資料1 子どもを守り育てる体制づくりのための有識者会議(第6回)概要

下田委員の発表(学校非公式サイトの調査について)

  • 子どもたちの発信エネルギーがどの程度かということを知るという点でサイトの数は重要であるが、サイトは日々生まれたり消えたりしているため、正確なサイト数を調べることは基本的には不可能であるということを理解する必要がある。
  • 今回の学校非公式サイトの調査においては、今後の対策を考えるにあたり、サイトのメディア特性の実態を理解することと、多様なサイト遊びを提供している業者のビジネスモデルを確認することを目的とした。
  • 1.主として子どもが管理人となっている特定学校非公式サイト、2.管理人が不明で、業者や大人が開設している一般学校非公式サイト、3.大人が開設した大型掲示板の中で、子どもがスレッド管理を行っているスレッド方学校非公式サイト、4.クラスやサークルの友達と共同で運営しているグループホームページという4種類の子どもたちの発信遊びを追跡した。
  • 構造を調べる上で最低限必要な38,260のサイトを調査し、一口に学校裏サイトと言っても、それぞれメディア特性が違うということを再確認した。
  • 特定学校非公式サイトは、サイト数、発信エネルギーが予想以上に急速に減少し、その代わりに見守り指導が難しいスレッド式のサイトやグループホームページが全国的に急増している。
  • 学校非公式サイトの変化の要因として、利便性が上がり、特に子どもたちの発信能力が上がったこと、保護者や教員、報道に対する子どもたちの警戒心が高まっていること、業者の競争が激しく、ネット上の遊び場を提供している業者が子どもたちの発信エネルギーを新しい方向へ引っ張っていることなどが見て取れた。
  • 特定学校非公式サイトでは、誹謗中傷が予想以上に多かった。また文字情報を中心としたわいせつ情報が特定学校非公式サイトやスレッド型非公式サイトにおいて問題となっている。文字情報から写真やアニメのわいせつ情報へのリンクも今後の課題となっている。
  • ゲーム広告や出会い系サイトの広告といった有害なネット広告が、子どもたちのコミュニケーション媒体であるあらゆるネット遊びの場に張られていることは、問題視すべきである。この点について大人や業者の手のひらの上で子どもたちが動いているのであり、子どもたちが悪いわけではないという構造を認識しなければならない。
  • 出会い系の有害広告については、サイト上に業者が書き込みをして、子どもたちを有害サイト引っ張り込んでいるという構図があることにあらためて注意しなくてはいけない。また、アダルトグッズの通販の広告宣伝が子どもたちの目につく形で発信されることが増えていて、これも問題である。
  • 業者が運営しているランキングサイトから、フリーマーケットのサイトに子どもたちを引き込み、子どもたちが制服や下着を売ったり、わいせつ情報を取引したりするという一種の情報非行が常態化している。
  • ここ10年間で子どもたちの発信エネルギーが高まっており、やめろということは不可能である。子どもたちに、学校非公式サイトの発信問題をどのように指導していくかということを考えていかなくてはならない。

全国Webカウンセリング協議会の取組について

  • 2007年には、協議会に、嫌がらせのメールや学校裏サイト、プロフィールサイトなどネットいじめの相談が1,016件あった。嫌がらせのメールの中で多いのが、なりすましという方法で、簡単に他人のメールアドレスでメールを送るというようなことを子どもたちは簡単にやってしまっている。
  • 学校では情報モラル教育が大切であるということが言われているのに、学校の先生が、子どもたちがどういうネット遊びをしているのか、現状を知らない。どのような対策を立てていくのか、先生方が子どもたちと真剣に向き合う姿勢が必要である。協議会では、学校の先生方の研修会を開催し、子どもたちに今何が起こっているのかということを勉強していただいている。
  • 研修会に参加する先生全員に携帯電話を1個持ってきてもらい、裏サイトの探し方、サイトに書き込みがあった際の削除手順などについて順を追って説明していくとともに、子どもたちの間で使われている言葉を細かく説明しており、全くの初心者でも、ある程度子どもたちの相談に乗れるようになっている。4月中で500名程度が参加している。
  • 本人が全く知らないところで、その子が援助交際をしているという事実が作り上げられ、先生がその子を責めたてたために転校せざるを得なくなったケースや、友達といざこざがあり軽い気持ちで書き込んでしまった子を学校が犯罪者扱いしたために、逆にその子がいじめられてしまうケースなどがあり、学校としてどう対応したらいいかということを考えなければならない。
  • 被害者の方ばかりに目が行き、加害者を責めてしまいがちであるが、人間は二面性があり、問題のない子でも、ばれないだろうという軽い気持ちで書き込んでしまうこともあるので、教育の場である学校において、子どもを簡単に犯罪者扱いしてはならない。
  • チェーンメールも問題であり、無料で作れるサブアドレスを活用することによって送り主を隠されていて、子どもたちはそのメールが届くと、自分のところで止めるのが怖いため、転送を重ね、あっという間に広がっていってしまう。あっという間に広がる原因は、メールが自分のところで止まったことがわかる機能は存在しないことや転送した段階で自分も共犯者になってしまうことを子どもたちにしっかり教えていないことである。
  • 協議会では、チェーンメールの転送先10箇所を用意しており、また携帯電話にも、なりすましメール拒否設定というものがあり、チェーンメールを防ぐ方法はたくさんある。
  • 先生の中には、子どもから裏サイトに書き込まれているという相談を受け、どのように削除したらいいかわからず、逆に先生が誹謗中傷などの書き込みの対象となり、先生自身が先におかしくなってしまうというケースもある。
  • それぞれのケースによって削除の方法が違い、全国版の裏サイトは適切な方法を採れば削除は早いが、問題となるのは、誹謗中傷や個人名ばかりが出ているような管理能力のないサイトであり、協議会では、そのようなサイトへの対応について、ネットいじめ対応アドバイザーとして一つ一つ勉強していく活動を行っている。

質疑、自由討議

  • 子どもたちは、インターネットや携帯電話は匿名だと思っており、また、学校側も、問題が起こると過剰反応し、学校だけで問題を抱えこんでしまうことが多いので、あまりにひどい場合には、警察が、書き込みをした者を特定できるということをきちんと知らせなくてはならない。
  • 被害者と言われる子どもへの対応よりも、加害者と言われる子どもへの対応が難しいケースが増えている。インターネット上への書き込みは度が過ぎる要素を持ったメディアであり、本人が軽い気持ちでやってしまうと、今度はその子が非難される側に回ってしまうケースもある。
  • (こういった裏サイトなどの問題に、教育現場では実際にどのように対応しているのかという質問に対して)PTAとしては、e-ネットキャラバンから専門家を招いて研修会を開催し、保護者や子どもに対し、匿名性がないことや犯罪になりうることを強調している。問題に対して学校が過剰反応してしまったり、先生が問題を理解せずにマニュアルどおりの対応しかできなかったりというのが現状なので、子どもの様子に応じてケース・バイ・ケースで指導していく必要がある。
  • (こういった裏サイトなどの問題に、教育現場では実際にどのように対応しているのかという質問に対して)学校の対応以前に、保護者の認識が非常に低い。このような問題は、中学校や高校では現実に目の前で起こっている。しかし、その前の小学校の段階で、大抵の子どもは、インターネットや携帯電話を保護者に買い与えられるのであり、その段階で、こういったメディアの特性などについて保護者を含めた教育をする必要がある。小学校では、各学年に情報教育のカリキュラムはあるが、今後は情報リテラシーという視点から、どの学年にもしっかり位置づけて取り組んでいくべきである。ネットの問題や防犯の問題については、これまで警察の方を呼んで話をしてもらっていたが、リテラシーとの融合がなかなか難しかったので、よりよいネット社会をつくるという前提のもと、子どもたちの情報リテラシーを発達させるため、子ども、保護者、教員を対象として民間企業の方から話をしてもらっている。企業側も、当然、社会的責任として、このような問題の解決に携わっていかなくてはならないと考えている。
  • (こういった裏サイトなどの問題に、教育現場では実際にどのように対応しているのかという質問に対して)中学校においても、インターネット上のいじめを学校として把握できるのは年に3、4件で、インターネット上でのやりとりが、学校内で具体的な行動となり衝突が起こったときにようやくわかるという程度である。PTAを中心に研修会を開催しているが、教員の意識は非常に低い。
  • 文部科学省のいじめの調査についても、このようなネット上のいじめの存在を踏まえ、再度考える必要があるのではないか。
  • 大人は、自分の経験値の中で善悪を判断するので、インターネットの問題については、どういうものかすら全くわからないのが現実である。このような状況で保護者をどうこうしようというのは難しい。保護者の心配事は、携帯電話の使用料が高いということが最初にあり、その次にようやくネットいじめの問題があるものの、自分の子どもはやっていないだろうという感覚である。
  • 子どもたちがネットいじめや嫌がらせの被害に遭っているときの一番のサインが着メロである。これまで大音量で着メロを流していたのに、いきなりサイレントにするのは、明らかなSOSのサインである。また、いじめに遭っている子どもでさえも、プロフィールサイトで友達を作っているケースがあり、携帯電話を手放せなかったり、解約されることをすごく恐れたりという傾向がある。
  • (子どもたちには、どのようなカリキュラムを通じてこのような問題が伝わっているのかという質問に対して)文部科学省において、情報モラル教育のモデルカリキュラムを作成し、教員の方々にお伝えしたところであり、現場はまだ動き出してはいない。今回の小・中学校の学習指導要領の改訂においても、情報モラル、情報リテラシーというところを強調して位置づけてあるが、教科の授業の中で体系的にというところまでは至っていないので、道徳や特別活動の時間を活用して発達段階に応じた指導ができるようモデルカリキュラムを提示した。今後、実際の授業に生かすための研修や支援が必要になってくると考えている。
  • 企業の社会的責任として未成年には最初からフィルタリングをつけるべきである。世界的に見ても、このようないい加減な状況は日本だけである。小学生に携帯電話を持たせるのは、安全・安心のためであり、子どもは社会全体で守っていかなければならないので、最終的な判断を保護者に委ねるのではなく、企業のCSRとして未成年にフィルタリング機能のついたものしか与えないようにするのが最終的な解決方法ではないか。
  • 早急な対策は無論必要であるが、メディアリテラシーがないところにインターネットが入ってきてしまっている以上、日本の社会について根本的に考え直さなければならない部分がある。
  • 携帯電話会社は、次々と機能を改良し、利益が上がればいいと考えているのが正直なところであり、自分たちがつくりだしているメディアが、子育てや教育にとって障害となる現象を生み出す原理を持っていることを知らない。親の責任の前に、いい加減な商品の売り方をしている業界の責任をあらためて原点として認識した上で、業界ぐるみの対策を考えないと、いくら保護者や学校に責任を求めても、対策は不可能である。
  • 子どもたちを有害情報から守るために、フィルタリングは必ず必要になってくるが、1人がはずすと必ずほころんでくるので、法規制などにより、かなり厳しくやっていかなければならない。
  • フィルタリングには2種類あり、アクセスできるところを設定しておくホワイトリスト方式と、制限する部分を設定しておくブラックリスト方式とがある。ブラックリスト方式では、必要な情報もブロックしてしまう危険性があるというのが現状である。
  • 携帯電話の料金請求書を見ると、明細書では、パケット料金100万円などどなっているにもかかわらず、実際の請求額は、1万円程度で済んでいる。保護者や先生は、そのような携帯電話会社やコンテンツサービス会社の儲け方、ビジネスモデルを理解していないと思うので、請求書を見て、子どもたちの利用の実態を知ってほしい。企業側にも説明責任があり、本当は膨大なお金がかかっているのにこんなに安くなっているという説明ではなく、安くなった分だけ問題が起こりうるという視点で保護者や教員に説明してくれないと困る。

※ 今後の動きについては、提言のアウトラインを事務局から示した上で、委員から再度ご意見をいただくということで了解を得て会議終了。

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初等中等教育局児童生徒課