平成19年10月18日(木曜日)
三菱ビル地下1階 M1会議室
逢坂委員、池上委員、伊藤委員、井上委員、佐藤委員、高田委員、松本委員、山脇委員、渡辺委員
前川初等中等教育局審議官、小串初等中等教育局視学官、大森国際教育課長、その他
【委員】
学力保障の成果は出ているか。また、OBCテストは西保見小学校だけで行っているのか、それとも市内全域で行っているのか。そのテストにあわせて、日本語学力テストがあるが、テストの内容は教科の側面を含んでいるのか、純粋な日本語能力だけではなく、教科の力も計っているのか。
【発表者】
学力保障の成果についてだが、2月に全国の標準の到達度テストを行い、外国人児童も、平均で全国標準の8割以上を目指しているが、まだそこを検証するに至ってない。しかし、学ぶ意欲は十分身についていると思っており、手ごたえを感じている。
OBCテストは、在籍学校へ戻す際に目途にしているもので、本校では実施していない。豊田市の中でOBCテストをやっているのは、東保見小学校とことばの教室ぐらいだと思う。それに代わるものとして、日本語力テストについては、日本語教室から在籍学級へ戻す相談をかけるときの資料にするために、日本語教室が独自に作ったテストであるため、ほとんどが日本語の言葉に関する問題となっている。
漢字のテストや、言葉の表現のテスト等、いろいろなテストを引っ張り出して、自分たちで工夫して、試行錯誤しながらの問題なので、まだ完全な形とは言えないと思うが、そういう取り組みをしているということで紹介させていただいた。
【委員】
日本語指導員、外国人適応指導員、巡回指導員、アドバイザー、「ことばの教室」の指導員とあるが、県費負担教員、教員資格を持つ、そういう観点で分類するとどうなるか
【発表者】
22名の加配教員は県費負担教員だ。枠については、愛知県の配当基準があり、今年からの枠では、小学校では、日本語指導が必要な外国人児童30人までで1名、91人以上で5名。本校も、80人を超えているので、4名配置されている。
日本語指導員は、単なる母語話者であって、教員資格は持っていない。
適応指導員は、母語話者ではなく本校には在籍していないが、教員資格を持ちながら、特に生活面を指導するという立場で雇用している。
巡回指導員は、単なる母語話者で、言語の需要に応じて、各学校に週の時間を決めて派遣されている。
アドバイザーは、退職教員が教育センターの中で常駐している。
ことばの教室には、日本人で教員資格を持った方が英語対応で入っているが、正規の教員としては採用されていないので、あとの2名は母語話者。室長は教員のOB。市で、教育委員会で一括して雇用している。
【委員】
ことばの教室での一定期間の指導とは大体どのぐらいか。進路の問題、保見中学校においても、西保見小のように、さらに体制整備が整ってきているのか、中学校との連携もされているのか。
【発表者】
ことばの教室の期間は、大体4カ月を目途に、OBCテストでBレベルぐらい、毎日朝から、学校と同じ日課で5時間学校にいて、給食も掃除も全部しながら、適応指導をしている。力が及ばない子については、半年、それ以上、指導員の先生の判断で、そろそろということになると在籍学校に連絡が来て、在籍学校の担当教員が実際に参観して見ながら、夏休み前や前後期の分かれ目に、節目節目に受け入れるようにしている。
保見中学校は、校長先生も熱心であるため、体制が整えられており、日本語能力試験の1級を目指して取り組み、随分成果を上げている。保見ヶ丘3校は情報交換は非常に薄い。
【委員】
学習指導要領を切り離して、明確に指導の内容が示されることについては、現場でやっておられて、具体的にどういうところで感じられるのか。
【発表者】
外国人児童生徒への指導と帰国児童生徒への指導は少し異なると思う。共通している部分は何か、違う部分は何かを分析して、外国人児童にはこういう指導が必要だということを、ある程度明確にしていただけると良い。
【委員】
指導するほうの主任(T1)の方の研修はどうなっているのか、教えていただきたい。
【発表者】
T1の研修については、文科省の集中講座等もあるがほとんど自主研修。何かがあれば飛び出していって、いろいろな人と顔見知りになって情報を得たようだ。そこまでやる気があればいいが、そうではない人がなると崩壊状態になってしまう。
【委員】
特別支援教育の枠組みでやることのデメリットはあるか。
加配措置をし、あとは各学校の裁量に任せるというのでは学校間格差が大きいということについて、もう少し説明していただきたい。それを避けるのであれば、教員の研修とか教員配置ということにつながっていくのか。
【発表者】
特別支援のような枠組みでやることのメリットについてだが、システムがある程度できている特別支援教育の中のものに乗ってやる形にすると、非常にやりやすくなっていくと思う。特別支援という枠組みの中の1つに日本語指導があったっていい。それが学校としては一番やりやすい。
加配措置をし、あとは各学校の裁量に任せるというのでは学校間格差が大きいということについてだが、加配教員の指導内容については、指導者の一存的な部分があり、外国人児童生徒に対し、何時間指導しているか聞く程度の仕切りしかしていない。何をどう報告させるかで、ある程度のレベルが確保されるかもしれないなので、神栖ではそれなりのことをやっている。
【委員】
交換授業は、教員にとっては非常にメリットがあるが、子どもにとってどんなメリットがあったか。
【発表者】
どちらかというと子どもが喜ぶ。子どもにとって、在籍学級の担任はそれまで皆の先生であって、自分のことはそれほど気にしてくれず、日本語の先生と比べてあまり丁寧ではないと感じていた。在籍学級の担任は、取り出し学級での指導法がわかるので、在籍学級でもポイントを教えるようになり、子どもにとっては、学級でも取り出しの教室でも居心地の良い状況が生まれた。
【委員】
神栖市で、中学校がなかなかうまくいかないのは、加配が1人しか付いていないということや、それ以外に問題があるか。
【発表者】
中学校では外国人生徒をそこまで丁寧に見る必要はないというスタンスがあると思う。加配の先生は、一人きりで力もない。また、中学校で高校に入れるまでの力をつけるのは本当に難しい。
自分が教育委員会に在籍している時は、もともと犯罪の多い市であり、このままだと定職につかない外国人の子どもが増えてくる可能性があるため、今のうちに手厚く対応しておけば、定住したとしても、我々の同士として、一緒に同じ気持ちでやってくれるようになるのではないかという話をしていた。
【委員】
定着の状況はどうか。
【発表者】
細かい数字を知る立場にはないので、はっきりしたことは申し上げられないが、定着率はかなりよくなっていた。
【委員】
加配教員の授業研究は年にどのぐらいの回数でやられているのか、これを見る先生方はどこの先生方か。
【発表者】
加配の人数分行う。センターは1回だが、加配がいる学校は授業を公開して、そのときに授業を見て研究協議をし、連絡協議会的なことも一緒にやっているので、結構な回数やっている。これを見る先生方というのは、神栖市のすべての加配の先生プラス、当該校のその子にかかわっている先生は最低見ていただく。あとは、管理職と中学校の加配の先生。
【委員】
高校進学率は、現状としてはかなり低いか。
【発表者】
低い。
【委員】
不就学の問題も、中学生の年齢ぐらいだと出てきているか。
【発表者】
若干出てきている。ただ、不就学というか、不登校的になってしまった状況を学校が作っているのだとするならば、支援の仕方自体を中学校の方で考えていかなければならない。
【委員】
現在の田中先生の指導力を高めるために非常に良かった研修、また、後から続く方のためにも、こんな制度が必要ではないかと思われるような研修について、お聞かせいただきたい。
【発表者】
以前受けた国の研修の中で、大学の講師の先生方が宿泊されて、夜も一緒に話し合った時間が長かった時期がある。夜中まで話したことは、ほんとうに意味があった。その先生方とは今もつき合いがあり、非常に大事だったと思う。十分に、とことん話し合える、自分としてはこういうことを今やらなければならないということが、そこから煮詰まって出てくるような研修があれば一番ありがたい。また、現在は初級向けの研修が多いが、中級研修が必要である。
【委員】
2年、3年あれば高校進学の力をつけることができると言えるだけのノウハウに対して、例えば大学の日本語教育関係者から何らかの形で批判や意見といったものが、今まで聞こえてきていたならば、参考までに教えていただきたい。
【発表者】
大学の先生方からは批判を受けたことはないが、同僚からは同じ中学校のセンター校を担当していても、あなたにはできても私にはできないという批判がある。どの子にも同じように、それだけの時間とエネルギーをかけて教育しても、し切れないものもある。そういう場合には、逆に母語話者や母語保持で、子どもたちの精神的な安定のほうが大事であるとか、詰め込み教育のようなものはよくないというような批判を、同僚から受けることはある。
また、なぜ来たのかわからない子ども、無理やり連れてこられたような子どもに、もっとやわらかい日本語指導、楽しみながら会話を中心としたような日本語指導をやってあげたほうが随分楽だが、人数が増えてくると、それを分けることができないので、そういう子どもには少し厳しいと思う。
【委員】
教員免許制度の問題について、日本語科という日本語指導の教員免許という種類、それが確立されれば、ご指摘のあった問題点が解決されていくのかどうかも含めて、事務局のほうからご説明をいただければと思う。
【委員】
学習指導要領は改訂作業が進行中であり、教育振興基本計画も作業が進んでいると思うが、そこにここでの議論が反映される可能性はあるのか。
【事務局】
指導要領の改訂、教育振興基本計画は、いずれも本年内、あるいは本年度内に決着を見るというような形で検討が進められている。教育振興基本計画の中において、外国人児童生徒教を柱立てする必要があるのではないかと考えている。検討会は来年夏までの検討ということになっており、ここでの検討の内容を今の議論に反映させることは難しいが、将来的にはこれらの議論への反映も考えられる。今後の具体的な教育政策、あるいは教育内容についての取り扱いを今後出していく必要はあると考える。
─了─
(初等中等教育局国際教育課)