いじめ問題などに対する喫緊の提案について

平成18年12月4日
 

 最近の子どもによるいじめ・暴力行為等問題行動については、大人社会のゆがみを反映していることが一因とも考えられます。子どもを守り育てるためには、何よりもまず、保護者や教員、地域住民を含めた大人全員が自らを律し、自らの生き方を見つめ直す必要があります。子どもは大人を見ながら成長します。その上で、一人でも多くの大人が子どもたちを注意深く見守っていく体制をつくっていく必要があります。
 文部科学省では、平成18年11月21日にホームページ上に「いじめ相談」のページを設置し、11月30日現在、5,352件のアクセスがありました。多くの子どもたちが悩みを抱えた現状を踏まえ、このような共通認識の下、「子どもを守り育てるための体制づくりのための有識者会議」として、次のような提案をいたします。

1. 子どもが様々な大人に相談できる場面をつくりましょう
   子どもは一人ひとりプライドを持っており、強い自己防衛的心理を秘めています。このため、周囲の人々に、なかなか自分の弱さを表すことが難しい場合もあります。したがって、学校の内外を問わず、いろいろな場面で、様々な大人と接し、心を開いて相談できる場面をつくる必要があります。
 学校では、教員や養護教諭などがしっかりと子どもたちと接しながら、子どもたちの人間関係のあり方を全体として改善していかなければなりません。その上で、小学校では「子どもと親の相談員」、中学校ではスクールカウンセラーが子どもからの相談について、専門家としての役割を果たしていくことが重要です。
 また、学校外においても、様々な大人が子どもたちを見守り、安心できる環境をつくっていく必要があります。例えば、電話相談については、地域の教育相談センターのほか、法務局の「子ども人権110番」や警察署、児童相談所などが行っています。民間にも様々な機関もあります。特に、教育相談センターなどで行われている「いじめ110番」などでは、子どもがいつでも相談できるよう、休日でも夜間でも受け付けられる体制を整備する必要があります。
 
学校内外における子どもに対する相談体制の充実

2. 学校の中に新たな子どもの居場所をつくりましょう
   以前は、近所のおじさんやおばさんなど、学校の教員や保護者以外の大人たちと接する場面がありました。しかしながら、今の子どもたちには、そういった場面が減ってきています。そのため、学校の中に新たに様々な大人と接し、居場所となるような場をつくっていく必要があります。
 例えば、学校図書館や校長室、校舎・校庭の地域開放、芝生の管理などを通して、地域の大人たちと接する場面をつくっていけば、子どもたちが安心できる場所が増えていきます。
 
学校の中で、子どもが教員以外の様々な大人と接する機会の拡充

3. 万が一の場合の初期対応では、専門家が学校をサポートするようにしましょう
   子どもが成長していく過程においては、学校だけでは解決できない問題を抱えることもあります。そのような場合には、教員だけで対応するには限界があります。特に、事案の初期には、子どもたちへの対応は難しいものがあります。
 そのため、緊急の場合には、教育委員会の指導主事などとともに、精神科医や警察、児童相談所など外部の専門家がチームを組み、教育委員会が学校を支援することが必要です。
 
緊急時に、精神科医や警察、児童相談所など外部の専門家チームが学校を支援する仕組みの構築

4. 実態を把握・分析するとともに、良い取組を共有しましょう
   昨今の様々な問題を受け、それぞれの教育委員会ではアンケート調査などにより、いじめなどの実態把握に努めています。また、文部科学省が今まで行ってきた実態調査は、事態を正確に反映していないとの批判がありますので、本有識者会議において、調査票の見直しを行います。これらを受け、いじめなどの実態を正確に把握し、分析していかなければなりません。
 さらに、いじめなどの問題が明らかになった際に、いじめている子、いじめられている子、周りで見ている子などに対して、教員や保護者がどのように対応していくべきか悩んでいる実情があります。そのため、それぞれの学校や教育委員会で行われてきた良い取組を収集し、まとめる必要があります。これを参考にし、それぞれのケースが持つ独自の事情を勘案しながら取組を進めていくことが必要です。
 これによって、子どもたち一人ひとりが自分に関わる問題を自分の力で解決していく力をつけていくと同時に、自分たちの日常生活の上に多くの暖かい目が注がれ、支援のネットワークが準備されていることを実感させたいと考えます。子どもたちが様々な大人たちに見守られていることを感じさせることが必要です。
 
実態把握・分析と良い取組をまとめた事例集の周知