平成19年10月30日(火曜日)10時〜12時
東京商工会議所 特別会議室A
天笠委員、小松委員、青木委員、今村委員、岡田委員、金子委員、川名委員、木岡委員、久保田委員、長尾委員、檜山委員、松尾委員、山口委員
藤野教育水準向上PTリーダー、岸本学校評価室長 他
【委員】
学校教育法第42条の「文部科学大臣の定め」は施行規則を指すのか、それともガイドラインを指すのか。
【事務局・発表者】
「文部科学大臣の定め」は施行規則の規定を指す。国会では、自己評価・学校関係者評価の大枠は必要であるが、具体的な評価項目や取組については、可能な限り学校の創意工夫を尊重すべきとの議論があった。ただ、それだけでは無責任なので、目安としての学校評価ガイドラインを昨年3月に策定しているが、今回の法令改正を踏まえ、ガイドラインについても有識者の議論を踏まえて改訂して参考としてお示ししたい。
【委員】
ガイドライン冒頭の部分について、組織的な評価ということを明確にする文言が必要。また、目標を重点化し、総花的な目標の設定を避けるとの記述が削除されているが、それによって、目標の重点化を促す趣旨が拡散しているのではないか。
【委員】
学校評価は、評価そのものが目的ではなく、何らか課題があるから行うものである。昨年度の第三者評価試行事業の結果、課題がある学校がたった2校のみというのは自己満足に過ぎないのではないか。評価を通じて、学校にはどんな課題があるのかについて突っ込んだ内容を知りたい。
【委員】
評価項目・指標については、多くのものの中から参考にするために総花的に提示してほしい。これまで学校評価はマネジメントの評価が薄かったが、指標がないためにその部分に着手できなかったのではないか。総花的なものの中から事項の問題点を見つけ、そこから重点化することで評価を改善に結びつけることができるのではないか。
【委員】
学校に課題が山積する中、学校には、、どの程度重点化しようという意識があるのか。
【委員】
校長の作成する学校経営方針には、各年度ごとに重点目標を掲げてそれを徹底させ、全校で取り組んでいるが、自己評価の評価項目等とはあまりリンクしていない。これまでの学校の自己評価とは、非常に網羅的な、一つ一つの教育活動すべてを対象とするものだったが、今後、これを精査するなら、学校の経営方針に基づく重点目標を達成するための評価項目、改善プランという形になるのが望ましい。
【委員】
学校の目標としては、総花的な中期目標があり、その中から各年度の課題が見えてくるのではないか。そして、各年度の課題を見つける目安となるのが評価指標ではないかと考える。また、今後、保護者や地域住民の意見を学校改善に活かしていくという方向付けが必要となると考える。
【委員】
これ以上、文部科学省が細かい事項を示す必要はない。細かく示すほど、本来、学校が取り組むべき問題が分からなくなってしまう。文部科学省がやるべきことは、好事例と、その結果、どのような変化が起こったかという事例の提示である。モチベーションがないと人は動かない。評価のモチベーションにはいくつか類型があり、一つは本当にシリアスな課題への対応、一つは学校に権限委譲した場合にどんなことが起こるかのチェック、一つは新しい取組をしたときにどのような変化があるのかの評価である。それ以外の場合は、もはや毎年、評価を行う必要はないので、学校や教育委員会ごとに考えればよいのではないか。
【委員】
提示された資料だと、取組と指標の間に段差を感じる。学校評価にあたって、プロセスとか経過を評価するという視点が抜け落ちないようにすべき。評価を重視するだけでなく、どのような取組をしたかも大事であり、保護者等も、そのことを聞きたいと考えている。マネジメントの観点からも、プロセスの評価について触れてほしい。また、ガイドラインは、学校の自主性を奪ってしまうものであってはならない。
【委員】
学校が全方位型のチェックをするのは当然だが、ガイドラインの例示があまりに細かいと、学校がマニュアル依存になる。また、ガイドラインの適用対象として新たに高等学校が挙げられているが、高校には様々な形態があるので、学習指導要領の書きぶりも踏まえつつ、記述があまり総花的にならないようにしていただきたい。
【委員】
学校評価の最終的な目標は、学校経営の中に、保護者や学校関係者を巻き込んで学校の質を向上させることである。各学校がコミュニケーションツールとして学校評価を利用し、その結果を公表することで教育の質を向上させるには、やはり毎年実施することが必要である。ただ、ガイドラインどおりに評価しているからそれでよいという事なかれ主義にならないよう、各学校が創意工夫することが必要である。
【委員】
ガイドラインで大事なのは、「改善」「関係づくり」「質の維持」という3つの目標を明示した点。これらをどのように共有するかが大事であり、学校評価の方法や手続については各地域のやり方に委ねればよい。
【委員】
教育委員会関係者の中には、今回の第1次報告を受け、学校関係者評価と第三者評価の両方を行わなければならないと考える向きもあるが、この辺はすこし整理して、学校関係者評価をしっかりと実施することが大事であると明記することが大事ではないか。
【委員】
機会の二重化というよりも、学校関係者と第三者が同じ場面で協議しながら学校の自己評価の在り方を検討する機会、学校関係者評価の中に第三者も入れたような組織化が進展することが大事ではないか。
【委員】
保護者や地域住民が学校に対し、学校改善につながる中身のある評価ができるか、「クリティカル・フレンド」として機能できるかは非常に難しい。評価能力の問題は、経験を積めば改善の余地はあるが、いわゆる「人質論」からの脱皮という点では、この学校関係者評価が一番機能しにくいと思う。また、現場の実感としても、学校関係者評価から挙がってくるのは個別の活動に対する批判に留まっており、学校としてなるほどと思うような意見はなかなか見られないとのこと。よほど丁寧な整理が必要である。
【委員】
品川区の校区外部評価では、必ず学校に関する専門家が委員長として位置づけられている。だからこそ、様々な意見に対し、校長の考えを受けた冷静な説明ができるし、保護者らの評価能力も向上し、建設的な意見が出るようになっていると感じる。ただ、そのような専門家をすべての学校に確保するのは非常に難しいので、接続する学校の職員を評価委員にすることが有効であると考える。この点に関しては表現が後退しているが、関係者の中に専門的な視点を持った人を位置づけるような文言にした方がよい。
【委員】
広島市では5年前にガイドラインを作成し、その中で、自己評価、外部評価、第三者評価を行うことを明記しており、現在は第三者評価の仕組み作りに一生懸命取り組んでいるところ。その過程で、自己評価が最も大事であること、そして、外部評価には、自己評価の結果を地域に届けるという責任があることが分かってきた。広島市の外部評価委員の研修は、学校に対しては辛口、地域に対しては学校の味方をめざし、質の向上を図ってきた。現在、広島市では、第三者評価ではなく、専門評価の試行を行っている。これは、本当に専門性を要する評価が必要な学校はそう多くないことから、教育委員会の外に組織を作り、「自ら課題設定をし、専門評価を求める学校」及び「外からの支援が必要と認められる学校」を訪問し、学校のみならず教育委員会に対しても提言する、という取組である。この取組にはお金もかかるし、専門家も多くはいないので、年3〜4校程度の実施だが、それでよいのではないかと感じている。
【委員】
学校関係者評価については努力義務規定なので、若干の時間的余裕があると考えるが、はじめに専門家を入れる入れないの議論をするのではなく、保護者や地域の実情に応じて学校関係者評価の構成員は決められるべき。何らかの形で定義しながら評価を進めるとの提案だが、それでは非常に一律的なものになり、保護者にストレスをためるのではないかと思う。何度も評価する、されることに徒労感を感じる教職員もいるが、教育の専門家でない方が、かえっていい指摘ができることもあるので、制度設計は急がず、柔軟に考えてはどうかと思う。
【委員】
学校関係者評価は、自己評価の信頼度を高める上でも、学校の課題を保護者らと共有する上でも重要。また、学校運営の改善を図る上で、公表を進めることが大切であると考えている。
【委員】
学校関係者評価の果たすべき機能のうち、自己評価結果の評価は強調すべき。情報が限られた中で、自己評価結果は重要な情報源である。また、学校関係者評価のメンバーとして、地元企業や警察・消防等も書いた方がよい。また、評価の庶務を誰が行うかといったことについても触れてはどうか。
【委員】
学校関係者として地域住民を明記すると、どこまでが「地域住民」かが不明確になり、通学区域の広い私学や高校における取扱いに不都合を生じないか。
【委員】
教育熱心過ぎる親や放任の親など保護者のレベルが低い中で、子どもも夢を持っていない、自主性に欠ける実態がある。学校側もそれを認識して、PTAと協力して、いかに子供たちに夢を持たせて自主性をもつかということを保護者と共に考えて欲しい。
【委員】
多くの学校を訪問して言われるのが保護者からのクレーム対応が大変だということ。色々取り組んだ結果、自己評価を年に一度やるのではなく、毎月の振り返りと保護者向けの学校だよりの発行により、それも、精神論ではなくデータに基づく具体的なメッセージを発信することにより、大分クレームが軽減された。常日頃からの振り返りと発信が大事。また、学校評価を行う上で、それを踏まえた教育委員会による支援を考える必要がある。
【委員】
学校の地域性等により、学校関係者評価の評価者の確保に苦労が多い。教育委員会で人材バンクのようなものを作り、学校を支援するようにできないか。また、評価者の評価能力を高める研修も行政レベルで年に数回は行って欲しいというのが学校の強い願い。
【委員】
第三者評価にかかわって思うのは、未履修の問題や例えば週案を作成しているかどうかなど、ある自治体の常識は他の自治体の常識とは違うということ。最終的な質の保証・向上を誰が担うのか、そこに国・都道府県・設置者の市区町村はどう関わるのか整理が必要。日本の中で地域によって義務教育にばらつきがあってもよいとするのかどうか、また、学習指導要領がある中で学校評価はどうあるべきかなどについて、議論が必要。
【委員】
地域独自の第三者評価等でも同じような問題が浮かび上がっており、法に抵触するような問題がこれまで慣例・慣行として指摘されないまま続いてきた経緯がある。それらまで踏み込むのかどうかも非常に微妙な問題。
【委員】
国の第三者評価施行においては、評価者をどのように養成しているのか。
【事務局・発表者】
評価者は各都道府県・政令市教育委員会より県内の有識者の方をご推薦いただき確保している。これにより現在は一定の基準を保てていると考えるが、例えば全国すべての学校を対象にということになると、当然、評価者の質・量の確保は大きな問題。第三者評価のあり方については、今後この会議で議論することが必要。
【委員】
国の第三者評価試行事業は、評価者のトレーニングのための機会でもある。これを通して、かかわった関係者が、評価に関する知見・具体的な手法を身につけていく場としてもとらえることができる。また、その経験者が、地域のリーダーになったり、評価に関するのアドバイザーになるという形が期待される。第三者評価についても、しっかりと裏づけしたものも必要になるのではないか。
【委員】
国が質の向上に最終的に一番責任があると考えるが、その在り方について今後整理や論が必要。
【委員】
前回の全国学力調査の結果では、経済格差と学力指標との相関や、地域の保護者の持つ問題なども相当浮かび上がったり、子供の基本的な生活習慣と学力との関連性が出てきていたりする。その中で、学校評価の枠組にどう位置づけるべきか、学力指標を抜きにした学校評価の持つ意味がどこにあるのか、他省庁との連携も含めて取り組みが必要。
【委員】
一番大事なのは、大人が審議会に出て満足していることではなく、子どもたちが満足する世の中をつくること。子供に視点に置いたものをつくることを絶対忘れてはいけない。
【事務局・発表者】
平成17年10月の中教審答申で、国が責任を持つアウトカムの代表的な例として、全国学力調査の実施、学校評価制度の確立がある。学力調査や学校評価は、制度としては別個のものでありそれぞれの目的を持って行われているが、将来像については、ご指摘のな課題や、教育再生会議における議論などを踏まえながら今後検討が必要。その過程で、特に第三者評価制度のあり方についてこの会議での議論が必要。
【委員】
ソフト面も大事だが、同時に、日本の国民総生産の公的支出の割合はOECD内でも非常に低い中で、学力調査の実施や第三者評価の研修費用等に相当な支出があると考える。費用の問題も考えることが必要。
【委員】
ガイドラインは学校に大きな影響を与えるので、評価項目の絞り込みは継続的に図る必要がある。また、学校評価結果とその改善策が学校には期待されている。評価結果と改善策、さらに改善策が翌年度にどう評価されるのかという情報のリンクは、まさに情報収集の対象になり、設置者や設置者をメタ評価する立場にある国の役割の一つだと思う。
なお、その資料がないと評価活動に重要な支障を来すという問題がある場合や、教育活動そのものに支障があるという場合については、やはりそれをそろえておいたほうがいい旨をガイドラインに書き込む必要がある。
【委員】
自己評価・学校関係者評価の進め方をフローチャートで示すことは、これから取り組む学校や手順を考えている学校にとって非常に参考になる。
【委員】
学校評価ガイドラインの中で、教育委員会の役割について規定すべき。
(初等中等教育局学校評価室)