初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第9回) 議事要旨

1.日時

平成20年6月19日(木曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省ビル11階 省議室

3.議題

  1. 検討会報告書案について
  2. その他

4.配付資料

  • 資料1 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第8回)議事要旨(案)
  • 資料2 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会報告書案
  • 資料3 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会報告書案(ポイント)及び(概要)
  • 資料4 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第6回)議事要旨
  • 資料5 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第7回)議事要旨

5.出席者

委員

(協力者)
 逢坂委員、池上委員、石川委員、伊藤委員、井上委員、佐藤委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

文部科学省

 前川初等中等教育審議官、大森国際教育課長、吉尾国際課長、淵上初等中等教育企画課教育制度改革室長、小串初等中等教育局視学官、山下国際教育課長補佐、その他関係官

6.議事要旨

(1)検討会報告書案について 議事

 事務局より、資料2及び資料3について説明があった後、以下の質疑が行われた。

【委員】
 3ページの1の外国人児童生徒数の動向のところだが、「減少傾向にある」というところを削って、「若干増加している」と修正が加えられているが、外国人学校について触れられていないので、この表現は適当ではないのではないかと前回申し上げた。参考資料に、外国人学校の数字も資料として入っており、外国人学校等の児童生徒数が増えているので、それを文章として入れていただければと思う。

【委員】
 参議院の少子高齢化・共生社会に関する調査会などにおいて、外国人との共生に関する提言が取りまとめられており、その中でこの教育の問題にかなり大きな比重を置いて提言が出されている。そこにおいても、公立学校に関する項目とともに外国人学校の位置づけに関する言及もある。今回、検討会として報告を出すに当たって、原案のままだと、外国人児童生徒教育の全体像のある部分に関する提言という形になっていて、今の社会的な関心事、あるいは全体の国会等における動きを踏まえても、物足りない形になってしまうのではないか危惧する。統計の面や後半部分でも外国人学校と日本の学校間の連携の問題等を入れていただければと思う。

【事務局】
 前回もご指摘があったのは、外国人学校の1番のところで、児童生徒数のデータを盛り込んだらどうかと。例えば約3万人程度ぐらいいるという文言を盛り込むように工夫をしてみたい。ただし、あくまでもこの検討会は、初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会ということで実施をしており、学校における受入体制の充実という観点から議論をしているので、外国人児童生徒数で、外国人学校における動向をデータで触れるのはいいと思うが、おおむねこの内容でやってきているので、その範囲内での提言にしたいと考えている。

【委員】
 外国人学校について、外国人学校に在籍している外国人の子どもの小学校・中学校・高等学校への入学・編入学という接続の問題については議論がされてたので、そこについては少し触れる必要性があるかと思う。

【事務局】
 現状をご説明すると、まず、高等学校について、日本に居住をしている外国人の子どもが、日本の高等学校に進学する場合は、日本の中学校から高等学校に進学するというやり方と、中学校卒業程度認定試験を受けていただいて、その後、高等学校に進学するというやり方がある。この基本的な考え方としては、外国人学校では、教育内容、教員の資格、その他、基本的に自主的に自由な教育活動が展開されているが、高等学校の入学に当たっては、中学校の卒業と同等以上の学力があることを法令上要件としており、こういうことを制度上担保するという観点から、中学校卒業程度認定試験を受けていただくことにしている。小学校への受け入れについては、日本に住んでいる外国の方が希望すれば、日本の公立の小学校に入ることができるという取り扱いにしている。その方々は、必ず日本の学校に入らなければならないというわけではなく、ご本人の意思によって外国人学校に進学するという選択肢も残っている。中学校への進学については、日本の小学校を卒業してから中学校に入学するということになる。

【委員】
 中学校卒業程度認定試験の活用は可能だろうと思うが、外国人について、外国人学校の小学部から公立中学校への進学の道を何らかの形で保障していただけるようなことも、義務教育段階の子どもたちの就学を保障するのは国家としての基本的な役割だろうと思うので前向きに検討していただければと思う。

【委員】
 要望としては、3ページの外国人児童生徒の動向の中で、外国人学校に通っている子どもの数を入れていただきたいというのが第1点で、第2点としては、14ページの学校間の連携のところに公立学校と外国人学校との間の問題を取り上げていただきたい。表現の仕方はいろいろあると思うので、その辺は最終的には座長、事務局に委ねなければいけないのかもしれないが、外国人学校との連携の問題、中学校卒業程度認定試験のこともここに入れていただけるといいと思う。

【委員】
 14ページの(5)のところで、日本の公立学校に外国人学校から転出入してくる子どもたちの移行過程を円滑にするような措置、そういう体制を市町村、あるいは県に要望するということを少し入れていただきたい。それから、学校間の連携にとどまるだけではなく、公立学校における外国人児童生徒への進路ガイダンスなどを盛り込んでいただけると大変ありがたい。

【委員】
 日本の学校と外国人学校とのブリッジがもう少し進むような検討をしてもらいたいという趣旨でこの報告書でもどこかで取り上げるということにさせていただきたいと思う。

【委員】
 4ページの不就学の調査の紹介があって、参考資料に調査の概要も載っているが、この調査は、県の調査と市の調査がまざっていたり、17年度と18年度がまざっていたり、調査方法も戸別訪問とアンケート調査がまざっていて、それを単純に合計して出されたものだ。そういう意味で、この調査の限界があると言及していただければと思う。

【事務局】
 この調査結果は、昨年の8月に公表している。ここでこれを用いたのは、外国人の子どもの就学状況について、ある程度の規模で把握をしている唯一の現状データだからで、これを紹介しつつ、不就学の状況の全体的な傾向を説明したいと考えている。そういう意味で引用させていただいているので、理解いただければと思う。就学状況が把握できなかった者が多くいるというのもこの調査の限界の1つであると思う。また、11ページのところに就学状況に関する調査の実施ということで、定期的継続的にこういった調査をやっていく必要があるということを盛り込んでいる。就学状況を把握するために、訪問調査等々さまざまな方法をしたが、より効率的な調査方法の研究を行っていく必要があるということも盛り込んでいるので、そういったところでご理解いただきたい。

【委員】
 それでは4ページの記述について「今回の調査結果も大体の傾向を把握するにとどまった」というような文言を入れてはどうか。

【委員】
 入学前の初期指導教室と併記して、転入時・編入時での初期指導も非常に大きな役割を果たしているので、ぜひ触れてほしい。それから、資料の中に具体的な取り組みを紹介していただくと、より親切だと思う。同じように、高等学校入学の選抜の配慮事項についても、具体的に資料の中で、紹介していただけると、非常に役に立つと思う。

【事務局】
 事例に関して言えば、事例をまとめて報告書の中に盛り込んでいく方途もあるが、また別途、さまざまな会議・会合、あるいはホームページなどさまざまなツールを使って、そういった事例を広く紹介するという方途もあると思うので、検討させていただくということでもよいか。

【委員】
 16ページには、就学前の外国人の子どものための初期指導教室プレクラスと書かれていて、17ページは、学校入学前の初期指導教室の開催と書かれており、入学前と就学前でどういう違いがあるのか混乱する印象を受けた。既に愛知県や岐阜県で行われているような就学年齢の子どもの集中指導教室について述べるのであれば、そこを区別していただきたい。

【事務局】
 16ページでは「就学前」と記述し、17ページでは「学校入学前」としているので、そこは表現を統一すべきだと思う。16ページのところは、平成20年度の「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」の内容を若干引用しているので、そこはそうご理解いただければと思う。

【委員】
 16ページの「就学前」を「学校入学前」にそろえると、同じ意味で使っていることがはっきりするのでいいと思う。その一方で、学齢期の子どもが転入・編入してきた場合の集中初期指導で就学前と使うと意味があいまいになるので、就学前は使わないで、学校へ入る前は「学校入学前」にして、学齢期の子どもの場合は、「転入・編入時の集中初期指導」とするとより明確になると思う。

【委員】
 13ページの拠点校とセンター校はどう違うのか。

【事務局】
 特に使い分けはない。慣例的に当課の事業の中ではセンター校という表現を使ってきているが、最近、当課も含めて、初中局のいろいろなモデル事業の中で、どちらかといえば拠点校と表現をしているので、両方の意味合いということで併記している。

【委員】
 11ページの今後の方策に、適切な就学案内や就学情報提供の実施があるが、不就学の子どもを減らすとか、就学の機会を保つ意味で、情報提供の後に就学相談窓口の充実を加えていただきたい。12ページに、相談員を教育委員会等に配置するとあるが、教育相談の窓口について、そこに追加していただきたい。

【委員】
 企業に関する9ページの記述については主語が企業になっているが、自治体は企業、経済団体を巻き込んで活動していってほしいと書いてくれた方がわかりやすいかもしれない。企業のきっかけというと、最初は、間接でも直接でも自分で雇っているお父さん、お母さんのことで子どものことになると、きっかけがないとなかなか動かないので、例えば、「外国人労働力を地域の企業や経済団体」と書いてあるのを「自治体等と連携して」として自治体にも働きかけをするきっかけをつくる責任がある。むしろ主体的にまず動いていただいた上で巻き込んでいくと良いと思う。つまり、企業や経済団体と、特に地方公共団体が連携して児童生徒の教育支援のための活動を具体的に展開することが必要だ。広報、啓発はあまり効果がないので、実際の具体的な活動を展開していくというトーンが出た方がいい。

【委員】
 12ページの(3)関係機関・団体の連携による就学促進活動の実施についてだが、市町村で、不就学の子どもたちへの就学を促す活動を実施している。外国人が比較的多く住んでいる地域の自治会長に、ポルトガル語、スペイン語等に翻訳した就学を呼びかけるチラシを回覧板で回してもらい、学校へ行ってない子どもがいるという情報提供を受けて、教育委員会の者が家庭訪問して就学させた。そういう子どもが昨年度、14人いた。関係団体の中に自治会も含めていただければと思う。

【委員】
 6ページのアの就学支援のところで、不就学の背景について親の転勤や長時間労働等の雇用の問題があると思うので、保護者の不安定な就労環境と、一言つけ加えていただければと思う。

【委員】
 企業の問題もあるが、企業はグローバル競争をしていて、日本国内に単純作業のラインは、どんどんなくなってきている。そうすると、雇用の安定を図れと言っても、もううちにはそういうラインはありませんと言ったら、それでおしまいだ。問題は、その先で2つある。1つは、職を失った日系人のお父さん、お母さんたちがどういう行動に出るか。例えば国内で労働の場があるところに単身赴任で行くと、生活が不安定になるという問題がある。もう一つは、お父さん、お母さんが、ブラジルでできるであろうレベルのところまで、日本でもチャレンジする。例えば日本語を学ぶ等、自分を高めて新しい職を得て生活を安定させる努力をするかしないかにかかってきている。本人の問題や家族の生活をどう考えるか、そういうものが抜け落ちて、単に企業の責任だとか、地方自治体が何か対応するという話ではないのではないか。

【委員】
 12ページの最初のパラグラフで、「就学状況の調査の実施に当たっては、地方公共団体の理解と協力が不可欠であり、外国人集住都市等における積極的な取り組みが求められる」とあるが、外国人の集住都市がこの調査にあまり積極的でないという含意があるか。

【事務局】
 現状は戸別訪問までしないといけない負担の大きな調査でもあるので、やるに当たってはぜひご協力をという趣旨だ。

【委員】
 そうすると、前段の「理解と協力が不可欠である。」だけでもいいように思う。

【委員】
 資料3の「ポイント」に関してだが、括弧して主体が明記されているのはいいと思うが、これを見た自治体の関係者には、市町村向けの提言になっているという印象を持たれてしまのではないか危惧する。

【事務局】
 主体を書いた方がいいというご意見もあったので、あえてこういう形で記載してみた。ここに挙がっているもののかなりの部分は、主体は都道府県もしくは市町村だが、国も何らかの支援ができるものも確かにある。ただ、主体としてどこがメインでやるべきかといったときに、例えば就学支援、就学事務は市町村の自治事務でもあるので、どうしてもこういう表記になってしまう。

【委員】
 そう書くと、ほかはおれの仕事じゃないということになりかねない。ただ、国は指導をしたり、計画を決めたりはするが、実施主体は地方自治体がほとんどだから、そういうことになる。

【委員】
 役割分担を明確にした方がいいということで書いていただいているが、見る方の側からするとどう見えるのかというのは確かにある。もう一つは、国、都道府県、市町村の役割分担を明確にすると最初の検討課題でうたっている。その論理からすると、こういう書き方をしても論理的な矛盾はない。そうすると、これはいいのかなという感じもする。

【事務局】
 およそ教育に限らず、あらゆる行政の分野において、国の役割と地方の役割があると思う。仮にここで国だとか、市町村だとかをとったところで、読む人が読めば、役割分担がここに投影されて、国が音頭をとって地方がやるという相場観は何となくわかると思う。基本的に初等中等教育なので、市町村なり、現場に近いところでニーズが生じて、それを吸い上げて都道府県や国に上がっていくというプロセスは、大体どこにおいても同じだ。他方において、国だの市町村だのというのがあると、初めてこれを読む人は、ああ、これは市町村に責任があるんだな、国に責任があるんだなという理解でとどまってしまって、それは、この報告書の本意とするところではない。役割分担は、なければならないというものではないと思う。

【事務局】
 報告書の「ポイント」は、報告書の中にどういう取り組みをやるべしと指し示しているのかという1枚物の提言なので、単純化しており、伝えきれない部分も相当あると思う。どの主体がやるということも省略しつつ書くと、それを受け取った自治体も含めて、場合によってはミスリードになるきらいはあるかもしれない。

【委員】
 「ポイント」に主体を記載すると、誤解を受ける可能性がなきにしもあらずだ。一番怖いのは、市町村の問題だから我々は関係ないと言われたり、あるいはやっていると言われるのが一番困るので、これは必ずしもなくてもいいと思う。ただ、国が明確にやるものに関しては、何らかの形であればいいと思う。

【委員】
 大学はもっと活躍する場があるので、7ページのイの「企業、NPOやボランティア団体等」のところに大学を入れていただきたい。それから、24ページのイに、「ボランティア団体、大学など」とあるので、1枚絵の3番の2番目の丸の「地域住民やNPOやボランティア団体等」のところにも大学を入れていただきたいが、如何か。

【委員】
 また、「ポイント」と24ページに、「大学・企業」として企業も入れたら如何か。

【委員】
 19ページの指導体制の構築のところで学校評議員制度があるが、適切な人選について評議員の活用ということも触れておくと、校内だけでなくて、校外からのアドバイスも受けながら進めていくというニュアンスが伝わっていいと思う。というのは、管理職の人事でも、必ずしも外国人の多くいた学校から多いところの管理職になるわけではなく、全然無関係のところから行っているケースもあって人を動かすことは難しいところがある。そういうときに、評議員をうまく活用していくことは大事だと思うので、評議員についても触れていただきたい。

【委員】
 2章のタイトルで、前回、「本検討会における検討課題」のところを、「外国人児童生徒教育の課題」にしたらどうかと提案して、ご賛同いただいたように記憶している。今のままだと、本検討会の課題ということで2点挙がっていて、全体としてどういう課題があって、なぜこの検討会がこの2つを取り上げるのか説明しないと、ロジックが飛躍してしまうのではないか。それから、「本検討会における検討課題と国、地方公共団体の役割と責任」では、何における役割と責任なのかということも、わかりにくくなってしまう。

【委員】
 本文の一番最後の、放課後の居場所づくりのところで、平成19年度から始まった放課後プランについてつけ足しているが、この事業が動いてないところがあるので、もう少し強くアピールしていただけると、居場所づくりの推進につながっていくと思う。

【事務局】
 地域におけるそういう取り組みについては、主体はあくまでも市町村である。ただ、これらの事業そのものは、こういった目的のためだけにあるわけではないので、こういう形で盛り込んでいる。ご覧いただければ、こういう取り組みをやるに当たって、国におけるこれらの事業も活用できると十分ご理解いただけると思う。

【委員】
 今日、これは入れましょうと言った分については、約束どおりどこかで入れるということにして、文案は、私ども座長、副座長、それから、事務局に任せていただくことにしたいと思う。

‐了‐

お問合せ先

総合教育政策局国際教育課