問題作成と質問紙調査に関する意見の整理(案)
○ 全国的な学力調査の趣旨・ねらいについて
- 教育施策の成果と課題を検証した上で、教育条件の整備などにより義務教育の水準確保につなげることが重要
- 義務教育の改革の方向性と照らして考えると、インプットとアウトカムについて国が責任を持ちつつ、プロセスについては現場の裁量に委ねていくという流れの中で、アウトカムの検証という視点で国が全国的な学力調査を実施していくことは妥当
- 教育課程実施状況調査は、学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているが、市区町村や学校などまでは把握できない。このことが全国的な学力調査との大きな違いであり、プロセスについて市区町村等へ裁量を拡大する方向であることを考慮すると、市区町村や学校レベルでの学力に関する達成状況を評価する仕組みを国が持つという考え方は妥当
- 教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
- 我が国は、テスト理論に乏しく、大規模な学力調査をやるだけの体制、財政力、長期的な視点などに欠けているため、きちんとした技術的な方法論に裏打ちされた学力調査を実施することは意義がある
- 米国で学力低下論争が生じたときにデータとして使用されたのは、初等中等教育段階における学力調査の結果ではなく大学入学試験であるSATの結果であり、基礎基本的な調査では学力低下を見いだすには感度が悪いということが理由の一つであった。したがって、全国的な学力調査については、短期的な学力向上策という側面ではない意義を鮮明にしておくことが必要
- 各学校が自らの学校の特徴を把握し、指導改善に生かせるようにすることが重要
- 今までの学力に関する議論はデータに基づくものではなく印象論が多かったため、データをきちんととった上で、いくつかの視点から分析することにより、日本の子どもたちの学力状況を緻密に把握・分析することが重要
○ 全国的な学力調査の枠組みについて
- 対象学年の全員が参加する学力調査を行うのであれば、教育施策の成果と課題の検証など行政的な意味合いだけでなく、各学校が自らの特徴を把握し、指導改善に生かせるなどインセンティブとなるようにすべき
- 例えば、自治体レベル、学校レベルにおいて、学校評価における重要なデータの一つとして学力調査の結果を活用するということになれば、全員参加できる規模の学力調査が必要
- 教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
- 小学校・中学校の各学校段階において、本当の土台となる基盤的な部分だけに絞った内容とするとともに、今回は国語、算数・数学に絞って調査することが適切
- 小学校・中学校の各学校段階において最低限必要なもの、根本的に必要な部分に絞った調査としてはどうか、それにより日本の学校教育で達成されていることを明らかにして、保護者や社会が安心できるような調査を念頭におくべき
○ 特に重点をおくべき視点について
- 小学校・中学校の各学校段階において最低限必要なもの、根本的に必要な部分に絞った調査としてはどうか、それにより日本の学校教育で達成されていることを明らかにして、保護者や社会が安心できるような調査を念頭におくべき
- 小学校・中学校の各学校段階において、本当の土台となる基盤的な部分だけに絞った内容とし、そのプロファイルを測るような調査内容とすべきではないか、ただし、学習指導要領では、各学校が確実に身につけさせるべき基礎基本的な内容の定着を図る、と位置づけられていることに留意が必要
- これを乗り越えないと後が続かない、各学年に均等にあるわけではないがこれを身につけておかないと後の学年の学習において影響があるといった内容、例えば、小学校算数における分数やくり上がりくり下がり、などに絞った調査とすることが適切
- 低位層の子どもたちに身につけさせたい基礎・基本を具体的に策定し、改善するための手法を検討することが必要
- 1回の調査で全てのことを把握するのは困難であるため、継続して行うのであれば課題のある点に重点化するなどの工夫が必要
- 米国で学力低下論争が生じたときにデータとして使用されたのは、初等中等教育段階における学力調査の結果ではなく大学入学試験であるSATの結果であり、基礎基本的な調査では学力低下を見いだすには感度が悪いということが理由の一つであった。したがって、全国的な学力調査については、短期的な学力向上策という側面ではない意義を鮮明にしておくことが必要
- これまでの学校教育においては必ずしも十分に取り組みがなされてこなかったPISA調査における読解力の問題などを意図的に取り上げ、学校や地域でそのような課題へ対応する必要があることを意識させることに意義がある
- 質問紙調査については、学力調査と一体のものとして捉えるべき、これにより、児童生徒の思考の過程や指導内容との関係を明らかにすることができる
- 質問紙調査や学力調査における記述式の問題は、関心・意欲・態度を捉える一つのアプローチであるため、技術的な検討を行った上で導入を検討すべき
- 生きる力との関係でいえば、自尊心や態度といった部分まで含めるのか、学習指導要領における知識・理解面に偏ったものとならないかといった視点を念頭におき、ペーパーテストと質問紙調査を併せて学力と捉えることが適切
- 記述式の問題や思考力を問う問題など、これまでの学力調査では測定が困難であった内容も調査に盛り込むべき
○ 都道府県等が独自に実施している学力調査との関係について
- 都道府県等が独自に実施している学力調査については、国が大規模な学力調査を実施した場合、ローカルオプティマムの視点から変化していくのではないか
- 都道府県等が独自に実施している学力調査により学校へフィードバックしている内容と全国的な学力調査により学校等へフィードバックする内容とは、ほとんど同じ内容になるのではないかと考えられるため、全国的な学力調査においては、国は教育施策の成果と課題を検証した上で、教育条件の整備などにより義務教育の水準確保につなげるなど、その意義を明確にすることが重要
○ 教育課程実施状況調査との関係について
- 教育課程実施状況調査は、学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているが、市区町村や学校などまでは把握できない。このことが全国的な学力調査との大きな違いであり、プロセスについて市区町村等へ裁量を拡大する方向であることを考慮すると、市区町村や学校レベルでの学力に関する達成状況を評価する仕組みを国が持つという考え方は妥当
- 教育課程実施状況調査では、学習指導要領の改善のためのデータを得るために各学年における学習状況を全ての領域・内容にわたって網羅しているが、全国的な学力調査においては、小学校・中学校の各学校段階の出口付近での総合的な力を測るという点において大きな意味がある
- これまでの学校教育においては必ずしも十分に取り組みがなされてこなかったPISA調査における読解力の問題などを意図的に取り上げ、学校や地域でそのような課題へ対応する必要があることを意識させることに意義がある
○ 調査問題の量、形式、時間、冊子などの在り方について
- 記述式の問題や思考力を問う問題など、これまでの学力調査では測定が困難であった内容も調査に盛り込むべき
- 大規模な調査の場合、記述式の問題が多いと採点分析の観点から実施困難となるため、調査の形式を含めて実施可能な方法を検討すべき
- 大規模な調査の場合、現実的に採点の問題から記述式の問題を導入するのが困難とのイメージがあるが、米国の事例などを参照しつつ実施可能な方法を検討すべき
- 1回の調査で全てのことを把握するのは困難であるため、継続して行うのであれば課題のある点に重点化するなどの工夫が必要
- 無解答が多いと指導の改善に役立たせることができないため、無解答を防ぐ手だてを考えることが必要
○ 学校の伸びの測定や教育指導の改善充実に役立つ問題の在り方について
- 各学校が自らの学校の特徴を把握し、指導改善に生かせるようにすることが重要
- 毎年同じような問題を使うなどして伸びを測定し、各学校の改善につなげることが重要
- 指導改善により役立つのは、学習指導要領の内容を網羅している教育課程実施状況調査ではないか、ただし、教育課程実施状況調査は、学習指導要領などの改善のための基礎的なデータを得る観点から全ての内容・領域を網羅しているものの全国的な状況であり、市区町村や学校レベルでの把握はできない
- 同一問題は公表してしまうと事前に練習するなどにより比較ができなくなってしまうので、継続して実施する場合は難易度が同程度の問題を使用するなど工夫が必要
- 毎年調査を行って経年変化を見るのであれば、難易度が設定された問題をプールするなどの工夫が必要
○ 質問紙調査について
- 質問紙調査については、学力調査と一体のものとして捉えるべき、これにより、児童生徒の思考の過程や指導内容との関係を明らかにすることができる
- 質問紙調査や学力調査における記述式の問題は、関心・意欲・態度を捉える一つのアプローチであるため、技術的な検討を行った上で導入を検討すべき
- 生きる力との関係でいえば、自尊心や態度といった部分まで含めるのか、学習指導要領における知識・理解面に偏ったものとならないかといった視点を念頭におき、ペーパーテストと質問紙調査を併せて学力と捉えることが適切
- 学校によって異なる様々な実態を把握できるよう、授業方法や指導方法などに関する操作可能な変数を把握して欲しい
- 学習方法や指導方法などと学力との関連性について質問紙調査を活用して分析することは意義があるが、疑似相関に注意すべき
- 読書と学力との関連性について考えるとき、図書館を活用した読書のシステムがあるかなど学校全体に対する調査も大きな意義があるのではないか
- 国語では、教師自身が持っているコミュニケーション観や読解観、基礎基本観、例えば、要点・要旨を要約する読み方だけでなく、批判的な読み方を基礎基本と考えるかどうかが学力に影響を与えているのではないかと感じており、このようなことも調査できればよいと思う
- 教師の指導方法についての質問紙調査は、実際に行ったのか、誰が答えたのか、年度当初に聞くということを考慮すると信用できないのではないかと考える、少なくとも誰が答えるのかを明確にしておくべき
- PISA調査では、質問紙調査による回答内容と実際に行われたことに乖離が生じることがあるため、予備調査で試行できるのであれば、その結果を踏まえながら、学力調査の中で問題を解くプロセスについて問うなどの工夫をして欲しい
- 質問紙調査に何を盛り込むかということについては、学力の一部分として関心・意欲・態度などを問う要素と、学力の規定要因として分析する要素に大別できると考える、特に後者は、見かけ上の相関としてでる場合があるので注意が必要である