指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドラインに関する調査研究協力者会議（第5回）議事録

1．開催日時

平成19年11月13日（火曜日）10時～12時

2．開催場所

文部科学省K2会議室（仲通りビル地下1階）

3．議題

これまでの意見等について
- 今後のとりまとめに向けた検討
その他

4．出席者

（委員）

服部座長、赤田委員、安藤委員、石津委員、小笠原委員、黒田委員、佐藤委員、高田委員、竹氏委員、千々布委員

（事務局）

前川大臣官房審議官、常盤初等中等教育企画課長、大川専門官、その他関係官

5．議事

　配付資料について事務局から説明が行われ、その後、委員の間で以下のとおり意見交換が行われた。

　ありがとうございました。では、この資料は、これまで出てきた意見等を簡潔にまとめていただいたわけですが、この資料を参考にしつつ、これまでの会議で指摘されていた事項について意見交換したいと思います。まず始めに、特にこの点についてはこういう表現ではないかとか、あるいはこんなところをもう少し補足する必要があるのではないかといったことについて、何かご意見等があればお願いします。
　2カ所気になるところがありました。1つは、3ページ目の一番最初の項目で、「校長は教員が課題を自覚しない場合はかなり強い調子で当たることになるが」という記載ですが、具体的な場面はある程度イメージはできるのですけれども、どういうふうに強い調子なのか、もう少しわかりやすい形でお書きいただくのがいいのではないかということです。
　それと、もう1つは、5ページの3番、指導改善研修終了時の認定のところで、「指導改善研修を受講している教員にとって、どのようにするのが一番よいのかを考えなくてはならない」という部分ですが、そこももう少し明確に書いたほうがいいのではないかと思います。以上です。
　ありがとうございました。今、2カ所について、ある意味ではもう少し具体的に表現を記載したほうがいいのではないかといったようなことでしたが、ほかの委員さんはいかがでしょうか。大体自分がどのところを発言したかというのは思い当たるかと思います。今回は、このように整理されておりますけれども。
　それでは、まず資料を順番に見ていきましょうか。今この資料が、ある意味ではガイドラインづくりの考え方に沿うようにまとめられていると思います。最初の1ページから見ますと、基本的な考え方についてですが、まず、このガイドラインというのはどういう姿勢で示していくかということについて、今までの意見は個別具体的なところがかなり多かったわけですけれども、一番基本的な考え方について少し議論を深めていきたいと思いますが、何かご意見等があればお願いします。
　この3つのレベルのことです。上の2つが今までの反省と、これからどうするかというのはいいのですが、3番目にいきなり「最終的には裁判ということもあり得る」と、各論と対策がいきなり個別になっているような印象がある。直し方は別として、3番目は何か工夫が要るのではないかと思いました。
　そうですね。ほかの委員さん、何かご意見はございませんでしょうか。
　今のところは同感なんですけれども、2つ目と3つ目の丸の間あたりに、指導改善研修としてのガイドラインのとらえ方といいますか、その部分をやはり載せるべきではないかと思います。
　要するに対応策を講ずるべきだという趣旨ですね。
　1番目の基本的な考え方ですが、それ以後の、1番からずっと出ているそういうことについて、トータルとしてどうまとめるかということなので、実は、整理すると、こういう大ざっぱに、このようなことが基本的なベースになるのではないかということでここに挙がっているわけですが、多分、その後の個別具体的なところで基本的な考え方が入っていますから、それらをまた精査して、ここへ持ってくるということが考えられると思います。
　それでは次に、具体的なところへ入っていったほうがいいと思いますが、指導が不適切な教員の定義、認定基準、手続といったようなことですね。この辺のところについては、もう少し意見があってもいいのではないか、あるいは深めていけるのではないかと思いますが、どうでしょうか。
　これまで各都道府県教育委員会、指定都市教育委員会という、いわゆる教員の任命権者であるところに、指導力不足教員の対応について、ある意味では任されていました。それについて、今度、国がどういうガイドラインを示すかということがこの会議の一番もとになると思いますが、指導が不適切ということについて、これまでの意見の中で、ここにも出てきておりますけれども、教員の懲戒については違法行為ですから除外されるとして、例えば心身の疾患ということについて、どういうふうに扱うかといったようなレベル、あるいは分限事由ですね。教員として不適格といったようなことについて、どのように盛り込むかといったようなことがあります。
　最終的に、研修によって学校教育現場に復帰できるような、そういう改善研修について、ここでどう盛り込むかといったことが、その3つに入るのではないかと思っておりますが、この辺のところについて何かございますか。例えば各都道府県、指定都市の定義等を見ますと、それが、ある意味では混在しているような気がするんです。その辺をもう少し整理する必要があるのではないかなと思いますがいかがでしょうか。
　厳密に判断するのはかなり難しいところがございまして、病気が疑われる場合だったら必ず除いてくれ、あと分限事由に当たる場合は必ず除いてくれということになりますと、認定しづらくなる面が出てくるのではないかと少し心配いたします。具体的に言いますと、例えば病気が疑われる場合には、必ず、まずお医者さんの厳密な手続を経てから認定しろと。あるいは分限事由に当たるような場合には、必ずそちらのほうを解決してからという、その前段の手続がかなり厳しいという話になりますと、そもそもそれらが混在されているような方もいらっしゃる場合も想定されますので、そのあたりの取り扱いが、厳密にと言われますと少し難しくなる可能性があるのではないかと少し心配しているところでございます。
　認定する側の意識からすると、そういうところがあると思うんです。ところが、研修を担当している教育センターの方の話を聞きますと、病気なのに指導力不足ということでセンターのほうで預かっている場合には、幾ら研修してもどうしようもならないと言われます。そういうのはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
　病気の程度の部分もあるかと思います。例えば、実際、学校の現場のほうで、本来うつ病の病気を少しお持ちなんですけれども、薬で抑えているので学校の現場でも十分対応できているという方は現実ではいらっしゃるわけです。
　例えば、うつ病でお医者さんにかかっているということを理由にして、その他の指導が不適切な教員としてちょっと疑いがあるという場合に、それを理由にして、盾にして認定されない、拒むということになると少し困るかなとは思っているところなんです。
　私の経験からすると、要は、一方で健康審査会があって、そして一方で指導力不足の判定、認定があるわけですが、本来的には健康審査会できっちり、この方については治療が妥当ですよというふうなことが、しっかりと機能していれば、センターの研修に一緒に入ってくることはないんだけれども、やっぱりこの議論の中でも出てきましたけれども、お医者さんも、本人から言われると診断を出してしまう。それに基づいて健康審査会は議論するわけであって、そこで、異常はないということで、センターのほうに行くというケースが結構ある。
　だから、今言った、仮に健康審査会としますが、それとのかかわり、機能をきちっとして、どこで疾患のほうを抑えていくか。そのシステムをしっかりしないと、なかなか区分けできないかなと思います。
　資料3をちょっと見ていただいて、これは何度も見る資料の1つですが、8ページからですか。これは指導が不適切な教員に関する人事管理システムの概要、平成16年にはすべての都道府県・指定都市教育委員会で何らかのシステムができて、そしてこのようなものが文科省のホームページに公表されているものの1つですが、表の一番左側に指導が不適切な教員の定義という項目が北海道からずっとあるわけです。これをざっと見ていくと、いかに各都道府県・指定都市ごとにこの定義が、ある意味では異なっているというか、多様であるかということになっているんですが、例えば、この中には、最初から「心身の障害あるいは疾病等による場合は除く」という表現がある場合と、そのことには触れない、あるいはそういうものも含む、それも1つの指導が不適切な要因だという考え方でスタートしているところとがあるんです。
　18年度では61の教育委員会の中で、いわゆる心身の障害といった疾病を除くとして、研修等によって指導が不適切な者を改善できるというようなことからスタートする教育委員会は26だったと思っています。
　その後、教育委員会が増えていますから、ほぼ半分半分ぐらいですね。疾病、心身の障害等も含めて、それも指導が不適切な要因だというふうにとるか、あるいは今、何人かの委員さんがおっしゃっておられたように、それはむしろ医療に任せるべきだとするのか。今回、法改正による指導が不適切な教員の研修というのは、研修によって指導力を回復することができる対象に絞るといったようになっていますが、そこら辺を少し詰めていく必要があるのではないかなと思います。
　大筋で、本県でも精神疾患の場合には除いてくれということにしておりまして、それは明らかに病気の方は除くということについては全く異論はございません。
　全く私も同じ思いなんですけれども、実際に指導が不適切な教員の中には受診する教員もいますし、場合によっては、受診しない教員について受診命令まで出すかどうかは別にいたしまして、それは非常にデリケートな部分がございまして、結果として指導が不適切ということで記録をとりまして、審査会、判定委員会等にかけましたら、専門家の医師の先生もいらっしゃるので、これは精神疾患のほうで見るべきじゃないかなというご意見もいただくこともあるわけでございます。
　また、もう少し進んで研修していく段階で、模擬授業等を見まして、後で助言するような機会がありましたら、「あなたは診療内科とかへ行ったことがありますか」「1回、そういう経験もどうですかね」というようなことを申し上げることもあるんですが、ですから、入り口の部分で明らかにそういうふうに仕分けができるといいますか、そういうケースと、実際に認定して、何らかの指導改善の取組をする経過の中で、そういうことが明らかになってくるケースもあるものですから、そのあたりが非常に難しいなと思っております。
　本県も今話のあったとおり、受診しない方がやっぱり結構います。受診していて、また投薬で抑えていて、ある程度勤務できるというような方がいらっしゃいまして、そこで指導力不足との因果関係が明らかにわかっているというのはほとんどない状態の方が多いんです。ですから、そこのところを完全に右と左みたいに分けてしまうと、子供たちに指導ができないという現象はあるわけですので、認定する側の人間からすれば、その辺はひと工夫あればなというような思いでいます。今、話が出たように、研修の中で受診を勧めたりとか、あとは審査委員会の中で、精神科のお医者さんとか、カウンセラーの方がいらっしゃいまして、その方からカウンセリングを受けるようにしてくださいとか、医療機関で受診するように勧めてくださいとかというご意見をいただいて、そのような形で対応する方も中にいらっしゃいます。
　私はそこが少し気になるんですが、実際、AさんならAさんという指導力不足の方がいらっしゃって、その方と相対したときに、やはり大事にするべきことは、Aさんに、どういうふうに我々がしてあげることがAさんにとっても一番いいのか。そこを考えると、例えば、「先生、どうも精神的なところもあるようなので診てもらったらいかがですか」と言っていただく。そして、お医者さんの意見が出てくる。
　そうなったときに、とにもかくにも疾患や精神疾患も含めて、まず体を治すことですよ、これがあなたにとって一番大事なことですよ、これは何をやっていくにしても一番のベースですよというような、こちら側の指導の姿勢と体制とかがやはりないと、何かよくわからないけれども一緒くたになってしまっていて、どうだこうだという議論になってしまう。だから、その意味では、まずは指導力云々よりも、それがあったらそれを治すことが先決です。ですから、それは指導力不足研修とは若干きちっと整理してかからなきゃいけないんじゃないですか。そこは、私はきちっと持っていったほうがいいのかなと思います。
　このことについてはいかがでしょうか。これはガイドラインの出発のところでの基本的なことなので、少し話し合ったほうがいいかと思いますが。
　教育委員会の皆様にお尋ねしたいのですが、研修の過程で診察することと、研修に入る前にまずは診察していただくということと、どう違うのかを確認したく存じます。
　この制度の対象になる方は、ある程度は精神疾患的な資質をお持ちの方がかなり多いのは事実だと思います。ですから、精神疾患は除くとはっきり言うと認定がしづらくなるというのはおっしゃるとおりだと思います。精神疾患が主な要因であれば、分限処分のほうで対処すべきだと思いますが、軽度な場合には、指導力不足の研修によって精神疾患のほうも治るということは報告されておりますので、この制度の対象となりうると記述していくことになるのかなと思っております。
　本県の場合は、特に定義の中に病気の者を除くということは書いておりませんで、形としては、表にあらわれた状況によって認定する。そして、そこに精神的な病があるのであれば、研修を受けずに休職という形で対応しているのが現状です。
　ただ、システムとしては、認定時の審査会の折に必要であれば診断書の提示をしていただく。当然、委員さんの中には、精神科医の方がおりますので、その方の意見を聞きながら、分限で対応するのがいいものか、あるいは研修に入って、先ほど話があったように、軽いものであれば研修を通して、それこそ回復していくということも過去にもございましたので、一応そういう形で対応しているところですけれども、前にもちらっとお話をさせていただいたかと思うんですが、県として指定医を設けるということは非常に難しい状況にありまして、その辺でいろいろな問題点が出てくる可能性はあるのかなと懸念しているところです。
　今までの議論の中に、審査をするときの視点というものも、もちろんありますが、審査委員の中にどういう方を入れるかといったようなことについても、実は都道府県、指定都市教育委員会の対応をみると、かなり多様ですね。今、話があったように、審査委員の中に必ず医師が入っていて、あるいはプロとしての目で見てもらうということを行えば、そこで仕分けができるということがありました。その辺のことについても、当然ガイドラインで、審査委員のメンバーといったようなことにも触れなければいけないと思っています。
　繰り返すようになりますが、精神疾患者については、原則は分限、これについては異論はないところでございますが、指導力不足教員に認定していく過程のところで、あなたは指導が不足していることは明らかだと。しかしながら、それは力量、技量がないのか、経験が不足しているのか、研修が不足しているのか、それとも精神的な疾患があるのか、ここの判断が必要なので受診してきなさいと。そこの部分というのは、さっきの指定医のこともございますし、認定する側にとっては非常に難しいのかなと思います。
　ですから、例えば明らかに精神疾患でないというような者については、認定した後に、指導改善研修の過程において受診を命ずることができるとか、認定する側からは、そんな記載があるといいのではないかと思います。
　大分煮詰まってきたような感じですが、要は、指導改善研修に入る前に、明らかにこれは心身の疾病だというようなことについては除外することは共通認識だと思いますが、要因が非常にわかりにくい場合については、とりあえず指導改善研修に入って、その中で何回かそういう医師の判断を経て、治療に専念する過程も入れるというようなこともあってもいいのではないかということですよね。
　指導力不足教員が社会問題になる以前に、各都道府県・指定都市教員委員会に医療審査会というようなものはあったと思うんです。もちろん心身の疾患だけではなくて、いろいろな意味での医療審査会というのは。だからそこを、指導力不足教員の前面に出してやるか、あるいはそういうのも含めてやるかということの違いが定義等に出ているということだと思います。
　指導改善研修のほうにも話が及んだわけですが、もう少し具体的なこと、あるいは認定の手続といったことがその次、2ページ以降にありますが、この辺のところでお気づきの点、あるいは意見等がありましたらお願いします。
　1つ目の丸、2つ目の丸でございますけれども、ここでは指導力不足ということになっておりますけれども、認定するための手続が精密になり過ぎています。本県の場合ですと、完全に分限と切り離した形で改善研修というものを行うことができるのであればあれなんですが、あまり望ましくはありませんが、改善しない場合には、分限免職ということも、辞職していただくということにつながる面は、やっぱりあるかと思うんですね、身分的な面で。そうしますと、ある程度厳密に手続を踏んでやる必要があるのかなとは私どものほうでは思っております。
　1枚目の基本的な考え方の3番目、ここで置くのはどうかという先ほどのご意見があったんですけれども、考え方は、システムに入る前の、これは研修に入る前ということで先ほど理解しましたけれども、研修に入る前の段階は間口を広めて、ただ、システムに入る部分ではある程度きちっとした手続を踏んであげないと、人事面のお話でございますので、ちょっと難しいのかなという印象は持っております。
　この2ページ、3ページのところで出てくるのは、今回のガイドラインが、ある意味では教育委員会、あるいは学校現場に対してもメッセージを与えるということもあるわけですが、学校長の役割というようなことが、これまで委員の皆さんからもそういう意見が結構多くあったわけですけれども、学校内における校長のリーダーシップとかいったようなこと、あるいは認定に至るまでの、ある意味では校長先生の苦悩みたいなことが大分出てきたように思いますが、その辺についても、今ここで簡潔にまとめてありますけれども、何かご意見等があればお願いします。
　学校における校長先生の役割というのは、第一義的には子供の教育について、もちろん配慮しなければいけない。そして、そういった教育活動が、ある意味では健全に行われるように先生方に対して目を配るというようなことになってくるわけですが、この中にもそんなことが読み取れるのですけれども、ある意味では校長先生を孤立させないというか、校長先生に対して、教育委員会がどう支援体制を持っていくか、支援するかといったようなことも必要ではないかと思います。
　私が現場で長年やってきた経験的なことになりますが、1つは、こうした職員の進退にかかわる、もちろん具申だとか、幾つかの校長がやらなければならないことは承知していたし、やってはきていたんだけれども、ともすると、多くの校長さんの中に、今言った本人の進退にかかわることについて、校長がいかにかかわっていくのか。その校長としての役割は何なのか。そこで、いや、それは教育委員会がやる仕事だよという方もなきにしもあらずだったと思います。ですから、そういった中で、今こういう現状が出てきて、こういった先生が事実、出てきて、その際、校長の役割とは何だろうかと考えたときに、やはり私はもう一度考え、見直ししていいのかなと。私ごとで言えば、例えばAさんという教員がいます。プライベートのことなので、アフターファイブについては私は関知しませんということが果たして許されるのか。具体的に言うと、そういうこともありますね。
　例えば、そのAという先生がお酒を飲んで自分の車の中で一夜明かして、それを時々やっている。それが耳に入った。さあ、それをどうしますか。具体的に言えば、そのようなことも含めて考えてみると、やっぱり校長の役割というのは、もう一歩踏み込む。さあ、そうしたときに、孤立している指導力不足の教員にどう接するか、どうつかむか、どう話しかけるか、どんな相談に乗るか、これが1つは出てくるだろう。
　それからもう一つ、教育委員会との関係で言えば、そのあたりをしっかり踏まえたときに教育委員会の指導の内容が出てくるのかなと思います。一度その辺は議論が必要な気がしますけれども。
　かなり具体的な話になってきました。この辺になるといろいろな意見が出てくるかなと思いますが、どうでしょう。
　校長先生や市町村の教育委員会は、ある程度わかっていると思います。教員委員会の指導主事が学校訪問できていない地域もありますので、そういうところはわかっていない可能性はあるんですが、学校訪問している教育委員会は、学校の状況をつかんでいる。校長先生は所属の学校の先生の状況は、まずわかっているはずです。ですから、こういうガイドラインで、所属職員に問題状況があればきちんと対処しなくてはいけないということは、少し厳しい口調で言ってもいいと思います。
　ただ、校長とか、教育委員会の方々に、私はそういうことについて詰問したことがあるのですが、そうしますとどういうふうに返ってくるかというと、わかってはいるんだけれども対処のしようがないと答えるんです。それについては、行政的にも、例えばこの制度によらずとも人的な支援をやるというようなことをガイドラインに書いてもいいのかなと思います。
　今、お話しされているのは、6ページの指導改善研修の認定を行う前の段階の把握と対応ということとリンクしていると思います。その中に幾つかヒントになるような項目があって、校長先生が孤立しないようにということとも関係しますが、例えばAという教員が問題行動があることを何となく皆は知っている、だが誰も注意しない。そんな場合に備えてメンター制度というか、指導員制度というか、校長ではない、ベテランの先生にAさんの相談相手のような役割をも与えておくわけですね。そうしたら、「君、ちょっとこんなうわさを聞いたけど注意したほうがいいんじゃないの」と、それとなく諭すことができて、それでも本人が聞かないようならだんだんと注意のレベルを上げていく。こんな仕組みができたら、予防となって大事に至ることを防ぐでしょう。
　本人が最終的にどう気づくかというあたりの、気づきのところへの追い込み方というような方法も幾つかあって、別の研修といったらおかしいんですが、企業でいえばコンプライアンスみたいな、自己規制するような場づくりが重要でしょう。こういう方策を職場全体に入れるとかが非常に重要で、結局この予防策に尽きていくのかなと思います。
　校長はあくまでも全体をマネジメントする立場から、そういう仕組みをどのように入れるかというところへのミッションを見るというような表現を入れるのがいいと思います。発生してからでは遅いわけですから、発生する確率をいかに少なくするかということに注意することが、結果的にはコストも安くなりますし、やはり大事なのかなという気がいたします。孤立化を防ぐという点では、本人の相談相手になるような人、それがカウンセリングルームという場合もあるのでしょうけれども、そのあたりをきっちりと担保しておいたらよいと思います。
　学校教育において、今は教員、校長を中心としたシステムの中で行われていますが、それだけではある意味では管理し切れないところが出てくる。今のお話は、やはり何らかの体制を考えるべきだということですね。これは本県で何年か前に、教員による不祥事が繰り返しあったときの話ですが、管理職に対して教育委員会があるメッセージを出しました。それは、校長としては時には教員の私生活に及ぶことについても配意して指導するようにというもので、事件が起きてからでは大変だからというような意味でした。学校の管理職だけでは今の世の中では手に負えない状況になっている。指導が不適切というようなことについても、改善する必要があるのではないか、何もかも校長先生がすべてを仕切っていくというか、管理するということについては限界があるのではないかと思います。
　どうも私は、そこがちょっとひっかかるんですが、確かに今おっしゃったような現状の中で校長がきっちりやれるような体制だというものをつくり上げることは大変大事だと思う。同時に、私がどうもひっかかるというのは、もう一度、部下職員を学校長という経営のトップとして、育てる、そして未然に防ぐ、それは子供たちに絶対に負担をかけない、そういう責任を自分は持っている。そこのところをほかにゆだねたり、期待したり、私はどうも、その風潮がもしあるとすれば、それに対して、そうじゃないんですよ、ここで我々が言っている教育委員会と学校長が、本当にお互いしっかりして、何をやるかは別の問題として、そのメッセージを今やっぱり送らないといけない状況ではないのかと思うんです。
　だから、ややもすれば、この制度がスタートし、それがもし、これは学校長として容易じゃないから、県によっては、これは申請出しちゃうと大変だから、だんだん数が減っちゃうとか、そうなってしまうのであれば困るのであって、要は本当にいい現場をどうつくるかということが大事なのだという思いを抱いています。
　また別の角度からなんですけれども、校長が認定についていろいろ苦慮いただくのは、今、出ていた色々なケースがあると思うんですが、要は客観性といいますか、誰が見ても間違いないという、そこらの担保の部分だと思うんですけれども、1つ思いますのは、例えば勤務評定の最低評価者とか、評価するということです。これは校長が市町村教育委員会のほうに提出するようになるわけですから、そういう者については、市町村教育委員会が申請にかかわって積極的な手続を支援していくといいますか、指導していくというか、そういう取り組みがあると、事前にそういう者を防ぐということは困難かもわかりませんけれども、認定については制度を確実に動かすことができるのではないか。そういう思いも実は持っております。
　個人的な意見ということでお聞きいただけたらと思うんですけれども、自分自身、校長経験というのはないんですが、基本的に指導力に課題のある教員というのは、ある面は被害者的な部分もあるのではないのかなと思います。それまで指導を十分に受けられてこなかった部分もおそらく多々あるのではないかということもありますので、校長からのご指導をいただくということは、これから研修等を通して、十分指導をさせていただかなければいけない部分ではないかなということが、まず1つ感じているところです。
　それと、本県の場合でも、やはり認定に当たっての手続については、校長にとっては随分と負担になっているということが節々からうかがえます。やはり一人の教員の進退にかかわる重要なことですので、校長は、特に個々人の教員の家庭状況等についても詳しくご存じの方ですから、ご家族のことも頭に浮かぶだろうし、先々のこともいろいろお考えになることもあるだろうと思うんですけれども、そういった意味で、先日、京都市の取り組み等についてお伺いして、前々から本県でも認定前の研修については前向きに検討したいなと考えているわけですけれども、今のシステムであれば、やはりスタートは校長からということですので、もうそこに責任といいますか、一元化されているような感じを受けるんですが、認定前の研修を通して複数の目で判断していくというシステムをとることによって、校長の負担が随分と緩和されるのではないかなということで、ぜひ本県としても、そういう認定前の研修については取り入れる方向で考えていきたいなと考えております。
　今の京都市のことに関連して申し上げたいんですが、京都市の地域教育専門主事室の意義の1つというのは、地域教育専門主事は校長格の方々であるということがあると思います。通常の教育委員会では、指導主事の方は、教頭になる以前の方が多くて、どうしてもあまり強いことは言えない傾向があります。
　しかし、この問題に関しては、校長にきちんとした判断をしていただく必要があるので、校長に対するメンター的な役割を果たす方が必要なのではないかと思います。1つには、京都市のような校長格の方を指導主事として雇用するというやり方、もう一つは、退職校長の方にそういう役割を果たしていただくというやり方もあると思います。県によっては、そういう方に指導力不足の方の指導をしていただくだけではなくて、校長先生に対するアドバイザーをしていただいているという県もございまして、いい成果を上げていると聞いているんですね。そういうことの意義もガイドラインの中に書いていただければいいのではないかと思います。
　子供にとってどういう教育が学校の中で展開されるかということについて、我々は一番配慮しなければいけないので、そのことについてはみな共通の認識があって、そうあるためには、学校教育に対して、教育委員会がどう支援を、あるいはそういう機能を教育委員会の中に持っていくか、ということを考えなければいけません。それぞれの学校ごとにメンターを配置するということについては不可能に近いですし、それは意味があるかどうかということは別として、やはり教育委員会としてそういう機能を持つことが意義あることではないかということですね。
　それから、これまでの意見の中にも出てきましたが、校長というのは、1つの学校にそんなに長くいるわけではありません。その在職中に問題が起きたときに、どういう姿勢になるかといったことも、今日の話の中では出てきませんでしたが、そういうこともあって、それは継続的に、例えば指導が不適切な教員に対してどう見守るか、あるいはどう支援するかというようなことについても、やはり教育委員会がきちんとその辺の体制を整えて見なければいけないというようなこともあると思います。
　校長の負担が大きいというのはそのとおりだと思うんですけれども、私などは、むしろ実感として負担が大きいのは教頭のほうではないかなと思っているんですね。校長はいろいろな会議で学校にいらっしゃらないことが多いものですから、事実の把握としては、むしろ教頭が中心になさっているのが普通だろうと思っています。ただ、どちらにしても一人で教員の状況を把握できないので、組織的な対応というのは確かに必要になってくるんだろうと思うんです。
　今度、指導教諭ですか、それから主幹教諭といったものが出てくれば、こういう問題への組織的な対応ができるようになるのかなという感じがするんですが、今までの、例えば教務主任だとか、そういう先生方はいらっしゃるけれども、こういう問題はあまりかかわれなかったような気がするんです。ですから、ある程度制度的に位置づけられれば、そういう職務権限を持って、それも仕事の1つということで全体的な把握がしやすくなるのではないかという印象を持っているんです。
　ただ、どちらにしても、私は学校に負担がかかることは間違いないと思います。教育委員会が幾ら支援体制をとったって、それはむしろ上がってくる情報を、ここが足りないとかチェックする立場でして、だから、これはしようがないんじゃないですか。やはり現場にやってもらわざるを得ないですよね。
　そうすると、あとはどれだけ厳格な判定手続でこのシステムに入れるかというところなんだろうと思うんです。これは厳格にすればするほど、学校現場に負担がかかるのは間違いないですもんね。
　本県では、認定までに情報収集段階、第1段階、第2段階という段階を経て、それから認定までというシステムをとっておりますけれども、1つは、情報収集段階は基本的には校長先生にやっていただく。第2段階では、校長先生、教頭先生、それから本県では主幹教諭ではなく総括教諭という職をつくっておりますけれども、そこまで含めて見ていきます。それも教育委員会でチェック表をつくりまして、このチェック表に従ってやってくださいというやり方をとっています。それが第2段階。それも学校長が責任を持っているわけではございますけれども、それに加えまして、教育委員会の指導主事、人事担当者のような者も現場に足を運んで、校長と一緒に責任を持って複数の目で確認していただく。そういうシステムを定めているところでございまして、複雑ではございますけれども、逆にその面では校長の心理的な負担を少しでも軽減しているんじゃないかなと思っているところでございます。
　その手続の中で、例えばこんな資料を出せとか、いろいろやりますでしょう、それは当然のことながら。チェック表でレ点をつければ済む話では多分ないんだろうと思うんです。
　基本的には、提出する書類については決めております。チェック表とそれ以外の記録も、この用紙でやってくれというやり方にはしております。もちろん、その他の書類も学校のほうでは残しておいてくれという場合も、現実にはございますけれども、申請のための手続にはこの用紙を使ってくれと。京都市でも何かチェック表がございましたけれども、本県でもそういう形にしております。
　今おっしゃったとおり、私もそういう段階的なことは非常に賛成で、必要だと思いますし、やはり校長を孤立化させないというのは非常に大事だと思うんです。ですから大変だというのは、校長が全部その責任を負うような立場になってしまって、非常に孤立化する可能性がある。ですから、なかなか校長先生はできないと思いますので、そういう段階的なものと、あと教育委員会の役割を明確にすべきだと思います。先生との関係を含めても、保護者の立場から見ていますと、今は校長が先生に簡単に指導できるような学校現場ではないような気がしていますので、やはり校長が何かを言うことによって孤立化、逆に、校長が孤立することは避けたいということで、なかなかできないのではないかなと思っていますので、段階的に、皆さんがこういうマニュアルをつくってチェック表などでやることは非常にいいのではないかと思いますけれども。
　私はやはりこだわるんだけれども、今日出てきている基本的な考え方の丸の1番目なんですが、基本的な考え方として、これは正しい指摘だとは思うんです。どういうことかというと、そういう現実があったね、でもそれにきちっと対応してこられなかったねということですよね。一体この文面を挙げる意味はどこにあるんだろうか。やはりこれに答えるということは大事だと思うし、そうすると、その1つとして、では現場ではどうだったんだろうか。じゃ、こうするべきだよという組み立てをしていかないと、あまり意味がなくなってしまう。
　そういった意味で、やはり現場がどうだったのかなと私自身の反省を含めて考えてみれば、もう少し現場は現場なりに、今までこのAさんという方が、承認以来いろいろな経過があるにしろ、人事異動等の中で顕在化せず、いつの間にか孤立化して、50歳を超えて、現在、指導力不足で上がってきた。そういう状態の現場はどうあるべきなのか。そのときに校長の役割はどうなのか。あるいはその校長をフォローする、あるいは支援する方策としてはこういうこともあるというふうにしていかないといけないかなと思います。
　だって校長さんは、私は大変だと思うもの。また大変にならなくちゃいけないと思う、本当に。なぜなら、この制度を活用して本当に、きっちり子供の前にすばらしい先生方を立たせてあげる。そのためには、ここは校長も頑張りましょうよ。教育委員会はこういう支援をきちっと立てましょうよ。それがされないと、結果としてあまり現状は変わらない、制度はできたけどということになる。
　それからもう一点、先ほど少しお話がありましたが私もかなり校長にいろいろなお話をしました。いや、こうすべきですよと。ご本人にもそう。そういう意味で言うと、確かに校長経験者の方たちの力をかりるというのは大変意味があるかもしれません。
　例えば、多くの県が大体教育センターを中心に研修していると思うんですが、結構40代、ないしは50代の指導力不足の方が入っている。そうすると、その方の指導に、例えば40代の方が当たる、現役の方が当たる。なかなか指導の視点、仕方に随分違うところがあるような気もします。だから校長経験者が当たるということがありますね。だから、そういうところも少し工夫するといいのかもしれません。
　関連ですけど、今の校長OBの活用は非常にすばらしいと思うんですけれども、その財源とか、対応は、個々の県、市で行えということですか。それは一元的にはできないですよね、やはり。その財源についても、しっかりと整備してやらないと厳しいと私は思います。それは経験もお持ちですし、賛成だと思うんですけれども。
　私もいろいろなところを訪問した経験で言いますと、かなり多くの都道府県、指定都市の教育委員会が、もちろん正規の職員というようなことではなくて、退職した校長を嘱託という形で、いろいろな経験を生かすということで制度の中に位置づけています。それをどう広めていくかということになると思います。
　大分いろいろな意見が出てきましたが、ただ、これは基本的なガイドラインの示し方、基本的な考え方に関わることにもなってきたんですが、イメージとしては、例えばこういうガイドラインを示すことによって、先ほど話があったような、学校現場にとって負担が増えるという感じにはならないようにしたいという思いはあります。
　それから、例えば学校の現場に行ったときに、生徒を指導する場合も厳しさと優しさとがあるんですが、やはりこれはきちんとした姿勢で、見逃さないというか、子供にとって教育が適切に行えないということについてはきちっとした指導に当たるというか、厳しさが必要であると思います。
　一方で、学校教育界の中で、例えば指導が不適切になる、指導力をなくすということは、いろいろな要因の中で普通の先生でもあり得ることですね。そうなったときに、直ちにこれが分限免職につながるというようなイメージにはならないようにしなければいけません。これはある意味では優しさというか、例えば病気になったときには病院に行って、回復すれば、健康を戻せば戻れる。そういう職場でなければいけないので、そうでないとこれから先生を目指すという者が、厳しいだけではいけないので、やはりこれは、指導が不適切になったときにそれをきちっと取り戻すような仕組みを考えなければいけないと思っています。
　精神疾患との絡みでどういうことがあるかという話ですが、ここは実は大変重要だと思います。というのは、もしその原因が職場そのものである場合、単に病院に送って、そこで治ってくるのはあり得ないわけで、仮に一たん治っても戻ってくれば再発するに決まっているわけです。職場にある問題は何かということを常日ごろから考えることによって、そういう教師の発生を未然に防ぐと思います。だから、因果関係はしっかりとらえ直さないといけない。中には、本人が原因というのもあるかもしれませんが、おそらく少なくて、企業の場合でも全く同じですが、原因は人間関係とか制度にあることが多い。そのあたりをきっちりと押さえないと、例えば研修をやって治すとか、病院に行って治すとか、そういう安直な方向に行かないように考えていますということは示したほうがいいと思います。
　おっしゃるとおりですね。不適切ということは本人の資質というか、本人によるような場合については、これが改善されなければいけません。それが職場環境とか、学校教育現場の中に、人間関係のいろいろなことも含めて、教育環境そのものに要因があるとしたら、そこにも改善の余地があるということですね。それはまさにそうで、むしろそういうところが結構あるのではないかなということはありますね。
　かなり広範にわたりましたが、少し進めて指導改善研修終了時の認定、あるいは終了後の措置です。終了後にどういう支援体制、フォロー体制を構築するかといったことについても、ある意味ではガイドラインで示す必要があるのではないかということもあるんですが、その辺のことについて何かご意見等ありましたらお願いいたします。
　終了時点もそうですし、それから研修の中身もそうなんだけれども、AさんならAさんという方が指導力不足でいらっしゃった。いろいろな要因があります。その要因の中で特に気をつけたいのは、先生が先生になって今までやってきて、そして今こういう現状でいるんだけれども、あなたにとって残りの人生をどのようにすることが幸せなのか。そういった中身も、この研修の中にあっていいのではないのかと私は思っているんです。
　そして、あ、そうだ、やっぱり自分の可能性として、このような道を歩んでいったほうが自分にとって幸せなんだ、であれば、私はそれで間違いではないと思います。ですから、この研修が、いわゆる教職専門性なり何なりの専門的な研修をどんどんやる。それで、実施したことについていいのか悪いのかというのみの研修、ないしは研修終了時だけではなくて、今言ったこともあっていいと思います。
　京都の話の中で私が感じたのは、あれだけの数値が出てきている。事前の予防的な研修も含めまして、あの数値の中に、やはりおそらく研修の過程で、本人と校長も含めていろいろな方のやりとりがある中で、あの数値が出てきているのかなということです。だから、その意味で、先ほど話のあった5ページの指導改善研修を受講する教員にとってどのようにするのが一番よいのかという中身を、私は考えているんですけど、いかがでしょうか。
　今お話があったことをもっと具体的に言いますと、同じ教育委員会が提供する職の中でも、教師以外の職があるでしょう。教員は県の公務員という扱いになるのであれば、県の中で別の部署に移し、別の部署で働いたほうが合う方もいらっしゃるということだと思います。さらには公務員以外の職が合う方もいらっしゃるでしょう。そちらのほうが合う、ふさわしいというような場合もあり得るわけですから、自分の人生にとって最適な道を考えるようにしてあげたほうがいい。そういう具体的なキャリア、プロセスというものを提示してあげたほうがいいと思っています。
　それで、今の制度で私が気になっているのが、転任の件数が少ないですね。これまでこの場では、広島県での転任のやり方を紹介いただきましたけれども、東京都も同じような形で、知事部局のほうに転任するときには試験をやっていただいている。その試験は、当該者にとっては非常にハードルの高いことだと思います。要は人事委員会が了承していただければいい話ですので、指導の過程において、この人は知事部局の職のほうがふさわしいと人事権者が判断したならば、試験を受けさせずとも転任させるということを可能にするような制度にしたほうがいいのではないかと思います。
　関連ですが、私も研修プログラムは多様な教師に合った形のものがいいと思いますし、原則的には学校に復帰するというのが大前提なんですが、それ以外のいろいろなプログラムも当然あってもいいと思うんです。画一的な研修ではなくて、やはり多様な職場があるという考え方で、そういう経験をできるようなプログラムも必要だと思います。ですから、その方にとって広がりますよね。その方の内容によって、それを変えるというのは大事だと思います。
　現行法上、地教行法の分限転任がありますよね。分限転任の前提としての認定手続というのが今、教育委員会規則で定められているかと思いますが、それと今度の指導改善研修の認定とは、どうリンクするような制度設計になっているんですか。条文を読んでも私はよくわからなかったんですが。
　その点についてについては、文言上、今、指導が不適切ということで一緒にしていますが、今後整理させていただきたいと思います。
　今のところは法律は両方でそのまま並行していくということですね。
　制度自体は別のものでございます。あくまで指導改善研修は研修です。
　一番私が知りたいのは、認定手続は2つ要るんですかという話なんです。もう既に各自治体は走り出していますから、そこがよくわからない。
　それから、どういう制度にするかはともかくとして、例えば知事部局に移すということですが、今どこの自治体も定員管理が厳しいんです。それで、先ほどの話を聞いて、ああ、そういう例もあるんだなと思って実はびっくりしたんですが、申し訳ないんですが例外的な印象を受けます。もちろんそういう方はいらっしゃるんでしょうし、それはそれでいいと思うんですが、そう全部、教員として指導不適切な人を知事部局に持っていけるかというと、やはり能力、適性なんだろうと思うんです。ですから、学校現場から言えば、確かに学校から知事部局というのはよくわかるけれども、知事部局は知事部局としてまた適正な公務運営があるわけなので、そう簡単にはいかないのではないかなと思うんです。
　今の点に関しては、よく知事部局側の方の意識として、そのような話を聞きます。学校現場で使えない人間をうちに押しつけられても困る、ということなんですね。それはもちろん、知事部局のほうでも働けない人であれば、分限免職とするのがふさわしいんですが、この制度の対象になっている方の話を聞いておりますと、教壇に立つのは難しいんだけれども、ほかの仕事には向いているという方がいらっしゃるわけです。そういう方にはそういう方にふさわしい職場を提供するという考え方にしていかないといけないと思います。現状は、必要以上に知事部局がハードルを上げているという印象が私にはあります。
　本県ですけれども、前回、説明させていただきましたように、非常に困難をきわめたのが事実でございまして、私どものところは、教諭定数のところから、教育委員会事務局の定数のところに移動するという形ですから、スタートの議論のところでは、今ございましたように、教員ができなくて、できないから、まずそれで事務職ができるのかという精神論的な部分もあって、そこはクリアして、今度は定数のことももちろんございました。
　もう一つは、今の制度ですと教員の身分ですから、県費負担教職員として、そこを辞職することがどうしても必要になってきます。ですから、同じ行政でも指導主事の場合は、教諭をもって充てるとしていますから転職じゃないですけれども、それとは全く異なるものですから一たん辞職して、そして事務職員としての能力実証をするということになると、選考試験がどうしても必要になってきます。そういうことをクリアしていくというのは非常に困難をきわめた中で、1人そういうことができたということでございますので、そのあたりの制度が、もう少しスムーズにいけば、いろいろな部分で今後の展望も開けるのかなということは思います。
　転職ということについては、要するに辞職して別の職に就くのではなくて、同じ公務員として、職を転ずるというようなことが制度化されたというふうに解釈していいのではないかということですが、少しその辺のところを事務局のほうから説明をお願いします。
　法令上の整理をさせていただきたいと思うんですが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の47条の2における免職・採用の者については、市町村の県費負担教職員の教諭等を引き続いて都道府県の教育委員会のほうで採用できるということになっておりますので、首長の部局に移るということとは別でございます。
　それと先ほど議論がありました件ですが、指導している中で、今のことも含めて将来の自分の道筋を大きく、転職するかどうか、これもシステムの中に入ってくると、私は非常に有効に機能するなと思います。
　実際、本県の取組の中で、指導力不足教員として認定する取組をしていたところ、その教員が辞職して、現在、福祉施設に勤めている元教員もおりますけれども、生徒指導上の取り組み等々については非常に苦手意識があった教員でございまして、ぴしっとできないところがあったんですけれども、その福祉施設においては、そこの理事長が元校長出身者ということもございまして、採用されてからは、教員経験を生かしてうまく展望を持って仕事をしているということもありますから、そういうことがガイドラインの中で、一たん認定して、指導力を回復して現場復帰ということもさることながら、その中には、例えば広い意味での転職、それは公務員の中での転職、公務員を辞しての転職等と様々な対応ができることがいいのではないかと思います。
　いわゆる指導力不足教員という方に、私も何度も会ったことがあるんですが、いろいろなケースがありますけれども、中には本人自身が非常に苦しんでおられる方もいるんですね。やはりそれは、これからの自分自身の生き方がどうあるべきかというようなこと、それから家族のこととか、いろいろなことを含めて、そういうときに、厳しい言い方をすれば教育現場からいなくなればいいというようなことではなく、当の先生自身のこれからの人生について、どう生きるかというようなことについても考えなければいけません。先ほど言った、ある意味では優しさというか、温かさというか、そういう部分を当然考えなければいけないと思います。
　その中で、学校教育、教育委員会事務局も含めて、ただ教壇に立って先生を続けるだけではなくて、いろいろな役割、いろいろな職業というものがあるのではないかということですね。子供に対しての教育はうまくいかなくなったけれども、そうでない役割で、その先生、その人が担えるような部分があるのではないか。そういうところをきちっともう少し整理するなりして、その人に合うような職業を充てるというか、そういうこともあってもいいのではないかということだと思いますが。
　各自治体は、それでは就職あっせん活動までしなければいけないのかということになりかねません。これはそう簡単に、ええ、わかりましたと各自治体が言ってくれるんでしょうか。それは制度としてはきれいな制度になると思うんですが、あまり負担を負わせ過ぎると絵にかいた餅になりませんですかね。
　私は、この問題に関して民間企業の人事担当の方の話も聞いたことがございまして、中小企業ですと会社をやめる方が結構多いんですね。その会社に合わない、あるいは仕事上の不都合があったということでやめさせられることがあるわけです。これは訴訟すれば勝てる可能性はあるんだけれども、素直にやめていく。ところが大企業の場合はなかなかやめない。会社のほうもあえてやめさせようとは思わない。それはもうそういう制度になっているからだと聞いております。
　私は教員の場合には大企業的な組織であると思っているんです。ご指摘のような観点はあるかと思うんですが、一たん雇った以上は、その人の人生を考えてあげるというような姿勢が大企業の組織としては必要ではないかと思っております。
　教えていただきたいんですけれども、教員という専門的な職についた方が、その専門職の資質に合わないということで、例えば分限免職や転職までやらなくてはいけないのかなという疑問があって、本県の場合も転職はやっていません。あくまで教員という職に採用されたんだから、教員としての資質、能力に欠ける状態になれば、当然もともとの資質が維持されていないということで、本県の場合はそういう取り扱いなんですけれども、本県の教育委員会の弁護士の方にお伺いすると、あくまで専門職として採用しているんだから、その資質に合わなくなったんだからもう分限でいいんじゃないですかということでやっているんですけれども、その辺については、いかがでしょうか。
　職種限定して、しかも教員免許に基づいて採用されているんだから、分限としてはその範囲で考えればいいんだろうとは私は思っています。
　本県も指導力不足に陥った先生を今後どうするかとか、特に若い先生もいらっしゃるわけで、促したりとか、先ほど話題に出たように、今後の人生をどうするんだみたいな話をしてはいるのですけれども、それと今の転職、地教行法42条の部分を強制的に枠にはめなくてはいけない、このガイドラインでやらなくてはいけないのかなというような考えがあります。
　分限免職は、その職を遂行する能力に欠けるということであればできる話であって、教員としての職務を遂行できないということであれば、分限免職の対象になり得ると思います。転任というのは、これはできるという規定であって、しなければならないという規定ではありませんから、転任の可能性をすべて尽くさなければ分限免職はできないということにはならないと理解しています。
　ガイドラインの中に、そういったことまでを含めるかどうかということについて、先ほどご指摘もありましたが、ただし、先ほどから出ているように、指導改善研修の中で、どこの都道府県、指定都市もまずやっておられるのは、本人の自省というか、これまでの自分を振り返って教職にあることをどう思っているかといったようなことから、まずやっておられるんです。
　そういう中で、本人の気づきをどう促していくか。それは研修の中に、我々もガイドラインとして入れることはできるんですね。そういう気づきの中で、ひょっとして自分は教職という立場に合わないのではないか、あるいはどういう生き方が自分としていいのかといったようなことについても、ある意味では研修の一環として考えてもいいのではないかということではないかなと思います。
　大分終わりのほう、研修終了後の措置というところまで来ましたが、先ほど来のお話の中で、今いる指導が不適切な教員に対してどうあるべきかということが1つの大きなポイントであることは間違いないんですけれども、そういった指導が不適切な教員を生み出さないための学校教育現場はどうあるべきかといったような、要するに予防診断的なことが必要で、それが一番大きな問題ではないか、メッセージではないかなと思いますが、その辺についてもう少し深めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。
　この点についても、先般の京都市教育委員会の取組は、事前の研修というか、体制を1つの事例としてやられたわけですが、何かご意見ありましたらお願いします。
　先ほど校長は大体所属職員のことはわかっているのではないかということを申し上げましたけれども、かなり軽度の段階からそういうことはおわかりのはずだと思っております。これは別段、この問題に限らず、教員の資質、能力の向上という文脈で、校長にはそのように教員へ接するということが大事だと思っています。そういうことができていれば、そもそもがこういう状態にまでなる先生はそんなに出ないはずであると思います。そういうことをここの段落のところでおっしゃってもらっていいのではないかと思います。
　事前研修ですが、一般的な研修はもともと教員は研修義務があるんですからいいんですが、事前の研修というのをシステムとして設けるのは、指導改善研修は重過ぎるからだということになるんですよね。使いづらいからそちらでやりましょうというのは、少し制度設計としておかしくはないのかなという感じがするんです。
　今度の指導改善研修というものの研修対象といいますか、どの程度の人を対象にするかによって決まってくるんだろうと思うんですが、1つのシステムとして事前研修システムをつくるということは、法に基づく指導改善研修というのは最終手続として位置づけるわけです。それが果たしていいんでしょうかね。しかも経費の面からしても、指導改善研修自体ものすごくお金がかかるんでしょうし、その前段の事前の研修システムを別途つくるのであれば、またお金がかかるんだろうと思うんです。そういうことをする必要があるのかなという感じがします。一般的な研修はもちろん当然だとは思うんですが。
　私自身の考え方としては、事前の研修として新たに設けるという考え方も1つの選択肢としてあるかもしれませんが、そうではなくて、従来から、例えば初任者研修から始まってずっと教員の三十数年間にわたる研修が、どこの都道府県・指定都市にもあるわけですが、そういう中で、今現在行われている研修そのものについて、例えば、どういう研修の内容、あるいは研修の方法が今後必要ではないかといったようなこととしてとらえれば、このガイドラインの中にも少し盛り込めるのではないかなと思っていますが、いかがでしょうか。
　私もそのようにとらえて、通常の研修で、いろいろなケースを想定し、いろいろな場合を考えさせる擬似空間のような仕組み、プログラムをやる。もし万一自分がそういう場に遭遇したときにはこうしようということを予防的に研修の場で身につけられれば、実際に現場で遭遇したときに役には立つだろうと思います。そういったことも踏まえて、今の研修プログラムに予防措置としての中身をいかに組み込むかということが、結果として、コストのかかる指導改善研修のコストも減るわけですから、トータルとしては減るか、もしくは横ばいぐらいなのかなと思います。そういう意味でも非常に重要だと思います。別の研修を設ける必要は全くないのではない気がいたします。
　今、コストの話が出ましたので、少し申し上げておきますけれども、今の現職研修は、おおむね経験年数をもとにした基本研修と言われるものと、受講希望者を主に対象とした専門研修と言われる2種類で構築されている県がほとんどです。ここで言われているような指導力不足の対象になる以前ぐらいの段階の教員を対象とした研修は、おそらくは所属長のほうから、この研修を受けてみないかと指定されて受けるという、また別のスタイルの研修になるものと思います。
　そのような研修を実はもう実施している県がございます。今の研修体系は、経験年数をもとにした基本研修ばかりではよくない、個々の教員の適性、課題に応じた研修体系を考えていかなくてはならないという考え方が、平成11年の教養審答申以降、打ち出されておりまして、それに従った研修体系を構築しているところです。ですから、今ここで話題になっている研修もその枠の中に十分入るものであると思います。
　おっしゃるとおり、例えば東京都でも通所コースですとか、いろいろなものを研修として設けられていますよね。それは制度として、今は指導力不足教員の研修制度の中に入れていないのですか。
　それは県によっていろいろな認識の違いがあると思います。
　今度の指導改善研修というのは何も長期でやるものとは限らないで、短期のものも含まれるのだろうと私は思っていました。
　それは違っていたら指摘していただきたいんですが、私の認識では、おおむねの県は2段階、3段階ぐらいでやっており、最終段階をここで議論しているような指導不足の制度としています。その最終段階に入るところではきっちりとした認定制度をとっているんだけれども、その前の段階では緩やかな形で認定及び研修を行っているというふうに認識しているんですけれども、いかがですか。
　本県の場合は、あくまで校内で校長とか、本人の自発的な希望研修という位置づけで、校長の指導にしろ、教頭の指導にしろ、本人が学校校内で課題に気づいて、こういう研修があるので受けるというような希望研修の枠組みの中で、今議論されているものとは別という形で取り扱っています。
　先ほど話のあった指導力不足教員の研修は、例えば文部科学省等で発表される数字というのは、ある意味ではかなり限られた人数です。そこへ至るまでには、例えば、まず学校教育現場で管理職を中心とした指導、支援あるいは観察といったようなことが行われる。そして、次の段階が市町村教育委員会、あるいは場合によっては県の教育委員会等も入っていく。その段階を踏んだ上で最終的に上がってきた数というか、上がってきた研修ということでとらえているんですが、そういう仕組みと同時に、もう一つ、先ほど来、教員の長い生涯にわたる研修の中で、従来のままでいいのかどうかということがあります。
　これはこれまでの意見の中でもたくさん出ていますが、指導が不適切な教員に共通しているのは、人間関係がうまく構築できない、コミュニケーション能力が著しく低下しているということが言われているので、例えば、あらゆる教員研修の中に、人間関係を構築するための手法とか、あるいはいろいろな意識改革とか、そういうものが必要ではないかといったこともガイドラインの中には入れてもいいのではないかなと思います。
　少し私のとらえ方が悪いのかもわかりませんけれども、幾らかの研修を積み重ねてきてこの指導力不足教員の研修があるという感じではないんです。先ほど話があったように、専門別の研修があって、今度は長期の研修もありますけれども、そのつながりがこれになるというようなイメージではなかなかないんですが、それとの関連で申しますと、今度の件もそうでしょうけれども、教職員の研修への意欲というのは総じて高まっている状況が本県もございまして、そうしますと、研修の受け皿である教育センターというところの受けられる人数は非常に限られてきます。例えば、行きたいけれども行けないとか、あるいは年齢の制限をしてしまうという現実がございます。
　そうするときに、本県の場合も、40代後半から50代前半の教諭の人数が非常に多く、その年代の先生方がどういうふうに意欲を持っているか、逆に言えば、その年代の先生方はとりわけ島嶼部、山間部で多いということもございますから、率直に言えば、意欲を持ってやっていただけるか、現状のままでやっていただけるかというのは学校経営上、非常に大きなポイントになるわけです。実はそのあたりの人が指導力不足の年齢でもあるわけです。研修の受け皿の部分で何とかできないものかなと考えるわけですけれども、なかなかそこが解決できない。
　これは細かな事例でございますけれども、去年、教育事務所にいた際、教育事務所としてできる事業として、50代以上の教員を対象に、イメージとしてはもう一回ステップアップするといいますか、そういう研修ができないものかという指示をいたしまして、管内の市、町に呼びかけましたところ大変な応募がございまして、中身としたら、それこそ新学期の学級開きをどうするかということからやるわけです。そうしますと、50代前半の先生方もたくさん来られるわけです。
　ですから、そういうイメージで、そのあたりがカバーできていくと、未然に防止できるというのは確かにあると思うんですが、問題は、それを制度としてやるということになると、予算的な部分、受け皿の部分もあるものですから、非常に小さなことですけれども、わずかな地域でやってみたら、そのあたりのニーズがあったというのは、何とかこれはできないものかなというような……。その辺りに着手すれば未然防止の取り組みに影響を与えるだろうとは思います。
　本県では、情報収集段階等では判定はするんですけれども、その段階で、主にはOJTで個々の教員に相対で指導していく、あるいは学級運営の支援をしていくというやり方を積んだ上でというやり方をとらせていただいています。全体の研修の体系の中では、経験年数別の研修というところでは工夫する余地があるのではないかとは思っておりますけれども、とりあえず学校の中でのOJTの研修という部分では制度としてつくっているところでございます。
　ありがとうございました。そろそろ時間となりましたので、今日はこれまでのこの委員会で出された意見を事務局のほうでまとめていただいて、それをもとに議論していただいたわけですが、活発なご意見をありがとうございました。次回以降の会議については、別途またご連絡申し上げたいと思いますが、次の回、あるいはそれ以後の回の公開、非公開については、また私、座長に一任させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

（「はい」の声あり）

　ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。委員の皆様には引き続きご協力をお願いしたいと思います。今日は、本当にありがとうございました。
　では、今後の日程のところについて事務局から説明をお願いします。
　今後の日程につきましては、皆様の日程を再調整させていただきまして、追ってご連絡させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
　それでは、本日はこれで閉会としたいと思います。どうも皆さん、ご協力ありがとうございました。

─了─