初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第3回)議事要旨

1.日時

平成19年11月22日(木曜日)

2.場所

文部科学省ビル9階 省議室

3.議題

  1. 外国人児童生徒教育関係者へのヒアリング
  2. その他

4.配付資料

資料1
 第2回初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会議事要旨(案)
資料2
 千葉県教育委員会提出資料
資料3
 太田市教育委員会提出資料
資料4
 第1回初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会議事要旨
資料5
 今後の日程
参考資料1
 教員養成・免許制度について
参考資料2
 「生活者としての外国人」に関する総合的対応策(平成18年12月25日 外国人労働者問題関係省庁連絡会議)
参考資料3
 「「生活者としての外国人」に関する総合的対応策」の実施状況について(平成19年9月7日)

5.出席者

(協力者)

逢坂委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、佐藤委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

(文部科学省)

大森国際教育課長、小串初等中等教育局視学官、その他

6.議事概要

(1)免許制度について

 文科省初等中等教育局教職員課の宮内教員養成制度企画官より教員養成・免許制度の概要について説明した後、質疑応答があった。

【委員】

 大学における教員免許に必要な単位の取得について、例えば外国人児童生徒の学習支援員等として学校へ行った場合、それを単位として認定するかは大学の判断だと思うがどうか。

【事務局】

 教育職員免許法上に必要とされる教職課程の単位は、必要最小限の67単位とだけ決めており、これは教職の心構えや各教科の指導法である。その他、食育や学校安全、外国人に対しての指導等の課題については個別に規定していない。教員養成大学等を中心に、大学4年間の卒業単位は124以上なので、67単位以外の範囲で教科に関する科目や、外国人に対する指導といった問題について、各大学の考え方で、特性に応じて科目を扱うことは可能である。

【委員】

 前回の検討会で、日本語教育に関して免許制度を設定できないか議論になったが、いわゆる教科でない、司書官、司書教諭、栄養教諭などの免許制度がどのくらいあるのか、教えていただきたい。

【事務局】

 例えば司書教諭だと、学校図書館法に基づいて、教育職員免許法に基づく教員免許とは別の資格制度として設けられている。それ以外にも、教員免許とは別の形として、1つの職に与えるための資格の取得方法として、大学で所定の単位をとって司書や社会教育主事の資格をとることになっている。栄養教諭と養護教諭は、直接各教科を担当するものではないが、学校全体の子どもたちに対する食や養護につかさどる形で、基幹職員の一部として学校教育法上で定められているので、それに対する免許状を教育職員免許法の中に定めている。学校教育法や学習指導要領の中で該当する職や事項がどう位置づけられるかということが教育職員免許法の扱いに関係してくる。例えば平成12年に、学習指導要領に情報や福祉の教科が設けられたため、教育職員免許法の中にもその免許状を新たにつくったということでもある。

【委員】

 外国人のことがもし新しい改定要領に入ってくるのであれば、67単位の中に外国人ついての単位が必須になるわけか。

【事務局】

 仮に日本語指導や、外国人指導という教科や領域が定められると、それを教える先生が必要ということで、それに必要な免許状、免許状の創設、免許状取得のために必要な単位のとり方が教育職員免許法の中に定められるが、単に各教科の中や、学習指導要領の中の配慮事項で扱うというだけで、免許法の中に位置付けるという例はないように思う。

【委員】

 例えば、ある大学が小学校一種免許の教職課程の中に、日本語を教える科目をつくって、それを4単位とし、この4単位も小学校教諭の67単位の中に定めると決めた大学があったとして、それは認められるか。それとも、これは67単位の外側か。

【事務局】

 日本語指導、教科専門の場合、小学校では特に教職指導の教職に関する科目のほうが手厚くなっている。67のうち41単位。教職に関する科目は免許法の中で教職の意義とか、教職としての心構えとか、一般的な事柄しか定めていないので、おそらくそこに位置づけるのは難しいと思う。日本語指導となると、教員養成大学の場合、基本的には67単位以外で扱っていただくことになる。学校教育法や学習指導要領の中に、普遍的にどの大学でも必ず扱うことという根拠ができないと、全大学共通の事項になるのは難しいのではないかと考えている。

【委員】

 中学は教科単位で分かれており、例示的に、国語、数学、理科と書いてある。これは例示なのか。国語と日本語学習は別のものと考えた場合に、これは別のジャンルを打ち立てることやその教科の1つとして新しくつけ加えることができるのか否か。

【事務局】

 これは各教科ごとに定まっている。そういう教科で、例えば日本語指導や日本語みたいなジャンルができれば、それに相当する免許状はできると思う。情報や福祉という教科は平成12年の学習指導要領で入ったので、そのとき新しく免許状をつくった。学校教育法や学習指導要領の中で、日本語指導という教科ができると、それに連動して、学校で教えるための先生を養成しなければいけないので、出てくると思う。

【委員】

 指導要領の中にきちんと外国人指導が確認されてくれば、日本語指導の免許状の可能性は開けてくるということか。

【事務局】

 繰り返しになるが、教育職員免許法で免許制度を創設する場合に、教科としての位置付けが必要である。教員免許法の場合は、今申し上げたことが必要。

(2)外国人児童生徒教育関係者へのヒアリング

千葉県教育庁企画管理部教育政策課長 川島 貞夫 氏
千葉県教育庁企画管理部教育政策課企画室副主幹 古橋 章光 氏

(千葉県の現状と課題)
  •  本県の外国人登録者数は10年ぐらい前から急激に増増えている。1997年の段階で6万5,000人程度だったのが、2006年で10万人(1.5倍)、人口の構成比でいくと1.69。市町村別の外国人登録者数は、上から千葉市、市川市、船橋市で、県北西部、東京寄りのほうで増えてきている。母国語別の登録者数の一覧では、中国が一番多い。それから韓国・朝鮮語、フィリピン。500人以上母国語とする人が19言語ある。100人以上だと35言語と非常に多言語になっている。中国語はここ5年で伸びてきている。
  •  外国人児童生徒の就学状況は、2006年は小学生が2,040名、中学生が821名、合わせて2,861名の外国人児童生徒が就学している。日本語指導が必要な児童生徒は、2006年で953名。急増したわけではないため、市町村の公立小中学校では大分前からこういう問題を抱えていたと思われる。県の対応としては少し遅れており、市町村を支援するために研究を始めたところだ。
  •  外国人をめぐる状況は、人数、出身国で地域での違いが大きい。静岡県や愛知県であればある程度同じような国の人が固まっており、対応もしやすいだろうが、千葉の場合、国も職業も違っていて対応が難しい。
  •  市教育委員会の受入体制についても格差があり、就学までの基本的な制度は、外国人登録を受けて、その後教育委員会に案内して、教育委員会が各学校を紹介する流れだが、それができているところと、できていないところとばらつきがある。学区や編入学年の取り扱いについても違いが見られ、過年次に入れるのか、同じ年の学年に入れるのか、また学区外の通学を許可するしない等の問題がある。
  •  学校への支援・指導で、指導員、日本語指導や通訳の派遣については、各市町村によって、市町村の財政力や対応、姿勢もあり、対応がまちまちである。教育委員会の専門性で、担当指導主事等が積極的にこういうことに時間を割いてやっていけるかどうか、市町村教育委員会によって違いがある。学校による違いは、学校の置かれている状況で、地域による状況、人数・母語・保護者等も違っており、児童生徒の個人差も大きい。
  •  指導体制についても、加配措置を受けて専任担当を置いている学校とそうでない学校があり、適応指導・日本語指導をするに当たって指導法の情報が少ない、専任の担当についてもある程度継続して担当しているケースがあるが、毎年のように変わっているので専門性が維持されない等、情報や専門性が十分確立されていないところもある。取り出し教室の先進的な事例においては、学校を挙げて取り組んで成果をあげているいるところもあり、格差がある。
  •  昨年の11月に文部科学省の新教育システム開発プログラムの採択を受け、外国人児童生徒受入体制整備研究会を立ち上げた。研究組織は、県教委だけではなく市町村の教育委員会、県の知事部局、私学の関係者等、各組織の人に入っていただき、昨年11月から実態調査等をやっている。
  •  日本語指導の必要な生徒が非常に増加しており、学校現場で対応に苦慮している。「十分な指導体制が確立していない」、「未就学、外国人登録をした後学校に就学していない子どももいる」、「市町村や学校により対応状況にばらつきがある」、「NPO、ボランティアの人材は増えているのか」、「定数措置による加配教員の増加が期待できない状況にある」という課題意識を持った。調査研究の実施方法としては、数値的な効果測定を行うことを前提に、外国人児童生徒の小中高校への受入体制の確立・強化が、その児童生徒に対する教育効果の向上のみならず、学級及び学校全体の教育の向上、ひいては地域社会の活性化等に当然つながっていくのであろうという仮説を立てて実施委員会を設置し研究を始めた。
  •  この調査研究の推進に当たり、推進地域とモデル校を選んだ。推進地域については、外国人児童生徒が多く、市町村から希望があった5市、船橋市、市川市、八千代市、市原市、成田市を選んだ。モデル校としては、推進地域内の小中学校、小学校9校、中学校8校、高等学校は県立高校の松戸国際、成田国際高校、私学の渋谷教育学園幕張高等学校をモデル高校として研究を始めている。
  •  研究内容として、外国人児童生徒に係る実態調査を行っている。現状及び課題の把握・分析ということで、ボランティア等の既存データの整理・分析、外国人児童生徒・保護者等に対する聞き取り調査を現在も続けて実施している。県内市町村と外国人児童生徒への加配のある学校等を対象にアンケート調査を行い、外国人児童生徒関係の就学事務、未就学生徒の実態、学校における外国人生徒への指導体制の実態調査を実施している。
  •  推進地域・推進高校における実践研究で、教員・非常勤教諭・ボランティア指導員の活用、派遣の手法、取り出し指導教育のあり方、体制・運営計画・時間に関する調査、日本語指導だけをやる拠点校方式のあり方、日本語指導・教科指導のあり方、母語・母文化指導のあり方、数年後に帰国予定の子どもたちへの指導のあり方、適応指導の問題に関わる心のケアのあり方、保護者への対応のあり方、教職員とのコミュニケーション、各種団体・地域との連携のあり方について手引き書の作成をこれからやりたいと考えている。
(ボランティアの養成)
  •  昨年度末、3月に延べ4日間ボランティア養成研修を実施し、200名程度が集まった。英語を話せる人が多く、年齢的に高齢者、退職者が多かった。2回目、中級を7月に2日間実施して、参加者は60名程度に減ってきている。1月か2月ごろにまとめの上級研修を実施したいと考えている。研修後、この人たちのボランティアとして登録する制度をどうしていくかを考えなければいけない。ボランティアのデータベースの構築は連携にも必要だ。
(研修の実施)
  •  加配教員のいる学校や、その他、希望する教員等を対象に研修を実施している。1回目は今年の6月に60名を対象に実施した。2回目は11月で、小中学校別に授業参観をした後にグループ討議を行い、外国人児童生徒指導で抱える問題点を意見交換できたので、非常に好評だった。3回目を年明けの1月下旬に実施したいと考えている。
(ホームページの開設)
  •  教育相談の関係だが、今年の8月20日に県の教育センター内に相談窓口を研究会として開設した。児童生徒と保護者、教職員、ボランティアの方への相談に応じるためにホームページを立ち上げた。このホームページは日本語で作っている。教員からの相談が多く、相談件数は10月末までで45件程度だった。将来的には多言語で対応できるようになればいいが、この辺は非常に課題が多く、内容的にアクセスしやすい条件に整備していきたいと考えている。
(DVDの作成)
  •  外国人受入初期オリエンテーションプログラムのあり方の研究の中で、日本での学校生活に入りやすくし、学校生活をまず覚えていただくために、研究協力市の八千代市の学校に協力していただきDVDを作成した。日本の学校生活を最初にオリエンテーションで示した。
     DVDのナレーションは日本語だが、内容に準拠してテキストを特に千葉県の受け入れの多い言語6カ国(英語の他、中国語、フィリピノ語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語、タイ語)で作成した。主な内容は、外国人児童生徒のインタビュー、教育制度や夏休み、冬休みの問題、時間割、義務教育は無償だが、教材費等がかかること、学校の1日についてだ。将来的には多言語のDVDにできればもっと活用できるので、検討していきたい。
(その他の取組)
  •  県と市町村、交流団体との連携のあり方の研究もしており、今夏、サバイバル日本語講座に後援・協力を行った。サバイバル日本語講座は、夏休みの間、各小中学校で学校が始まる前に集中的に日本語づけにする取組で、そこに研究会の研究員を派遣したり、県の状況等の説明をして協力している。
  •  教育委員会のつながりでは、千葉県は東京都、神奈川県、埼玉県、1都3県で首都圏教育長協議会の中で、共通の問題について意見交換し提案するために活動している。外国人の子どもたちの問題がテーマになり、11月16日に文部科学省へ要望書を出した。また、高知県、和歌山県、静岡県、千葉県で教育長協議会「くろしお教育サミット」をつくって情報交換をしており、そこでのホームページを活用したノウハウを1都3県の中でも生かしていきたい。
  •  市役所での案内に当たって、就学案内が適切にできる方法はないか、外国人児童生徒の就学に関するコーナーの新設を検討していかなければならないと考えている。
  •  現場では教材の問題で困っているので、リストアップして、学校現場で役立つ教材リストを作成中である。
  •  研究会が協力して、千葉県の教育委員会が、来年の募集に当たって公立学校の入学選抜の手引き書を7カ国語で今年初めてつくった。
(課題等)
  •  現場を支援する仕組み等の整備が不十分で、国や県での具体的な基準、ガイドライン、人、予算等の支援が不十分で、市町村や学校現場にゆだねられている部分が非常に多い。
  •  ボトルネックは何か、資源(人・予算)の不足、連携・ネットワーク情報の不足、等である。
(国等への要望)
  •  制度では、入国前における就学機会の周知、入管の際の就学指導、在留管理制度の見直し、外国人登録後の居住地の確認等の対応をきちんとしてもらいたい。
  •  上記に加え、加配教員の拡充、教員以外の人材ボランティアの活用、教員の日本語指導向上や多文化共生理解を深める施策の構築についての要望を、去る11月16日に4都県の教育長連名で国へ提出した。
【質疑応答】

【委員】

 研修体制について、今回の調査研究を踏まえて、将来的にどういう方向性に進むか、例えば現在、モデル校等の教員を対象に教員研修をしている。それらの成果を踏まえて、将来的には県下の教員に対しても同様な、あるいはそれに類似した研修を行う予定があるのか。

【発表者】

 今の研究は、文科省のプログラムでできているが、必要性は高いと認識している。予算の問題があるので、非常に財政状況が厳しい中でその辺は課題になると思うが、できればやっていきたい。

【委員】

 専任の担当者がなかなか継続していかないということだが、ある程度経験を積んだ人は、次の異動もやはり日本語関係の指導に当たってもらいたいという、異動方針に生かそうという話は出ているか。

【発表者】

 教員の数は標準法で、学級数で決まり、それに上乗せして特別の加配として、千葉県は39人の日本語指導のための特別の加配教員をいただいているが、学校現場の状況を見てみると、例えば、日本語指導の経験があるからその学校に行っているわけではない。学校に1名多く教員が増えて、分掌上として日本語指導の係になっている。中学校においては、どの教科の先生が増えるか授業数のバランスを見て、持ち時間が少ない教科の先生に日本語指導を担当してもらう。次の年になると、人事異動の教科のバランスで別の者が担当するのが現状だ。このため、専門の力を入れる必要があることが1点と、どんな教員でも日本語指導をする力が必要だ。大学の養成課程からその点が関わってくるため、異動した学校でまた同じ係になるのは、現状では難しい。学級担任が優先で決まっていくことが多い現状がある。

【発表者】

 先進的な取り組みをしている学校は日本語指導教員の力量だけでなく、校内体制が整っている。しかしながら人事異動に左右されず、日本語指導の専門家がいてほしいと現場は願っている。

【委員】

 教育委員会と市長部局との連携で就学促進等を課題として挙げているが、市長部局のほうで外国人の子どもたちに対する手当は措置されているか。国際交流協会、あるいは県の国際交流センターなどでも結構だが、教育委員会以外の対応について教えていただきたい。

【発表者】

 市町村に向けて行った実態調査は集計中なので資料をお出ししていないが、市の市長部局と市の教育委員会の就学事務に関する実態も聞いた。外国人登録について、申請書の書類等はほとんど日本語でやっているが、そういう書類でも多言語になっているところは半分程度しかない。外国人登録の場で就学を勧めているかを聞くと、勧めているところが43パーセント程度、いないところが57パーセントで、就学の事務についても、市町村で半分ぐらいしているところと半分していないところがある。

【発表者】

 千葉県の国際交流センターにおいても、ボランティアが就学について外国人の保護者の相談の窓口になって、日本での仕組みを伝える等、それが精いっぱいの状況だ。

【委員】

 中長期的な対策としては専門性を持った教員を大量に養成して配置していくことが必要だというご指摘があるが、貴県ではどんなシステムをお考えかお聞かせ願いたい。

【発表者】

 今考えているのは、日本語指導等特別な配慮を要する児童への教職員の配置、教職員以外の人材の活用。ボランティアの研修もやっているが学校教員以外のボランティア等の人材、多言語の対応があるので、そういった人材をどう発掘し研修して学校の教育の支援に当たっていただくか。また、大学の教職員課程や教員の免許更新講習に講座を入れてもらうとか、多くの先生に理解してもらうということが重要であると首都圏の4都県で議論し、文部科学大臣あてに要望した。

【発表者】

 ボランティアは国際交流センター等に登録してあり、要望に応じて謝金を支払う。学校の地域の方が無償でやってくれるケースもあるが、この研究会から派遣しているボランティアは、わずかだが謝金をお支払いしてやっていただいている。

【委員】

 モデル校を指定されているということだが、加配の措置との関連で、定数上の県の基準でやられていると思うが、モデル校には、日本語指導専任という形で加配措置をしているのか。

【発表者】

 モデル校については、加配教員が行っているところと、あくまでも研究であるため、加配教員がいなくても校内体制をどうつくっていくか、そういう研究も必要だと思う。実際、外国人在籍数は、18年の調査では千葉県で339校あるが、それに対して加配は39人。受け入れが多い学校に優先的に行くが、モデル校としては、その加配教員が入ってどういう体制ができるか、あるいは加配教員がいなくてもどう校内体制が組めるかということで、その辺はさまざまな状況のモデル校を指定している。

【委員】

 従来、推進地域や推進校、モデル校を文部科学省から委嘱するケースでは、特別そういう指導体制を強化するということで加配上の措置をしていたが、この措置は、県単独の措置という理解であれば、この加配措置も国の加配措置と連動しないこととなるのか。

【発表者】

 これはあくまでも任意団体の研究会としてあるので、連動していない。ここの5つの推進地域以外でも、学校によっては受け入れが多いところに加配措置をしているので、それは特に連動していない。地域として受け入れが多いところを推進地域とした。

太田市教育委員会学校指導課指導主事 五位野 たか吏 氏
太田市教育委員会学校指導課主事 根岸 親 氏

(太田市の現状と課題)
  •  太田市の概要だが、自動車、金型等の製造業を中心とした工業地域だ。人口約22万弱のうちの約4パーセントを外国人住民が占めている。南米出身の日系人の集住地域であり、隣接する大泉町や伊勢崎市も同様の集住地域になっている。入管法改正前後の早くからの外国人の南米日系人の集住地域であり、約20年弱が経過しており、最近ではマイホームを購入する家庭が増えるなど、定住化傾向が顕著になってきている。
  •  平成17、18年度、文科省の不就学外国人児童生徒支援事業の就学実態調査の結果、両年ともほぼ同様の結果になっており、約半数が公立学校に、25パーセント程度が外国人学校に就学している。従来、統計上ではわからなかったその他の25パーセントについて、中心的に実態調査、訪問調査を行った。述べ時間約330時間ほど調査員で実態調査を行ったが、ほとんどの家庭が既に転出や帰国をしている、また子どもだけが帰ってしまっている。実際話を聞いてみると、隣の市や町に転出した例も多数あったので、外国人登録制度による把握の限界を感じた。若干名だが、いずれの学校にも行っていない子どもが把握された。小中学生年代の子どもについては移動が多い子ども、障害を持っている子どももいた。調査後に、特に小学校年代の子どもについては情報提供を受けて、公立学校や養護学校等に就学した者がほとんどとなっていた。年間2カ年を通して行ったが、前年度は転居、出国でいなかった者が次年度に戻ってきて就学をしている等、移動状況もみられた。
  •  実態調査から見えてきたものとしては、多様な就学状況、公立校だけにかかわらず外国人学校、本地域ではブラジル人学校、ペルー人学校、フランス系のインターナショナルスクール、前橋にある朝鮮学校等の13校、また、太田市に限らず伊勢崎市、大泉町、埼玉県本庄市の学校など、多様な学校に就学していた。
  •  子どもや保護者の希望ではなく生活実態による学校選択の状況も見られた。保護者が朝7時から夜8時まで就労している時間預かってくれる学校は、公立学校では学童保育を利用してもなかなか難しいが、外国人学校は保護者の実態に応じた託児的なこともやっているので、日本に定住予定であっても外国人学校を選んでいるという保護者の意見も多く受けた。
  •  成果としては、関係機関、主に外国人学校や調査にご協力いただいたハローワーク等の他部局との連携が図れた。また、外国人の子ども、保護者の取り巻く状況の大まかな理解が図られた。
  •  平成10年以後、不況が厳しく、ブラジル人学校が開校したこともあり公立校への就学数が若干減ったが、過去3カ年においては、市の外国人登録者数はほぼ横ばいなのに対し、公立学校に就学している子どもは150名増加している。これは1つには、定住化傾向を反映している。また、公立校に、バイリンガル教員と子どものわかる指導員を配置しているのを見て就学している子どもが増えている。平成20年度については、約490名前後を予想している。これは中学3年生の卒業者に対して新小学校1年生の数が多くなっているためで、年間途中の転出入は、前に比べると少なくなってきている。
  •  学校別の在籍数だが、一番多い学校で、45、6名おり、そのような規模の学校は市内に、現在4校ある。市内の県営、市営、決まったアパート等を中心に集住している学校がある。
  •  外国人生徒の過去5カ年の高校進学率の推移では、平成14年度は卒業者数が16人、進学者が8人、進学率50パーセントと大変厳しい状況だが、最近では定住化傾向や取り組みの成果も少しずつあらわれている。また、県立高校において外国人の子どもや不登校の子どもを積極的に受け入れる3部制の定時制高校「太田フレックス高校」が開校したこともあり、進学率も上がってきている。また、進学先についても、従来は私立単願や定時制の子どもが多かったが、普通科高校や実業高校、芸術科コース等、進路選択の幅が広がってきている。
  •  子どもの状況についてまとめると、1つには滞在の長期化や定住化傾向がある。そして、子どもたちの実態が多様化している。第2世代、日本で生まれている外国籍の子どもが本地域では増えている。一方で、日本で長い間暮らしていても、地域の外国人学校に通い、日本語との接点がほとんどなく、そちらから日本の学校に入ってくる子どもがいる。障害を持った外国人児童生徒も少数おり、現在では市立の特別支援学校に5名在籍している。定住化傾向や子どもたちの多様な状況を踏まえ、将来へとつながる教育の充実が必要だと考えている。
(就学支援)
  •  就学支援については、市窓口と連携した就学案内・支援で、大きくは2つのケースがあると思う。1つは、転入・編入の場合だ。年度途中に市窓口に希望があり、児童生徒の実態と保護者の希望に応じた学校選択という体制をとっている。これらは、本庁こども課の窓口が中心で行っているが、多言語による対応では、市の国際交流部局が設置している外国人相談窓口等を通してこちらに相談が上がってくることもある。国際教室設置校への区域外就学を状況によって許可しており、障害があるお子さんの場合や、15歳で、中3の2月、3月に来て希望があった場合など、個々の状況に応じて就学相談に多言語で対応する場合もある。子どもの状況によって指導者の派遣等の調整を行う場合もある。
  •  新1年生については、就学時健診の際に多言語の就学案内を発送している。平成20年度は約110名の対象者のうち就学時健診を受診したのが60名、その後、何らかの返答をいただいたのが15、6名ほどいて、残りの者については、本市のバイリンガル教員や学校指導課の職員が確認するなどして、ブラジル人学校に既に就学をする意思や居住状況を確認しているが、本年についても、約10名ほどはまだ確認がとれておらず、追跡調査を行っている。
  •  就学に際しての課題は、母国と日本の制度の違い、日本の学校の小中の違い、進路についてなど、外国人の保護者の理解が特に難しい点を具体的に説明できる資料、機会を改善することが必要と考えている。
  •  在籍校においては国際教室保護者会を昨年度においては6校ほどの小学校ないし中学校で実施している。文科省の指定事業の中で、就学について保護者が疑問に感じた点などを中心にした就学ガイド等も作成している。
  •  就学ガイダンスについては、プレスクール、アダルトスクールを平成16年度より実施している。本年についても12月1日から実施する予定で、毎週土曜日10回程度だが、日本の幼稚園に近い形で、準備教育を子どもに対して行ったり、学校教育について、保護者の質疑、相談を受ける機会としている。本市のバイリンガル教員は、小学校のときにブラジルから来て、苦労して大学まで進学して、免許を取得して、現在勤務しており、昨年度のサタデースクールの最終日には、彼女の経験を子どもや保護者等に話してもらったりもした。
(指導体制)
  •  指導体制だが、本市ではブロック別集中校システムを導入している。日本語指導適応にとどまらず、学力保障に力を入れた指導を推進するために平成16年度より実施しており、習熟的なきめ細かい指導が必要であったこと、そのためには複数の指導者による連携が必要だったことが背景としてある。
  •  具体的には、市内の中学校区を基本に8ブロック化して、各ブロックの加配教員配置校を中心に国際教室を設置している。それに加えて市費のバイリンガル教員8名、日本語指導助手13名を配置し、連携して指導に当たっている。
  •  市の担当部局としては担当指導主事とコーディネーターがおり、担当教員、県の加配措置の教員が17名、バイリンガル教員8名、指導助手13名が集中校において連携して指導する。保護者の希望によっては集中校でない学校からの転校を可能としている。
  •  8ブロックに対して、例えば宝泉中ブロックでは、中学校2校、小学校5校あるうちの1校ずつを集中校として、加配教員が1名ずつの2名、バイリンガル教員が1名とほかのブロックから応援で1.5人程度、日本語指導助手が2名の計5人程度でこの2校の指導を連携して行っている。
  •  他地域でもあるように、初期指導教室である程度、学校についての理解や基礎的な日本語を指導した上で、各ブロックに入っていったほうがいいのかが検討課題としてある。ただ、人や場所等、さまざまなことが課題になると思う。
(人材の配置)
  •  市で任用しているバイリンガル教員は日本もしくはブラジル等の教員免許を持ち、日本語とポルトガル語に堪能な人材(現在8名)を市費単独で採用している。8名のうち4名はブラジルの教員免許のみの保持者で、それを根拠に県から臨時免許状を発行していただいている。あわせて平成3年から日本語指導助手として、日本語と外国人の子どもたちの母語に堪能な人材を配置している。従来は日本語指導助手だけの対応だったが、今後の学力保障、定住化傾向に向けては日本語と母語を使いながら指導できる人材が必要ということで、16年度からバイリンガル教員単独で配置している。
(連携)
  •  関係機関の連携では、特に指導の面においては、海外日系人協会継承日本語教育センターの方に来ていただき、学校現場のニーズに基づきながら専門的見地から、継続的、定期的な指導助言をいただいている。ハローワーク太田からは、キャリア・ガイダンス等、進路に向けての支援、保護者向けの多言語資料の提供等をいただいている。外国人の子どもは内面的にも悩みを抱えるところが多く、南米出身の臨床心理士の方に適宜来ていただき、心理士の専門見地からの助言をいただいている。このように必要に応じて連携のできる関係づくりが今後も必要と考えている。
(学力保障−実態の把握)
  •  学力保障について、1実態の把握、2教職員研修の実施、3補習授業の実施、4太田市教育研究所における研究実践の4つの観点からお話させていただく。
     主に国際教室において取り出し、または国際教室担当者による入り込みの指導を行っているが、この指導をさらに効果的にしていくために指導個票の作成、それをもとにした連携した指導を行っている。小中学校での引き継ぎ・連携については、週に1回、または月に2回程度、先生方、担当者に集まっていただき、連携した指導を行っている。また、到達度診断テスト、学力テストではなく、市で行っている標準学力到達度診断テストの正答率等を分析して指導に当てている。日本語の習得状況、教科の学習状況、母語の取得度等多様な実態があり、さまざまな要素があって把握が難しい。
(学力保障−研修)
  •  指導者の教職員の研修だが、本市では担当者会議を開き、17名の担当者とバイリンガルの8名が各ブロックでの研修テーマ(今年度については、日本語初期指導と、JSL算数・数学科指導)の主に2つを決めて、どちらか、または両方研修している。その内容については、全体研修会、各校での実践を持ち寄って年2回教材を紹介していただき、実践の共有化を図っている。また、海外日系人協会から日本語教育の専門家の中元司郎先生に来ていただき、訪問、指導助言、または学校を回っていただき、実際に授業を見ていただいている。これは文部科学省の「帰国・外国人児童生徒受入促進事業」を受けているので、講師謝金等も利用させていただいている。また、受入促進事業のセンター校の旭小学校で、昨年度「ワクワクドリル」を作成した。これは四則計算の算数のドリルだが、外国人児童が取り組みやすいようにやさしく作成したものだ。
  •  バイリンガル教員は、日本の教員免許またはブラジル等の教員免許を持っているが、一般教員に比べて指導力が足りない部分があり、彼ら自身も指導力向上について非常に意欲的なので、日本の教育課程や指導法、教育制度等について年間6回程度研修会を行っている。実際に指導案を作成していただいて検討会をし、授業実践をして、お互いに授業を見合って研究協議を行い、指導力を高めている。また、子どもたちのアイデンティティが不確立であり、将来日本で暮らすのか、母国に戻るのか不安定な状況なので、子どもたちの心のケアのため、昨年度は、異文化間心理学の専門家、臨床心理士が講義を行った。
(学力保障−補習授業の実施)
  •  学力保障については、国際教室や在籍学級での学習を支援するため、サタデーチャレンジスクールで、アダルトスクールとプレスクールを同時に進行している。10月から翌2月、今年度も12月1日から、土曜日の午前中を使ってサタデースクールを行う。希望者が対象だが、個々のニーズに応じて、算数や日本語、漢字、中学生は英語を、バイリンガル教員、日本語指導助手、指導主事が指導している。これらについても、ボランティアに頼っているが、謝金等については、帰国外国人児童生徒受入促進事業のお金等も利用している。昨年度は、50名程度の子どもたちが学習した。
  •  補習授業は外国人に限らず放課後や夏休みに各学校で行っている。外国人については、各校の担任の先生と連携して、授業でわからなかったところや宿題等の学習支援をしている。また、サマースクールとして、各国際教室で子どもたちを独自に集めて、国語や算数、宿題を見ているところがある。
(学力保障−太田市教育研究所における研究実践)
  •  太田市は今年度から、外国人児童生徒教育研究班を設置した。今年度は第1年目になるが、国際教室の教員2名、バイリンガル教員2名に、年間33回、毎週1回集まっていただき、授業のよりよい方法を研究している。また、海外日系人協会の中元先生にも来ていただいて研修をしている。テーマは、学習に参加する力、これは在籍学級に帰ったときに学習に参加できるようにという願いが込められているが、外国人児童生徒の教科指導のあり方、特にJSL算数・数学科を中心とした指導法の研究と授業実践を行っている。4人ともすべて授業実践を終えて、今はまとめに入っている。
(成果と課題)
  •  成果としては、不就学児童生徒は非常に減った。学校生活の円滑な適応ができてきており、これは現場の先生方、バイリンガル教員等の力が非常に大きいと考えている。高校進学率が上昇してきており、定住化傾向を示していると思う。
  •  課題としては、根本的な解決にならないところが学力、保護者の啓発だ。保護者の勤務時間が非常に長い中で、PTAの活動、授業参観、通知についてはまだまだのところがある。特に本市で独自にやっている指導体制、ブロック別集中校システムを支えていくバイリンガル教員の配置、任用に関わる制度面でのより強固な改善、ハード面での課題が残っている。また、さまざまなカリキュラム、指導法、教材は出されているが、それを現場で活用し切れてなく、現場に持っていって使えるような教材にまだなっていないので、研修も含めて課題が残されている。サバイバル日本語とよく言うが、そういった部分を指導していける指導計画、または初期指導と教科指導をバランスよく指導するための研究、カリキュラムの作成・蓄積が必要と思っている。また、母語をどういうふうに活用していったら子どもたちがよりわかるようになるのかについても、バイリンガルの先生の協力を得ながら、今後効果的な活用を考えていきたい。
  •  指導体制、人的配置について、外国人児童生徒教育コーディネーターが現在1名いるが、市の職員であるため、人事異動がある。現在の職員はポルトガル語も非常に堪能で、親と対話もできる。そういう人の配置、職務上の立場を、市の体制として確立しなければいけないと思っている。また、市の国際交流協会と連携して、就学指導や教科指導や研修会の計画等を練る立場でその職員をコーディネーターとして入れていただけると助かる。
  •  バイリンガル教員は年度毎の契約で行っているので、報酬も一般教員とは非常にかけ離れているが、仕事の内容は非常に重い。子どもたちの世話、指導、教科指導、保護者の対応、家庭訪問等、いろんな面で非常に役に立っていただいている。また、臨時免許状により、助手・補助者ではなく単独で指導していただいているが、地位はまだ確立されていないので制度面の確立が課題と考えている。
(国等への要望)
  •  外国人登録制度を生活者の実態を考慮したものに改善していただきたい。保護者へのガイダンス資料、機会の改善、関係機関と連携した保護者への情報提供と啓発。具体的には、行政の関係部局、ハローワーク、企業、外国人学校や、特に外国人の方がよく見ているエスニックメディア等も連携していきたい。
  •  教員や指導員等を市費任用している部分が大きいので、国や県からの財政支援がお願いできればありがたい。
  •  集合研修で外国人児童生徒教育に関する基礎的な研修があるといい。担当者は、どこかで日本語教育について習ったわけでもなく、JSLも分からないため、集合研修で基礎的な部分が年何回かでもあるとありがたい。また、初任者研修や教員養成課程でも基礎的な理解ということで、なにがしかの単位、または講座等があるとよい。今現在でも各校の取り組みを支援し、現場のニーズに応じた研修を行っているが、さらに充実させていくために、日本語教育専門家を招聘するということもある。教育研究所等でJSLカリキュラムをさらに授業実践して使えるようにし、それらを活用して、指導計画や教材等もつくり、ホームページにアップロードしていくことが必要と考えている。
【質疑応答】

【委員】

 太田市のように、行政が完全にリードしてしっかりと人を育成するという意味からいうと、ほんとうに学校は心強いと思う。
 加配員教員は専門的な教員ではなく、日本語指導の資格もない。そういう教員を生かす工夫について、教えていただきたい。

【発表者】

 ブロック別で研修会をやっている。毎年テーマを決めて様々な教材をこちらから出しており、現場レベルでの研修、現場レベルでの切磋琢磨の意味合いが非常に大きく、実際にニーズがある。バイリンガル教員は資格があるので単独で授業ができるが、指導助手の方はそうではないので、母語話者の方と加配教員はTTのような形で授業を進めている。

【発表者】

 また、各ブロックからの教員の移動が課題となっている。校時表が、小学校、中学校、同じ小学校でも違うので、学校行事も考慮しなければならず、非常に煩雑。車等を使い、最大離れても2、3キロ程度のところを移動しているが、負担になっており解決まで至っていない。
 ブロック方式のいい点としては連携が図れることだ。加配教員が初めて日本語指導の担当になったときに、ブロックで3、4人で研修する機会があるので、初めてなった方もほかの学校の少し前になった先生から情報をもらったり、教材の紹介をしてもらえるなどの連携がとれる。

【委員】

 研修もやっており、新しく入られた方の指導にも、一緒にグループでやっていることのメリットがあるとおっしゃっていたが、スタートして期間は短いと思うが、先生方の経験年数はどれくらいか。太田市の中で担当教員の一番古い方の年数はどのくらいか。

【発表者】

 一番長い方では、10年を超える方が1、2名いる。ブロック別は16年度からだが、そのうち現在まで継続して担当をしているのは17名のうちの8、9名程度である。

【委員】

 太田市の中で専門性を高めるために加配教員を研修で育成していくような仕組みや計画等はあるのか、また、そういう企画はあるか。管理職の研修会は実施しているのか。

【発表者】

 担当者の研修会を実施している。モデル校や集中校については、校長先生等も、ここは集中校だと理解しているので、引き継ぎ等はされていると思う。ただ、実際にどういう仕事をしているかは、担当者に任せているところが大きいと思う。

【委員】

 ハローワークとの連携だが、例えばハローワークに就学の案内やガイダンスの資料を置いておくだけなのか、あるいはハローワークが企業を知っていて雇用している、そういう雇用主を集めて、就学の話をする、そういう機会を持った連携なのか。
 三重県の特に外国人児童生徒の多い学校では、日本人の親が、学校で外国人の学習時間が長いので、ほかの学校へ就学させたいという深刻な問題も起きている。学校でも、45パーセントの外国人がいる学校は、日本人の子どもたちがむしろそこで学習しにくいので、ほかの学校へやろうという動きもあるが、日本人の子たちも一緒に学びあって高めあっていく、そういう研修があったら教えていただきたい。

【発表者】

 ハローワークは就業だけでなく、生活等、いろいろなことについてのワンストップサービス化を目指して、言葉のわかる相談員を置いて相談業務も行っており、学校教育に関する相談はこちらに紹介していただいている。進路にかかるキャリア・ガイダンスは、学校の要望があれば、各学校や外国人学校も含めてガイダンスを行っている。企業に行って子どもの就学について働きかけていただくところまではやっていただけないと思う。ただ、厚生労働省関係の取り組みで、外国人雇用管理アドバイザーの方に企業に訪問していただいて、外国人労働者に関するアドバイスをしているようだ。

【発表者】

 親の雇用主との連携がもっとできればいいと考えている。外国人はPTA活動で朝の旗振りの交通当番になかなか出ていただけない。それは、出てきてしまうと雇用主との関係で首になってしまうので、そういったところについて行政への働きかけをしていければと思う。
 また、日本人の親で自分の子どもを転校させたい人がいるという話は聞いてはいない。子どもたち同士でトラブルがないわけではなくて、国際的な考え方の違いや、態度の違いで、けんかがあるが、それでも転校させたいとか、勉強ができなくなるということはあまりないと思う。

【発表者】

 外国人が一番多い学校で全校の8パーセント、9パーセントが最大で、クラスに3、4人程度なので、半数や3分の1が外国人の学校はない。外国人の定住化が、東海地域よりも太田市はもう少し進んでおり、日本語が話せる子や、保護者もなれている方が多くなってきているので、トラブルが少しずつ少なくなっていると感じている。

【委員】

 先ほど説明のあったフレックス高校は何名程度入れているのか、定時制の扱いになっているのか。

【発表者】

 3年前に開校した3部制の県立の定時制高校。大学に近い形で、自分で時間割を組み、担任もゼミ形式で決めて、数学や国語も基礎、標準、発展という教科書が選べて、少人数で学べる。中学校のとき不登校だった子ども、外国人の子ども、社会人の学び直しの方もいると聞いている。調査書の点数を少し抑えて意思を尊重して受け入れる。夜間に入っても午前と午後の授業を履修すれば、4年間ではなく3年間で卒業できる。本市からも昨年度26名のうち5名が、この3年間で12、3名ほどが太田フレックス高校に進学している。太田市だけでなく大泉町や伊勢崎市も多いので、正確な数はわからないが各学年20名程度外国にルーツのある人が現在フレックス高校で学んでいると思う。

【委員】

 コーディネーターの役割や位置づけは極めて重要であると感じている。太田市の中で今のコーディネーターの仕事をしかるべき人がきちんと評価をして、後継者が育つような体制がとられることが大事。明らかに現場が先行しており、国の対応が遅れていると思う。

【委員】

 千葉県は多言語が並立的にあるのに対し、太田市は1つの言語に対して集中的にあって、それがバイリンガル教員の特定や、具体的な政策を立てやすいことにつながってくると思う。
 本社は外国人を雇わないにしても、子会社、下請け等、大体その企業の関連事業だろうとかなり特定でき、会社名もわかる。企業がそういう労働を使いながら操業していることに関して、どんな関与があるのか、ないのか。市と企業、もしくは県、地方自治体との関係はどうなっているか。

【発表者】

 千葉県の研究会では、企業に対するヒアリング、実態調査はまだ深く入っていない。今後、中小企業の団体と意見交換をしていく必要があると考えている。

【発表者】

 本社は直接雇用が少なく、派遣会社、特にブラジル人がやっている派遣会社を通しての間接雇用が多く、日本の会社が派遣会社に日本語で業務内容を委託して、派遣会社から通訳を含めてブラジル人の保護者が働く。労働者、保護者は、日本語を使わなくても働ける環境があって、地域にはポルトガル語で済んでしまう状況もあるので、日々重労働を担って忙しい中、日本語を覚えようという意欲を持つのは難しい。企業も、あまり直接的な働きかけの機会はないが、経済競争が厳しくコストを抑えて競争を勝ち抜いていかなければいけない中で、保護者にそこまで手をかけるよりも、主任レベルで、ブラジル人で日本語もポルトガル語もできる方を置いて、直接雇用の場合でも、その方が通訳をしてブラジルの保護者との環境をつくるところが大きいと思う。
 県との関係では、太田市長、教育長、副市長が県知事に要望に伺って、外国人への支援を要請しているところだが、県教委、市教委のレベルでいうと、まだ具体的に何か動いてはいない。

【委員】

 千葉県の場合、日本語指導が必要な子ども953人の言語を洗い出すことができれば、ターゲットを絞って母語話者や学習支援者ができてくるのではないか。太田市等をもっと活用し、既成のものに縛られるのではなく、必要な研修をすることが大事になってくるのでないか。
 教諭や加配で専門の方が育ってくれば別だが、今現在、母語話者と組むことで十分な活用ができるのでないか。私どもの学校は、それで今軌道に乗っている部分があるので、そういうことも工夫の1つだと思う。

【委員】

 群馬大学は今、特色ある大学教育支援プログラムに選定されており、教員養成教育カリキュラムの中にポルトガル語の指導、スペイン語の指導、それから多文化共生の理念の授業などを含めて42授業を提供している。現在、そういった授業に対して現職の先生方の研修にも役立ててもらうため、幾つかの自治体とは連携を組んで行っている。また、地域からの要請に基づき、学習支援という形で教員と学生を派遣している。

【委員】

 地域の大学が取り組む状況は、1つの大きなバックアップになる。

【委員】

 幼稚園との連携はどうか。今、愛知県の中でも、外国人が増えているところは、小学校に入る前にブラジル人学校から来たような子どもたちは、1年生のときによほどサポートをしないと、2年生、3年生になっても学力が伸びず、言葉の面でハンディが大きい。幼稚園との連携、幼保、託児所、小学校に入る前の施設との連携の面で、どのような取り組みがあるか教えていただきたい。

【発表者】

 千葉県は、まだそこまでできていないのが現状だ。現在、953人で28言語対応。現在入学している小中を中心に、在籍児童生徒の対応に手いっぱいで、それは今後の課題である。

【発表者】

 就学児の関係を担当しているが、全く言葉がわからない子自身が太田市は少なくなってきており、問題は以前ほど顕在化していない。幼稚園、保育園と連携した取り組みは、ほとんど今行っていない。プレスクールを行っている。

【委員】

 小中高でこれだけの取り組みをしていることを託児の関係の方が知らないのは、とてももったいないと思う。言葉に問題を抱えている子どもたちが、小学校レベル、中学校レベルでこういう状況で、学校の先生たちが対応にとても苦慮している。これを幼稚園の段階で、保育園の段階でどう生かせるか。自分たちの今持っているノウハウ、知識がないと言葉に注目することもできない。幼稚園の段階で何ができるかを考えていただく意味でも、幼稚園や保育所でかかわっている方に、小中高レベルでやっている研修や会議への参加を呼びかけるといいのではないか。

【委員】

 外国人指導というと、すぐ外国人学校のほうに目が向いてしまう現実があると思うが、千葉県も太田市も公教育として日本語指導や言葉の指導、教科の指導を工夫している中で、外国人学校ではそこまでのことはやられていないと思う。

【事務局】

 最終的には母国に帰られるのか、日本にとどまるのかはわからないが、日本にとどまるのであれば、日本のコミュニティの一員として立派に育っていただきたいということでやっていくべきと考えている。他方、現実の問題としては、全体として2割程度の外国人の子どもは、ブラジル人学校や、各種学校の認可を受けた学校に行っている。そこに対して何らかの支援をすべきではないかという声もあり、その対応が検討課題としてある。

【委員】

 例えば日本人も日本人学校を外国で運営し、そこに多くの日本人の子女が通っているので、外国人の就学先として日本の学校か外国人学校か言い切れないのではないか。

【事務局】

 現実には外国人学校に対し国からの補助金は出しておらず、税制も普通の扱いをしている。他方、毎年ブラジルから教育長が来て現場を見ておられて、我々ともブラジル人の教育環境について議論している。そういった中で、我々としては可能な支援はやりたいと思っている。

―了―

(初等中等教育局国際教育課)