初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会(第1回)議事要旨

1.日時

平成19年9月7日(金曜日)

2.場所

文部科学省ビル9階 省議室

3.議題

  1. 座長・副座長の選出
  2. 検討会の進め方について
  3. その他

4.配付資料

資料1
 初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会について
資料2
 「初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会」の議事内容の公開について(案)
資料3
 外国人児童生徒教育に関する参考資料
資料4
 平成20年度概算要求資料(外国人支援関連)
資料5
 主な検討事項について
資料6
 検討会の審議のスケジュールについて
資料7
 法務省提出資料
資料8
 今後の日程

5.出席者

(協力者)

逢坂委員、池上委員、石川委員、伊藤委員、井上委員、木場委員、佐藤委員、紿田(たいだ)委員、高田委員、竹郷委員、松本委員、山脇委員、結城委員、渡辺委員

(文部科学省)

金森初等中等教育局長、前川初等中等教育局審議官、吉尾大臣官房国際課長、小串初等中等教育局視学官、大森国際教育課長、その他

6.議事概要

(1)外国人児童生徒教育の現状等について

【委員】

 本検討会の目的を明確にした方が説得力が出るのではないか。

【事務局】

 今回、検討会を進める理由としては、1つは公立学校に在籍する外国人児童生徒が7万人、日本語指導が必要な外国人児童生徒も2万人を超えているという状況の中で、そうした子どもたちのためにきちんとした学習の機会を提供するということは、非常に大切ではないか。
 また、今後、日本に滞在の期間が長期間あるいは定住化しており、将来的には我が国の社会を構成する一員になる可能性があるため、そうした子どもたちのためにどういう教育ができるのか、今後どうしていくのか議論したい。半面、これを怠ると不就学・不登校の子どもが増える可能性があり、社会不安にもつながりかねないということがある。

【委員】

 検討を進めるに当たっての基本的な外国人児童生徒の位置づけや基本的な考え方を定めた上で、役割分担あるいは具体的な方策について検討するのがよいのではないか。

【委員】

 実際の教育行政は地方自治体が担うが、2年前に総務省が多文化共生の推進に関する報告書を出している。その中で、外国人住民も地方自治法上の住民であり、国際人権規約、人種差別撤廃条約等の要請から、基本的には日本人と同等の行政サービスを受けられるようにすることが求められるという基本的な位置づけを行った上で、各自治体に外国人住民の受入施策についての推進を求めている。本検討会においては、この教育行政という観点から、国としての基本的な外国人児童生徒教育推進に向けてのメッセージを各自治体、県教委あるいは市教委に対し、出していただけばいいのではないか。

【委員】

 教育問題を論ずるときに、教育の問題と、外国人が来て日本の中でどう登録されているのか、どういう現状を把握しているのか。
 また、外国人労働者について、企業の実態はどうなのか。この問題は単に教育の方法論だけではなく、すそ野の広い問題だと考えており、どこまで報告書に盛り込むかは別として、必要があれば関係省庁や企業の方にも来てもらい、実態を掘り下げてから方法論を出す必要があると考える。

【事務局】

 最終報告は、喫緊の課題として、教育に焦点を当てて提言を取りまとめていただきたいと考えているが、その前に幅広く関係者の話を聞くなど、必要な手配はとりたい。

【委員】

 教育の場合、いろいろな市町村が問題を抱えていて、どのような方針でこの問題を解決していったらいいのかが見えにくいという、国の姿勢が欲しいということをよく言われる。
 文部科学省では各県の教育委員会、あるいは市町村で指導指針が出されているところをどのように把握し、それをどう評価し、国としてどういう指針を出そうという検討が行われているのか現状を教えてほしい。

【事務局】

 自治体単位で指針を出している例があることは承知している。
 自治体において、その判断により教育に関する指針を持つことは、よいことだと考えている。

【委員】

 外国人労働者問題関係省庁連絡会議が、昨年12月25日に総合対策をまとめた。外国人に対する政府としての基本スタンスは、生活者としての外国人という発想、特に生活の基礎となるものであり、その充実のため、積極的な取組が必要であると示されている。
 就学の促進について、治安の問題や特定の自治体に集中して出てきている問題への効果的な対応をどうするか。実態調査を精度の高いものとしてやると、対策が効果的に講じられるという方向性が見えてくるのではないか。

【委員】

 学校の半分近くが外国人であれば、かえって支援を受けることができるが、むしろ10〜20人といった少人数のところが大変である。指導員を配置してもらう、あるいは研修を積むといったことは非常に重要なことになってくると思う。

【委員】

 将来的に外国人が社会の構成の一員になることを考えて、子どもたちが将来の夢と希望を持てるように、学校では、今取り組んでいる。これは日本人も外国人も同じように考えている。地域では、半数以上の外国の方が将来永住をしたい、7割、8割の子どもが日本の高校、大学までいきたいという希望を持って学校へ通っており、外国人や日本人ということにかかわりなく、同じように学ぶ力をつけていかなければならない。

【委員】

 フランスは外国人への対応について、今になって大きな社会問題になっている。今からしっかりした路線を組んで取り組んでいく必要があると感じている。

【委員】

 現在、浜松市の公立の小中学校には外国人が1,500名在籍しており、20年前に比べて50倍に増えた。さらには外国人学校にも約700名が在籍しているという状況。外国人の子どもの教育は、中長期的なビジョンを持って取り組まなければならないという思いはあるが、現実的には不就学の問題や不法就労の問題、日本語支援、母国語の支援等次々と課題が起きている。その課題に対して、手探りで対応しているのが現状である。浜松市の162校のうちの約7割の学校に外国人の子どもが在籍しているという状況の中で、市教育委員会としても、日本語教室の開設や母国語教室開設、あるいは学校に支援員やサポーター、バイリンガルの支援員等を派遣しているが、すべて市の単独の財源でやっており、予算的にも手いっぱいである。

【委員】

 国の役割や都道府県の役割、市町村の役割を明確にしながら、もう少し手厚い支援のあり方、最終的には学校の先生方が安心して取り組めるような体制を、国レベルで考えていくということが重要ではないかと思う。

【委員】

 外国人児童生徒がどうすれば学校に来るかという課題について、まず周知したい相手が学校に対して興味がないのに、一生懸命情報発信しても響かないところがあるため、どうして就学したくないのか、その理由は、なぜ興味を持たないのか、希望しないのかというところまで掘り下げて、まず現状を把握した上で、どういう情報を発信していけばいいのかを考える必要がある。周知の方法について、ある程度招き入れた企業にもう少し責任を持っていただいてはどうか。企業を通して情報発信して、責任を持って子どもを就学させる流れも作ってはどうか。

【委員】

 外国人労働者の子どもの責任を国がどこまでもつのかを見極めるのが大変難しいと思っている。就学率の向上が目標なのか、どう目標として持っていくのかを明確にして、目標に向かって会議を進めていけばいいのではないか。

【委員】

 外国人の子どもに対しては、いろいろなところが分散してやっているため、それを統合するような意見を、この検討会で出せるといいのではないか。

【委員】

 例えば、不就学の理由で、学校へ行くためのお金がないからというのが1番の理由である。実際に就学援助の申請書があるが、学校の事務室の前に置かれているだけであり、外国人にとっては何であるかがわからない。お金がなくて学校に行かれないと思っている子ども達に、手段があることを伝えていかなければならないし、そういうものをつなげていくような具体的なものを各自治体に提言していくべきではないか。

【委員】

 外国人児童生徒が少人数在籍する学校にいると、集住地区の学校がいいと感じる部分がある。1つは教員の意識の違い。外国人児童が非常に多い学校は、教員一人一人の国際理解教育や日本語指導にかかわる考え方など教員の外国人児童にかかわる認識の違いがある。

【委員】

 外国籍の子どもが別の市に引っ越すに際し、引っ越した先に日本語学級がなく、保護者から今の学校に通わせたいという要望があったが、市を越えて通学をすることについて、ストップがかかった。その後もこの対応については話が進んでいない。このように細々とした解決すべき問題、市の中での連携のあり方についても、色々課題がある。

【委員】

 外国人児童生徒を取り巻く状況について、14年前のときに見た現場とほとんど変わらない状況が愛知県の中にもある。
 様々な蓄積を重ねてきて、うまくいっているところとそれ以外の地域に、同一県内でも周知・共有されない現状がある。その点について、どの問題をどこが吸い上げて周知徹底するか、どの事例をどこが同じ繰り返しをしなくてもいいようにやるのかを見極めることが大変大事だと思う。

【委員】

 不就学児童生徒の実態調査については意外と数値が低いと考えている。
 文部科学省に先行して14年度と15年度に、大泉町で不就学児童生徒の調査を実施している。文部科学省では公立学校等に就学しているのが60.9パーセントだが、16パーセントが外国籍の大泉町では、47.8パーセントが公立学校だったため、数年間経たところで、全国的な動向では公立学校に在籍している者は約15パーセントぐらい増えてきており、それが一体何を意味するのかを考えることによって、文部科学省として不就学児童生徒の取り組みをどう考えるか見えてくるのではないか。
 外国人学校等について、注意書きに「我が国の小中学校に相当する組織的な教育を行う施設」と定義されており、朝から夕方までやっているところとイメージする。大泉町の調査では、いわゆるブラジル政府認可校と、ブラジル私塾と託児所に行っている子どもたちもかなりいるというデータが出ている。ブラジル私塾だと1日に数時間行っている子どもたちもおり、託児所に行っているような子どもたちが、この外国人学校等の区分に入っているのか、不就学に入っているのかを見ると、数字が見えてこない気がする。
 大泉町では、一軒一軒個別に当たったところ、5.6パーセント(26人)の不就学者がいた。今回の調査は、かなりの数の数字が上がってくると予測していたが、文部科学省の結果では、不就学者は112人だった。

【事務局】

 今回の調査の中で不就学者数、それから、転居・出国等ということで、その先の状況がわからなかったという人も多数いる。可能性としては、そうした転居・出国等の中のある程度の割合の方は、やはり不就学になっている可能性もあるのではないかと考える。
 ただし今回の調査の中で、自治体に手法の開発も含めてやって頂き、個別訪問をして追いかけた結果であるため、さらにこれ以上細緻にできるのかという点はある。
 また、今回初めて調査を実施して、場合によってはこうしたやり方を今後とも経年で追いかけながら情報を把握していく必要性もあるかもしれないため、そうしたことがあればご提言いただきたい。

【委員】

 そろそろ具体的な指針というもの、あるいはこういう外国人の子どもたちの教育をどうしていったらいいのかという基本的な考え方を示していかないといけない。
 例えばこの外国人の子どもの問題は、雇用、福祉、医療などの問題と密接にかかわっており、新しい問題を考える際に就学前の子どもや中学卒業後の話だとか、就労の問題も密接に絡んでくる。広い視野で、外国人の子どもたちの教育の問題をどう位置づけていくのかこの検討会の中で何に焦点を当てていくのか、全体を視野におさめながら位置づける必要性があるのではないか。

【委員】

 役割分担については、単なる役割分担ではなく、コラボレート・協働できるような仕掛けあるいは提案をできればと思う。

(2)外国人登録制度について法務省の担当官から説明した後、質疑応答があった。概要は以下のとおり。

【委員】

 外国人の在留管理に関するワーキングチームの検討結果の中に、外国人を雇用する全事業者が就労の実態を報告するとあるが、この事業の対象は派遣会社も含めてのことなのか。

【法務省】

 雇用対策法の改正の話なので、厚生労働省の所管であるが、ここで言う事業主は、雇用契約の関係にあるところであり、その派遣先の報告ということではないと聞いている。

【委員】

 外国人登録者は過去、増加を続けているが、一方、公立学校に就学する外国人児童生徒は減少しているということについて、どう解釈しているか。

【事務局】

 詳細に調べてはいないが、公立学校に就学する外国人児童生徒の中には特別永住者の方々も含まれている。一方で特別永住者の方の日本国籍の取得が増えていることもあり、それが影響しているのではないかと考える。

【法務省】

 特別永住者とは、戦前から日本にいて、戦後も引き続き我が国に在留されている、いわゆる在日韓国、朝鮮人の方等と、その子孫の方を指し、最近では約1万人前後のペースで減っている。理由としては、帰化や日本人との結婚による子どもの日本国籍の取得といったことが原因と言われている。

【委員】

 最近定住化が特に日系人等は進んでいるため、定住を前提として、例えば高校なり大学に行けるという状況まで踏まえた支援策をつくらなければいけないと考える。現場を見ると、企業は、日本人の雇用も、アジアへの進出を踏まえて減らしているという実態がある。また、終身雇用ではなく、働いた成果を雇用者に返すのが基本となり、例えば、家族手当がなくなっている企業が多くある。
 また、外国人の場合は、なかなか直接雇用がないため、休暇制度まで整えられておらず、その点を企業がどのように協力できるのかという話を聞いている。特に間接雇用で派遣や請負で働いている外国人の子どもたちを、どう支援するのかというところまで、思いが至っていないのが企業の実態ではないかと思う。
 例えば工場見学会やインターンシップを行う際、日本人も外国人も分け隔てなく受け入れているため、定住化を前提として、ある地域に限定した形であれば、企業がその子どもの将来の自分の人生をデザインする上でのヒントを与えることが可能ではないか。
 また、地域ごとで企業が何がしかの資金を出して、外国人の子どもの教育も含めた支援のプログラムを動かしていくべきではないかと考える。

(初等中等教育局国際教育課)