資料3 言語力育成のための教育内容の改善について(これまでの主な意見の例)(素案)についての委員からの追加意見

秋田委員

<資料2>

 思考・論理、感性・情緒、対話という区分が妥当かを考える必要がある。
 感性や情緒から生まれる思考もあるので最初この区分であるなら、最初の部分に思考・論理、感性・情緒は統合的に培っていく必要があること、国語だけではなく全教科がそれぞれの教科の狙いに即しながら培っていくことが必要だということを述べる必要がある。

1. 基本的課題について

  • 言語に関する豊かな環境についてもう少し詳しく述べる必要がある。
     この文章のままでは、言語を交わす機会を増やすこと、言語で伝える内容を豊かにすることの必要性しか環境について論じられていない。
     異なる考えや感じ方をもつ他者との対話の機会が与えられること、そして聴きあう応答的関係が成立すること、豊かな語彙や文章、またそのメデイアとなる辞書や書物等にふれること、日本語の文化的伝統の中で形成されてきた言語文化に触れる機会をもつこと、日本語を対象として捉える機会が与えられること、ハイパーテキストをはじめとする多様なテキストにふれる機会が与えられることなども環境の中にはふれられるのではないか、言語力育成のための物理的、対人的、社会文化的環境について基本的な考え方を書き込むことが必要であると考えられる。
  • 言語を「学習を行うための手段である」と表現するのではなく、「学習を行うための一つの手段」とすることが、言葉だけではなく五感を通した学習も重要であるというニュアンスを伝えるのではないかと考えられる。
  • 言語力について、「国語科を中核としつつ、各教科等での言語の運用を通じて種々の能力を育成するための道筋を明確にしていく」ことが課題とされているが、国語科だけではなく、外国語、英語科も中核とすることが必要であるだろう。
  • 「発達段階に応じて」とあるが、「「段階」に応じる」のではなく、「児童生徒の発達の実態と経験に応じて」ではないか。国際化が進む中で日本にもすこしづつ多文化状況が起こってきている。いわゆる段階を規程してその段階に応じるというよりも言語力については個人差も大きいことから生徒の実態や先行経験に応じつつ、教育内容・方法を考えることも必要ではないか。

2. 思考・論理について

 論理・思考については、国語科だけではなく、理科や社会科等のテキストを正確に読んで根拠や資料をもとに論じることや議論等を通して培うことも重要である。
 説明文だけではなく、解説文、記録文、報告文、論文などを書くことも思考・論理を培う上で重要である。

3. 感性・情緒

 美しい言葉の表現や多様な言い回しの差異にきづくことが言葉への感性を高める。
 さまざまな言葉や文章を見分ける、聞き分ける、読み分けることが感性を培うことにもなる。文章の内容から生じる感情や感性だけではなく、表現・修辞から生じる感性や情緒にも目をむけさせたい。
 また感性・情緒は国語だけではなく、音楽や図工等において表現を通しても育てていくものである。
 対象にふれて感じ取る力はすべての教科において培われるものであり、それを言葉で表現する力を国語科を中心にして育てるという立場ではないだろうか。

4. 対話に関すること

 対話の力は、学級での日頃からの聞きあう応答的な関係の中で培うものであるという関係論的視点をいれることが必要ではないか。コミュニケーションの充実とは発言量の活発さではなく、考えを相互にとりいれ深め合っていく発言の質の充実であり、多様な生徒が参加し発言できる教室コミュニケーションをめざし教師が教育方法を工夫していくことが必要である。これまでの一斉指導型コミュニケーションだけではなく、ペアや小グループ活動、また教室の中だけではなくさまざまな他者とのコミュニケーションの機会を設けることも対話の育成には重要である。

5. 留意点や教材

 さまざまな辞書や本、新聞等の取り扱い、図書館での本の選び方や活用の仕方など、児童生徒が社会人として豊かな言語生活を行うのに必要な言語的道具や場の利用法も体系的に指導していくことが必要である。

6. 体験と言語、言語体験

 読書は国語科を入り口とするが、さまざまな教科の中でも本が活用されていくことが必要であり、継続的な指導によって成果を挙げることができる。朝の読書をはじめ6年、3年といった継続的にとりくむことで養われる。

7. 発達段階を踏まえた改善

 低学年において話すことと同時に聴くことの指導が、対話の基礎として重要である。

8. 各教科等における改善では、小学校のことが重点に書かれているが、言語力の点では中高校で国語以外の教科で論理的に考えて表現していく力や対話する力をすべての生徒につけることが学力の基盤として重要である。

 たとえば社会科でも歴史においてさまざまな資料を比べて読むこと、政治においてさまざまな立場の人が書いた文章を読んで議論しながらその仕組みの長短を知ることなど、歴史的推理、社会的推理を培うテキストとそれにもとづくコミュニケーションの中で教科がもとめる思考力と共に言葉の力を培うことができる。

<資料3>

横軸について

<国語・外国語>(言語を対象とする教科群)、<算数・数学、理科、社会>(教科リテラシーの習得が必要となる教科群)、<音楽・図工・体育>(言語とは異なる表現技能の習得が必要となる教科群)、<家庭科・技術、生活、総合的な学習、道徳、特別活動> (市民生活を営む上での課題解決能力を育てる教科群)等によって、並び順や教科の中での言語力のいちづけが異なるのではないか。

大津委員

<資料2>

 以下の下線部については、児童生徒の発達段階や実態等を踏まえ、さらに検討いただきたい。

8. 各教科等における改善の考え方

  • 小学校の英語教育は、幅広い言語力の向上につながる。無自覚で使っている言葉を英語では言語として自覚できる。人にものを伝える難しさを知ることもできる。
  • 小学校の英語活動では、身振り手振りを含めて、知識を総動員することが大切

松本委員

言語力育成のための指導について

1.定義

  • (1)コミュニケーション
     2名以上の人間が、言語・準言語・非言語を媒体として少なくとも1名が意識的にあるいは無意識のうちになんらかの働きかけをしているか、あるいは他の人から影響を受けている状況。
    注)intra-personal communicationは含んでいない。
  • (2)コミュニケーション行為
     言語・準言語・非言語によるメッセージの交換を通して互いに意味を創出しようとする関わり合いのことであり、社会との結びつきを意識し、創出し、保持するための動作・思考でもある。
  • (3)言語力
     情報に関する知識と経験、論理的思考、情緒などを基盤として、他者とコミュニケーションを行うために言語を運用する(考える、聞く、話す、読む、書く)のに必要な個人に内在する能力を意味する。

2.指導上の留意点

  • (1)明確な目標設定
     どのような知識(knowledge)をもったうえで、どのような姿勢(attitudes)で、具体的にはどのような言動(behaviors)をとれるようになるのかを各年次に設定する。
  • (2)活動中心に
     教師の説明主体ではなく、生徒が言葉や基礎的な事項を習得するためのactivityから、現実場面を踏まえたtaskへ発展し、最終的にはさらに拡張したproject(しばしば現実的な場面を想定)を行うといった段階的な指導ができるグループ活動中心のシラバスを作成する。
  • (3)第5の技能(考える)+4技能
     「生徒自身が考える」ことを重視したうえで、4技能を「考える」という第5の技能で有機的に結びつけた活動を用意する。
  • (4)「仮説検証」「シミュレーション」を重視
     暫定的な立場をとったうえで考え、議論する指導を重視する。(調べ・分析するプロセスを重視せずに、「自分の意見」を言わせることを強いると「直感」で答えることを奨励することになりかねないので注意する)ディベートのように暫定的な立場をとったうえで、議論することを重視する。
  • (5)正解がひとつとは限らない問を重視
     とくに小学校5年生以上に対しては、正解がひとつしかない発問は少なくし、必ずしも正解がひとつとは限らない、あるいはどれが正解とは決着がなかなかつかないような発問を重視する。
  • (6)重視する能力
     論理的思考(logical thinking)、批判的思考(critical thinking)、論証(argumentation)、調査(research)、共感(empathy)、即答(quick response)に関連する能力を重視する。
    *  「批判的思考」とは、読んだり、聞いたりした考えを鵜のみにせずに、整理・検証しながら理解しようとするプロセス。
    *  「共感」とは、単なる同情(sympathy)とは違い、相手の気持ちを言語化することを手伝い、受け入れ、提案などのフィードバックを行うこと。
  • (7)評価の多様化
     とくに高校における評価は現在でも定期試験に依拠している部分が大きい。学習のプロセスを重視するようにすべきである。筆記試験だけでなく実際のコミュニケーション場面において言動として表出する部分を重要な評価対象とする。他の生徒との関わり合いも重要な評価対象とする。筆記試験については、授業でやったことを丸覚えしておけば高得点を取れる問題は作成しないようにする。

3.その他

  • (1)学習指導要領
    (a)  国語や英語の教科書では、教科書の核となる単元とコミュニケーション活動(スピーチ、ディベート、ディスカッションなど)を学習する課がまったく別々に存在し、連動していないケースが多い。本文と活動を結びつけ、活動をするために本文を何度も読む必要性があるように双方を融合した教科書が編纂されるように、コミュニケーション活動の取扱について明記する。
    (b)  国語で行うコミュニケーション活動と、他教科で行う活動が連動するようにする。(国語での活動を先行させる)
  • (2)教員研修の充実
     現在、英語教員に対して行っている各県での悉皆研修をすべての科目に拡大する。指導および評価の仕方についての研修を行う。
  • (3)研究体制の充実
     現在、文科省および文化庁などが行っている「言葉」「コミュニケーション」関連の研究および体験推進事業の予算を拡大し、現場での研究や指導の充実を図る。
  • (4)入試問題の改善
     高校入試、大学入試にPISA型の問題を積極的に取り入れるように作問担当者への指導を徹底する。悪問を出し続ける高校・大学への警告を、マスコミを通して公表する。

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