「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想の策定について

平成14年7月12日
 

1. 趣旨:
  経済・社会等のグローバル化が進展する中、子ども達が21世紀を生き抜くためには、国際的共通語となっている「英語」のコミュニケーション能力を身に付けることが必要であり、このことは、子ども達の将来のためにも、我が国の一層の発展のためにも非常に重要な課題となっている。
  その一方、現状では、日本人の多くが、英語力が十分でないために、外国人との交流において制限を受けたり、適切な評価が得られないといった事態も生じている。同時に、しっかりした国語力に基づき、自らの意見を表現する能力も十分とは言えない。
  このため、日本人に対する英語教育を抜本的に改善する目的で、具体的なアクションプランとして「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を作成することとした。あわせて、国語力の涵養も図ることとした。
   
2. 経緯:
(1)   これまで、文部科学省では、英語教育の重要性に鑑み様々な有識者より意見を聴取してきた。具体的には、昨年1月、「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」の報告を受けた。また、本年1月から5月にかけて、5回にわたり、「英語教育改革に関する懇談会」を開催し、計20人の有識者から意見を聴取した。これらを踏まえて、別添のとおり、「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」をとりまとめた。
(2)   また、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日、閣議決定)においても、人間力戦略の一環として、文部科学省において平成14年度中に英語教育改善のための行動計画をとりまとめることとなっている。
   
3. 今後の進め方:
  この戦略構想に基づき、今後、直ちに実施可能なものは実施に移し、予算の必要なものは平成15年度概算要求を行う。そして、平成15年度政府予算案ができた段階で、本戦略構想を見直し、行動計画として決定する。


(参考)

○経済財政運営と構造改革の基本方針2002(抄)
  (平成14年6月21日)

第2部  経済活性化戦略

2. 6つの戦略、30のアクションプログラム
  (1) 人間力戦略
(個性ある人間教育)
    文部科学省は、「英語が使える日本人」の育成を目指し、平成14年度中に英語教育の改善のための行動計画をとりまとめる。平成15年度から外国人の優秀な外国語指導助手の正規教員等への採用を促進する。


平成14年7月12日

「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想
ー英語力・国語力増進プランー

戦略構想の達成目標 検討課題
国民全体に求められる英語力→中学・高校での達成目標を設定。
中学校卒業段階:挨拶や応対等の平易な会話(同程度の読む・書く・聞く)ができる(卒業者の平均が英検3級程度。)。
高等学校卒業段階:日常の話題に関する通常の会話(同程度の読む・書く・聞く)ができる(高校卒業者の平均が英検準2級〜2級程度。)。
国際社会に活躍する人材等に求められる英語力→各大学が、仕事で英語が使える人材を育成する観点から、達成目標を設定。
「英語教育に関する研究グループの組織」
1年間を目処に結論を出す。
1 各段階で求められる英語力等に関する指標について裏付けのための研究。
2 外部試験結果を指標に関連づけることの妥当性に関する研究。
3 外部試験結果を入試等で活用すること等の方策に関する研究。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4 英語教育に関する研究や基礎的データの集約。
5 学校種を通じて一貫した教育内容の研究。
6 大学の英語教育の在り方に関する研究。
主な政策課題 主要な施策とその目標
1.学習者のモティベーション(動機付け)の高揚
1英語を使う機会の拡充
民間語学教育施設との連携強化等学校と地域が一体となった英語教育の推進。
   
「外国人とのふれあい推進事業」:学校を中心とした英会話サロン、スピーチコンテスト及び留学生との交流活動等の事業を推進(自治体への補助事業)。
   
「高校生の留学促進施策」:高校生の留学機会の拡大(年間1万人の高校生(私費留学生を含む)が海外留学することを目標。また、短期の国際交流事業等への参加も促進。
   
「大学生等の海外留学促進施策」:海外への留学を希望する学生のための海外派遣奨学金の充実。
2入試等の改善
「高校入試」:外部試験結果の入試での活用促進。
   
「大学入試」
1 大学入試センター試験でのリスニングテストの導入(平成18年度実施を目標)。
2 各大学の個別試験における外国語試験の改善・充実。
3 外部試験結果の入試での活用促進。
   
「企業等の採用試験」:使える英語力の所持を重視するよう要請。文部科学省においても、職員の採用、昇任等の際に英語力の所持も重視。
2.教育内容等の改善
〈中学校・高等学校〉
新学習指導要領の推進(→4技能の有機的な関連を図り基礎的・実践的コミュニケーション能力を重視)。
中学・高校において、生徒の意欲・習熟の程度に応じた選択教科の活用又は補充学習の実施等、個に応じた指導の徹底。
   
「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール」:高等学校等(3年間で計100校指定)における先進的な英語教育の実践研究。
   
「外国語教育改善実施状況調査」:少人数指導や習熟度別指導等に関する実施状況及び先進的指導事例を調査。調査結果を公表するとともに、関連施策の進度の基準とする。
   
「外国語教育に関する先進的指導事例集の作成」:教育課程研究センターにて上記調査結果をもとに、先進的授業事例に関する指導事例集を作成。


〈大学〉
優れた英語教育カリキュラムの開発・実践等を行う大学や、特に全課程を英語で授業する大学(又は学部)を重点的に支援。
   
「英語による特別コースへの参加の促進」:留学生を対象として実施されている英語による特別コースへの日本人学生の参加の促進。
3.英語教員の資質向上及び指導体制の充実
1英語教員の資質向上
国内研修(指導者講座):毎年2千名(4週間)。
国外研修:短期118人、長期28人。
   
目標設定:英語教員が備えておくべき英語力の目標値の設定(英検準1級、TOEFL550点、TOEIC730点程度)。
1 英語教員の採用の際に目標とされる英語力の所持を条件の1つとする事を要請。
2 教員の評価に当たり英語力の所持を考慮する事を要請。
   
研修:「英語教員の資質向上のための研修計画」:
1 平成15年度から5カ年計画で中学・高校の全英語教員6万人に対し、集中的に研修を実施(都道府県等への補助事業)。
2 大学院修学休業制度を活用した1年以上の海外研修希望の英語教員の支援(年に計100名、各都道府県2名ずつ)。
7 英語教員が備えておくべき英語力の目標値について裏付けのための研究。
8 効率的な英語の指導方法の研究及び有効な教員養成・研修プログラムの作成等。
2指導体制の充実
ALTの配置(JETプログラムにより5,583人、地方単独事業により2,784人(計約8,400人)。)。
   
目標設定:中学・高校の英語の授業に週1回以上は外国人が参加することを目標。これに必要なALT等の配置を促進(全体で11,500人を目標。)。
   
JETプログラムによるALTの有効活用:国際理解教育や小学校の外国語活動への活用又は特別非常勤講師への任用などを通じて一層ALTの有効活用を促進。
   
外国人(ネイティブ)の正規の教員への採用の促進:上記目標の達成のため、当面3年間で中学について加配措置により300人、将来的に中学・高校について加配措置等により1,000人の配置を目標。
   
英語に堪能な地域社会の人材の活用促進:一定以上の英語力を所持している社会人等について、学校いきいきプランや特別非常勤講師制度等により英語教育への活用を促進する。
4.小学校の英会話活動の充実
「小学校の英会話活動支援方策」:総合的な学習の時間などにおいて英会話活動を行っている小学校について、その回数の3分の1程度は、外国人教員、英語に堪能な者又は中学校等の英語教員による指導が行えるよう支援。
「小学校の英語教育に関する研究協力者会議の組織」:3年間を目処に結論を出す。
1 現行の小学校の英会話活動の実情把握及び分析。
2 次の学習指導要領改訂の議論に向け,小学校の英語教育の在り方を検討する上で必要となる研究やデータ等の整理・問題点の検討。
5.国語力の増進
適切に表現し正確に理解する能力の育成
新学習指導要領の推進(→表現力、理解力等を育て、伝え合う力を高める。)。
児童生徒の意欲・習熟の程度に応じた補充学習の実施等、個に応じた指導の徹底。
子どもの読書活動の推進:「朝の読書」の推進などにより、子どもの読書に親しむ態度を育成し、読書習慣を身に付けさせる。
   
「これからの時代に求められる国語力」:文化審議会において「これからの時代に求められる国語力」を本年度中にとりまとめる。
   
「教員の国語指導力の向上」:小学校の教員等に対し、国語に関する知識や運用能力を向上するための研修を実施。
   
「国語教育改善推進事業」:児童生徒の国語力を総合的に高めるためモデル地域を指定。
 
(注)○:現行施策、☆:新規・拡充施策。

-- 登録:平成21年以前 --