をしていく大切な時期であると考えている。その意味で、来年度調査において、都道府県単位の結果が出るのは非常にありがたい。学校、市町教育委員会も、授業改善の取組の成果を検証していくことが課題になる。特にB問題については課題も大きく、教員も具体的な取組を続けている。それが課題のままで終わってはならないわけで、来年度、再来年度以降もB問題は、学校の先生だけでそれ作るのが難しいよい問題であるのでぜひ引き続き出題していただきたい。いい問題ゆえに、採点については、教員がするのが一番いいと思うが、誤答分析等の際、活用問題は文章で書く問題だから、どの教員がやっても同じ基準で採点できるような情報提供がどの程度あるのか教えてほしい。希望した学校・学級はすぐ採点できるので、抽出された学校・学級のレスポンスを早くしてもらいたい。抽出調査になることで採点・集計期間の短縮は期待している。結果を早く返してもらえれば、学校も授業改善に一層生かすことができる。市町教委もやる気を持って予算化したりしているが、小さい市町村は当たらないことがあり得るのか。例えば、中学校が1校しかないような町の中学校は全く抽出されない可能性があるのか。予算を組まなかったが全く抽出されなかったとか、予算を組んだがすべて抽出されたということが起こり得るのか、教えてもらいたい。
● 論理的には、市町村単位で当たらないところも出てくる。それは前提として考える必要がある。小さいところだと、全く当たらないとか、全部当たるということが出てくるかもしれないが、12月中には抽出対象校を示すので、これに対応して希望利用を希望するかを判断するのが1月というスケジュールになると思う。
○ 今年度の調査の結果についても分厚い冊子が出され、具体的な成果が出ている。この調査が重要であることについて各委員に異論はないと思う。それが、政権が変わり、費用対効果の問題もあって突然4割抽出にするとなると、これまでの調査は無駄だったのかということになりかねない。そういうことについて説明が必要である。大臣等と担当部署との関係や政務三役が、中教審等の専門家の意見をどこまで聞くのか、教えてもらわないと具体的な話はできないというのが率直な感想である。少なくとも教育に関しては、政策を決める際に、この会議や中教審等の意見を聞いてもらいたい。
○ 政権が変わって、最初は肩に力が入っていたと思う。先日、大臣、副大臣と懇談した折に印象的だったのは、教育の問題を扱っている文科省としては、政務三役と事務当局ができるだけ緊密に連携をとり合いたいということだった。
● 2点だけ申し上げたい。1つは、費用対効果の関係は、これまでの調査がむだであったという認識をしていない。これまで悉皆調査をやってきて、データも蓄積され、地方自治体や学校でいろんな取組がされていることも踏まえて、今後、効果として本来ねらっているところが低減しないようにしたい。これまでの調査は、悉皆であったからこそ得られた成果が多々あるという総括をしている。長期的視野を持った調査設計の必要性は重々承知している。いろんな意見も聞いて在り方を考えないといけない。23年度以降の調査の在り方は、別途、意見を踏まえて進めていきたい。来年度調査について、短期的に取りかかっていることは、仕方ない面もあるが、本来望ましいのは、調査の在り方に関して一から議論することと認識している。
○ 全国学力・学習状況調査については、この会で議論すればよいが、他の学力調査を含めたより大きな視点での議論は、中教審初等中等教育分科会あたりで議論すべき課題だが、中教審はもう少ししないと見えないところがある。まず、来年度の全国学力・学習状況調査について、この会で意見をもらい、スムーズに行けるように持っていきたい。
○ 学校では、子どもたちに調査結果を返すことは、大きな目的の一つであり、授業改善や学校改善のためのデータにもならなくてはいけない。PISA調査や全国学力調査の結果から来る評価が実際に評価される部分である。学校は、今、新学習指導要領の移行期で、教育課程を編成し授業をしている。この調査の結果と実際の授業のかかわりを明確にすることで、煩雑さの問題もあるが一つ改善されると思う。
○ 今日の説明で、概算では学級単位で40%ということがわかった。来年に向けて比較可能なデータになるように、多少、学校間格差があるので、学級単位、学校単位でうまく抽出してもらいたい。市町村単位で、抽出されない市町村が出ることなども踏まえ、抽出調査の設計はよく工夫していただきたい。私は、希望利用には、たくさん参加してもらいたいと思っている。調査のデータや結果は、専門家の分析に利用できるようにしていただけると有難い。
○ サンプリング調査になると、調査票から返ってくる情報量は多いほうがいい。そうなると一つ一つの個別のアイテムについての、教育目標側からの対応関係をはっきりと述べる力を注ぐと得られる情報量が違ってくる。最近では、接続型のテストと言われる同じテストを別の情報にも使えるように、テストの解析力が強まるような付加価値をつけるテストがある。テスト項目として計れるシャープさと、計ったときの妥当性の問題だが、これらを合わせた意味で、よりしぶといテスト項目になることが望ましい。質問紙はもともと性格の強い調査法である。例えば、習熟度別の授業をやっているか否かという問は、何も聞いていないに等しい。習熟度別編成の授業のやり方は実に複雑で、学校によって随分違うのものなので情報量にならないと考えている。きちんとした情報で聞くためには、質問紙に限定することはない。サンプルが少数になるということは、調査法として質問紙以外も視野に入れた学力調査研究を体系化して、無駄のない質の高いデータを得ることを考える委員会が必要だ。
○ 何を問うか、目的は何かによってテストの在り方を再検討すべき。悉皆からサンプリングへの調査方式の変更は、テストの在り方を考え直すいいチャンスである。教育委員会の委員をしているが、国の方針が変わるということに対して、教育委員会側からは、この先どうなるのかというある種の不信感を持つ。大きな枠組みを示して、国と地方がともに取り組む形をつくっていかないと、時の政権、その時々の状況に流される形で教育の問題がいつもわき起こってくる。少し腰を据えてご議論いただきたい。
○ 3年間の悉皆調査の経験は確実に意味があった。日本の初等中等教育は非常にしっかりしていると言われていたが、それに対する不信感が出てきた。悉皆調査を実施したことで国民の教育に対する信頼がかなり回復してきており、調査にはそれなりに役割があった。役割がそれほど重要ではなくなってきたのでこういう形に変えたいというような丁寧な説明が必要である。具体的には、テストのやり方とか内容とかを工夫しないと、同じことをやっていたのでは、メッセージが国民、一般の人に伝わらない。抽出調査は、毎年やる必要があるのかという疑問につながっていく。時間がなくても、将来大きな問題になる可能性があるので、新しい調査方式のそのような問題点や方向性等について、きちんと議論し理解を深めていく必要がある。
○ カリキュラムについては、学習指導要領レベルの意図されたカリキュラム、教室で実践している教員が実際に子どもたちに経験させているもの、子どもたちの身についた達成されたものの三層で考えることがよくある。全国学力・学習状況調査は、最後のところについて、客観的なデータに基づいて資料として提供できるもので、改善に生かすということがあった。学校現場の研究会等に行くと、教員が調査結果に基づいて目標や教室の実践を語るという意味での効果が出ている。一方、教育測定論上の問題から、客観的な学力を測定できる調査になっているかどうかという、そこのせめぎ合いをずつとこの委員会はしているが、文部科学省が、意図されたカリキュラムと実施されて達成されたカリキュラムの全体に責任を持っている、その方向は変わることなく調査が継続されることを確認したい。そういう意味では、国、教育委員会、各学校という実施主体に応じて記述されている調査の目的の記述をもう一回検討する必要がある。特に各学校に対するメッセージとして、採点上のコストの問題に左右されることなく、記述式の問題を一定の割合で入れることや解説資料や結果報告がすべての学校に行き届く仕組みを維持していただきたい。教育の調査であり、生身の子どもたちと教員がかかわっていることを忘れずに、仕組みを担保していただきたい。
○ 各委員の話を伺って、ほんとうに現場を大切にしてくれる方ばかりだといつもながら思う。今回3年目の調査となり犬山も含めて、公立中学校の参加率は100%になった。この3年間、教職員が粛々と取り組んできている。3回の悉皆調査によって全国どこへ行っても大きなばらつきがないことが実証されたことはとても意味がある。全国の公立学校の校長も、自らの経営方針に全国学力・学習状況調査の文言を入れている。それだけ大事にしてきた調査が継続されるということで安心している。この3年間に、大変よく練られたよい問題に出会った。チャートを含め現場で使いやすい評価ももらった。国研からも、実践事例集や様々なものの提供を受け、現場は活用整理しようとしている。サンプル調査になっても、全国の校長は粛々と対応すると思うが、ぜひわかりやすい説明をして、教育の機会均等や学校の状況を把握するための調査の機能は担保してほしい。希望利用により自治体の格差が出ないよう検討する必要がある。
○ 国が悉皆調査を行うことの意義は非常に強かったので、コストパフォーマンスを理由に調査方式が変更されることについては疑問に思っている。すべての学校、子どもに対して新学習指導要領の趣旨を示すことができている。自治体による財力の差が出ないようにするためにも悉皆調査の継続に尽力願いたい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)