初等中等教育における国際教育推進検討会(第10回) 議事録

1.日時

平成17年7月15日(金曜日)15時30分~17時30分

2.場所

経済産業省別館1012会議室(10階)

3.出席者

委員

池上 久雄(座長)、岩谷 栄子、奥村 芳和、小野 清二、佐藤 裕之、紿田 英哉、多田 孝志、中島 和子、根道 博、平野 次郎、渡邉 寛治の各委員

文部科学省

樋口審議官、井上国際統括官、山脇国際教育課長他関係者

4.議事録

(1) 開会(池上座長)

(2) 配付資料の確認
事務局より配付資料の確認が行われた。

(3) 議事
報告書案について、事務局から説明を行した後、自由討議が行われた。

【池上座長】
 本日は最終回ということで、順不同でどんどんご意見を言っていただいて、まとめていきたいと思います。ご意見いかがでしょうか。

【渡邉委員】
 40ページの「国際教育総合的な推進」の図表があります。これは非常にわかりやすいので、私はとてもいい評価をしています。しかし、これを久しぶりに見て違和感があった箇所が2カ所ありました。
 まず、左上の「国際教育で育成する態度・能力」、「異文化や異文化を持つ人々と『つながる』態度・能力」を見た際に違和感を覚えたのですが、いろいろな意見を読んで、「つながる」ということは、連携という意味であると理解しました。「異文化が」つながるというとわかりますが、「異文化と」つながる態度・能力というと、日本語が変だと思います。「異文化を持つ人々とつながる」ならば問題ないかと。長谷川委員もいつか述べていたように、私も非常に気になっているのは、「共生」という言葉が消えていることです。なぜなら、私が2年前から移り住んださいたま市は、市の社会的事情から、共生という言葉を1つの市の教育改革指針の中に入れて動いています。つまり、ブラジル人等、いろいろな外人労働者の子どもとの間でトラブルが起きているため、共生という言葉をキーワードに市が教育を動かしているのです。そういった地域がほかにもあろうかと思います。そういう中では、平成8年4月19日の中教審答申の「共生」という言葉が消えるとなると、それは大変大きなインパクトを与えるという点で気になっております。
 そこで、例えば何かほかに提案できないかと思って考えたところ、その共生という言葉を使い、異文化や異文化を持つ人々と共生できる態度・能力だと、意味がつながるのかと思いました。
 それからもう1点、右側に同じ列の中で、「自らの考えや意見を発信し、具体的に行動できる態度・能力」と、こういう「できる」という文言の末尾の使い方は、実は前ページの39ページを見ますと、一番上に横文字で書いてある2行目の3に「自ら発信し行動する力」というのがございます。ここは現在形で書いています。私たちは、仕事でよく評価基準をつくってきたのですが、この現在形で書くか、進行形で書くか、それともできると書くかは、ものすごく現場に影響を与えます。つまり、現場が見たとき、できる力というと、できるようにしなくてはいけないのです。行動する力だったら、そこは曖昧になります。細かいところも、もう少しきちんと見なくてはいけなかったと思いました。
 ただ、19ページでございますが、この検討会の提言として、「(1)地域の国際教育拠点の形成」というのがございます。これを読んでいきますと、2つ目の段落、「例えば、海外経験を有するから始めるところに、…期待される。また、このような取組の中で云々。」そして最後に、「初等中等教育段階から育成することも考えられる。」とありまして、何となくトーンダウンをしてしまったような印象を受けました。何回も読みますと、これはこれででもいいのかなという気もしましたが、むしろここは思い切って、こういうふうな修正加筆も考えられると思いました。先に結論だけ提案申し上げますと、「また」以降ですが、「また、このような取組の中で、国際社会で主体的に行動できる態度、能力を初等中等教育段階から育成することが大切である」というものです。どうしてそういう案を私が示すかと申しますと、先ほどの大きな絵のある図と整合性を図る必要があるのではないかと思いました。この図の大切なキーワード的な文言は、何回も報告書中ではっきりと言っておく必要があるではないかという趣旨からの1つの提案でございます。
 また、日本は人材教育という意味では、義務教育としては、全人教育をやっているわけですね。この国際理解教育や英語活動も含めてですけれども、現場では、やはり全人教育という意思が非常に強くて、偏見も含めてはあるけれども、染み込んでいるものがあって、人材教育を行うのは高等教育段階からではないかと思っている人もたくさんいるわけです。その辺との融合性も含めますと、いい意味で推進していくためには、現場との接点になるような、理解しやすい、動きやすいニュアンスや文言とかを入れていく必要があるのではないかと思っております。

【小野委員】
 これは何回か討議してきた中で、感じていたのですが、報告書では、具体化していくのは難しいというニュアンスが議論の中でたくさん出てきましたので、この報告書の後に、さらに具体的なものが出るのかなということは気になっていたのですが。

【渡邉委員】
 本検討会は推進検討会であり、授業づくりの方策等具体的な部分で以前より変わってきましたので、いい傾向ではあると思うのですが、根本的な、国際理解教育とか、国際教育的なものがなかなか進まないということを打破しなくてはいけません。そこには根本にひっかかるものが各教員の中にありまして、やっぱり全人教育ということで取り組んで、お子さんを育てている方たちが多い中で、なかなか具体性が成果として見えにくいものを扱わなくてはいけないものですから、そこをもう少しつながりがあるものができればと気になっていました。
 今、小野委員がおっしゃったように、このレベルで報告書をまとめるとなると、どこかにきちんとこの報告書としての到達目標を語ったほうがいいと思いますが、実際はなかなか難しいと思います。
 この報告書が、どこへ使われていくかという点でのかかわり合いが気になっています。
 加えて、前々回のときの議事録にありました山中審議官が述べられたことが気になっておりまして、例えば、国際理解教育の中で、英語活動も含めて、現場でいろいろやっている、そういう中で一体それを通して子どものどのような資質、能力が育まれて、つながっていくのかという具体的なイメージも含めて、どうも昨今行っていることが見えにくいと思います。これが英語活動の誤解を招いたり、議論を呼んでいるわけですが、いわゆる現場サイドから申しますと、つながるものがどこかで見えないと、この報告書を一般人や現場の教員が見たときに、自分たちの身近なものではなさそうに感じると、残念かなと思いました。

【奥村委員】
 やはり、日本全国の高等学校でも、いわゆる人材を育成する教育という視点というのは、非常に欠落しているだろうと思います。高等学校の教育であっても、理系・文系に分けて、あるいは受験に基づいたコース制を持って、教育することはあっても、この国際的な資質を養うというようなパワフルな人材を育成するという観点というのは確かにないと思います。全人教育と言われるように、非常に平等な、より良き人格形成という非常にやわらかい形での教育が一般的に行われていますが、そういう中で、私は、現代というものは、子ども世界にも、個として育っていく時代になってきたと思います。親から囲い込まれ、いろいろな選択肢が出てきて、個をどう生かすかという形で、人材教育とは観点が違うかと思いますが、個で振る舞う領域というのは非常に大きくなってきたと思うのです。その中で、個と個がつながりながら、お互いを理解し、それを日本国内だけでなく、国際的にもそういう場を多く持つことによって、信頼が生まれ、最終的には、共生というような心が芽生えてくる。そういう中で、ようやくパブリックという考え方が芽生えてくるのではないかと思います。それは、日本の学校教育の中でも可能だろうと思いますし、国際社会へ出た場合にも、同じような普遍的な考え方ができるのではないかと思うのですが、それが従来からの全人教育にもつながっていくのではないでしょうか。この中では、将来を担う非常に強力なリーダーシップを発揮できる人材を育成することが全面に押し出されていますが、パブリックコメントの内容にもありますように、そういう記述が非常に慎重になされるべきであるということは、確かに全人教育の観点からもあるかと思います。一般的に、全国の教育に携わっている高校教員は、そういう部分に関しましては、デリケートな感覚を持っているところがあると思います。

【渡邉委員】
 一言だけでも僕は欲しいと思ったのですが、例えば、「生きる力」を英語で「ゼスト・フォー・リビング(zest for living)」と訳しているわけですが、ゼスト(zest)は意欲という意味です。そうしますと、総合的な学習を通して、求められているのは、学習する意欲であるということを現場できちんと少しずつでもわかり始めている人員がいるということです。それは、全人教育の良さでわかってきているものの中の1つで、そういうものは本検討会が求めている主体性と同心円上にあるものです。
 平成8年の中教審第1次答申以来言ってきたはずものを改めてここでつなげることはあっていいと思うのですが、どうも、そこのところは現場には浸透していない気も致します。

【池上座長】
 具体的には、ここをこう直すと、その辺が効果を発揮すると、そういう結果が出るというようなご意見、ご提案みたいなものはございますか。

【渡邉委員】
 例えば、具体的な授業改善が書いてあるところで、そういった活動を行うと、児童生徒の主体性、主体性はジーニアスの和英辞典を引くと、アイデンティティー(identity)と書いてありますが、そういうアイデンティティーとかイニシアチブ(initiative)が育まれますよと、それは実は生きる力の根源でもある主体性と同心円じゃないかということを具体的な活動の例のところに書いてもいいのかなという気はします。

【齋藤国際教育課長補佐】
 第1章の基本的視点の1の四角囲みの下あたりに、入ることができるのではないかと思います。

【池上座長】
 それから、40ページに戻って、「つながる」というのは、さんざん話した末にみんなでそれでいこうと決めたところですが、もう一度それでよろしいか、何かご意見ありますでしょうか。

【中島委員】
 カギ括弧に入れたのは何か理由があるのですか。

【池上座長】
 この前の説明では、このまま「つながる」という言葉を出してしまうと、本当は単に動詞ですが、この「つながる」は、今までいろいろな段階、指導要領その他で、共生できるという意味であることを、意味を持たせて使ってきたので、わざわざ際立たせるように括弧をつけています。我々も、これにかわるもっと普遍的ないい言葉はないかと考えたのですが、なかなかなかったのでこれをつけたように思います。

【平野委員】
 質問ですが、2ページの四角の中には、「つながる」がかぎ括弧に入っておりますね。その後の「理解」もかぎ括弧に入っています。かぎ括弧に囲われて使うときには、意味を限定させて使うので、この場合の「理解」も意味を限定させて使っているのでしょうか。

【山脇国際教育課長】
 2ページの下から10行目あたりのパラグラフにあります「異文化や異なる文化を持つ人々を理解するだけではなく、理解した上でそれらを受容しながら、共生することのできる力が重要となる。」という意味を込めて、「つながり」という呼び方をしていますので、その意味で限定的にかぎ括弧をつけた趣旨であります。一方、四角の中の「理解」するについては、若干これは強調するためで、特段の意味を持たせた趣旨はありませんので、かぎ括弧をとってもいいかと思います。

【平野委員】
 皆さん、専門的な仕事をなさっているわけですから、極めて専門的な言葉を使いながら、この言葉をつくったというのはわかります。先ほど、外部からの意見募集についてご説明があったのですが、要するにプロの方しか物を言ってきていないのですね。普通の人は、多分何も言ってきていないのでしょう。なぜ言ってこないのかというと、1つは読んでもわからない、もう一つは、関心がないからです。実際には関心がないわけではないのですね。国際教育について、特に、子どもを持っている親の関心がないわけはないのですが、どうもここに書いてあることは自分たちの住んでいる世界、生きている世界とは違うところの話のようだと理解をしているのではないかという気がしました。私は、境界型の人間ですから、「つながる」の言葉で引っかかりました。
 そういう文章の目的と性質にもよるのですが、もう少し普通の人の言葉で書くとどうなるのかとずっと思い続けてきました。もちろん、これは悪いというわけでなくて、良くまとまっていて、無駄がないと思うのですが。

【山脇国際教育課長】
 先ほど申し上げましたように2ページ目の、「つながり」の部分の説明としては、「受容しながら、共生する力が重要である」という意味であり、そういう概念を含んで書いております。

【池上座長】
 2ページの上から4行目と下から11行目で「共生」という言葉を使っているのですが、わざわざ際立ってかぎ括弧にはしていませんね。

【小野委員】
 ここではその「共生」という言葉をどういう形で出せるかが課題でしょうか。ある意味ではもう少し強調するとか。または、今まで2回使っているので、この2ページで読み取っていただくという感じですね。

【渡邉委員】
 これから実際、教育委員会とか、現場が使っていくキーワードで考えていくと、「つながり」という言葉は使いにくいと思います。一番気になったのは、「異文化とつながる態度・能力」と読まなくてはならず、日本語としておかしいことです。

【山脇国際教育課長】
 その点について、40ページの図の要約が少し乱暴になっている部分が若干あるかと思います。本文の中では、2ページの例えば四角で囲った部分の1の部分で、「異文化や異なる文化を持つ人々を受容し、『つながる』ことのできる態度・能力」というような形で表現をしている部分があります。

【渡邉委員】
 山脇課長、このときの「つながる」の主語はどれにあたるのですか。

【山脇国際教育課長】
 それはすべての子どもたちがということです。その「つながる」の意味については、本文で少し解説的に考えるところを述べていくという構成です。

【渡邉委員】
 子どもたちがつながるのですか。
 私、久しぶりに見て驚きました。日本語が変だと思ったのです。「つながる」とはどういうイメージなのかわからなかったのです。ようやく湧いたのが、人々と「つながる」というのはあるけれども、何か弱いのではないかと。

【中島委員】
 私も、それだけで十分なのだろうかという疑問がありますね。やはり少し弱いと思うので、異文化を尊重するとか、もう少し価値づけをしてあげるという必要があると思います。

【奥村委員】
 今、小学校でも高等学校でも、いわゆる心理学や何かの手法を駆使しながら、子どもたち自身がお互いの間で一つの新しいグループに入ったときに、どのようにきっかけをつくってコミュニケーションを開始するかという集団訓練というものが、盛んになってきています。小学校に入ったときや、高校へ入ったときに、うちの学校でも新入生の研修合宿では必ずそういうことをして、きっかけをつくって、みんながお互いにつながっていく、そういった機会づくりをしてあげなければ、なかなかグループに固執して、全体的な集団としてのバランスがとれなくなる。そういうことで、私たち現場でもあまり「つながる」という言葉は一般化していないように思いますが、そういったごく初期的な人間と人間とのコミュニケーションのきっかけという形で「つながる」という言葉をよく使うのです。

【池上座長】
 現場では「かかわり」と言うのですね。
 2ページの四角の中を見てもそうですし、文章を見てもそうですが、「異文化や異なる文化を持つ人々を受容し、つながることのできる態度・能力。」といった必ず「受容し」と「つながる」をくっつけて使っているのですね。この40ページのレジュメでは、長くなるので「受容し」をとって、「つながる」だけでつなげているので、それで単なるコネクト(connect)だけの意味がさらに強くなっているという印象はあると思います。ですから、長くなりますが、「異文化を持つ人々を受容し、つながる態度・能力」と、この2つを書けばもう少しわかりやすいということが1つ考えられます。それから、「つながる」だけで使って、かぎ括弧をつけないとすると、意味がわからないですね。もっとほかの言葉で一言で表現できれば、短い言葉で表現したほうがいいかもしれません。あえてこの言葉を使わなくてもいいし、「受容し、つながる」というふうに、「受容し」という言葉をつければ、多少わかりやすいかもしれません。かえって、「共生」という言葉は硬くないですか。
 やはり、皆ひっかかったところですし、結構大事な部分ですから、もう一度きちんと議論したほうがいいのではないかと思います。

【渡邉委員】
 下手をすると、「何だ、これは。珍しい言葉だ。」というので、それがまた「ゆとり教育」と同じように言葉がひとり歩きすることも考えられます。

【佐藤(裕)委員】
 前回も「つながる」という言葉が、インパクトがあっていいという議論もあったかと思います。
 しかし、インパクトがあり過ぎましたね。私も第9回検討回後、報告案修正版が6月7日にメールで送られてきたが、「つながる」という言葉をどういう表現されていたのかという視点でこの報告書を読ませていただくと、先程課長がおっしゃられたように、「受容しながら共生する」という意味だというふうに読み取れたのです。そうしますと、「受容し共生する」という意味を敢えて「つながる」と使った意味が、もしインパクトという議論であるならば、私はもう一回考え直してもいいかと思います。
 やはり学校現場からすると、「つながる」という言葉をあまり聞いたことがないので違和感があると思います。
 特に川崎市の場合には、国際理解の根底は多文化共生だと発信をする際に、私は多文化共生の意味をこれからは「つながる」と考えていきましょうという発信する役割なのですが、自分としてはそれがまだうまくつながっていないのも正直なところです。

【渡邉委員】
 「共生」という言葉がかなり浸透して、少しインプットが大分落ちついたという時だけに、これと同じ意味合いですよと言われても、少し最初は違和感があると思います。

【池上座長】
 受容し「つながる」の括弧つきを取り払って、「受容し共生する」という言葉に変えるかという点ですが、いかがでしょうか。

【根道委員】
 私はずっと一般型ですから、「つながる」という言葉には極めて抵抗があります。前回の議論では、「つながる」という概念はインパクトがあって、言ってみれば業界としては広がっているからというお話であったように思いましたけれども、ちょっと議論がそういう意味では少し違ってきたという印象でございます。

【小野委員】
 前回の議事録を読んでも、12ページから18ページまでさんざん議論しても、私はこれには賛成ではありませんでした。でも、大勢的にはインパクトがあるからこれを使ってみようということになったのですね。多田委員も、意味としては共生とか、人々との「かかわり」とおっしゃっていました。内容は6ページにわたって意見が出ているというぐらい課題になったのですが、ここでやっとおさまったということなのでしょう。だから、また皆さんがよろしければ、この部分を今座長がおっしゃったように、共生と受容といったわかりやすい言葉に変えるほうがいいかもしれないと思っています。

【渡邉委員】
 もともと「共生」という言葉は会議で決めたものを中教審で使って、そして国が取り上げたものです。そこで例えば「つながり」も、これは「共生」に変わる言葉と同じですということで、今後どこへ出していくのか、中教審で議論する資料なのか、それとももっと強い力があるのでしょうか。報告書が提出されてしまうと、これでインターネットに出て一般に広まってしまうわけだけれども、そう考えると、怖い面も感じたのです。

【紿田委員】
 この前申し上げたとおり、私もとても違和感を持っていたのです。ただ、話を聞いていると、せっかく出すなら、インパクトがあるほうがいいと思ったのですが、やはりこうやって蒸し返されると違和感があります。
 ただ、さっきのお話し伺って、インパクトがあるということは、確かに何かを出すときにはいいのかもしれませんが、今までの流れと現場が混乱を起こすような、つまり「共生」という用語は、かつてそれだけもう既にだんだん市民権も得てきているところであれば、そことの関連をあえて消しているのは良くないのかもしれません。

【渡邉委員】
 どうして変えたのかと、必ず聞かれますね。

【奥村委員】
 「共生」という言葉は、非常に便利な言葉で、あらゆることを包含したような型で、理解しているつもりで、ほんとうは中身は何ですかと言われたときに、改めて考えると戸惑ってしまうようなところがあるので、「つながり」ということは信頼であるとか、寛容であるとか、受容するとかそういう、前置きの言葉とともに使いながら「つながる」という形で、「共生」をむしろ説明する言葉なのかもしれません。
 ですから、「つながる」という言葉を引っ込めたほうがいいのかもしれません。

【多田委員】
 「つながる」という言葉は、知識の習得重視の教育に対して、人とのかかわりをつくっていこうという教育を重視するという流れで出てきたと思います。
 ユネスコでは、新しい教育の方法として「関係性・つながり、参加、共同」ということを言っています。それは、多分私たちが言っている「共生」という概念が「関係性・つながり、参加、共同」、その中の「つながり」だけを持ってきて、全体を表そうとしたので違和感が出てきたと思います。だから、これをどういう言葉で表すかは、そういう意味では論議になると思います。

【池上座長】
 そうすると、本文の文章と同じように、「受容し、つながる」と変えたほうがよろしいでしょうか。まず、受容はパッシング(passing)「受け入れる」ですね。そして、「つながる」というのはアクティブ(active)であると。「つながる」だけで独立させないという形で、いかがでしょうか。

【根道委員】
 それは「共生」と同じ意味だということですか。

【池上座長】
 「共生」よりはもう少しアクティブで、能動的な意味です。

【中島委員】
 「つながる」では、そういう積極的な意味が感じられません。能動性を出すということであれば、「つながる」ではなくて「つなげる」ではないでしょうか。「つながる」では、非常に弱いと思います。
 私は、「共生」というのは、ある錯覚の上に成り立った概念であると思うのです。異文化が混在しているところで「共生」という言葉を使うことに、私は大変抵抗があります。
 ただ、やはり「つながる」だけでは足りないと思います。

【多田委員】
 だから、一つの用語で代表させるのは、少し今は難しいですね。熟語にしても、ともに生きるとか、「共生」という言葉だけでというのもすごく難しいので、意図を文章化して、それを短くするような形で表現するしかないと思います。

【岩谷委員】
 私も「つながる」というのは、大変インパクトが大きいのではないかという話を前回させていただいたところですが、構成図は一番最初に見る方もおりますし、本文を読んでからまとめとして活用する場合もあるわけですけれども、中身が入っている中でこの表を見たときの感じ方と、それから最初にこれを見たときの感じ方は違うと思います。そのときに間違いのないようにするためには、その文言をどこかで説明するべきであると思います。「つながる」というのもきちんとどこかで皆さんの思いを入れたような説明があれば、現場の先生方もはっと思ったときに何だろうと、逆に一生懸命みんなで議論が沸き起こることもあるのではないかと考えます。

【池上座長】
 ここでいう「つながり」はこういう意味だというのを本文中で説明するというのも1つの手ではありますね。もう一つは「つながる」と書いておいて、カギ括弧の代わりに後ろに括弧して「受容、共生」という意味であるというのを書くという手もあるかもしれません。

【渡邉委員】
 実際に現場や教育委員会は、中身まで読まないことが多いと思いますので、親切にきちんと正しく伝わるような形で、整合性を図り、1回でわかるようにしておかないとまずいかなと思います。
 あと、中島先生言われたように、「つながる」だと弱いとすると、「つなげる」にしなくてはいけないと思いますし、「つなげる」とすると、また少しニュアンスが変わってくる気がしますし、「つながる」というのは多分いろいろな経緯があって、その結果つながったのだろうという解釈の言葉だと思うので、少し難しいと思います。かといって、ここで括弧つきで、実は括弧してイコールこれは「共生」であるとすると、わざわざそうする意味は何かということになる。やはりぱっと見てわかるようにしなくてはいけません。

【池上座長】
 そうすると、決を採るというのも何ですが、3つの方法があるかと思います。1つめは「つながる」ということだけを単独で使っていく。それで何か言われたら、説明していくという、今まで我々が決意したやり方と、2つ目は、ここにある「受容し、つながる」という、必ず受容とくっつけて使っていこうとする方法。それから3つ目は、「受容し共生する」と言いかえようという、この3つのうちで、ニュアンスとしてどの辺がいいかという感触ですが、いかがでしょうか。第1番目のこのままでいこうという方、何人ぐらいいらっしゃいますか。
 いらっしゃらないですね。では、2番目の、「受容し、つながる」と、この本文中で使ってあるやり方で、一緒に使っていこうという方いらっしゃいますか。
 「受容し、つながる」というやり方でいこうという方、4人ですね。

【平野委員】
 つまりステップとして2つあるでしょう。「受容」の段階と「つながる」段階。例えば我々がこの部屋にみんないる。これは「受容」しているから同じ空間にいるのですよね。これでみんなで肩組んだら「つながる」わけですね。
 それと、「共生」というのも、やはり我々は存在するだけで「共生」なんですよ。嫌な人は部屋から出ていくので。だけど、「つながっていない」場合があるわけですね。「共生」よりもさらに進んだアクティブな状態でありますから。

【池上座長】
 では、3番目のように、「受容し共生することのできる能力」と言いかえる方がいいと思われる方いらっしゃいますか。

【池上座長】
 6人ですね。そうしますと、これを参考にさせていただいて、ほぼこの方向で進めていってよろしいでしょうか。「つながる」の表現は、やはり売り物にしたいですか。

【山脇国際教育課長】
 いえ、この検討会の総意として決めていただければ結構です。

【池上座長】
 では「受容し共生する」でいきましょう。

【池上座長】
 そうなりますと、自動的に40ページの図も、「異文化や異文化を持つ人々を受容し、人々とする」ですね。

【齋藤国際教育課長補佐】
 そこはあわせて修正しておきます。

【池上座長】
 それから、渡邉先生からご指摘のあった「行動できる」ではなくて「行動する」ではないかという意見についてですが、ここも「行動する」になるのでしょうね。これはご指摘のとおりの修正で私もいいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。では、ここは「する」にかえていただいて。
 他に意見はございますか。

【多田委員】
 意見募集その他の部分で、「国際理解教育」という言葉を「国際教育」にするのかどうかについて多数の意見が寄せられています。事務局の説明では「国際理解教育」を否定するものではないという部分はよくわかるのですが、これだけたくさんの意見を寄せられたわけですから、このことについてもう少し論議した方がよいと思います。

【池上座長】
 これは今まで「国際理解教育」と言ってきたけれども、これからは言い方は変えようという、具体的にそう書いたものはありませんね。

【多田委員】
 私も同様に考えておりました。そうであるならば、学習指導要領の総合的学習の例示の中で「国際理解」という例示があるわけですから、このままでは、現場の混乱が予想されます。現場は「国際理解教育」でずっと走っていたわけです。こうした混乱を起こさないための手立てとして、本検討会では、資料の一番最後の41ページの本検討会の設置要綱に趣旨にある、「これまで海外子女教育、帰国・外国人子女教育、国際理解教育といった…、これを情勢が変化をしたので、具体的方策を考えている」ということを報告書全体に反映させているはずですので、この趣旨の文言を本文の1ページの「はじめに」の部分に反映させてはどうでしょうか。これは、1つのアイデアなのですが、「はじめに」の世界の情勢の変化での部分の後に、「本検討会は…」の前のあたりに入れていただくと、わかりやすくなると思います。

【池上座長】
 そこは理解できます。実は、パブリックコメントの意見の中で、1ページの「国際教育」を推進する理論的基礎、根拠に関する説明が不十分であるという指摘がありますから。

【多田委員】
 学校現場の、理解は、「国際教育」は、学校現場の国際理解、海外子女教育、言語教育、それらすべてを包括したものであり、本検討会でも、その「国際教育」を検討するということで進んでき多はずです。報告書全体もそういう趣旨のはずですので、現場における「国際理解教育」を「国際教育」というところまで踏み込んでないのは、1つの識見だと思います。本検討会としては、広義な国際教育について提言として方向性を示すことであると思います。

【池上座長】
 過去の政策とか、並行して行われている政策とのすり合わせを行政当局側がやってくださると考えていいのですか。

【山脇国際教育課長】
 当然、そうでもありますし、この報告書の中でもそれが明確になっているほうが、よりいいとは思います。

【池上座長】
 そうしますと、この研究会設置の趣旨をこの「はじめに」の部分に一部入れようじゃないかというのはいいご意見だと思うのですが、中島先生、いかがですか。

【中島委員】
 賛成です。

【池上座長】
 どう入れるかはお任せいただくことにします。
 それから1つ、渡邉先生が指摘された、19ページの「(1)地域の国際教育拠点の形成」の部分について、最後の文の文末を「することが大切である」と変えるのはいかがですか。

【渡邉委員】
 私が申し上げたのは、「考えられる」というのはちょっと弱いということです。例の40ページの表の上にあるような、「国際社会で主体的に行動できる態度・能力」を初等中等段階から、それを育成することが大切であるという文言とつなげるのはいかがでしょうか。

【山脇国際教育課長】
 少々ご説明しますと、ここの部分の1項が、「することも考えられる」という抑制的な書きぶりにしてあるのは、3ページの上から10行目あたりのパラグラフで、「リーダー的資質の伸長にも配慮しつつ国際教育に取り組むことも必要である」という部分に対応しています。

【渡邉委員】
 それは承知しています。

【山脇国際教育課長】
 一方で渡邊委員からは、すべての子どもに求められるような「主体的に行動する、発信する力」を伸ばすことを、重点的にやるべきだという趣旨を加えようというご意見かと思います。

【渡邉委員】
 そうです。

【池上座長】
 全体を通じて、一般的な全員の子どもたちを主体的に行動できるようにしたいという趣旨が出ています。リーダー的立場と入れたのはここだけでしたが、それでもパブコメで意見が出ています。やはり今日本では、国際的なリーダーも必要なんだというのを私はどこかで出したいのですが。

【紿田委員】
 ここでのリーダーについてはっきり言わないと、インパクトがなくなる。これは、パブリックコメントに決して迎合してはいけない点だと思います。

【池上座長】
 今の日本が国際的に国連の中でも大事な地位を占めながら、リーダーシップを発揮していきたいという国家意思を出しているところでもあるし、これは我々も大いに賛成するところなのですが、いかがですか。

【根道委員】
 賛成です。

【池上座長】
 反対の方、いらっしゃいますか。いらっしゃらないようなので、入れてみて、よろしいでしょうか。

【齋藤国際教育課長補佐】
 19ページの部分、今の座長の意見を踏まえまして、誰が指導的立場に立つのか、国家なのか、人材なのかというのがわからないとおっしゃるので、国際社会でリーダー的人材に求められる態度・能力の育成といった形で修文するのはいかがでしょうか。

【池上座長】
 いずれにしても、「リーダー」、「個の特性に応じて」という言葉を使っていることですから、人材の問題であって、そこをはっきりさせるために、リーダーという言葉をここに入れてみてもいいのではないかと思います。そのニュアンスを入れるように工夫させていただきます。

【平野委員】
 今のところですが、指導的な立場に立つという言い方がいいのか、指導的な責任を果たすという言い方をしたほうがいいのか、いかがでしょうか。

【池上座長】
 立場というよりも、行為、責任を果たすとするほうがいいかもしれないですね。

【池上座長】
 リーダーとして指導的な責任を果たす人物を育成していくという形でよろしいでしょうか。

【佐藤(裕)委員】
 1ページ目の目次のところですけれども、「はじめに」で始まったら「終わりに」という形ではないようですが。

【齋藤国際教育課長補佐】
 このような報告においては、必ずしも「はじめに」と「終わりに」をセットで使うわけではありません。この場合、むしろ3章の4.が「終わりに」的部分に相当します。

【池上座長】
 それでは、今までいただいたご意見、を踏まえまして、修正する箇所について、文言は私どもと事務局とにご一任いただいて、おっしゃられた趣旨を生かすべく直させていただきます。その上で、後日確定したものを最終的な報告という形に取りまとめさせていただきたいと思います。それでよろしいですか。
 ご報告ということで、メールで送付させていただきます。

【山脇国際教育課長】
 7月末頃メールでお送りします。

【池上座長】
 7月末ごろ、初等中等教育局長に報告し、それと同時に公表するということです。
 それでは、引き続いて、山脇課長から本検討会の提言を受けての、文部科学省としての国際教育推進の在り方についてご説明いただきます。

【山脇国際教育課長】
 文部科学省でこの検討会の報告を踏まえて、今後の国としての具体的な事業をどう構築していくかについて検討しているところです。具体的には、平成18年度の予算の要求において、国際教育の推進のために何ができるかということも検討を進めているところです。なお、いわゆる骨太方針2005の中で、「学校での国際教育を推進する」という文言が、盛り込まれたこともございまして、文部科学省でも国際教育の推進のための体制整備について、平成18年度から取り組んでいきたいと考えているところでございます。具体的な制度設計などについては、これから詰めなければいけない点が多くありますが、先ほど報告書の40ページで概念図が出されておりましたが、三角形の真ん中の先進的な取り組みを推進する国際教育拠点の形成という事業が第1点、第2点目が教育資源、外部教育資源の共有化、連携、促進を図る事業を行いたいというのが、具体的な方策として考えているところです。
 第1点目の国際教育拠点につきましては、中核となる学校、あるいは地域においてカリキュラム、教材の開発とか、国際交流等を実践し、他の学校などを先導していくような取組を支援するというのが大きな枠組みです。
 第2点目の、教育資源の共有化、あるいは連携の促進ということについては、学校を支援する外部の人材、あるいは組織、NPO、国際交流団体等の組織に対して、支援を行って、学校の授業づくりですとか、国際教育の授業実践の支援を行うという形での共有、あるいは連携を促進する。
 資料4の左の方にこの報告書の盛り込まれた提言事項について、書かれております。それをどう具体化していくかについては、当然国だけではなくて、各都道府県、市町村、教育委員会、あるいは学校で実現していただくかいう部分もありますが、今申し上げた拠点地域の形成、あるいは共有、連携の強化というような国の事業を行うとともに、各教育委員会、あるいは学校での取組をできるだけ促進、称揚することを通じて、期待される成果を右の方に書いておりますが、これはまさしくこの検討会の報告書でご指摘いただいた、目標というか成果、期待すべき成果ということで、それにつなげるような形で具体的な施策を展開していきたいと考えて検討しております。
 まだ、構想段階ですので、どういう形になるかはわからない段階ではすが、逆に文部科学省、あるいは各関係機関において、今後の取組について、皆様のご意見をいただければ参考にして、反映していきたいと思いますので、時間の許す限り、意見交換をしていただければありがたいと思います。

【池上座長】
 今後の実際の文科省の具体的な取組は非常に大切な部分だと思いますので、ご意見をどんどん出していただいて参考にしていただければと思います。いかがでしょうか。
 まず、具体的な取組2つのうち、先進的取り組みの推進と、教育資源の共有化、連携促進の中に、資源の中で先生たちの有効活用があったように思うのですが、具体的に進めるに当たっては、全国ネットワーク型のさらに組織を通じながら実施するのでしょうか。それとも、文部科学省の国際教育課から直接各都道府県のほうに流していって、行政機構の中で実施していくのでしょうか。

【山脇国際教育課長】
 前者のような新たな組織、センター組織をつくるというのは現下の厳しい財政状況では非常に難しくなっています。
 現在の考え方としては、研究あるいは拠点地域の形成という形では、ある程度の実績、あるいは今までの蓄積がある学校より、そのような取組を伸ばしていただくという形を考えております。都道府県、あるいは市町村の教育委員会等に公募をして、その中の優れた取組について支援をしていくような枠組みを考えたらどうかというイメージです。
 また、共有とか、連携強化についても、これは外部の団体で学校教育、学校における国際教育を支援する団体に対して、国として支援をしたい、と考えていますが、これはある程度目的の枠組みを提示した上で、公募をして、その選定評価をした上で、その中の優れた取組について国として支援するという考え方です。加えて、例えば3年程度でそれが事業としてしっかりと成り立つ効果があるという場合は成り立ちますし、例えば、地方自治体から直接その団体に対して、資金が出して、それが広がっていくまでというような、自立して、機能が確立するまでを国として支援する枠組みにすればどうかと今議論しているところであります。

【多田委員】
 ごく具体的な話ですが、ずっと現場に入っていると、先生方と一緒に授業をしていると、やっぱりビジュアル化の重要性というのはすごく感じます。
 映像のことです。なかなかペーパーだとイメージがわかないものが多いので、よくビデオを持っていって、例えば外部講師の活用の仕方などを見せると、現場に広がりやすいと思います。
 もう一つは、放送大学の、国際理解教育、あるいは国際教育に関する講座が本検討会報告が反映されたものにならないかと思います。

【池上座長】
 現在、教員養成大学のあり方とか、さらには大学のマネジメントの講座を大学院の中につくるとか、そういったことが検討されていますが、人材養成に関する講座の中で、例えば派遣教員の活用法をテーマに取り込む可能性もありますね。今の放送大学のアイデアに似ていると思いますが。
 また、教育現場の自主性の尊重はわかるのですが、こういう新しい課題についての温度差があまりにも甚だしい状況を正すために、いい実例を使うよう薦めることや、国として指導できないものでしょうか。

【樋口審議官】
 その点につきましては、私ども教育の現場主義を進めており、できるだけ教育活動が行われる学校に権限と責任を与えていくということでの行財政システムの一大転換を図ってきているところです。とはいえ、すべて現場任せでいいのかということになると、義務教育を中心にナショナルミニマム、全国的に、やはり共通の水準をきちんと国で設定して、それを担保していく必要がある。その上で、地方が創意工夫を凝らして、特色ある教育活動が行われるようにすると。そのナショナルミニマムの中に、こういう国際化時代とか、情報化時代に対応した人材育成のための必要不可欠な知識・技能や、態度等々を育成することも、新しい学習指導要領を考えていく際には、いつも意識していく必要があるだろうと思っております。

【小野委員】
 この資料4に示されて、今ご説明あったところとも関連しますが、提言事項が短期的な取組と、中期的取組と、年度も示されていますが、できればもう少し先までの取組の具体的なものを話していただけるとわかりやすいと思います。

【奥村委員】
 高等学校あたりでは、拠点校をつくるために、募集をすることについては、国際教育課がやっている「英語が使える日本人の育成」ということでセルハイ(スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール)というものがありますけれども、同じような形で募集しますと、国際科とか英語科とか、女子高に特化してしまうということになりかねません。理系も文系も含め普通科が取り組む例は、全国であまり数が多くないように思われますが、例えば理系に行く人間にこそ語学力や、国際感覚がやはり必要ではないかと思います。拠点校をつくる場合には、ぜひ英語科とか国際科に特化しないで、国際教育というものがすべての生徒に行き渡るような形でないと、本当のリーダー育成につながらないのではないかと思います。

【池上座長】
 このパブリックコメントの中でも、大学入試の中でもそういうものを重視しないと、国際教育の推進は難しいという指摘もありますね。

【奥村委員】
 今、大学入試で後期試験を廃止するという学校が増えてきまして、前期試験だけで、それで十分だという傾向が、特にトップクラスの大学において、強まっています。私の学校で大事に国際感覚を育ててきた生徒が、二次試験で面接と論文で、高くそこのところを評価されて入っていくという、非常に好ましいケースがありました。やはりペーパーだけではない受験というのは、ぜひ門戸を開いておいていただきたいと思います。

【池上座長】
 単にこちら側から国際教育のモデルを出しているだけでは、実際にはうまくいかないという意見ですね。
 国立大学の場合は、自分たちの自主判断に任せてきているのですね。

【樋口審議官】
 それでも、AO入試をはじめ随分多様な入試のあり方が出てきています。

【奥村委員】
 大学全体としては、私立大学も含めた形では、AO入試というのはかなり大きな部分を占めてきていますけれども、やはり国際的なリーダーを育成する大学においてそれができていないということが非常に大きな問題ではないかと思います。

【池上座長】
 京都大学も、今、公共政策大学院の設置を考えていますし、そういう中で国際的に活躍するリーダーを養成していくことができると思います。
 この検討会も、去年の9月から10回重ねまして、いろいろな議論を重ねさせていただいたということで、私ども参加者にとっても非常に勉強になったと思いますし、意識の確認ができたように思います。
 それでは最後に、事務局ということで、樋口審議官から話がございます。

【樋口審議官】
 事務局を代表いたしまして一言御礼を申し上げます。
 この会議、昨年9月から1年間にわたりまして、計10回の熱心なご審議を重ねていただきました。本日、ここに国際教育推進検討会の報告をおまとめいただきました。細部にわたっては、なお事務局とも相談させていただきながら、座長のもとでおまとめいただくことになるわけでございますけれども、10回にわたる審議におきまして、本当に様々な皆様方のご尽力を賜りまして、報告がまとまりましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。
 先ほど、山脇から申し上げましたとおり、私ども、この報告を受けまして18年度の概算要求が8月の末に迫っておりますので、そこに目出しできるものはできる限り、まず政策化していこうと思っております。そして、来年度できないものについても、中長期的に検討していくものはきちんと検討し、予算化し、事業化していくことを考えたいと思っております。また、この報告の中でも「つながる力」等々、いろいろ熱心なご討議をいただきましたけれども、これは施策の重要な指針になりますので、この報告を現場に広く普及して、現場で十分な活用が行われるように、各地の教育委員会に対して、きちんと私どもとして、お伝えをして、この周知を図りながら、この積極的な活用を促して参りたいと思っております。皆様方のご労作でございますので、これが明日からの国際教育に生きるように私どもしても積極的に取り組んで参りたいと思っています。これまでのご尽力に深く感謝申し上げますとともに、今後とも国際教育の発展のために、またご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げまして、御礼のごあいさつとかえさせていただきます。
 どうも、ありがとうございました。

【池上座長】
 力強いお言葉、ありがとうございました。非常に頼もしく思っております。

── 了 ──

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