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資料1

第4回専門家検討会議で示された意見

問題作成と質問紙調査に関する意見の整理(案-改2)

○ 全国的な学力調査の趣旨・ねらいについて

    教育施策の成果と課題を検証した上で、教育条件の整備などにより義務教育の水準確保につなげることが重要
    義務教育の改革の方向性と照らして考えると、インプットとアウトカムについて国が責任を持ちつつ、プロセスについては現場の裁量に委ねていくという流れの中で、アウトカムの検証という視点で国が全国的な学力調査を実施していくことは妥当
    教育課程実施状況調査は、学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているが、市区町村や学校などまでは把握できない。このことが全国的な学力調査との大きな違いであり、プロセスについて市区町村等へ裁量を拡大する方向であることを考慮すると、市区町村や学校レベルでの学力に関する達成状況を評価する仕組みを国が持つという考え方は妥当
    教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
    我が国は、テスト理論に乏しく、大規模な学力調査をやるだけの体制、財政力、長期的な視点などに欠けているため、きちんとした技術的な方法論に裏打ちされた学力調査を実施することは意義がある
    米国で学力低下論争が生じたときにデータとして使用されたのは、初等中等教育段階における学力調査の結果ではなく大学入学試験であるSATの結果であり、基礎基本的な調査では学力低下を見いだすには感度が悪いということが理由の一つであった。したがって、全国的な学力調査については、短期的な学力向上策という側面ではない意義を鮮明にしておくことが必要
    各学校が自らの学校の特徴を把握し、指導改善に生かせるようにすることが重要
    今までの学力に関する議論はデータに基づくものではなく印象論が多かったため、データをきちんととった上で、いくつかの視点から分析することにより、日本の子どもたちの学力状況を緻密に把握・分析することが重要
    全国的な学力調査の実施により、基盤的な学力に関する到達の度合いを把握し、教育委員会、学校、教員に対して改めるべきところを改めるというメッセージを示すという視点が重要である。また、あわせて地域への処方箋も組み合わせて提示できればよい

○ 全国的な学力調査の枠組みについて

    対象学年の全員が参加する学力調査を行うのであれば、教育施策の成果と課題の検証など行政的な意味合いだけでなく、各学校が自らの特徴を把握し、指導改善に生かせるなどインセンティブとなるようにすべき
    例えば、自治体レベル、学校レベルにおいて、学校評価における重要なデータの一つとして学力調査の結果を活用するということになれば、全員参加できる規模の学力調査が必要
    全員が参加できる規模での学力調査では、良い結果を得ることに特に努力が向かってしまい、必ずしも平素の学力状況を把握することができないのではないかという学力調査の実施に伴う副次的・派生的な影響が懸念されるため、変質しないデータをきちんと教育現場にフィードバックすることが重要
    学力調査を実施することにより現場が変化してしまい、平素の学力を客観的に測定できないのではないかとの懸念に関しては、指導の努力により学習効果があがる方向での変化とできの悪い子を休ませるなどの変化の2つの変化が現場において生じると予測される。後者の変化については、どのような調査を行う場合でも配慮されるべきだが、前者の変化については解釈が分かれるのではないか。教育測定の観点からは、事実を曲げてしまう望ましくない変化として捉えられるものの、学力調査自体を教育施策として見ると、これを利用した評価が存在することによって現場を良い方向に動かすという行政手法として捉えられ、むしろ歓迎すべきと解釈しうるのではないか。
    全員が参加できる規模での学力調査は、学力調査に参加する側に対して個別に調査結果を返却することが最大のメリットであり、この点を強調すべき
    全員が参加できる規模での学力調査は、基本的事項に絞った調査内容で実施することにより、つまずきを明らかにして個々の教員が指導の改善に活かすことができるようにすることが重要
    教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
    小学校・中学校の各学校段階において、本当の土台となる基盤的な部分だけに絞った内容とするとともに、今回は国語、算数・数学に絞って調査することが適切
    小学校・中学校の各学校段階において最低限必要なもの、根本的に必要な部分に絞った調査としてはどうか、それにより日本の学校教育で達成されていることを明らかにして、保護者や社会が安心できるような調査を念頭におくべき
    毎年学力調査を実施するのであれば、対象とする内容を1回で測定するのではなく何回かに分けて測定するという考え方もあるのではないか

○ 特に重点をおくべき視点について

    小学校・中学校の各学校段階において最低限必要なもの、根本的に必要な部分に絞った調査としてはどうか、それにより日本の学校教育で達成されていることを明らかにして、保護者や社会が安心できるような調査を念頭におくべき
    小学校・中学校の各学校段階において、本当の土台となる基盤的な部分だけに絞った内容とし、そのプロファイルを測るような調査内容とすべきではないか、ただし、学習指導要領では、各学校が確実に身につけさせるべき基礎基本的な内容の定着を図る、と位置づけられていることに留意が必要
    これを乗り越えないと後が続かない、各学年に均等にあるわけではないがこれを身につけておかないと後の学年の学習において影響があるといった内容、例えば、小学校算数における分数やくり上がりくり下がり、などに絞った調査とすることが適切
    学校教育において学習することは日常場面に適用できることも含めて基礎基本である。
    低位層の子どもたちに身につけさせたい基礎・基本を具体的に策定し、改善するための手法を検討することが必要
    調査内容を絞る視点としては、平均的あるいはそれ以下の子どもたちの学力の実態把握がふさわしい
    ペーパーテストにより調査することができる学力は限定されており、全国的な学力調査では調査時間の制約等からさらに限定されることを考慮すると、対象とする調査内容を相当絞り込むことが必要
    調査内容を絞り込む際には、従来の学力調査の結果から概ね大丈夫であろうという視点を除き、指導上重要である、あるいは課題があるなどの視点で考えればよいのではないか
    1回の調査で全てのことを把握するのは困難であるため、継続して行うのであれば課題のある点に重点化するなどの工夫が必要
    米国で学力低下論争が生じたときにデータとして使用されたのは、初等中等教育段階における学力調査の結果ではなく大学入学試験であるSATの結果であり、基礎基本的な調査では学力低下を見いだすには感度が悪いということが理由の一つであった。したがって、全国的な学力調査については、短期的な学力向上策という側面ではない意義を鮮明にしておくことが必要
    これまでの学校教育においては必ずしも十分に取り組みがなされてこなかったPISA調査における読解力の問題などを意図的に取り上げ、学校や地域でそのような課題へ対応する必要があることを意識させることに意義がある
    学力調査の問題を作成する場合、学力を構造的に捉えた上で多元的に把握する観点から学力の構成要素を体系化する必要があり、一般的には、内容面と児童生徒の能力面の2つの軸により整理することとなる。児童生徒の学習到達度・理解度を把握検証するとの趣旨を考慮すると、児童生徒の能力面を分析できるようにすることが問題作成にあたっての基本理念となるのではないか。
    国語については、子どもたちが獲得している知識の程度に応じて文章の内容を理解する能力が違ってくるため、内容面と能力面の2つの軸より少し複雑になるのではないか。
    学力調査の問題を作成する場合、従来は内容面が中心の学力調査が多かったが、授業や普段の学習のどのような部分でつまずいているのかを診断する視点や子どもたちのつまずきや学習のアドバイスにつながっていくような能力面を把握することに焦点をあてるということが一つの方法であるし、学力調査における時間的制約や子どもたちの負担を考慮した場合の調査内容の絞り込みとして適切ではないか。
    児童生徒の学習プロセスを算数・数学において考える場合、COMPASSのように活動を支える知識・技能が身についているかなどを診断する視点、PISA調査にように社会的な状況を重視して数学を活用する力を見る視点、新しいことを生み出す力を見る視点などの視点があり、どの視点に焦点をあてるかうまくバランスをとる必要がある。
    最終的にどのような学力を想定した学力調査とするのかを明確にした上で調査問題を作ることが重要である。例えば、COMPASSはある問題を与えられた時にそれをどう解決するかというプロセスを見ており、IEAの調査はカリキュラムを通して獲得された能力を見ようとしている。
    大規模な学力調査を実施する場合、学力の構成要素を把握するための基準は標準化されている必要がある。
    質問紙調査については、学力調査と一体のものとして捉えるべき、これにより、児童生徒の思考の過程や指導内容との関係を明らかにすることができる
    質問紙調査や学力調査における記述式の問題は、関心・意欲・態度を捉える一つのアプローチであるため、技術的な検討を行った上で導入を検討すべき
    生きる力との関係でいえば、自尊心や態度といった部分まで含めるのか、学習指導要領における知識・理解面に偏ったものとならないかといった視点を念頭におき、ペーパーテストと質問紙調査を併せて学力と捉えることが適切
    記述式の問題や思考力を問う問題など、これまでの学力調査では測定が困難であった内容も調査に盛り込むべき

○ 都道府県等が独自に実施している学力調査との関係について

    都道府県等が独自に実施している学力調査については、国が大規模な学力調査を実施した場合、ローカルオプティマムの視点から変化していくのではないか
    都道府県等が独自に実施している学力調査により学校へフィードバックしている内容と全国的な学力調査により学校等へフィードバックする内容とは、ほとんど同じ内容になるのではないかと考えられるため、全国的な学力調査においては、国は教育施策の成果と課題を検証した上で、教育条件の整備などにより義務教育の水準確保につなげるなど、その意義を明確にすることが重要

○ 教育課程実施状況調査との関係について

    教育課程実施状況調査は、学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているが、市区町村や学校などまでは把握できない。このことが全国的な学力調査との大きな違いであり、プロセスについて市区町村等へ裁量を拡大する方向であることを考慮すると、市区町村や学校レベルでの学力に関する達成状況を評価する仕組みを国が持つという考え方は妥当
    教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
    これまでの学校教育においては必ずしも十分に取り組みがなされてこなかったPISA調査における読解力の問題などを意図的に取り上げ、学校や地域でそのような課題へ対応する必要があることを意識させることに意義がある

○ 調査問題の量、形式、時間、冊子などの在り方について

    全米学力調査(NAEP)においては、数学の問題を12ブロックくらい作り、それらをうまく組み合わせて複数の問題冊子とすることにより、生徒の負担軽減を図ると同時に、最低限評価したいものをカバーするといった技術的な努力をしている。全国的な学力調査の目的に即して考えた時に、複数の問題冊子を取り入れることは有効と思う。技術的には、事後的に問題の難易度を等化することによって比較可能なものにするなどにより、検討の余地があるのではないか。どうしても測定する必要がある部分を基本的におさえておくといった視点を重視すべきである。
    複数の問題冊子を組み合わせて学力調査を実施することについては、何年かかけて技術的な検討を行った上でその可能性を検討すべきではないか
    記述式の問題や思考力を問う問題など、これまでの学力調査では測定が困難であった内容も調査に盛り込むべき
    大規模な調査の場合、記述式の問題が多いと採点分析の観点から実施困難となるため、調査の形式を含めて実施可能な方法を検討すべき
    大規模な調査の場合、現実的に採点の問題から記述式の問題を導入するのが困難とのイメージがあるが、米国の事例などを参照しつつ実施可能な方法を検討すべき
    1回の調査で全てのことを把握するのは困難であるため、継続して行うのであれば課題のある点に重点化するなどの工夫が必要
    無解答が多いと指導の改善に役立たせることができないため、無解答を防ぐ手だてを考えることが必要

○ 学校の伸びの測定や教育指導の改善充実に役立つ問題の在り方について

    全国的な学力調査においては、学力を構造的に捉えることが重要であり、一次元的ではなく多次元的な学力を把握することに意味がある
    各学校が自らの学校の特徴を把握し、指導改善に生かせるようにすることが重要
    毎年同じような問題を使うなどして伸びを測定し、各学校の改善につなげることが重要
    指導改善により役立つのは、学習指導要領の内容を網羅している教育課程実施状況調査ではないか、ただし、教育課程実施状況調査は学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているものの全国的な状況であり、市区町村や学校レベルでの把握はできない
    同一問題は公表してしまうと事前に練習するなどにより比較ができなくなってしまうので、継続して実施する場合は難易度が同程度の問題を使用するなど工夫が必要
    毎年調査を行って経年変化を見るのであれば、難易度が設定された問題をプールするなどの工夫が必要

○ 質問紙調査について

    質問紙調査については、学力調査と一体のものとして捉えるべき、これにより、児童生徒の思考の過程や指導内容との関係を明らかにすることができる
    質問紙調査や学力調査における記述式の問題は、関心・意欲・態度を捉える一つのアプローチであるため、技術的な検討を行った上で導入を検討すべき
    生きる力との関係でいえば、自尊心や態度といった部分まで含めるのか、学習指導要領における知識・理解面に偏ったものとならないかといった視点を念頭におき、ペーパーテストと質問紙調査を併せて学力と捉えることが適切
    学校によって異なる様々な実態を把握できるよう、授業方法や指導方法などに関する操作可能な変数を把握して欲しい
    学習方法や指導方法などと学力との関連性について質問紙調査を活用して分析することは意義があるが、疑似相関に注意すべき
    読書と学力との関連性について考えるとき、図書館を活用した読書のシステムがあるかなど学校全体に対する調査も大きな意義があるのではないか
    国語では、教師自身が持っているコミュニケーション観や読解観、基礎基本観、例えば、要点・要旨を要約する読み方だけでなく、批判的な読み方を基礎基本と考えるかどうかが学力に影響を与えているのではないかと感じており、このようなことも調査できればよいと思う
    教師の指導方法についての質問紙調査は、実際に行ったのか、誰が答えたのか、年度当初に聞くということを考慮すると信用できないのではないかと考える、少なくとも誰が答えるのかを明確にしておくべき
    PISA調査では、質問紙調査による回答内容と実際に行われたことに乖離が生じることがあるため、予備調査で試行できるのであれば、その結果を踏まえながら、学力調査の中で問題を解くプロセスについて問うなどの工夫をして欲しい
    質問紙調査に何を盛り込むかということについては、学力の一部分として関心・意欲・態度などを問う要素と、学力の規定要因として分析する要素に大別できると考える、特に後者は、見かけ上の相関としてでる場合があるので注意が必要である


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