平成22年度調査における新たな調査方式について(案)

平成21年11月27日

※調査方式については平成22年度概算要求に基づき検討を行ったものであり、今後の財務省との協議を踏まえ、調査方式について一部見直しが行われる可能性がある

1.新しい調査方式について

○ 3年間の悉皆調査の結果、全国及び各地域等の信頼性の高いデータが蓄積され教育に関する検証改善サイクルの構築も進んでいる

○ このため、平成22年度は費用対効果も加味し、一定の継続性を保ちつつ、抽出調査に切り替えるとともに、抽出調査対象外でも設置者が希望すれば調査を利用できるようにし、学力等の状況を把握・検証することとした

○ 都道府県別の学力等の状況を把握、検証できる抽出調査とし、地方の教育施策の改善や児童生徒への指導の充実に生かせるようにする

○ 市町村や学校においては、希望利用方式や3年間の悉皆調査で蓄積された調査結果の活用等により、児童生徒の学力等をより詳細に把握、検証することもできる

○ 以上により、全国的な学力調査を活用し、教育や教育施策の改善を図るという、学力調査の本来の目的は今後も継続する

2. 調査の基本的枠組み

(1)調査対象:

小学校第6学年・中学校第3学年の児童生徒

(2)調査事項:

・児童生徒に対する調査(教科に関する調査、質問紙調査)
・学校に対する質問紙調査
・対象教科 小学校:国語、算数    中学校:国語、数学
・主として「知識」に関する調査、主として「活用」に関する調査

(3)調査方式

・抽出調査
1) 抽出の精度
 都道府県の状況まで把握できるよう抽出方法を設定
 →95%の確率で、各都道府県の平均正答率が誤差1%以内となるよう、都道府県ごとに抽出数を設定

2) 抽出単位
 学校・学級単位で抽出

3) 調査結果の取扱について
 集計結果として文部科学省がとりまとめて提供・公表する調査結果は次の通り

○国全体の結果、国・公・私立学校別の結果、都道府県(公立)別の結果
※市町村別・学校別の結果については統計的に有意とならないため集計せず
※抽出調査の対象となった児童生徒の調査結果については、当該市町村教育委員会ならびに学校に提供する

・希望利用方式
1) 抽出調査の対象外であっても、設置者が希望すれば国から同一の問題の提供を受け、調査を実施
 ・希望利用方式の申込手順について
学校設置者(市町村教育委員会等)が域内の学校で希望利用による調査の対象となる学校を取りまとめて、都道府県教育委員会を経由して文部科学省へ申請

2)  採点等は、設置者が自らの責任と費用負担で行う

3)  調査実施責任者である設置者が、調査結果を管理する
 ・希望利用方式における調査結果を学校設置者の判断で公表・提供・活用する場合の配慮すべき事項について
 →希望利用方式における調査結果の公表・提供・活用については、序列化や過度の競争につながらないよう学校設置者における配慮が必要

 

各委員の意見の概要

1. 平成22年度調査の基本的な考え方

(1)これまでの調査との継続性について

○ 全国学力・学習調査が3年間、悉皆調査として順調に実施され、信頼性あるデータが蓄積され学校の改善の取組も進んできていることを踏まえ、来年度調査について、これまでの調査との継続性を保ち調査本来の目的を維持することとしたことは意義がある。

○ 3年間の悉皆調査により、教育に対する信頼が回復してきたなどの意義があった。

○ 本調査については、PTA・保護者として調査結果が子どもたちの学力向上のために還元され、指導に活かされることの意義を認め理解してきた経緯がある。来年度調査においても、抽出調査対象外の子どもを含め、子ども達の指導に活かすという基本姿勢を維持していくのであれば、そのことについて説明していく必要がある。

○ 3回の悉皆調査によって、全国の公立学校では、ばらつきがないことがデータとして示されたことの意義は重要である。教育の機会均等や学校間のばらつきを検証する調査は今後も必要である。

○ 来年度調査においても、カリキュラムの三層(意図・実践・達成)のうち、意図されたカリキュラムと、実際に子ども達が達成されたカリキュラムの全体に責任をもつという方向性を変えないことを確認したい。また、採点上のコストの問題に左右されず、記述式の問題を一定の割合で入れることや、解説資料等がすべての学校に行き届くしくみも維持する必要があると考える。

(2)新たな調査方式の導入に対する配慮

○ 新しい調査方式に切り替えることの意義等について、その問題点や方向性等について、きちんと議論し説明し、理解を求めていく必要がある。

○ 抽出調査とすることにより、国の経費により調査が実施され個人票を受け取ることができる抽出対象校と、自治体が自ら費用を支弁してデータの活用をする非対象校の二種類の学校が生まれることの問題がある。

○ 抽出調査の対象となる学校も、ならない学校も、それぞれ不公平感が生じる可能性がある。国としてデータを取るために必要であることについて理解を求めることが重要。    

○ 抽出調査となることで、学校の主体性が失われないよう自治体としては頑張る必要があると考えている。

○ 費用対効果だけを理由に抽出方式に変更するかのように受け取られないよう、新たな方式への切り替えの趣旨について、教育委員会や学校に対して十分な説明を行う必要がある。

○ 今回、調査方式の切り替えによって、都道府県、市町村がどう考え行動するかが重要となった。これらの動きを注視する必要がある。

○ 希望利用については、本来のニーズとは別に、自治体の財政力の違いによる取組の差が生じないよう配慮する必要がある。

○ 希望利用においても、採点基準の統一性を図ることができるよう配慮する必要がある。

(3)調査目的について

○ 調査結果を活用して教育や教育施策の改善を図るという調査本来の目的を維持することとしたことは意義がある。

○ 抽出調査に切り替えるに当たって様々なニーズを玉虫色にするのではなく、国として必要なデータは何かという観点から整理をし調査を設計する必要がある。

○ 学校では、子どもに実際に調査した結果を返すことは重大な目的であり、調査結果は授業改善、学校改善のデータとしても必要である。

○ 統計的に日本の子ども達の状況を把握しようというだけでなく、日本の子どもたちの学力向上に資するという基本姿勢を維持する必要がある。

2.  制度設計の詳細について

○ 都道府県単位の有意なデータを出すという制度設計としたことを評価したい。

○ ほとんどの都道府県の平均正答率が5%以内に収まっていることを考えると、もっと精度を高める必要があるのではないか。

○ 学校・学級単位の抽出ということとなると、同じ県であっても、特定の地域が偏って抽出されたりしないよう、配慮が必要な場合もある。

○ 抽出だからこそできることを考える必要。例えば、問題を非公開とし、半分の標本は前年度と同じにして経年比較ができるようにするなど、今後を見据えた制度設計が必要。

○ 従前と同様に記述式の問題を一定の割合で入れることは必要である。

○ 問題別の結果も都道府県レベルで公開できるとよい。

○ 調査結果を踏まえた分析・活用が、学校にも定着してきており、今後も、チャート資料の提供等、分かり易い資料を現場に提供して欲しい。

○ 質問紙調査は非常に制約の多い手法。調査票から返ってくる情報量が多くなるよう、教育目標との対応関係をしっかり吟味することが必要。

○ 抽出調査となることで、悉皆調査と異なる多様な研究分析の可能性がある。総合的な学力調査研究として取り組む組織が必要ではないか。

3.  調査結果の集計・公表

○ 抽出対象校について個人票が子どもたちに返ってくるのであれば、希望利用校についても、それに合わせたいというのが県・市の要望である。

○ 国として責任をもって集計・公表するのは抽出調査の部分だけであることは理解するが、希望利用した自治体の独自の調査結果については、専門家検討会議において分析が可能となるよう検討する必要がある。

○ 希望利用校のデータも、分析に活用できるとよいのではないか。

○ 採点等は教師が行うことが最も有意義と思うが、その一方で、勤務時間中には困難な状況もあるので、どこかに依頼することとなるのか等議論が必要なことが多い状況である。

4.  その他、調査のあり方等

○ 数年前に全数調査に対する批判的な論文を新聞に掲載したことがある。その基本的スタンスは変わっていないが、19年度調査を受けた子どもが受ける22年度調査を考えると、全数調査の利点もあるなと認識している。

○ 教育測定論・大規模テストの技術の専門家の立場からのコメントとして、大規模テストを実施する場合のポイントとして、(1)国民へのアカウンタビリティと、(2)コスト削減と現場の負担軽減があるが、前者については、43年ぶりに調査を復活したことで果たせているし、後者については、抽出調査によって説明できる。その上で、(3)年度間比較ができるかどうか(equating)、(4)より広い出題範囲の問題が作成できるか(matrix)、自治体テストと全国学力調査の対応づけ(linking)を検討する必要がある。

○ 「悉皆調査か中止か」でなく、調査が継続されることは重要であり評価する。学力調査の実施頻度も含め全体を設計して、時系列比較する調査、教科全般を見る調査、高等学校生徒の調査、国際比較調査等、国として全体の制度設計を考えるべきである。

○ 悉皆調査には意義があるが、現場に近い設置者が行う方がよいのではないか。

○ 抽出調査の場合、調査対象が減少するので、フィードバックの時期が早くなるのではないか。

○ 平成19年に小6として調査対象となった子どもが、来年度は中3として調査対象になるので、これまでの教育施策の成果を検証することが出来る。抽出調査においてどのようにこれを検証するかについての検討が必要。

○ 4年間の複数年度での全調査を一つのサイクルと捉え、全体として予算措置を考え、入口としての1年目と出口としての4年目は悉皆調査を行うというようなシステムができるとよい。

○ 学習指導要領趣旨の徹底という意味でも、悉皆調査の意義は強かった。これまでの調査の継続性について努力していただきたい。

  

 

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