平成19年10月3日(水曜日)13時〜15時
東京国際フォーラム G502会議室
天笠委員、小松委員、青木委員、今村委員、久保田委員、千々布委員、長尾委員、中西委員、檜山委員、松尾委員
布村大臣官房審議官(初等中等教育局担当)、藤野教育水準向上PTリーダー、岸本学校評価室長 他
【委員】
現在の議論の進行状況はどの程度か。
【事務局・発表者】
幼稚園におけるガイドラインを作成するにあたり、どんな課題があるかについてフリートーキングをしている状態である。
【委員】
幼稚園の学校評価の議論に参加して感じたのは、学校段階が下がるに従って、評価の関心がマネジメントから教育内容に移るということ。幼稚園の教員は、教員評価により強い関心を持っているという印象を受けた。
【委員】
今後、少子化の中で個をどう見るかが学校評価にとって大事になっていくが、幼稚園の評価においては、過疎地の学校における評価と同様、園を組織として見るというより、一人一人の園児を見る観点が強く出ている。
【委員】
幼稚園については比較的小規模であるため、一人一人の教育行為が際立ち、それに対する評価に関心が集まるということがあるのではないか。その評価を、どのように保護者の参加を求めながら組み立てていくかというあたりに注目したい。
【事務局・発表者】
幼稚園の保護者と話をすると、子どもの教育に非常に関心の高い方が多い。幼稚園が学校評価を通じて情報を発信すれば、より園に関わりやすくなるという意見もある。
【委員】
施設評価に関する検討委員会において、学校評価全体の中における学校施設の評価はどのように位置づけられているのか。
【事務局・発表者】
学校施設の評価は、施設の総合的な状況を評価するものであるから、網羅的な項目が並ぶことを想定している。一方、学校評価は、重点的な目標を設定して行うものなので、学校施設のうちでも特に重要なものが扱われるというような議論があった。
【委員】
学校施設を維持、運営し、新設する責任主体が誰なのか、見ていて非常に曖昧である。
【事務局・発表者】
全ての自治体において同じように行われているわけではないが、日常の点検は学校が中心となって行っているので、関係者間のコミュニケーションがよくないと、全体の業務は最適化しないという問題意識を持っている。
【委員】
施設の問題は最後は予算の問題。教育委員会自体に大きな予算権限がない以上、評価が単なる評価に終わるのではないかという懸念がある。
【事務局・発表者】
評価してもその後の改善につながらないと意味がないので、その在り方についても検討することを考えている。
【委員】
施設面だけの評価だと耐震化やバリアフリーの話になりがちだが、いちばん大事なのは教育効果という観点だと思う。我が国でも、そのような観点で施設の評価を行うのか。
【事務局・発表者】
物的、客観的な評価もあれば主観的な評価もあるということで議論を進めている。
【委員】
OECDのいう教育効果の評価には、客観的な評価基準があると思う。そこに、教育課程もあって、私立学校はそういうものにあわせて学校を作っていくことになるが、学校独自の多様性、フレキシビリティにも対応するのなら、学校施設に教員の意見が反映されていくべきであると考える。
【委員】
教育委員会では、施設を作る場合に教員、保護者、地域の方と一緒に議論していく。また、時代ごとの教育のニーズに応える施設運営の方法も考えているが、こうした議論が学校評価の質をよくするために必要と考えている。
【委員】
学校施設の評価が学校評価と別に行われることに若干の危惧もあるが、施設の専門性を考えると、これらが別立てで行われることはよいことと考える。また、評価結果の使い方も異なってくると思う。学校施設が一様であることが批判的な文脈で語られているが、その一方、新しいタイプの学校では、建築家の思いが強すぎて学校としては使い勝手が悪いということもあるので、施設評価の取組を通じ、施設についての情報が集まり、一つの指針が出せるのではと期待している。
【委員】
学校施設の評価の主体は誰か、どれくらいの年限で考えるのか。学校が短期の経営目標を立てて評価する際には、学校施設は所与の条件であり可変ではないが、中期的な計画を立てる際は施設も可変の条件である。学校に対して、学校施設評価とは何かについてきちんと説明しないと、「学校評価システム」という用語との間で混乱を生じる。
【委員】
学校施設については、耐震化や老朽化対策は重要な課題と認識されているが、そうであるなら、学校施設の評価を行うことで耐震化率を向上させるという道筋を明らかにする作業が必要であるし、今後、学校施設の評価が、耐震化や老朽化に対応する手段としてどのような位置づけであるかが明らかにされることを期待している。
【委員】
実際の学校施設の評価の視点としては、安全面に偏ったところがあるので、施設をどのように利用して教育効果に結びつけているかなど、有効活用に係る指標の開発が必要だと思う。
【委員】
これまで各委員から出された論点については、会議において概ねすでに議論している。予算の問題は重要であるし、学校の教育活動に当たっての施設の有用性やマイナス面の評価についても議論している。その上で、学校施設独自の論点についても議論しており、例えば、施設整備の問題と維持管理・活用・運用の問題とは切り分けて丁寧に議論している。
【委員】
省令の適用範囲に幼稚園と高校が含まれるなら、高等学校もガイドラインの適用対象として議論する必要がある。
【委員】
高等学校もガイドラインの適用対象として検討することが必要かと思うが、そうなると、高等学校のことに詳しい方に委員として加わっていただくことについて検討することも必要と考える。
【委員】
学校教育目標と経営目標とが脈絡なく作られているように見えるのが、学校における目標設定の仕方の問題だが、例えばマネジメント研修を実施しても、校長が作成する学校経営プランは、従来の学校経営方針とあまり変わらないのが実情。校長が理念的に学校の教育目標を作ろうとすると、どうしても網羅的になり、学校評価には使えないものになると思う。むしろ、広島市のように、自分たちが重点を置く事項に絞って具体的な目標を立てる方が学校評価、ひいては学校改善には適する。
【委員】
現場においては、経営目標との関係を押さえた上で教育目標が設定されているのか。
【委員】
学校教育目標も踏まえて学校経営目標を設定するのが筋道であるが、教育目標も経営目標も、抽象的で無難な言葉を使っているのがほとんど。そういう目標であれば、学校評価には役立たない、意味がないものだと思う。
【委員】
4年間、都立高校の学校経営診断に関わったが、高等学校が多様化していることを踏まえると、高等学校は義務教育諸学校と違わなければならないと感じた。幼稚園のように、園ごとに教育理念や方法が違う場合や、高等学校のように入学する生徒の層が違う場合、教育目標や経営目標が各校ごとに異なって当然であり、そのことを踏まえた自己評価のための目標設定が必要だ。一方で、学校選択制を取り入れている地域のことを意識しないといけないが、義務教育諸学校においては、あまり教育目標に差があってはおかしいということになる。
【委員】
公教育の中・長期的な目標としての知・徳・体を押さえることを、単年度の評価に結びつけるのは短絡的である。段階を踏まえ、教育目標や経営方針や教育内容を評価するというやり方でよいと思う。
【委員】
公立義務教育諸学校には、都道府県・設置者の教育目標を網羅せねばならないという思いが強くある。示された目標をどの段階の目標で重点化するかは学校等によって様々だと思う。議論があったように、学校教育目標は漠然としたスローガン的なものが多く、毎年見直すものではないが、マネジメント研修などを通じ、年度ごとの具体的な目標を重点化することについては徐々に理解が広がっていると思う。
【委員】
目標の設定の仕方は学校によって多様だが、現在は羅列的に提示するのが主流であり、受け止める側にはわかりづらいものになっているので、学校としてどのように説明していくかが問われてくると考える。その際、目標の設定の仕方がどのような仕組みで成り立っているかについて説明できるような整理の仕方がポイントとなると考える。
【委員】
学校評価の議論に県教委を巻き込むには、高等学校を含めて考える必要がある。また、教育目標と経営目標の区別としては、前者が児童生徒に対する教育活動の成果を問題にするのに対し、後者は学校や教職員がどのような取組をしたかを問題にするものであると考える。このため、教育目標と学校の取組の間の因果関係の成立を評価するのが学校評価の基本的な内容になるが、ここを区別することでわかりやすく説明ができると思う。
【委員】
学校関係者評価に学校評議員や学校運営協議会を活用するとの提言がある。学校評議員は広がりを見せているが、期待される役割を果たしているかについてもご議論いただきたい。
【委員】
例えば学校運営協議会は会議を毎月開催しているが、本来の仕事で手一杯で、学校関係者評価までここで担うのは厳しい。とはいえ、毎月学校で議論しているし、関係者も含むので、学校関係者評価の母体にはなりやすいと思う。一方、評議員については、評議員会への飛躍が難しい。組織化については数年先を見据え、当面できることを機能させていくという書き方が現実的ではないか。
【委員】
このガイドラインに欠けているのは、地域や保護者に対するサポートの視点であり、そのあたりについての議論も必要である。
【委員】
すでに学校評議員が組織されている地域でも、別途、外部評価委員会を組織する義務が生じるととらえられている。また、そうして組織した評価委員会も、大部分のメンバーが評議員会と重複するので、両方の会議の目的が混線するという話も聞く。現場では学校評議員の人選にあたって地域性などに配慮している等の事情を考慮すると、新たに外部評価のための人材を確保するのは困難な学校が多いのではないか。現時点で学校が確保している外部リソースで学校評価を行うやり方もよいと伝える方が有益だと考える。
【事務局・発表者】
岸本室長より、学校評議員制度について説明
【委員】
学校関係者評価をきちんと位置づけることで、教育の質を高め、学校評価の本質に迫ることができると考えている。
【委員】
中間報告で用語の整理をした際、「学校関係者評価(外部評価)」としたのだから、これを押し出していかないとまた混乱を招くのではないか。それから、日本の学校の教育目標は抽象的な言葉が先に立つが、例えばイギリスで目標を設定する場合、どういう表現が使われているのか。
【委員】
日本よりもはるかに評価しやすい形で目標が設定されていると思う。評価にあたっては、アカウンタブルな目標を立てることが重要であると思うが、日本では「アカウンタブル」が説明責任と訳され、説明する言葉があればよいということになっているところにイギリスとの違いがある。
【委員】
ガイドライン見直しのスケジュール、段取りはどうなっているか。
【事務局・発表者】
12月までに学校教育法が施行され、省令も同時に施行されることになっているため、できれば12月までの段階で第1次報告及び省令等を踏まえた新しいガイドラインをお示しできればと思う。
【委員】
ガイドラインには、評価項目が一通り網羅され、その中からオーダーメードで自校の状況や当該年度の目標にふさわしいものを選択するというイメージがよいと思う。そうなると、評価項目等もいっぱい書かれていてもいいかと思う。
【事務局・発表者】
ガイドラインの巻末に掲げた評価項目・指標というのは参考として適宜活用してほしいとの趣旨であるが、このように掲げることによって、これを全部やらなければならないと学校が受け止めている現実がある。また、自己評価の項目設定については、網羅的な項目をどう設定するか、重点的な項目をどう設定するか、両者の関係はどうかといったことについて、ガイドラインでどのように設定するかということについても議論が必要であると考える。
(初等中等教育局学校評価室)