指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドラインに関する調査研究協力者会議（第2回）議事録

1．開催日時

平成19年9月14日（金曜日）10時〜12時

2．開催場所

文部科学省10F3会議室（文部科学省ビル10階）

3．議題

1. 指導が不適切な教員に対する人事管理システムの状況について
   （宮城県、東京都、神奈川県）
2. その他

4．出席者

5．議事要旨

• （1）座長より本日の会議を非公開にすることが諮られ了承された。
• （2）配付資料について事務局及び宮城県、東京都、神奈川県から説明が行われ、その後、委員の間で以下のとおり意見交換が行われた。
  • 　指導が不適切な状態ということの定義については様々だが、教科指導という面に関してのみであれば、ある程度は改善できると思う。しかし、おそらくは、児童生徒理解や、社会的なコミュニケーションの問題等が関係している場合が多いのではないか。
  • 　コミュニケーション能力が問題であると伝えていくことによって本人が意識し、それにより改善されるという例はある。
  • 　実際は児童生徒理解ができない限り、現場に復帰させてはいけないと考える。全般的に課題がある人については、全部基礎基本からやり直しているが、たとえ専門性が高まったとしても、子どものことがわからないままでは教壇に復帰させることはできない。
  • 　本県では指導力不足と判定する前に各段階がある。単に教科指導の知識が不足している場合であれば、その段階で大多数が解消しているはずだが、コミュニケーション能力に難があって改善につながっていないと思われる人もいる。
  • 　経験上、コミュニケーション能力の問題は改善に時間がかかる。中にはコミュニケーション能力が少し改善される人はいるが、それにはやはり時間が必要だというのが実感である。
  • 　児童生徒理解ができない、コミュニケーションがうまくいかない方というのは、それでも教員採用試験を通ってきている。大学の中でも発達障害やパーソナリティーディスオーダーではないかと思われるような人が見られる。しかし、そういう人というのは知的には非常に高いものを持っていたりするので、採用試験段階ではクリアしてしまうことがある。
    　そういう人に対して指導するときは、面談の中で本人の物事の理解の仕方、理解の枠組み、自分自身を見る目、そういったものを把握することが重要である。
  • 　子どもは日々成長しているわけであって、その間、だれが見てもおかしいという教師がずっとそこにとどまっていることには非常に違和感を感じる。
  • 　研修をいたずらにだらだらとやることは、その人に対して、ある意味で人格を否定されたと感じさせるようなこともあるかもしれないし、非常に苦痛を与えるのではないか。その辺の判断を早めにしたほうが、どちらにとってもいいことだと思う。
  • 　教育委員会は裁判と保護者とその当事者のことを考えて遠慮してしまうのではないか。
  • 　裁判について言えば、地方公務員法28条1項は、分限処分について、非常に厳格な要件を要求している。
  • 　分限免職はかなり厳しい条件になっているので、裁判になったときに証拠として必要となる可能性があるものは早い段階からきちんと記録を取っておくようにしている。
  • 　ほとんどがコミュニケーションできない人たちとのことだが、研修で改善できるのか。
  • 　最終的には裁判ということもあり得るので、指導が不適切な状態の記録をしっかりとるべきと思うが、制度のあり方としては間口を広げなくてはいけない。今回の教特法に則ったシステムに入る前の段階は間口を広げる。教特法のシステムに入ったならば、裁判に耐えうるような厳格な運用を行うべきではないか。
  • 　よほどの証拠を積み上げないと分限処分を行うことができないので、教育委員会のほうでは躊躇するという話も聞いている。
  • 　早期発見、早期対応が非常に重要である。研修機会を与えて、その中で何かを見つけてもう1回現場へという、そういう筋道の見える者はやはり復帰はできている。いかにそういう教員を早く把握して、早く対応していくかである。
  • 　認定段階で、校長、教育委員会がためらうという部分の解決が必要である。それに加え、システムの中で、早く校長が申請できるようにするというところが重要である。
  • 　指導が不適切な教員というのは、いろいろな方がいると思うが、学校サイドから見ると、教科指導に課題があるという場合には校内の研修とか、あるいは研修センターの研修を進めていけばかなりの部分改善される。その結果、学校現場に戻るということはかなり多くなると思うが、対人関係に問題がある方というのは、本人に課題となっている点を自覚させようと思ってもなかなか難しいところがある。
  • 　認定までぎりぎりといった場合、校長としては、指導が不適切な教員として申請を上げると、最終的には訴訟も覚悟しなければいけない。そういうことを考えると、時間的にも精神的にも、日常の校長の業務に加えて、いろいろな対応が求められるので、非常に負担が大きい。
  • 　1年ぐらい我慢して他校へ出してしまえば何とか、その学校としてはクリアできる。ただ、そういう教員がほかの学校へ行くわけで、逆にこちらへ来た場合には、何でこんな教員を送り込んだんだということになる。
  • 　現場復帰半分、依願退職半分ということは、おそらく本人が、やはり教員に向いていない、あるいは別の職種を選んだほうが自己実現につながるとか、さまざまな要素の中でこのような状況になっていると思う。
  • 　研修の内容とその体制に関して、指導が不適切な人たちに対して、現場復帰という単一のメニューではなくて、今の自分に何が合っているのか、どういう方向に行くほうが幸せなのかというようなものも含めて、研修内容を考えるべきではないか。
  • 　3年間指導教員をやってきたが、研修に来る方というのは多くの人が孤立している。こういった方には、研修を行うというだけではなく、適宜相談に乗ってあげるような人も必要である。
  • 　学校長にこういうことに配慮したらどうかなど、いろいろな意味で指導体制を工夫することによって、分限免職まで行かなくても、自分は別の道のほうがいいんだというようなことを見つけることも可能になってくるのではないか。
  • 　組織の中で、人間を相手しているという点で企業と課題が共通している。一番の共通点はコミュニケーション能力が下がっているということである。
  • 　会社で孤立する人をどうやって孤立させないようにするかということに取り組んでいるが、一つの方策としては、メンター制度と言って、指導員のような立場の人をつけ、特に若い人を孤立させないような工夫を行っている企業例もある。
  • 　長所に目を向け長所を拡大させることによって、いつの間にか欠点が収縮する方向へ個人の能力を高めていく。こんなことを心がけている企業ですぐれた人材が出ていると言われている。
  • 　訴訟に関して言えば、学校としてはこの人に対してこれだけのことをやっているにもかかわらず、誰が見ても問題と思われる方には、問題行動の裏づけを常日ごろから地道にとっておけば、裁判になっても慌てる必要はないと思う。
  • 　実情としては教員でコミュニケーションがとれない人で、自分の能力に自信を持っている人がいる。他人から見ると難しいところがあっても自覚していない。
  • 　校長は、教員が課題を自覚しない場合は、かなり強い調子で当たってもらう。それと同時に、親身になって相談を受けなければいけない。そういう意味で、校長はやはりキーポイントである。
  • 　教育センターの嘱託員から校長に対してもう少しこういうところを相談に乗ってあげたほうがいいのではというような形でアドバイスをしている。
  • 　校長からの報告書に、同僚から信頼をされていない、あるいは同僚との対話が少ないといった部分が共通して出ており、孤立をしているというのは間違いないと思う。
  • 　指導が不適切な教員が孤立しがちであるということについては、現状では、先生方は非常に多忙なので、難しいとは思うが、何らかの形で話を聞くことができる人を配置するなどの工夫をしない限り、しっかりとコミュニケーションを図るのは難しい。
  • 　少しの指導により、課題があることを気づかせることで、指導力が向上する教員が随分いると思う。指導不適切の認定に至るまでの研修体制を検討する必要がある。
  • 　認定のための書類を提出することをためらっているわけではないが、小学校というのは子供たちへの担任の影響力というのが非常に大きい。日常的に授業観察を行っていく中で、一人一人の教員のよさを見出し、課題について指摘しながら、要するにコミュニケーションを繰り返していかないといけないと思っている。うまく改善されて子供たちへの対応が通常になっていく教員もいると思うが、その後どうなっているか心配している。改善復帰を目指した研修であれば、校長にとっては進めやすく、教員にとっては入りやすいと思う。
  • 　校長が指導力不足教員の申請をためらっている中で、人事異動をすればうちの学校からいなくなるといった意識があるのではないか。
  • 　人事異動では問題は解決しない。それは先送りだし、行った先でまた問題を起こすのだということをいろいろな機会に指導しており、特に人事異動が終わると、服務上問題のある教員、指導上問題のある教員について各教育事務所でリストアップして、各教育事務所、県教委、関係市町村教委が自覚を持って対応していくというところから始めている。
  • 　まず指導に課題のある教員を県教委や市教委がきちんと指導していく。指導して改善が認められればそのリストから外れるが、困難を極めているときには現場からはがして研修に専念させるという、いわゆる指導力不足教員の研修を行っている。
  • 　問題を抱えている教員の中には、指導力不足教員と認定されて、場合によっては職を失うということになりかねないという危機感や空気は、以前から比べると大分現場の中にも出てきていると思う。
  • 　指導力不足教員として認定されている教員でほとんど共通しているのは、コミュニケーション能力、対人関係である。したがって、センターで模擬授業をやった場合にはある一定のレベルを行う。学校に戻って子供たちの前に立って、いざ授業をやるとセンターでやった模擬授業とは全然レベルが違う、そういう実態がある。
  • 　模擬授業でいくらあるレベルにいっても、学校現場で子供たちの前に立って十分な指導ができなければだめであり、基本的に児童生徒理解、あるいは人間関係、コミュニケーション能力、ここが一番大事なポイントである。
  • 　例えば、高校で専門教科だけを教えればいい先生というのは、その専門でやっていくということもあるが、小学校の先生は自分自身の生身の人間として子供にかかわっていくことになる。先生自身が何に自分が向いているのかとか、自分自身がどんなふうに生きていきたいか、どういうところだったら自分はやっていけるか、自分自身が自分のことをしっかり受けとめていくと同時に、そういうことをどこかでわかっていっていただくということが大事である。
  • 　義務教育、いわゆる小・中学校の教員と県立学校、高校、特別支援学校との違いがあるのではないか。
  • 　研修中での課題で、本人の自覚をどう促すか、これが一番のキーポイントだと思う。あるいは、復帰に際しての課題、復帰後のフォローについての課題といったようなことがあると思う。
  • 　ガイドラインをつくる中で、職場が活性化するといったことも考えなければいけないのではないか。例えばメンターといったような考え方、制度ということもあるかと思う。
  • 　これが最終的にアウトプットとして出たときの影響を考えるべきである。これによって、ちょっとでも問題がある先生がいたらすぐに排除するというのではなくて、基本線はなるべく早期にそういう先生を見つけて、きちんと教壇に立てるように指導をする、あるいは、教職に適性が欠けるのであれば別の職への異動を円滑に促すというようなメッセージも込めるほうがいい。
  • 　1つだけ危惧を申し上げると、このガイドラインを示すことによって事実上のスタンダードができると考えられる。最終的に不幸にして分限免職をしなければならないときに、このガイドラインに全部沿っていなければだめなのかというとられ方をすると、分限免職のブレーキになり過ぎてしまう。拘束力はないにせよ、これがどれだけの機能を持つのか。いろいろな選択肢がほかにもあるという前提で出すのか。その辺を注意しないと都道府県教育委員会が困るかもしれない。
  • 　校長の負担を減らすにはどうするか。去年は書類の簡素化をしてみたが、それではないというのがわかった。
  • 　新たに受け入れた校長は自分の責任でこの教員を支えきれないと思うから申請するということであれば、その校長を支援しないといけない。だから、この研修は分限処分へ一直線ではないと言わないと校長は出し切れない。入口をあまり厳格化してしまうと、校長は、この人の教師としての道を閉ざすのではないかと思い上げられなくなる。

以上