平成19年12月18日(火曜日)10時〜12時
文部科学省ビル9階 省議室
逢坂委員、石川委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員
大森国際教育課長、小串初等中等教育局視学官、その他
【委員】
資料にある29.6億という概算要求は、各省がいろんなところでやっているものを集めたものという理解でよいか。
【発表者】
「生活者としての外国人」に関する総合的対応策の実施状況の表に各予算要求額が書いてある。これを積み上げたもの。
【委員】
公立学校の教員の増員問題がある。その中に教育の充実という増員の分析がされて入っているのか。外国人の日本語教育も増えるということとは別か。
【事務局】
これは外国人の子どもの教育に特化した予算がほかに詰め込まれているので、学校の教員定数増とは別。
【委員】
外国人の子どもの教育の充実は23.6億だが、19年度の金額を教えてほしい。
【事務局】
大体2億円程度である。今回23億とかなり大幅に出ているのは、バイリンガルの専門的な人材を学校に配置できないかという事業の概算要求がかなり大きかったことにある。
【委員】
雇用主と被雇用者との関係が通常の雇用関係ではなく、派遣の形態を取っている場合は、派遣業者に対して雇用状況の報告を義務とすることとされているのか。また厚生労働省以外の他省庁も関係しているか。
【発表者】
派遣と言っても、形態はいろいろあるところ。基本的には全部厚生労働省になる。厚生労働省が外国人の問題と偽装請負の問題をセットで考えている。
【委員】
専門家による学校支援体制の整備とあるが、どういう人たちを「専門家」として起用するか。
【事務局】
見出しは専門家ということだが、何らかの資格を持っている専門家というところまでのイメージではない。バイリンガルの指導補助者とか支援員のような方に学校にきていただくと、子どもと先生、保護者と学校とのコミュニケーションがより円滑にいくのではないかということである。
【委員】
3万人程度いると言われるブラジル人の子どものうち、8,000人が公立学校、1万人がポルトガル語の学校、後の人は分からないという深刻な事態にある。ポルトガル語の学校に通っている人たちは、卒業したら国に帰るのか日本にとどまるのか。
【発表者】
基本的にブラジル人学校に通学する子どもは、自分の選択で行っているから、日本語が上手な子もいる。親が帰るかもしれないから通わせるというのが大きい。ただし、現実には7割くらいが残り定住化している。高校まではあるが、日本語が満足でないために、結局日本では進学は出来ず工場に働きに行く。ポルトガル語が分かる人がいるから不自由しないが、それがいつまでやれるのか問題。ブラジル人学校でも日本語を教えているが通常週1〜2時間で触れる程度である。少数ではあるが、バイリンガルを目指し日本語教育を重視している学校もあり、そこから日本の高校に進学する子どももいる。
【委員】
在日ブラジル人子女教育支援活動を3年余りしてきて、予想以上の大きな反響や効果、また逆の事例を紹介してほしい。
【発表者】
名古屋に小さな外国人学校でつぶれるのではと思ったところが、支援をしていたら翌年から生徒が増えしっかりした教育をしているというケースがあり、予想以上の効果があった。逆はあまりないが、日本の企業に買収された外国人学校も出てきている。こういうところへの支援については賛否両論あり、検討中である。
【委員】
親は企業で毎日貢献をしているので、親の意識向上への努力には企業からの働きかけも非常に大きな力になると思う。何かものを提供する、物的な支援をするということではなくて、意識の問題で、企業がそういう意識を持つことはこれからとても大切。その辺の手応えはどうか。
【発表者】
例えば美濃加茂だと大手の電機メーカーが、お金は出さないけど、派遣会社との連絡網をつくっている。あるオートバイメーカーでは、日本語教育を国立国語研究所と一緒にやり始めた例も少し出てきたが、一般的には遅々として進まない。
【委員】
企業も一律に支援を行うというのは難しいと思うが、経団連さんはどのような感触をお持ちか。
【委員】
知り得ている範囲で、三井物産とABICが唯一と言ってもいいくらいの感じ。企業は現地にいろいろな法人を持っている関係で、目に見えないところでやっているケースが多い。商社のような業態の方が、国内にあまり利害関係がないため、比較的やりやすいかと思う。例えばメーカーだと、他のつながりがあり雇用や待遇の問題でやりにくい。利益追求となると、企業の社会貢献の枠組みの中でやるというもののバランスが、意外と社内で難しい議論になる。
【委員】
経団連としての動きはあるのか。
【委員】
ワンパーセントクラブで各企業が何ができるかという研修コースをやったことがある。月2本、7、8本やったが、参加者は少なく15社くらい。それも社会貢献の上位社。新しい動きとして、最終的には日系人全体ということで影響があると思うが、浜松で会社の中に日本語の教室を設けるという例が出てきた。よくある例かと思ったが、非常にまれな例だということが分かった。
【委員】
学校の選定はかなり大事なポイントだと思うが、ブラジル人社会の有識者の委員会というと、どういった方々か教えてほしい。
【発表者】
金融からブラジル銀行、マスコミからIPC、聖職者でシスター、ブラジル商業会議所。チェアパ−ソンとして大使館から来ていただいて、計5名。あと二名のブラジル人学校の先生と、日本の大学の先生もアドバイザーとして入っている。
【委員】
支援をしたら認定試験が受かったというのは、中学校卒業程度認定試験のことか。
【発表者】
そのとおり。中学校卒業程度認定試験のことである。中2で来日して、学校に行かなかった子が、高校に入るのに3年かかって19歳になってしまった。
【委員】
日本にやってきて中学校を卒業していない子どもたちが、日本の中で生き続けるためには、それが唯一のチャンスであるが、非常にハードルが高くなっている。県立の高校入試が特別枠やルビつきとか、随分緩和されているにもかかわらず、中学卒業程度認定試験が今まで通りというのが非常に残念。検討をお願いしたい。
【委員】
我々が実際に使っているシステムが、世の中の今の変化に対応できているかどうか。認定試験などは文科省でぜひやっていただきたい。教えることは専門家でなくても、同じ若い世代の大学生をその場に入れたことはすばらしい。大学自身がある程度イニシアチブを持って教室を運営していくようになったという。このモデルケースを日本全体にアピールしたらいい。大学生こそ次代を担っていく人たちだから。多くの人がこの活動を認知して、同じような活動が広がっていくことをするのが国全体、我々の責任という気がした。
【委員】
浜松市の教育委員会ではほとんどやっている。もう少し教育委員会との役割分担、すみ分けみたいなものもやっていけば、負担も軽くなる。外国人の子どもの教育において、義務教育を終えてからの出口保障、進学、進路保障が重要。浜松の外国人生徒の高校進学率は75パーセントだが、外国人枠で受け入れてくれる高校は大変少ない。埼玉県では特別枠のある高校は結構あるか。
【発表者】
現在6校あるが、かなり日本語ができないと合格は難しい状況である。また、入学できても継続的な支援がないと卒業は難しい。
【委員】
浜松市立高校普通科にインターナショナルクラスを本年度から1教室開設した。外国籍の子どもが優先的に受験できるようにしようという取り組みも行っている。こういう高校が増えると安心して高等教育に進んでいけるかと思う。
【委員】
愛知県の公立高校では3校特別枠がある。入学後は母語話者の支援者が学習の支援をする。
【委員】
その後のフォローが重要。神奈川県では、NPOと教育委員会と共同して、高校に、言語に対応できるコーディネーターを派遣する。そこで、何が必要か、どんなニーズがあるか、どんな支援が必要かを聞きながらボランティアの支援を入れている。中学校と高校と連携をとりながら、一貫して進めていく支援も必要になってくると思う。
【委員】
私どもの学校で今一番効果があるのは、日本の教員資格を持った教員は教科の指導、ノウハウは持っているので、それをどう子どもたちに伝えるかというところでアシスタントのような形で母語話者がつくこと。教科の指導もできるということからいうと、文科省の今度の概算要求の中の人的なことというのは、とても重要なこと。ボランティアの方にはそれぞれの能力があるのでうまく活用できると思う。
―了―
(初等中等教育局国際教育課)