資料8

学校評価の在り方と今後の推進方策について 第1次報告(平成19年8月27日)(抄)

6.第三者評価の在り方に関する今後の検討課題について

  •  第三者評価は、学校の自己評価・学校関係者評価(外部評価)を補い、学校運営の質を高めるために行う専門的・客観的な評価として位置付けることが適当。
  •  第三者評価の在り方については、その主体、評価手法、評価者の資質、改善策の在り方等について、以下のような今後検討すべき課題を整理。
    •  実施主体となる評価機関の独立性の担保、国と教育委員会の役割分担の在り方
    •  学力調査の結果等の活用や諸基準の適合性の検証の在り方など、定量的、定性的な評価手法の在り方
    •  定性的評価を行う場合の評価者の質の担保や、独立性を有する専門的な評価者の確保など、評価者の資質の在り方
    •  だれが改善策を提供すべきか、だれが改善の責任を負うのかなど、評価結果を踏まえた改善策の在り方
  •  第三者評価の在り方については、教育再生会議における議論や、平成18年度から実施している第三者評価の試行事業の状況を踏まえながら、引き続き更に検討を深めることが必要。

第三者評価の意義について

  •  第三者評価の在り方については、平成18年9月より平成19年1月にかけて、文部科学省において全国124校の小・中学校を対象として試行事業を実施したところである。今後の議論の参考とするため、本協力者会議の委員も多数、この試行事業に評価者の一員として参加したところである。
     この試行事業により得られた成果については、文部科学省において別途報告書をとりまとめることとしているところであるが、本協力者会議の参加した委員が実地に体験して得た第三者評価の今後の在り方に関する印象として、例えば以下のものがある。
    •  学校運営の改善に活かすためには、評価について学校の納得性を高めることが重要であり、その点で評価者の資質や客観性を高める評価指標が重要。
    •  学校の抱える課題について、教育委員会や校長は、ある程度把握していても、改善に積極的にならず手をこまぬいている場合が見られる。その点で、第三者評価を行う意義がある。
    •  どうしても授業を中心とした評価となり、予算や施設維持などを含めた学校のマネジメントに関する部分が手薄になった。
    •  保護者等による学校関係者評価(外部評価)との切り分けが課題。住民参加を達成するためには学校関係者評価で可能であることから、第三者評価は専門性を打ち出すべき。
  •  これらを踏まえ、第三者評価については、自己評価や保護者等による学校関係者評価(外部評価)では不足する部分を補うものとして位置付け、学校運営の質を高めることを目的として学校の取組やその成果について評価を行うことが適当と考える。
  •  すなわち、基本的に学校が主体となって行う評価である自己評価・学校関係者評価(外部評価)に対し、第三者評価は、
    • 1 保護者や地域住民による評価だけでは、学習指導や学校のマネジメント等について教職員を上回る専門性は期待しにくいことから、専門性を有する有識者等による「専門的」な評価
    • 2 学校と直接の関係を有しない者により、必要以上に学校・地域の事情やしがらみにとらわれず、学校に新たな気づきをもたらすような「客観的(第三者的)」な評価
    として、学校以外の主体が評価機関となって行う専門的・客観的な評価と位置付けることが適当と考える。

第三者評価の在り方について

  •  具体的に第三者評価において、何をどのように評価すべきかについては、
    • 1 教育活動を実施する上での様々な基準を満たしているかどうかを検査するチェックリスト型監査、
    • 2 各学校が教育目標その他の教育上達成すべき目標の設定・達成に向けて適切に取り組んでいるかどうかの評価、
    • 3 自己評価・学校関係者評価(外部評価)が実施されていることを前提として、それらが適切に実施され、その評価結果が学校運営の改善に適切に結びつけられているかどうかや、学校に関する情報が保護者等に適切に提供されているかどうかなどを含む、学校運営全般の在り方に関する評価、
    を行うことが考えられる。
  •  このことについて、
    •   1の広範にわたる諸基準(例えば、施設・設備や衛生に関する基準、など)の適合性などの合規性について逐一検証することは、人員・日程的にも不可能であるし、そもそもこれらについては、本来、学校の日常的な取組や、設置者の各担当部局等において適宜検証すべきものと考える。
    •  このため、現実的には、1について基準適合のための学校や教育委員会の体制等が妥当かどうかを検証する監査的な要素(インスペクション)も盛り込みつつ、23の各学校の目標の設定・達成に向けた取組状況など学校運営全般の在り方について評価し、その結果を踏まえて、今後の学校運営の改善につなげるための課題点等を提示することを基本とすべきものと考える。
  •  また、第三者評価を通じて、
    • 1 全国的に波及させることが望ましい優れた取組を広く紹介し、
    • 2 課題の多い学校については、人事権者や設置者による改善支援を促す、
    などの役割を果たすことが期待される。
  •  実際に評価するにあたっては、
    • 1 定量的評価がどこまで可能か、あるいは、どこまで重視すべきか。
       少なくとも、学力調査の結果や学校の現状で単純にランク付けを行うことは適当ではない。しかし、置かれた条件が異なる学校を、どのようなものさしで図るのか。
    • 2 定性的評価による場合、評価者の経験・知見などの質に左右されることとなるのではないか。
    • 3 学校側が外部にアピールしたい特色や、専門家による評価を求めている部分を適切に把握し、評価することが、その学校の取組水準を測る上でも重要ではないか。
    • 4 第三者評価を行う際に、改善のための方向性だけではなく具体的な方策等も提示すべきかどうか。
    • 5 評価結果について、設置者等との間に考え方の乖離がある場合に、だれがどのようにして調整すべきか。
    • 6 評価結果を設置者等が受け止め、指導主事等が実際の学校の指導にあたるという流れが円滑に流れるようにするためには、どのようなシステム構築や関係者の研修等が必要か。
    などの課題について検討することが必要である。
  •  また、第三者評価の評価機関等となる実施主体についても、そもそもだれが実施するのが適当かどうかの検討が必要であるが、その際、
    • 1 評価の主体となる者が、もともと学校に対して有する権限等との関係で、公正中立な評価が可能かどうか。
    • 2 評価の信頼性・客観性を担保するため、高い独立性を保つ仕組みが必要ではないか。
    • 3 国・都道府県・市区町村は、それぞれ第三者評価のシステム全体においてどのような位置付けとすべきか。特に、教育委員会が実施している評価や指導主事訪問等との関係をどう整理すべきか。
    • 4 システムの構築・維持に要する膨大なコストをだれが負担するのか。特に、上記3と関連した役割分担なども考慮すべきかどうか。
    • 5 だれが最終的に学校運営の改善に責任をもつのか。
    等を勘案し、大学や研究機関の活用の在り方も含めて教育行政制度全体を見通した慎重な設計が求められる。
  •  第三者評価の在り方については、平成18年9月より平成19年1月にかけて、国において試行事業を全国124校を対象に実施したところであり、引き続き平成19年度においても実施することにより、第三者評価の評価手法等に関する検討を進めているところである。また、教育再生会議においても議論が行われているところである。これらの状況を踏まえながら、学校の第三者評価が日本の風土になじみつつ活きる在り方について、引き続き更に検討を深めることが必要である。
  •  なお、公立の義務教育諸学校においては、設置者あるいは人事権者である教育委員会が、評価のための委員会を構成するなどにより、学校の評価等が行われている例があり、また多くの教育委員会においては学校への指導主事訪問による教科等の指導が行われている。
     これらと文部科学省が実施している第三者評価の試行との関係の在り方については、更に検討を深める必要があるが、基本的には国による第三者評価の試行は、限られた人員と時間的制約の中で、学校の課題点や良さを見いだし報告することに力点を置くべきであり、そこに示された課題等について実地に時間をかけて具体的な支援・改善に取り組むのは、本来的に当該学校の設置者や人事権者が指導主事訪問等を通じて果たすべき役割ではないか、と考える。
     なお、第三者評価が本格的に実施される際の改善のためのシステムの在り方については、別途検討を要すると考える。