初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第4回)議事要旨

1.日時

平成19年12月18日(火曜日)10時〜12時

2.場所

文部科学省ビル9階 省議室

3.議題

  1. 外国人児童生徒教育関係者へのヒアリング
  2. その他

4.配付資料

資料1
 第3回初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会議事要旨(案)
資料2
 内閣官房提出資料
資料3
 三井物産株式会社、国際社会貢献センター提出資料
資料4
 財団法人埼玉県国際交流協会提出資料
資料5
 第2回初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会議事要旨
参考資料
 「外国人集住都市会議 みのかも2007」(平成19年11月28日開催)について

5.出席者

(協力者)

逢坂委員、石川委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

(文部科学省)

大森国際教育課長、小串初等中等教育局視学官、その他

6.議事概要

(1)外国人児童生徒教育関係者へのヒアリング

  • 1内閣官房副長官補室 内閣参事官 酒光 一章 氏
  • 2三井物産株式会社CSR推進部社会貢献推進室 シニア・フィランソロピー・スペシャリスト 柴崎 敏男 氏
    NPO法人国際社会貢献センター 常務理事・事務局長 名鏡 敬治 氏
    NPO法人国際社会貢献センター コーディネーター 森 和重 氏
  • 3財団法人埼玉県国際交流協会事業課 課長 井上 昭夫 氏
    財団法人埼玉県国際交流協会事業課 主事 伊藤 結花 氏

1内閣官房副長官補室へのヒアリング

(生活者たる外国人の総合対策)
  •  外国人労働者問題関係省庁連絡会議があり、外国人労働者の問題というのは、厚生労働省だけではなくて、法務省とか、外務省とか、各省が関係しているということで、それについての政策の調整をやるということ。外国人の問題については、1つの窓口をつくってやってくれないかという要望も非常に強いが、行革との関係もあり、組織をつくることはなかなか大変で、それにかわるものとして、随時、連絡会議を開催して情報交換をしている。
  •  昨年経済財政諮問会議で外国人の問題が話題になったときに、外国人の受け入れ問題を議論することも大事だけど、その前に、今、大勢いる外国人の受け入れがきちんとできているかどうか、そちらのほうがより重要ではないかという議論があった。これを踏まえて連絡会議でまとめたものが、この生活者としての外国人の総合的対応策ということになる。
  •  外国人の方が大体200万人ぐらい在留しており、いわゆる日系人のニューカマーが増え、定住化してきていることで生活者問題が重要になっている。問題意識としては、そういった人たちを社会の一員として日本人と同様に生活できるようにしていきましょうということが出発点である。
  •  総合的対応策は、4つの論点にまとめた。(暮らしやすい地域社会づくり・子どもの教育・労働環境・在留管理制度のあり方)
  •  暮らしやすい地域づくりについては、日本語を学んでもらったり、日本語関係の情報の提供をしたり、住居への入居を支援したりすること等。総務省と自治体と連携して地域の多文化共生に取り組んできている。
  •  子どもの教育については、一番大事だという認識が非常に多い。日系人は結果的に定住しているが、あまり教育に熱心でない。自治体もいろいろな国の方が来られると対応しづらい。子どもの教育の問題は、ある意味、階層が再生産されてしまう感じになる。そういう観点からも階級社会をつくらない、インテグレーションしていくという意味からも非常に重要な問題である。
  •  労働環境については、制度的には労働関係法令とか社会保険の関係の法令という意味でいうと、外国人だからということで特段不利になって適用されないということは原則的にはない。にもかかわらず、実際には雇用条件が悪かったり、社会保険に加入していないという問題がある。健康保険や年金の負担も非常に重い。健康保険加入を進めるためには厚生労働省を中心に、社会保険だと労働関係機関と連携をとってやろうとしている。年金の問題に関しては、二国間で調整するように今進めているところだが、年金制度があまりしっかりしていないところとは簡単には進まない。
  •  在留管理制度については、入国するときは入管で入国管理の仕組みを取り、在留に当たっては自治体が在留管理をしているという状況であるが、在留管理の方は不十分ではないかと言われている。基本的にはまず入国と在留管理を連携させていくという方向でやろうとしている。
  •  厚生労働省で、もともと雇用状況報告という制度があり、事業所が外国人を雇用している場合に今何人雇用しているということを年に1回報告する仕組みだった。これを見直して、個別に、どの外国人がこういう働き方をしているということを届け出るという仕組みに、この間の法改正で変えた。基本的には、雇用保険の届け出の際在留資格等を一緒に報告してもらって把握するようにしている。これを在留管理、入国管理と連携させ、個人情報保護の問題にも留意しながら、なるべく外国人の負担にならない形で正確に情報を把握しサービスを提供していこうとしている。
  •  以上の事柄をとりまとめたところであるが、外国人政策全般は引き続き検討していくこととしている。
【質疑応答】

【委員】

 資料にある29.6億という概算要求は、各省がいろんなところでやっているものを集めたものという理解でよいか。

【発表者】

 「生活者としての外国人」に関する総合的対応策の実施状況の表に各予算要求額が書いてある。これを積み上げたもの。

【委員】

 公立学校の教員の増員問題がある。その中に教育の充実という増員の分析がされて入っているのか。外国人の日本語教育も増えるということとは別か。

【事務局】

 これは外国人の子どもの教育に特化した予算がほかに詰め込まれているので、学校の教員定数増とは別。

【委員】

 外国人の子どもの教育の充実は23.6億だが、19年度の金額を教えてほしい。

【事務局】

 大体2億円程度である。今回23億とかなり大幅に出ているのは、バイリンガルの専門的な人材を学校に配置できないかという事業の概算要求がかなり大きかったことにある。

【委員】

 雇用主と被雇用者との関係が通常の雇用関係ではなく、派遣の形態を取っている場合は、派遣業者に対して雇用状況の報告を義務とすることとされているのか。また厚生労働省以外の他省庁も関係しているか。

【発表者】

 派遣と言っても、形態はいろいろあるところ。基本的には全部厚生労働省になる。厚生労働省が外国人の問題と偽装請負の問題をセットで考えている。

【委員】

 専門家による学校支援体制の整備とあるが、どういう人たちを「専門家」として起用するか。

【事務局】

 見出しは専門家ということだが、何らかの資格を持っている専門家というところまでのイメージではない。バイリンガルの指導補助者とか支援員のような方に学校にきていただくと、子どもと先生、保護者と学校とのコミュニケーションがより円滑にいくのではないかということである。

2三井物産株式会社CSR推進部社会貢献推進室、NPO法人国際社会貢献センター(ABIC)へのヒアリング

(三井物産のブラジル人支援プロジェクトについて)
  •  昔は経済的責任のみを果たせばよいと考えられてきた「企業の社会に対する責任」は変遷を経て、現在ではマルチ・ステークホルダーを対象とした責任を果たすことが当然になってきた。経済的側面のみならず環境的側面、社会的側面まで考慮し、多面的なステークホルダー(利害関係者)を考えていかなければならないというのが今の考え方である。
  •  社会貢献の本来の意味は「社会の課題に果敢に企業が対価を求めず取り組む」ということ。企業の存在意義からして社会貢献は本業を通じてやれれば良いが、社会にはそれだけで解決できない課題が山積みされている。
  •  三井物産では、CSRリポートにあるように、社会貢献活動を国際交流と教育と環境の3分野を重点に進めている。本日お話しをするブラジルはその中の国際交流と教育という2分野をカバーしている。
  •  三井物産とブラジルとの関係は70年以上前に現地に支店をつくってから長いつきあい。今後も鉄鉱石、バイオエタノール等エネルギー分野を中心に関係が拡大していくのではないかと期待されている。
  •  取引相手国として最大ではないのに、なぜブラジルかという点は、1ニューカマーの子供たちの教育問題が日本で社会問題になっていること、また、2先ずはブラジルから始め、それから他の国に拡大する可能性もあり、将来もブラジルに限定するものでは無い。
  •  ブラジル人学校の支援では、国内に101校ある中から、文部科学省の大学入学資格授与などを参考に4校(2005年)4校(2006年)10校(2007年)を選んで支援した。現地に行って見ると分かるが、大変劣悪なところで勉強している。早急な解決が必要とされる教育現場で、毎年4校では間に合わないため、2007年に10校に増やした。来年も10校支援の予定。
  •  選定にはブラジル社会の有識者にお願いしているし、実務にはNPOのABICの皆さんに手伝って頂いている。
  •  寄付金についての説明責任は大変重要で、寄付者の責任として、3年間きちんと使われているか必ず調査する。
  •  学校支援以外には、不就学の子どもたちを支援しているNPOへの支援や、東京外国語大学にお願いしている補助教材の作成。
  •  一般の人達は、ブラジルの実力をほとんど知らない。たとえばGNPでは10番目であり輸出品目の一番は飛行機であり、経済大国の一つ。国力があるから認めなさいというのではなく、相手のことを知る。フィリピンでもそう、インドネシアでもそう。みんなすばらしいところはあるけれど、それを忘れて同化政策のようなことで進んでいるが、そうでなく、違いは「悪」でなく、それは認められるべきだ、という話をし続けている。
  •  日本人でも赴任地で子どもが流暢に会話をしているので喜んでいる親が多いが、実は学習言語にまでレベルが達していないことが普通。それを親はわかっていない。(子供達の状況が分からない)そういうレベルの人達が世の中に多数いる。
(三井物産のプロジェクトとの関連でのABICの取組について)
  •  ABICには中南米滞在経験者も多く、現地で子どもたちを育てるのに苦労した経験や、子どもたちがお世話になったお返しに、ブラジルやペルーからきて同様な悩みを持つ子供に対し何か支援できないかと検討していた。その矢先、三井物産からブラジル人の子供の教育支援の話があったので、ABICとして支援業務を引き受けた。
  •  三井物産を含めた私どもの支援の基本理念は、子どもたちのために真に役に立つものをつくりたい、あるいはやりたいということ。
(外国人児童生徒の教育についての提言)
  •  外国人児童生徒教育について、添付一覧表に纏めた「現場の声」をふまえて、いくつか提言をさせていただきたい。まず、国の施策の明確化ということ。特に年少者のJSLの理解と活用の促進は、現場で強く求められている。また、外国人学校を含めた外国人教育の一元管理が必要である。今のところ、都道府県においては、教育委員会、私学振興課と国際課という3つの形で管理されている。情報共有が進んでいるところもあるが遅れているところもある。
  •  親の教育に関する意識向上については、日本に来る前に、日本の教育制度を理解させるような手段が必要ではないか。(Visaの発給時などに)
  •  実態調査について、不就学、不登校に対する調査がされているが、現場を歩いていると、文科省がまとめた調査結果の発表と実態が少々違うような感じがする。調査方法を再検討する必要があるのではないか。
  •  日本語指導判定基準について、日本語指導を必要とする外国人の子どもの判定がどういう形でできていのか。レベルを判定する専門的判定基準が要るのではないか。
  •  外国人学校の問題について、法人格がなく、実態があいまい。各種学校あるいは準学校法人にするためのハードルが非常に高い。在日ブラジル人学校100校中、ブラジル政府認可校は48校あるが、日本の各種学校の資格を取得している学校4校にすぎない。外国人が経営している学校は認可に必要な資金が十分でなく、また申請のドキュメンテーションも複雑(日本語)膨大なため現実には申請するのが難しい状況にある。都道府県により認可の基準も異なるので、簡素化するような方向でのご指導ご支援をお願いしたい。
  •  公立学校の外国人受け入れについて、学校全体で受け止めているところはうまくいっているが、担当の先生だけが苦労しているという現場が非常に多い。校長先生を始め幹部や一般教員の理解と支援が必要である。
  •  現場の専門的指導者不足を補うために、学校や教育委員会の中に、単なるコーディネーターではなく、総合的な立場で指導・助言が出来る専門的アドバイザーの配置が望まれる。
  •  日本語教育の専門家の育成も重要である。公立学校の国際学級では、日本語教育を受けた先生や経験者は少なく、日本語学科が制度化されていないため、2〜3年で人事異動するので指導者が定着しない。
  •  日本語講師・ボランティアの待遇について、時給制で、指導準備の期間や課外指導に対する待遇もなく、苦しい生活の中でやっている。待遇改善をしないといい教育者が育たない。
  •  就学前・義務教育後の対策について、小学1年生入学前の幼稚園時代から日本語教育をできればやってほしい。
  •  日本語能力だけで判断されているケ−スが多いが、情緒的な問題、心理的なあるいは精神的な問題を抱えている子が非常に多い。これら学習障害に対するアドバイザーもつくる必要がある。
  •  教科書についても、現場からはルビ振りやリライトの要望が強い。教科書会社の協力を得れば容易に実現出来ると思うので、ご考慮お願いしたい。
【質疑応答】

【委員】

 3万人程度いると言われるブラジル人の子どものうち、8,000人が公立学校、1万人がポルトガル語の学校、後の人は分からないという深刻な事態にある。ポルトガル語の学校に通っている人たちは、卒業したら国に帰るのか日本にとどまるのか。

【発表者】

 基本的にブラジル人学校に通学する子どもは、自分の選択で行っているから、日本語が上手な子もいる。親が帰るかもしれないから通わせるというのが大きい。ただし、現実には7割くらいが残り定住化している。高校まではあるが、日本語が満足でないために、結局日本では進学は出来ず工場に働きに行く。ポルトガル語が分かる人がいるから不自由しないが、それがいつまでやれるのか問題。ブラジル人学校でも日本語を教えているが通常週1〜2時間で触れる程度である。少数ではあるが、バイリンガルを目指し日本語教育を重視している学校もあり、そこから日本の高校に進学する子どももいる。

【委員】

 在日ブラジル人子女教育支援活動を3年余りしてきて、予想以上の大きな反響や効果、また逆の事例を紹介してほしい。

【発表者】

 名古屋に小さな外国人学校でつぶれるのではと思ったところが、支援をしていたら翌年から生徒が増えしっかりした教育をしているというケースがあり、予想以上の効果があった。逆はあまりないが、日本の企業に買収された外国人学校も出てきている。こういうところへの支援については賛否両論あり、検討中である。

【委員】

 親は企業で毎日貢献をしているので、親の意識向上への努力には企業からの働きかけも非常に大きな力になると思う。何かものを提供する、物的な支援をするということではなくて、意識の問題で、企業がそういう意識を持つことはこれからとても大切。その辺の手応えはどうか。

【発表者】

 例えば美濃加茂だと大手の電機メーカーが、お金は出さないけど、派遣会社との連絡網をつくっている。あるオートバイメーカーでは、日本語教育を国立国語研究所と一緒にやり始めた例も少し出てきたが、一般的には遅々として進まない。

【委員】

 企業も一律に支援を行うというのは難しいと思うが、経団連さんはどのような感触をお持ちか。

【委員】

 知り得ている範囲で、三井物産とABICが唯一と言ってもいいくらいの感じ。企業は現地にいろいろな法人を持っている関係で、目に見えないところでやっているケースが多い。商社のような業態の方が、国内にあまり利害関係がないため、比較的やりやすいかと思う。例えばメーカーだと、他のつながりがあり雇用や待遇の問題でやりにくい。利益追求となると、企業の社会貢献の枠組みの中でやるというもののバランスが、意外と社内で難しい議論になる。

【委員】

 経団連としての動きはあるのか。

【委員】

 ワンパーセントクラブで各企業が何ができるかという研修コースをやったことがある。月2本、7、8本やったが、参加者は少なく15社くらい。それも社会貢献の上位社。新しい動きとして、最終的には日系人全体ということで影響があると思うが、浜松で会社の中に日本語の教室を設けるという例が出てきた。よくある例かと思ったが、非常にまれな例だということが分かった。

【委員】

 学校の選定はかなり大事なポイントだと思うが、ブラジル人社会の有識者の委員会というと、どういった方々か教えてほしい。

【発表者】

 金融からブラジル銀行、マスコミからIPC、聖職者でシスター、ブラジル商業会議所。チェアパ−ソンとして大使館から来ていただいて、計5名。あと二名のブラジル人学校の先生と、日本の大学の先生もアドバイザーとして入っている。

3財団法人埼玉県国際交流協会事業課へのヒアリング

(埼玉県の状況)
  •  外国人登録者数が平成18年12月末現在およそ10万8千人で、全国第5位。県の人口はおよそ700万なので割合は1.53パーセント、大体65人に1人が外国人である。
  •  国籍別登録者数は、中国、韓国・朝鮮、フィリピン、ブラジル、ペルーの順。県南部は中国、韓国・朝鮮、フィリピンが多く、県北部は日系ブラジル人、ペルー人が多い。
  •  外国人児童生徒数は毎年増加。18年度は小学校に在籍が2,390人、中学校が855人、合計およそ3,200人である。
(事業の概要)
  •  NGO・ボランティアの支援、在住外国人の支援、国際理解の促進という3つの柱に基づいて進めている。
  •  NGO・ボランティアの支援については、彩の国さいたま国際協力基金を設け、海外または県内で活動しているNGOを財政的に支援している。
  •  在住外国人支援については、外国人からの相談を受け付け、8カ国語で対応。通訳・翻訳ボランティアの登録や公共機関への紹介(派遣依頼があるとき)。子どもたちへの支援として、高校進学ガイダンスや日本語支援を行っている。
  •  国際理解の促進については、小中学校等の国際理解の授業に講師を派遣したり、学校の先生やNGOの方を対象にした指導者セミナーを行ったりしている。
(具体的な外国人児童生徒への支援活動)
  •  当協会では、県、県内の全市町村、220のNGOと協力して様々な事業を行っている。
  •  外国人児童生徒に対する日本語学習支援では、制度として日本語指導員による週2時間の日本語支援がつく形になっている市町村もあるし、特定の日本語教室と協力体制を結んでいる市町村もある。外国人児童生徒が編転入すると、NGOに協力を依頼し、支援する人が学校に入って支援する。支援に対しての報酬はまちまちであったり、教育委員会と地域の国際交流協会とがきちんと連携がとれなかったりしているので、システムづくりを手伝うこともある。支援が行われていない地域には、教育委員会からの連絡を受けて、当協会が、地域のNGOの中から支援者を紹介する。支援者と一緒に学校に行って、どのように支援を進めていくか話し合う。また、支援者との関わり方やその後の地域と学校の体制づくり等について調整している。
  •  日本語指導NGO養成講座については、日本語指導をするNGOを養成するための講座を行っている。一般の日本語ボランティア向けと、子どもの支援者向けと二通り。ボランティアがいない地域では、この講座によって、日本語教室立ち上げにつながった事例もある。日本語教室を立ち上げても市町村の協力がないと場所の確保や広報の難しさ等の問題はあるが、地域の支援者が増えること自体はいいことだと思って進めている。また、子どもの支援者向け講座は、受講者の情報交換の場にもなっている。
  •  高校進学ガイダンスについては、日本語教室の支援者が始め、当協会と県が協力する形で続いている。県内4カ所で行っている各ガイダンスには、日本語のボランティア、各言語の通訳、中高の学校の先生たち、約50名がボランティアとして参加している。しかし進学が難しい子どもはたくさんおり、説明を聞いただけでは学校に入れない現実がある。中学校卒業資格を持たない子どもたちもいる。高校以上は本人と親の自己責任と言われるが、右も左も見えない状況になる。このため、この子たちを継続支援する場が必要であると考える。学校で孤立しがちな子どもたちが、自分だけが苦労しているんじゃないと、他の子と出会える場が必要である。
  •  その他、教えている人も孤立しているため、情報交換の場が必要であると感じている。県内には120くらい日本語教室があるが、ほとんどが大人向けで子どもの支援が十分にできない。このため文化庁の地域日本語教育支援事業に申請し、高校進学ガイダンスのボランティアを中心として、学習支援日本語教室を4カ所に設立した。昨年は、ガイダンスの参加者を中心として支援者が118名、学校に行けなかった子どもを含めて、小中高の子どもが106名参加した。認定試験に受かって定時制高校に進学できた子もいれば、高校進学をあきらめて帰国したり、工場で働いたりしている子どももたくさんいる。ただし、工場で働く子どもも、家と工場だけでなく、日本語を勉強しに来る場があることに意義があるし、教室に通ううちに、やっぱり進学したいと思うようになることもある。
  •  また、大宮ソニックシティの埼玉大学サテライト教室を使用して、埼玉大学教育学部の学生がボランティアとして外国人の子どもを支援している。大学が場所や教材、アドバイザーの旅費を提供。当協会は教室づくりのノウハウを生かして手伝うことになった。
  •  参加した子どもは約40人、学生の登録数も40人くらい。アドバイザーは11人。アドバイザーは学生を支援して、学生が直接子どもを支援する。学生が自分たちで運営していきたいという声が上がり、実行委員体制ができた。
(今後の課題)
  •  日本語教室に来ている子どもは難しいケースが多い。ちゃんと読み書きできる言語が一つもない子。中学卒業資格はもらえたけれど、仕事もできず専門学校にも入れない子など。日本語のボランティアだけでは限界だと感じる。
  •  子どもたちは学習言語ができていないということを、学校がまだまだ把握できない状況。母語を話せる人も必要だが、日本語指導を行えることが重要。多言語に対応するためにも、まずは日本語支援を定着させたい。
  •  ボランティアの善意に頼りすぎず、一緒に支援していく体制をつくりたい。
【質疑応答】

【委員】

 支援をしたら認定試験が受かったというのは、中学校卒業程度認定試験のことか。

【発表者】

 そのとおり。中学校卒業程度認定試験のことである。中2で来日して、学校に行かなかった子が、高校に入るのに3年かかって19歳になってしまった。

【委員】

 日本にやってきて中学校を卒業していない子どもたちが、日本の中で生き続けるためには、それが唯一のチャンスであるが、非常にハードルが高くなっている。県立の高校入試が特別枠やルビつきとか、随分緩和されているにもかかわらず、中学卒業程度認定試験が今まで通りというのが非常に残念。検討をお願いしたい。

【委員】

 我々が実際に使っているシステムが、世の中の今の変化に対応できているかどうか。認定試験などは文科省でぜひやっていただきたい。教えることは専門家でなくても、同じ若い世代の大学生をその場に入れたことはすばらしい。大学自身がある程度イニシアチブを持って教室を運営していくようになったという。このモデルケースを日本全体にアピールしたらいい。大学生こそ次代を担っていく人たちだから。多くの人がこの活動を認知して、同じような活動が広がっていくことをするのが国全体、我々の責任という気がした。

【委員】

 浜松市の教育委員会ではほとんどやっている。もう少し教育委員会との役割分担、すみ分けみたいなものもやっていけば、負担も軽くなる。外国人の子どもの教育において、義務教育を終えてからの出口保障、進学、進路保障が重要。浜松の外国人生徒の高校進学率は75パーセントだが、外国人枠で受け入れてくれる高校は大変少ない。埼玉県では特別枠のある高校は結構あるか。

【発表者】

 現在6校あるが、かなり日本語ができないと合格は難しい状況である。また、入学できても継続的な支援がないと卒業は難しい。

【委員】

 浜松市立高校普通科にインターナショナルクラスを本年度から1教室開設した。外国籍の子どもが優先的に受験できるようにしようという取り組みも行っている。こういう高校が増えると安心して高等教育に進んでいけるかと思う。

【委員】

 愛知県の公立高校では3校特別枠がある。入学後は母語話者の支援者が学習の支援をする。

【委員】

 その後のフォローが重要。神奈川県では、NPOと教育委員会と共同して、高校に、言語に対応できるコーディネーターを派遣する。そこで、何が必要か、どんなニーズがあるか、どんな支援が必要かを聞きながらボランティアの支援を入れている。中学校と高校と連携をとりながら、一貫して進めていく支援も必要になってくると思う。

【委員】

 私どもの学校で今一番効果があるのは、日本の教員資格を持った教員は教科の指導、ノウハウは持っているので、それをどう子どもたちに伝えるかというところでアシスタントのような形で母語話者がつくこと。教科の指導もできるということからいうと、文科省の今度の概算要求の中の人的なことというのは、とても重要なこと。ボランティアの方にはそれぞれの能力があるのでうまく活用できると思う。

―了―

(初等中等教育局国際教育課)