言語力育成協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成18年7月28日(金曜日) 10時~12時

2.場所

フロラシオン青山 「はごろも」

3.議題

  1. 児童生徒の発達段階に応じた各教科等を横断した言語力の育成について

4.出席者

委員

 梶田座長,秋田委員,岩田委員,甲斐委員,角屋委員,直山委員,西原委員,松本委員

文部科学省

 常盤教育課程課長,田中主任視学官,井上視学官,合田教育課程企画室長,石塚学校教育官

5.議事要旨

(1)事務局より配付資料の確認,説明等が行われた。

(2)学習指導要領の国語やその他の教科等の改善事項について,論点案に掲げられた視点に基づき,資料2を中心として,質問及び意見が出された。主な意見等については以下のとおり。

委員
 国語科を含め,各教科等を通じて,描写・要約・紹介などの言語活動を行う力を身に付けることは大切であり,国語科はこれを踏まえて一層目的化していくことが考えられる。

委員
 言葉によって構造化された認識世界を土台にして生きていることを踏まえ,言葉はあらゆる学習の対象や手段であるばかりでなく,生きていく土台として,言葉により整理され,準備されることが重要である。

委員
 社会科において,問題・仮説・検証で身に付けた概念や資料を活用して,未来予測にかかわる授業展開を行うことによって,対話能力の育成につながるのではないか。

委員
 言語活動を考える場合,意味付け,発信(描写・紹介・説明),受信(認識・理解),新たな意味付けの下での発信という循環や相互作用の能力として分けて考えることが有効である。

委員
 (資料3について)言語活動を個人と集団との関係で分け,個人内においては個人の認識に関係するもの(理解,解釈,熟考・評価,論述),集団との関係においては対話やコミュニケーションに関係するもの(対話,討論)という大きな2軸に分けて簡潔に整理した方がよいのではないか。

委員
 (資料3について)言語力の育成に関しては,教科ごとの比重が異なるため,国語及びその他の教科という分け方ではなく,1.言語活動そのものを対象とする教科群(国語、外国語),2.教科リテラシーの習得が必要となる教科群(社会、算数・数学、理科),3.言語とは異なる表現方法の習得が必要となる教科群(音楽、図画工作、美術、体育)4.市民生活を営む上での課題解決能力を育てる教科群(生活、家庭・技術家庭、道徳特別活動、総合的な学習の時間)のように分けるべきではないか。

委員
 体育科や図画工作科など,言葉を介さずに表現したり理解したりする教科においては,言語力の育成は他の媒体としての表現力にもつながることを考慮しておく必要がある。

委員
 (資料2P.4.一番下の○について)総合的な学習の時間や特別活動,読書などを中核として,教科等における体験の体系化を図ることが求められる。

委員
 (資料2P.1の1 3つ目の○について)言葉の問題を考えるとき,個人差に配慮し,発達段階ではなく,児童生徒の実態や先行経験に応じて,教育内容・方法を考える必要がある。

委員
 対話について,教師の一方的な教育方法では対話力が育たないことを踏まえ,学級での日頃からの聞きあう応答的な関係など,学習集団としての言語力を考えていく必要がある。

委員
 教材に関して,社会科や理科では,文章や資料は収集するだけではなく,比べて読んだり,重ねて読んだりすることが重要である。

委員
 言語力は実用的・実践的な対話へのかかわりが大きいため,文法は表現や対話に役立つものであるべきである。

委員
 感情語彙は,子ども同士の遊びや多様な生活体験を通して,語彙として定着し,それを踏まえて,論理や高度の情緒語彙が身に付いてくるのではないか。

委員
 論理的な思考能力や感情・情緒を高めるため,感じてどうよかったのかを言えるようにするなど,言語化する量を増やすべきである。

委員
 対話能力を高めるためには,対話を共話ではない対話なのかどうかということを,国語科や外国語科において,教師が意識化し,使い分けて教育することが大切である。

事務局
 論理やPISA型読解力を国際的な標準とし,これに近づくことを目指していく場合,日本的な言語文化との関係をどのように考えていくべきかを議論する必要がある。

委員
 (資料2P.2の4 2つ目の○について)言葉の使い方について,日本では,婉曲な言い方を大事にし,一つの事柄を一つの言葉で割り切らないよさがある一方,直接的な議論のやりにくさがある。他方,西洋では,言語化することにより直接的な議論ができる一方,感情や情緒が抜け落ちる。言葉の使い方を改善していく場合に,大事にしていく部分とそうでない部分を考える必要がある。

委員
 (資料2P.2の4 1つ目の○について)日本で使う対話という用語は共話を含む。「自己と対話する」ということは,よい点,悪い点を自分の内心で考えてみることである。

委員
 (資料2P.2の4 2つ目の○について)「対話文化」を議論する,相手のよくない点を突き自分のよい点を主張するとするのであれば,用語としては適切ではないのではないか。

委員
 (資料2P.1の1について)今後の学校教育について,どのような価値観や理念に基づいてどう改善していきたいのかというステートメントが必要であり,その上で論を整理していくことが重要である。

委員
 情緒を考えるとき,文学作品とどう対峙するかではなく,子どもたちが会話をしながらつくり上げていくものとして考えるべきである。会話の中で,共感や知的探究のぶつかり合いを通じて,情緒も論理性も高めることができるのではないか。

委員
 言葉を使った教育として,単に書いてあるものを読むことばかりではなく,生徒や教師が言葉を使い,それを返すというダイナミックな使い方が重要である。

委員
 (資料2P.2の4 2つ目の○について)「対話文化」を別の言葉で言い表すとすれば「議論文化」という言葉がある。

委員
 教育の中では,「議論」とは相手をやり込めることではなく,相手を尊重するという発想で捉えるべきではないか。

委員
 (資料2P.2の4について)日本の文化がポジティブに見直されていることを考慮し,ヨーロッパ的な「対話」の捉えとして,相手との対話の中で相手の論拠・論理の弱さを指摘し,相手の無知の知を知らせるという考え方も重要である。

委員
 (資料1の4について)小学校の英語教育を考えたときに,技術ではなく,自分の言葉を知ることを重要な役割と考えるべきではないか。言語力育成のための基礎力を考える際,国語や小学校の英語教育の目標として,メタ認知を入れていくことも考えられる。

委員
 社会的真実を皆で探究し,合意形成をしていくために議論が必要であり,対話教育では,それにまつわる倫理性が重要であるともに,対話を振り返り,分析することが重要である。国としては,このプロセスにおいて,生徒のダイナミックなやり取りに価値を置くというステートメントを出していくべきである。

委員
 小学校の段階から,学力の低い子どもも含め全員に,議論的な力を付けていく必要がある。他方,中学校・高等学校段階では,対話することが必要であるとともに,知識だけではなくプロセスを重視した学習を行う必要がある。

委員
 言語の基礎力として,語彙と学校文法ではない言葉のきまりを考えるべきである。

委員
 様々な辞書や本,新聞等の取扱い,図書館での本の選び方や活用の仕方など,児童生徒が社会人として豊かな言語生活を行うのに必要な言語的道具や,場の利用法も体系的に指導していくことが必要である。

委員
 (資料2P.2の4 2つ目の○について)自己主張が正しいとして,相手に対し論理的説得的に発言することとするならば,「対話」ではなく別の用語の方が適切である。

委員
 (資料1の4について)言語の基礎力として,語彙・文法に加えて,様々な知識や情報が必要である。

委員
 各教科等を通じた言語力の育成を考えていく際に,教科等ではそれぞれの目的を第一義的に踏まえた上で,どの部分が言語と関係があるのかという視点で考える必要がある。

委員
 気持ちのこもった言葉をかけられることにより情緒は育つ。

委員
 物事を理解する際,同じカテゴリーの中で比較することは有効であることから,外国語教育は母語の力を高めることに資する。

委員
 小学校の英語教育を考えたときに,母語よりも負荷のある外国語を子どもたちが学ぶことにより,言葉で人とやりとりする楽しさを体験し,言葉に対する感性を育むことができる。

委員
 (資料1の1について)国語科においては,論理的思考を単純化し,判断と根拠の関係,判断と理由の関係,原因と結果の関係に分けて規定した上で,理科においては,原因と結果の関係を分担すると考えることができる。

委員
 (資料1の2について)理科においては,体験を通して五感を表現する言葉を身に付けていく必要がある。その際,比較基準を用いて表現することにより,感性や情緒を高めていくことができる。

委員
 (資料1の3について)対話の力を高めるためには,前提として,人の意見を認め,自分の考えなかったものを再発見することが重要である。理科では,予想や仮説に基づいて,それを認め,真偽の判断は実験や観察によることと考えることができる。

委員
 (資料1の5について)発達段階における留意点として,事実認識,概念認識,形式的認識という形の枠に基づき,教科がどうすべきかという整理の仕方が有効である。

委員
 (資料1の4について)現行学習指導要領社会科における人物名の記載は,日本史を考える際の核となり,日本人共通のアイデンティティ形成に貢献していることから,今後の改訂に当たり,社会科で養うべき用語を整理して学習指導要領に記述することは有効である。

委員
 表出して可聴できるもののみを言語力として捉えるべきではない。

委員
 総合的な人間であることの媒介手段が言語であるとするならば,「踊る」,「歌う」,「見る」,「聞く」はすべて言語である。

委員
 言語力には,先見的知識や手続き的知識も含むべきである。

委員
 「言語」と「言語力」の違いを定義付ける必要がある。

委員
 議論は個人の力を高めるだけではなく,議論することが行動として大事であることを理解することにより,市民あるいは社会人として重要であることを感じることができる。

委員
 言葉の力を高める教育を考える際には,音楽や美術や体育の時間にすべてを言葉で説明する教育を推進することが,学校で言葉を発することができない子どもにとって,不利に働く可能性があることを考慮しておく必要がある。

委員
 各教科等が主たる目標に向かって展開していく場合に,副次的に言語力を意識できるようにするべきである。

委員
 (資料1の2,4について)感性,情緒を高めるため,国語科では言語感覚を高めていくことが必要であり,辞典を引いたり,活用したりすることを重視し,メタ言語的に言葉を扱うことが重要である。

委員
 報告をまとめるに当たり,様々な分野の人の語彙の違いにより解釈がずれることがあるので,言語力や対話などの用語について,会議の中での定義を明確にしておく必要がある。

委員
 言語力は個人としての能力であると同時に,市民として集団でものを考えていく思考様式が重要であり,そういう両面を育てる言語力を今後考えていく必要があるのではないか。

委員
 事務局において,「言語力」の定義について,これまでの議論を踏まえたたたき台を資料2の冒頭に記述しておいていただきたい。

(3)最後に事務局から次回の日程について説明があり閉会となった。

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初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

(初等中等教育局教育課程課教育課程企画室)