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「幼稚園教員の資質向上について-自ら学ぶ幼稚園教員のために」(報告)

平成14年6月24日
 

幼稚園教員の資質向上に関する調査研究協力者会議報告書

目    次

はじめに
1  幼稚園を取り巻く環境の変化と幼稚園教員に求められる専門性
  1  幼稚園教員の資質向上の意義
  2  幼稚園を取り巻く環境の変化

  (1)  地域社会や家庭の急速な変化
  (2)  幼稚園に対するニーズの多様化
  3  幼稚園教員に求められる専門性
  (1)  幼稚園教員としての資質
  (2)  幼児理解・総合的に指導する力
  (3)  具体的に保育を構想する力、実践力
  (4)  得意分野の育成、教員集団の一員としての協働性
  (5)  特別な教育的配慮を要する幼児に対応する力
  (6)  小学校や保育所との連携を推進する力
  (7)  保護者及び地域社会との関係を構築する力
  (8)  園長など管理職が発揮するリーダーシップ
  (9)  人権に対する理解
2  幼稚園教員の養成・採用・現職の各段階における課題と展望
  1  養成段階における課題と展望

  (1)  養成段階における基本的視点
  (2)  教員志望者自身の多様な体験・得意分野の素地の形成
  (3)  実践力の育成
  (4)  教員養成のための教育環境の充実
  (5)  上級免許状の取得、免許状及び資格の併有
  (6)  幅広い幼稚園教員志望者の確保
  2  採用段階における課題と展望
  (1)  採用段階における基本的視点
  (2)  幅広い能力や経験をもつ者の採用
  (3)  幼稚園運営の現状に即した採用
  (4)  人事交流による人材確保
  (5)  処遇面における配慮
  3  現職段階における課題と展望
  (1)  現職段階における基本的視点
      1  研修の役割と構造化
      2  研修の目的・目標・手法
      3  自主的研修の意義
      4  資質向上への動機づけ
  (2)  園内研修・園外研修の充実
  (3)  教職経験に応じた研修の充実
      1  新任教員・若手教員
      2  中堅教員
      3  管理職
      4  指導力の向上が必要な教員
  (4)  多様なニーズに応じた研修
      1  多様な保育ニーズへの対応・得意分野の育成
      2  上級免許状取得の促進
      3  幼小免許併有機会の拡大
      4  情報通信技術を活用する能力の習得
      5  外部機関の活用・連携
      6  研究活動や国際経験などの活用
  (5)  自主的研修の環境の整備
  (6)  研修方法の充実
      1  実践的な研修・外部講師の招聘
      2  自己点検・自己評価による研修の改善
      3  合同研修
      4  研修成果の共有
  (7)  地方公共団体による研修体制の充実
      1  地方公共団体の役割
      2  市町村間での研修協力体制
      3  国公私立幼稚園の合同研修
  (8) 養成機関との連携及びその研修機能の強化
  (9)  管理職の登用と円滑な登用のための研修
3  幼稚園教員の資質向上に向けた方策
  1  養成と採用・現職の円滑な接続によるトータルな教員の資質向上

  (1)  養成・採用段階からの実践力の重視
      1  実践力の向上とインターンシップの活用
      2  実践力に着目した採用と試用期間の適切な運用
  (2)  経験や年齢に応じた研修の推進
  (3)  養成機関と幼稚園の連携強化
  2  専門性の向上
  (1)  上級免許状取得の促進
  (2)  実践的研修の強化と研修環境の整備
  (3)  情報通信技術の活用
  3  幼稚園教育を支える環境の整備
  (1)  幼児や幼稚園教員を見守る地域に根ざした幼児教育
  (2)  幼稚園教育の高い水準確保を目指す学際的・実践的な研究体制の整備


コラム目次
コラム1 障害のある幼児・障害者とともに  〜園児、保護者、教員が学ぶ幼稚園〜
コラム2 幼稚園と小学校の連携を通して
コラム3 父親の保育参加と情報通信技術を活用した父親と教員の交流
コラム4 社会体験・企業研修
コラム5 幼児教育分野における青年海外協力隊の活動
コラム6 教員養成課程の学生を受け入れて
コラム7 自主的な研究グループの研修会に参加して
コラム8 養成機関と現職教員・学生の連携
コラム9 地域の先生


はじめに

  幼稚園教員の資質の向上は、幼稚園教育の充実のため必要不可欠なことであるが、これまで、教員全体の資質向上の中に含めて論ぜられることはあったものの、特に幼稚園教員についてのみ本格的に議論されたことはなかった。そこで、文部科学省では、平成13年3月に策定した「幼児教育振興プログラム」において、すべての幼稚園教員が適切な時期に必要な研修に参加する機会を充実することを目標に掲げ、幼稚園教員の資質向上に関する調査研究を実施することとした。
  本協力者会議は、幼児教育振興プログラムを受け、幼稚園教員の養成、採用、研修等の在り方について専門的な調査研究を行い、ここに報告書をとりまとめた。この報告書は、日々幼児と生活をともにし、発見や喜びを分かち合い、成長を見守り、必要なときに援助をさしのべる、幼稚園教員やその志望者が、養成から現職段階を通じて、自ら資質向上に取り組んでいくためには、どのような課題があるか、今後の展望と方策は何か、についてとりまとめている。
  この報告書においては、本協力者会議の議論の過程で紹介された事例と併せ、参考となる事例をコラムの形で本文中に掲載した。これらの事例は、幼稚園現場で活躍している教員をはじめとして、本報告書を活用される各位にとって、本報告書を、よりわかりやすく、現実感をもったものとしてくれるであろう。掲載したコラムはあくまでも参考事例であり、個々の教員がそれぞれにとってふさわしい資質向上のための取組を見出すための手がかりとして参照されることが望まれる。
  本報告書をもとに、多くの幼稚園教員が自ら資質の向上に取り組み、国、地方公共団体、関係団体はそれぞれ環境整備に努めることにより、本報告書が我が国の幼稚園教育の一層の振興と幼児のより豊かな成長に寄与することを期待する。

  平成14年6月24日  
  幼稚園教員の資質向上に関する調査研究協力者会議
  座長  無藤  隆


1  幼稚園を取り巻く環境の変化と幼稚園教員に求められる専門性

1  幼稚園教員の資質向上の意義
   幼稚園教員は、幼児教育における中核的な役割を担っているので、幼稚園教員に優れた人材を得、また、その資質向上を図ることは極めて重要である。
  幼稚園教員自らが資質向上に対して取り組むことが重要であり、また、多くの関係者や関係団体がその取組を支援していくこと及びそのための環境の整備を国 や地方公共団体が行うことが重要である。
2  幼稚園を取り巻く環境の変化
  幼稚園を取り巻く環境は、少子化、核家族化、都市化、国際化、情報化、女性の社会進出など、急速に変化してきており、これらの変化を背景として、保護者や地域社会の幼稚園に対するニーズが多様化してきている。
3  幼稚園教員に求められる専門性
  幼稚園教員は、幼児を理解し、活動の場面に応じた適切な指導を行う力をもつことが重要であり、さらに、家庭との連携を十分に図りつつ教育を展開する力なども求められている。
  具体的には、幼児を内面から理解し、総合的に指導する力、具体的に保育を構想する力、実践力、得意分野の育成、教員集団の一員としての協働性、特別な教育的配慮を要する幼児に対応する力、小学校や保育所との連携を推進する力、保護者及び地域社会との関係を構築する力、園長など管理職が発揮するリーダーシップ、人権に対する理解などが、教員に求められる専門性として挙げられる。


1   幼稚園教員の資質向上の意義
    幼児期は、人間形成の基礎が培われる極めて重要な時期であり、他者の存在を意識し始め、人とのつながりや周りへの興味や関心が広がる時期である。幼児は、初めての集団生活である幼稚園において、主体的な活動としての遊びを通じ、他者との違いに気付き、ともに活動する喜びを得、自らの好奇心を高めるなど、生きる力の基礎を得ることができるようになるので、遊びを通した総合的な指導を行うことが重要である。
  幼稚園教員は、幼児を内面から理解した上で、幼児の主体的な活動が確保されるように物的・空間的環境を構成するとともに、また、幼児の活動を豊かにするための役割が期待されており、幼児教育における中核的な役割を担っている。このため、幼稚園教員に優れた人材を得、また、その資質向上を図ることは極めて重要である。この調査研究においては、幼稚園教員の資質を、幼児教育に対する情熱と使命感に立脚した、知識や技術、能力の総体ととらえて、その向上のための課題と展望、今後の方向性及び方策を検討することとした。
  このような幼児教育及び教員の重要性を踏まえると、幼稚園教員及び教員を目指す者は、幼稚園教員として求められる資質を、養成課程や現職研修においてはもちろん、通常の保育を含めた様々な機会を通じて、自ら向上させていくことが重要である。
  さらに、幼稚園教員に求められる資質には、いわゆる「不易」と「流行」の部分があると考えられる。まず、いつの時代にも求められる、幼児を理解し、総合的な指導をするために必要な資質は「不易」として位置付けられ、常に原点に立って向上させていくべきものである。一方、現在、幼稚園を取り巻く環境が大きく変化する中、新たに幼稚園教員に求められるようになってきた資質は、「流行」として位置付けることができ、幅広い生活体験や社会体験を背景とした柔軟性やたくましさを基礎として向上させていくことが重要である。
  教員として求められる資質は多岐にわたり、ライフステージに応じて、不断に向上に努めることが必要である。また、現職教員に対する研修だけでなく、人事や処遇等も含めて総合的に条件を整備していくことが、教員の総合的な資質の向上に必要である。
  また、幼稚園が、自己点検・自己評価を行うことに努め、それらの結果や園の運営状況などに関する情報を園として積極的に公表していくことが求められているが、幼稚園教員の資質向上に関する項目についても、その対象とすることは、保護者や地域の多様なニーズに応え、幼稚園教育の水準を維持向上していくことに資する。
  これらの観点を踏まえて、幼稚園教員自らが資質向上に対して取り組むことが重要であり、また、多くの関係者や関係団体がその取組を支援していくこと及びそのための環境の整備を国や地方公共団体が行うことが重要である。


2   幼稚園を取り巻く環境の変化
 
(1)   地域社会や家庭の急速な変化
    幼稚園を取り巻く環境は、急速に変化してきている。例えば、晩婚化や夫婦あたりの子どもの数の減少傾向などに起因する少子化、三世代以上の同居世帯の減少等による核家族化、人口移動などによる都市化・過疎化、物・人・金融・情報などが国境を越える国際化、インターネットや携帯電話の普及などによる情報化、就労やボランティア活動への参加などによる女性の社会進出、家庭や社会のあらゆる場面での男女共同参画などが挙げられる。このように、地域社会や家庭も含めて、急速な変化が社会の各方面で起きている。
(2)   幼稚園に対するニーズの多様化
    幼稚園を取り巻く環境の急速な変化などを背景として、保護者や地域社会の幼稚園に対するニーズが多様化してきている。地域において、一緒に遊ぶことができる子どもの数が減少してきており、幼児が集団の中で多様な体験を得ることがむずかしくなってきている。また、過保護や過干渉、育児不安など保護者と子どもの関係構築に関する問題が指摘されている。さらに、女性の社会進出が進み、その形態も多様化してきている。このような状況を背景として、幼児にとって初めての集団生活を経験する場としての幼稚園、家庭では得ることのできない多様な経験を得る場としての幼稚園、子育て相談や未就園児の親子登園、「預かり保育」の実施など、地域における幼児教育のセンターとしての幼稚園に対する期待が高まっている。


3   幼稚園教員に求められる専門性
 
(1)   幼稚園教員としての資質
    幼稚園教員は、幼児一人一人の内面を理解し、信頼関係を築きつつ、集団生活の中で発達に必要な経験を幼児自らが獲得していくことができるように環境を構成し、活動の場面に応じた適切な指導を行う力をもつことが重要である。また、家庭との連携を十分に図り、家庭と地域社会との連続性を保ちつつ教育を展開する力なども求められている。その際、幼稚園教育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながることに配慮し、幼児期にふさわしい生活を通して、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うことに留意する必要がある。言うまでもなく、これらの教育活動に携わるにあたっては、豊かな人間性を基礎に、使命感や情熱が求められる。
  以下、幼稚園教員に求められる専門性のうち重要と考えられるものを示し、その資質を向上させるための手がかりとする。
(2)   幼児理解・総合的に指導する力
    幼児は、自発的な活動である遊びを通じて、心身全体を働かせ、様々なことを経験しつつ、理解力、言語表現能力、運動能力、思考力、社会性、道徳性などの多様な能力や性質について、相互に関連させながら総合的な発達を遂げるものである。このような幼児の発達段階や発達過程を、その内面から理解し、生活の中で幼児が示す発見の喜びや達成感を共感をもって受け入れる、といった幼児理解が、基本として重要である。そして、幼児の総合的な発達を促すため、主体性を引き出しつつ、遊びを通じて総合的に指導する力が、専門性として求められており、幼児期の特性に応じて指導する力として重要である。
(3)   具体的に保育を構想する力、実践力
    幼児理解に基づき総合的に指導する力を発揮するためには、一人一人の発達段階と個別の状況に応じて、計画的に、多様な生活体験、自然体験の機会や異年齢交流、交流保育など、具体的に保育を構想し、実践する力が必要である。これは、教員自身の豊かな体験を背景として展開されることが多く、教員及び教員志望者は、生活体験や自然体験、社会奉仕体験など、自らの豊かな体験を積極的に積むことが望まれる。
(4)   得意分野の育成、教員集団の一員としての協働性
    幼稚園教員は、(2)、(3)で述べたように具体的に保育を想定し総合的な指導を展開していくにあたり、それぞれの得意分野を有していることが求められる。それは例えば、体を動かすことを通じての指導であったり、あるいは読み聞かせなどの言語・表現活動の分野、障害のある幼児の指導であったりするかもしれない。この得意分野とは、知識や技術に立脚した活動や内容にとどまらず、幼児の興味を引き出し、幼児の充実感を味わうことができるような、幼児が豊かな活動につながるものである。そして、個別の得意分野を通じて幼児一人一人が豊かな感性をもっていることを認識する機会となるので、教員にとって得意分野の育成は、幼児を理解し、総合的に指導する力を高めることにも通じると考えられる。
  個性あふれる教員同士がコミュニケーションを図りつつ、教員集団の一員として協働関係を構築して、園全体として教育活動を展開していくことが求められている。特にティーム保育においては、複数の教員が持ち味を活かしながら、幼児一人一人に対してより柔軟に対応することができる点に意義があり、得意分野と協働性の発揮が期待されている。
(5)   特別な教育的配慮を要する幼児に対応する力
    三歳児や満三歳に達し幼稚園に入園した時点で幼児は、家庭での経験の差や個人差が大きい時期であり、初めての集団生活の場において、発達の側面から一人一人への対応がとりわけ必要となる。障害のある幼児については、障害の種類や程度等の対応に関して必要な専門的知識や技能を習得する必要がある。外国籍の幼児については、文化や言葉の相違を理解した上で、子どもとその保護者とともに生活していくという姿勢が必要である。
(6)   小学校や保育所との連携を推進する力
    幼稚園と小学校が連携し、幼児期から児童期への移行を円滑にし、一貫した流れを作るため、共通の子ども理解をもち、教員間、幼児・児童間、保護者間の交流を進めるための実行力や企画力などが教員に求められる。また、幼稚園と保育所は、連携を進めつつそれぞれの目的や役割を果たしてきており、幼稚園と保育所の相互交流や幼稚園教諭と保育士の合同研修などを踏まえた能力の発揮が求められる。
(7)   保護者及び地域社会との関係を構築する力
    幼稚園は、通常の教育活動や園児の保護者への対応やPTA活動の場だけではなく、地域の幼児教育のセンターとしての機能を発揮し、未就園児の親子登園、子育て相談、園開放、子育て情報の提供など子育て支援活動を展開することが求められている。このような局面で、園長や教員は、カウンセリングマインドをもち、保護者たちの悩みを受け止め、円滑にコミュニケーションをとることが求められている。
  また、地域に開かれた幼稚園として、保護者や地域の様々な情報をとらえ、これを教育活動に活かしたり、園運営に反映させたりするなどして、幼稚園・家庭・地域社会の関係を深めていくことが求められている。このような場合、園長等は、情報収集及び発信能力及び対外的交渉力を発揮し、幼稚園が地域に貢献するとともに地域の様々な力を幼稚園に導入できるような関係を構築することが求められている。
(8)   園長など管理職が発揮するリーダーシップ
    園長は、教職員組織のリーダーであり、教職員が互いに尊重しつつ協力的な組織を構築し、各教員が資質の向上に取り組むことを支援する責任者であり、アドバイザーでもある。危機管理についても責任者として日頃から備えを怠らないようにすべきである。このように園長の責任は大きく、自らのリーダーシップを十分に発揮できるよう、自己管理と自らの資質向上に努めることが求められている。
(9)   人権に対する理解
    幼児が集団生活を初めて経験する場としての幼稚園において、教員は、いかなる差別や偏見もゆるさないという、人権についての正確な理解に基づき、幼児が、互いを尊重し、社会の基本的なルールの存在に気付き、それに従った行動ができるような素地を身に付けるように指導する力が求められている。今後、国際化や高齢化が進み、男女共同参画社会など、多様な構成員から成る社会がますます形成されていくと考えられるが、これから成長していく幼児にとっても重要な観点である。


コラム1   障害のある幼児・障害者とともに  〜園児、保護者、教員が学ぶ幼稚園〜
  S幼稚園には、障害のある幼児や発達に遅れが見られる幼児が、数人在園しており、他の幼児とともにのびのびとした園生活を過ごしている。この教育活動は、病院や小学校の特殊学級など専門機関との連携と地方自治体の支援のもと進められており、例えば、特殊教育の専門家が週1回園を訪問し、経験の少ない教員たちに助言している。
  幼稚園では、幼児の状況に応じた指導計画を一人一人に立て、ティーム保育体制の中で、きめ細かな対応をとっている。幼児たちは、発達の差にとらわれず、人間として他者を尊び、互いに協力し合うことを、集団生活の中で学んでいる。
  また、障害のあるKさんが、月に1、2回、S幼稚園をボランティアとして訪問し、幼児と交流を続けている。最初は、どのように意思を伝え、受け止めればよいか分からずとまどったり、遊びの楽しさに集中するとKさんの存在を忘れてしまう幼児もいたが、少しずつ互いに理解が進み、Kさんの障害をその人の個性の一つとしてとらえて、交流できるようになった。例えば、幼児たちは、運動機能に障害のあるKさんをサッカーメンバーの一員としてなかなかとらえられなかったが、Kさんが参加できる方法を教員から幼児に提案し、Kさんが参加したいという意思表示をした結果、一緒にサッカーに興じるようになった。そのKさんの姿は、周りの人々にも元気を与えている。
  さらに、幾人かの保護者とともに近隣の養護学校中等部を訪問し、焼き物を共同で焼くなど、障害のある生徒との交流を親子で共有し、障害者への理解を深められるように取り組んでいる。障害を一つの個性ととらえる幼児から、保護者の方が学ぶ機会となっている。

コラム2   幼稚園と小学校の連携を通して
  0幼稚園では、これまでに併設の小学校の行事や生活科の授業に参加するなど、幼児と児童との活動の交流を行ってきたが、幼小のより一層の滑らかな接続を図ることを目的として、幼稚園教員が小学校一年生の授業に参加することにした。
  二月のある日、年長組が小学校一年生の招待を受けて、小学校に出掛けて、コマやなわとびで遊んだり、校内を案内してもらったりした。小学校では、年長児との交流の次の時限に、次回の交流に向けて今回の交流の反省と改善点について話し合った。幼稚園教員のA先生の役割は、その話し合いに参加することである。
  話し合いは、それぞれの児童が年長児とどのようなかかわりをもったか報告し合うことから始まり、最後に、次回、再度幼稚園児を受け入れるにあたって改善することは何かが問題となった。児童の一人が、A先生に対して、「幼稚園の子どもたちがどんなことに困っているか教えて下さい」という質問をした。
  A先生は、交流の中で、年長児が、いろいろなことを発見したり楽しんだりすることができたので、そのことを伝えた。しかし、児童の一人から「先生、幼稚園の子どもが困ったことを教えて」という質問が再度出された。ここで初めて、A先生は、一年生が幼児とは異なり、課題を解決するためにはどうするか、問題意識をもって学習に臨んでいることを知った。A先生は、この授業に小学校の教師として参加するにあたっての認識が十分ではなかったことを反省した。
  こうした交流を実施する際大切なことは、幼児、児童それぞれにとって実り多いものとなるように交流の仕方を工夫するとともに、教員も、互いの教育について学ぶことである。そのことにより、幼稚園と小学校の連携が一層深まり、同時に、教員一人一人の資質の向上につながっていくと考える。

コラム3   父親の保育参加と情報通信技術を活用した父親と教員の交流
  H幼稚園では、父親の保育参加プログラムを10年前から土曜日の午前中に実施してきた。その中で30分程度をティータイムとして、父親同士が気軽に話し合える場を設け、園長や教員も参加した。ここでは、父親の生活や考えなど園長や教員にとっても参考になることが多く、また、園の教育方針や教育内容などを父親に伝え、理解を深められた。
  3年ほど前に、父親同士の交流を深めるために、父親の会は独自のHP(ホームページ)を立ち上げた。その中の掲示板コーナーでは、父親や母親、そして教員も参加して情報交換が行われている。例えば、幼稚園の芋掘りに5人程度の父親の補助を依頼する旨を掲示板に園側から書き込むと、掲示板の管理人の骨折りもあって、即座に人数が集まるなど、情報通信技術が幼稚園にとって大きなプラスをもたらしてくれると実感した。
  また、地域の中の一般の方からH幼稚園についての質問が投稿されたことがあったが、在園児の父親や母親が、H幼稚園を選択した理由やH幼稚園の特色等をわかりやすく書き込んでいた。電子媒体上の活動が円滑に進んだのは、父親たちの地域貢献への姿勢や、土曜日の保育参加での情報交換があったからではないかと思われる。
  今では、教員が自主的にマスターした作成技術によりH幼稚園のHPを開設し、教育内容や子育て支援情報、園歌もHPを通じて発信している。当園に入園を希望する保護者の3割がインターネットで情報を収集するようになっており、これからもインターネットの長所を活かし、欠点を上手にカバーしながら、活用していきたいとのことである。


2  幼稚園教員の養成・採用・現職の各段階における課題と展望

  養成段階における課題と展望
    養成段階における基本的視点は、幼児理解に基づき、遊びを通じて総合的に指導するという幼稚園教員の基盤的な専門性を養成することにある。養成段階における課題としては、教員志望者自身の多様な体験の確保や得意分野の素地の形成、実践力の育成、教員養成のための教育環境の充実、上級免許状の取得や免許状及び資格の併有、幅広い幼稚園教員志望者の確保が挙げられる。
  採用段階における課題と展望
    採用段階における基本的視点は、幼稚園における年齢、経験及び性別などの職員構成に配慮した採用の工夫を行うことにある。採用段階における課題としては、幅広い能力や経験をもつ者の採用、幼稚園運営の現状に即した採用、人事交流による人材確保、処遇面における配慮が挙げられる。
  現職段階における課題と展望
    現職段階における基本的視点は、研修の役割を踏まえ、研修の機能や位置付けを明確化して、効果的な研修の展開を図ることが必要であること、研修の目的・  目標を明確化し手法を工夫すること、研修だけではなく、あらゆる機会を通じて教員としての資質を向上させていく姿勢・取組が重要であること、人事、処遇などの条件整備についても考慮し、総合的に資質向上を推進することが挙げられる。
  現職段階における課題としては、園内研修・園外研修の充実、教職経験に応じた研修の充実、多様なニーズに対応した研修、自主的研修の環境の整備、研修方法の充実、地方公共団体による研修体制の充実、養成機関との連携及びその研修機能の強化、管理職の登用と円滑な登用のための研修が挙げられる。

  養成段階における課題と展望
 
(1)   養成段階における基本的視点
    教員養成段階では、幼児の総合的な発達を促すため、幼児理解に基づき、遊びを通じて総合的に指導するという幼稚園教員の基盤的な専門性を養成することが、まず取り組むべき重要なことである。その際、教員が具体的に保育を構想し、実践する力の基盤を形成することが求められる。
(2)   教員志望者自身の多様な体験・得意分野の素地の形成
    少子化や都市化など社会の様々な変化もあいまって、柔軟性やたくましさを備えた教員になるために必要と考えられる、自らの生活体験や自然体験、社会奉仕体験などが不足している者も、教員志望者の中には、見受けられる。学生の自主的活動などを奨励し、多様な体験を得る機会を増やすことが望ましい。
  また、多様な体験を基礎としながら、特技や自らの関心事項を深めることも、将来、教員として得意分野を育成していく素地を形成し、本格的な得意分野の育成に努める現職段階への円滑な移行を図るという観点から、適当と考えられる。
(3)   実践力の育成
    採用されて間もない教員の中には、実践力の基礎に欠ける者が散見される。在学中に幼稚園の現場を経験する機会が教育実習以外にほとんどなく、幼稚園教員という職業のイメージをつかみ、理論と実践とを結び付ける機会や、教員志望者自身の豊かな生活体験が欠けている点が課題と考えられる。
  養成機関においては、大学改革の一環などで、カリキュラムの検討や授業に関する評価制度を通じて、実践的な指導力に対するニーズへの対応の改善に努めることが重要である。そのためには、養成機関が、幼稚園との連携を強化し、幼稚園現場からのニーズをもとに、カリキュラムや授業の中で理論と実践を結び付けることや、学生に、早い段階から、インターンシップなどにより幼稚園現場での実践を経験する機会を与えることなどの工夫をすることも重要である。
(4)   教員養成のための教育環境の充実
    幼児教育に関する研究集録や教材は、所在がばらばらで入手しにくい状況にある。大学等養成機関は、幼稚園、地方公共団体、教育関係団体等と連携して、情報通信技術を活用して、研究集録や教材を、収集・分類し、学生を含めたより多くの関係者が教材として活用できるようにし、教員養成環境の充実を図る必要がある。また、教材等の開発段階においても、情報通信技術を活用することが期待される。
(5)   上級免許状の取得、免許状及び資格の併有
    養成段階において、履修内容が豊富であるのは求められる専門性が高度化・多様化している結果と考えられる。この変化に見合った養成期間を確保するために、養成機関が短期大学から大学へ課程を変更する事例も見られるように、養成段階の修了時点での、ニーズに見合った専門性の確保を図っていくことが重要である。
  教員に対して要請される専門性が多岐にわたり、また、幼稚園教諭と小学校教諭の免許状や幼稚園教諭免許状と保育士資格など、複数の免許状や資格の取得に努めるため、学生が養成段階で履修する内容が質量とも充実してきている。併有を促進する観点から要取得単位数の軽減措置や養成機関におけるカリキュラムの見直しなどが進められてきたが、個々の専門性に配意しながら、さらに併有のための条件整備を進めていくことが望ましい。
(6)   幅広い幼稚園教員志望者の確保
    幼児教育に対する熱意がある教員を確保するために、養成機関への入学者選抜段階で、入学試験内容や方法を工夫して、幼児教育に対する考えや姿勢を加味した選抜を行うことも一策である。
  高校生などの保育参加プログラムが実施されているが、教員志望者だけでなく、そうでない者も保育体験者として幼稚園に受け入れることは、幼児や幼児教育に対する理解や関心を高め、ひいては、潜在的教員志望者を増やすことにつながることも期待できる。

  採用段階における課題と展望
 
(1)   採用段階における基本的視点
    幼稚園において、多様な経験や能力をもつ教員が、教員集団を形成し、相乗効果を発揮できるようにしていくという観点から、年齢、経験及び性別などの職員構成に配慮した採用の工夫を行うことが重要である。
(2)   幅広い能力や経験をもつ者の採用
    教員の中には、生活体験や自然体験、社会奉仕体験等が不足している者が見受けられる。具体的に保育を構想し、実践する力をもつ者を採用するためにも、採用段階において、面接方法などを工夫して、多様な体験や体験に対して学ぶ姿勢などを加味した評価をすることが望ましい。
  また、新規に採用する幼稚園教員は、年齢が若く、社会経験が少ない場合が多い。民間企業や民間団体での経験がある者や子育て経験がある者の採用や幼稚園教員経験者の再雇用の機会を増やすと、既に幼稚園で勤務している教員にとっても、新しい経験や刺激となり、開かれた幼稚園運営にも資する。
  小学校教員免許状や養護学校教員免許状、保育士資格などを併有する者は、異なる専門性も修得していると考えられ、それらの者を採用することも有効である。
(3)   幼稚園運営の現状に即した採用
    幼稚園運営における最新かつ現実に即した動向を把握する幼稚園長などが、面接官として、採用に関する意思決定に関与することも、幼稚園現場で必要とされる人材の採用に寄与する。
(4)   人事交流による人材確保
    小学校教員や養護学校教員など他校種の教員や保育士と幼稚園教員との人事交流は、異なる専門性を幼稚園教員集団にもたらすと考えられ、有効である。その際、任命権者の相違や処遇の相違が交流人事を実態上阻むことにならないよう、実務的な工夫をすることが必要である。
(5)   処遇面における配慮
    教員のもつ多様な経験や能力を活かすためには、職歴や経験、能力について処遇面においても配慮することが必要である。
  例えば、公立幼稚園においては、幼稚園教員を行政職で採用している場合があるが、教育職ないしはそれに準じる俸給表の適用など、適切な処遇が望まれる。また、「預かり保育」などのために採用された非常勤職員についても、その経験や能力などを考慮した上で、適切に処遇していくことが望ましい。


  現職段階における課題と展望
 
(1)   現職段階における基本的視点
 
1   研修の役割と構造化
  研修とは、教員として必要な基本的な資質を備えていることを前提に採用された教員が、幼児理解や保育に必要な基本的知識及び技能をさらに高めるとともに、得意分野を育成し、多様な保育ニーズへの対応や開かれた幼稚園運営などに資する能力を磨くなど、年齢や経験に応じて、資質の向上を図る機会である。通常の保育を離れ、改めて行う研修の場だけではなく、園における日常の教育活動や運営活動を通じて資質を向上する機会を、各々の教員が意識し、活用していくことが必要である。
  研修と通常の保育活動、園外研修と園内研修など、それぞれの機能や位置付けを明確にし(構造化)、それぞれの機能を組み合わせることにより、効果的な研修の展開を図ることが必要である。研修により高める能力を明確化して、研修を効果的に進めるためには、教員の能力の評価を前提に研修プログラムを組み、ないしは選択できるようにすることが必要である。また、教員の研修成果についての評価を行い、教員に対する今後の指導やその研修に反映させていく一方、研修プログラム自体を改善し、その水準をあげていくことが必要である。
2   研修の目的・目標・手法
  研修の目的や研修により達成すべき目標を明確化し、研修を実施または研修に送り出す園長や他の教員と研修を受ける教員などが、研修の内容や目標に関する情報を共有化することが必要である。
目標の達成可能性がある程度現実的でないと、職務や研修に対する動機が高まりにくいと言われている。園長は、教員との対話等を通じて、教員一人一人が有する能力や抱える状況を把握し、教員にとって望ましい目標や身に付けるべき能力、受けるべき研修などに関するアドバイザーとしての役割を果たすことが期待される。
  研修ないしは通常の勤務の中で、理論や実践に関する研修に加えて、「気楽にまじめな話」をする場を設け、自由な意見交換をできるようにすることは、職場への帰属感や自己を向上させようとする動機を高める効果があると言われているが、このような方法を活用することも有効である。
3   自主的研修の意義
  職務による研修だけでなく、教員は自主的に資質向上に取り組むことがそもそも重要であり、自主的に行う研修は、教員が主体的に取り組むものであることから、その効果も高まると考えられる。また、改めて研修を行うだけでなく、日常の活動や地域との交流活動など、あらゆる機会を通じて、教員として資質を向上させていく姿勢と取組が重要である。
4   資質向上への動機づけ
  研修にのみ依存して、教員の資質向上を図ることは困難である。研修を各園の教育目標や運営方針と関連付けることや、人事、処遇など他の条件整備についても考慮することが、各教員の資質向上への取組を総合的に進めるためには必要である。
  教員の資質向上に対する動機づけは、達成感、評価、人事面での処遇、表彰、報酬など、多様な形態がありうることを視野に入れて、現職教員にいわゆる現職研修を含む、広い意味での資質向上への取組を促すような仕組みを構築していくことは重要である。
(2)   園内研修・園外研修の充実
    園内研修は、通常の職場で受けることができ、教員の能力や置かれている環境を把握した指導者の下で行われることが多く、効果が高いと考えられる。しかしながら、幼稚園は比較的規模が小さく、教員数も限られているため、メンバーや議論の展開が固定化しやすく、マンネリ化しやすいという課題がある。外部講師や専門家の参加を得、または、近隣の幼稚園同士で協力して合同研修を行うなど、マンネリ化しないような工夫が必要である。
  さらに、園内研修では教員の年齢がばらばらで、保育課題が異なっている教員が集まっている場合も多いため、ライフステージに応じた研修に取り組むことは困難である。そこで、同じくらいのライフステージに達した教員が集まりやすい園外研修で、ライフステージに応じた研修に力を入れることが重要である。
  しかし、各幼稚園の規模が小さいため、代替教員を園内等で確保することが困難であるため、園外研修に教員が参加しにくくなっている場合がある。代替教員の確保などにより、園外研修への参加を促進するための工夫が必要である。
  他園での保育実践や人事異動による職場移動などにより、通常の保育と違う環境に自らを置くことも、研修と同様の効果があることを意識し、活用していくことが有効である。
(3)   教職経験に応じた研修の充実
    新任教員、採用後2、3年が経過した若手教員、経験10年程度の中堅教員、さらに管理職など、年齢や経験に応じて、修得すべき知識や技術、学びたい事柄、抱える課題は異なる。年齢や経験に応じた研修を行い、中長期的な見通しをもって教員の資質向上を図ることが重要である。
  教員の能力や適性に関する評価とそれを反映した研修が、十分なされてきているとは言えない。10年経験者研修に際して、個々の教員の能力、適性等を評価し、その評価の結果に基づき研修プログラムを組むことが、制度上義務付けられたが、研修全般において、この趣旨を念頭に置いて、研修の効果をあげることが望ましい。
1   新任教員・若手教員
新任教員や若手教員は、まず、幼児理解や保育に必要な基本的知識及び技能を高めるとともに、他の教職員や保護者とのコミュニケーション能力を習得することが求められる。また、各教員の持ち味や特技を活かして、得意分野を育成していくことも求められる。これらを踏まえた研修プログラムを構成することが必要である。
  新任教員は、学ぶべき事項が多いため研修の必要性が高いと考えられるが、一方、幼児とともに過ごすことが深い幼児理解につながっていくことになるので、実践を研修の素材として取り入れるなどの工夫が必要である。
2   中堅教員
中堅教員は、一通りの専門的な知識や技術を身に付けた段階に到達していると考えられるが、教員が行う教育は各人の人間性や生き方をベースにしている面があること、教職経験以外の社会経験などが少ないこと、教員集団のリーダーとなるための資質の基礎を身に付け、弱点となっている資質を強化するよい機会であることなどを踏まえ、研修を受ける教員の能力や研修意欲を考慮した、研修プログラムを構成することが必要である。
3   管理職
園長等の管理職は、今までの経験や能力を基礎としながら、園の教育目標・運営方針を示し、園内における教職員間の相互理解や情報の共有、組織としての意思決定を行い、教育活動の実施体制を構築するなど園内をまとめてリードする管理能力、危機管理能力、地域や外部機関との関係を構築し、相互協力関係を形成する能力、目的を明確化し、相手にわかりやすく意思を伝達し、相互理解を深める能力などを身に付けることが重要であり、そのような研修プログラムを構成することが必要である。
  管理職は、自己研鑽・自己研修を率先垂範し、リーダーとして自らが向上しなければ、管理職をトップとする集団のレベルは向上しない点を、管理職自身十分に意識すべきである。
4   指導力の向上が必要な教員
自発的に研修や研究に取り組み、年齢や経験に裏打ちされた教育活動を展開する教員が多く存在する一方、年齢や経験に応じた指導力が十分に備わっていない教員は、指導力の向上が必要であり、年齢や経験にとらわれずに、必要な研修をくりかえし受けるなどの工夫が求められる。
(4)   多様なニーズに応じた研修
    幼稚園教員に求められる専門性は多岐にわたっている。幼稚園教員が、採用後に身に付けていくべき知識や技術を、総合的・効果的に修得するためには、研修と日常の保育を組み合わせる視点をもちつつ、次のような要素を組み合わせ、効果的な研修プログラムを構成していくことが重要である。
1   多様な保育ニーズへの対応・得意分野の育成
  深い幼児理解を基礎とした総合的な指導力・保育構想力に加え、多様な保育ニーズに対応するための能力の習得が必要である。例えば、幼児期にふさわしい読み聞かせ、自然体験、安全確保、戸外遊びや運動遊び、表現活動や創作活動の展開、外国籍の子どもの受け入れも含めた異文化理解や国際交流、三歳児など低年齢児及び障害のある幼児の指導、子育て相談への対応やカウンセリングマインドの修得、家庭的な問題を背後に抱える子どもへの対応などについての能力を養うための研修プログラムが必要である。
  その中で、教員は各々の得意分野の育成に努め、導入が進められているティーム保育においても、各人が得意分野の能力を十分発揮できるようにしていくことが必要である。
2   上級免許状取得の促進
  二種免許状を有する現職の幼稚園教員が、教育委員会や養成機関が開催する認定講習などにより一種免許状を取得することは、専門性の向上や高度化・多様化するニーズに対応していく観点から重要なことであり、資質の向上を図る機会として活用していくべきである。
  また、大学院修学制度を活用して、専修免許状を取得することも、さらなる向上に向けて有効である。
3   幼小免許併有機会の拡大
幼稚園教員ないしはその経験者が小学校教員の免許状を併せて取得する際、必要単位数が軽減されるとともに、その単位を大学だけでなく教育委員会が開設する講習等においても修得できることとする制度が創設された。この制度を活用して幼稚園教員と小学校教員の免許状の併有を進めることは、幼稚園から小学校への円滑な移行に資するものであり、重要である。
4   情報通信技術を活用する能力の習得
  インターネットなど情報通信技術を活用して、情報の収集や発信ができるようにするための研修が必要である。幼稚園運営に有用な情報の収集・整理、保護者や地域に向けた情報発信などに活用されることが期待できるほか、研修の方法として情報通信技術を活用することにもつながる。
5   外部機関の活用・連携
  幼稚園とは異なる、企業やボランティア団体などにおいて仕事をする経験を得ることにより、教員という職業や園運営を客観化・相対化することが可能となり、また、あえて専門外の立場に自らの身を置くことによるコミュニケーション能力の向上にも資する。
6   研究活動や国際経験などの活用
  研究活動などは、教員の資質向上面で研修と同様の効果が得られる場合もあり、積極的に取り組むことも有効である。また、留学や青年海外協力隊への参加などの国際経験は、外国語を操り、外国文化を理解するだけでなく、言語・文化の違いを踏まえた意思疎通を行う能力や日本と異なる環境での経験により、自己や自らの社会的背景について客観的な理解が深まり、コミュニケーション能力や国際化時代に対応した幼児教育を進める能力の向上につながる。
(5)   自主的研修の環境の整備
    教員が自ら学ぶ姿勢も問われており、各種の関係団体における研修や、自主研究グループなどによる勉強会などに参加し、資質向上に努めることも重要である。
  通常の保育を離れ、改めて研修を行うだけではなく、園における日常の教育活動や運営活動を通じ、研修の成果を活かしながら、資質を向上する機会を、各々の教員が意識しかつ活用していくことが有効である。
  自ら学ぶ姿勢は、幼稚園が地域での行事に積極的に協力するなどの機会においても、地域社会の人たちから新しい刺激を受け、経験を積むことにつながると考えられる。
(6)   研修方法の充実
    幼稚園教育の特性や幼稚園の人的・物的体制の特徴を踏まえて、効果的な研修方法を充実させて、今まで十分に対応できていなかった課題の解決を図ることが重要である。
1   実践的な研修・外部講師の招聘
理論的な研修に加え、自らの保育を公開し、それに対する専門家からの指導やアドバイスを得るなど、実践的な研修を充実させることが重要である。
  専門性を高め、また、マンネリ化を避けるためには、大学などの研究者、ボランティアや民間企業人など外部の人材を、研修の講師として招き、その知見や助言を得ることが有効である。
2   自己点検・自己評価による研修の改善
幼稚園においては、教育内容や研修などに関する自己点検・自己評価の結果を活用して、研修の内容や方法を見直し、教員の資質を向上させるための研修プログラムを策定し、研修体制を確保することが求められる。
3   合同研修
国・公・私立の幼稚園教員、幼稚園と小学校等の教員、幼稚園教員と保育士など、通常の保育や園内研修では経験できない、他の機関の教職員等との情報や意見を交換する機会を増やすことが有効である。
4   研修成果の共有
研修や研究により得られた成果が、各園や各地域に止まり、情報共有が十分なされてきていない状況が見られる。特に地方部では、情報を入手することが困難な場合もある。成果を電子化し、また、情報通信技術を活用して、情報を共有することは、直接研究に携われなかった教員や研修に参加しなかった教員にとっても、自主的研修活動などの教材として活用できるので、有効である。
(7)   地方公共団体による研修体制の充実
 
1   地方公共団体の役割
  地域の実情に応じて、各都道府県と各市町村において策定されつつある幼児教育の振興に関する政策プログラムの中で、幼稚園教員の資質向上に関する取組を位置付け、地方公共団体においても積極的に取組を進めていくことが期待される。
  幼稚園教員の資質の向上のための各地方公共団体の役割は、研修計画の策定や研修の実施主体、関係機関の連携や協力を調整する主体、研修を受けやすくする環境を整備する主体などが求められている。多岐にわたる研修ニーズに対応するためには、各地方公共団体は、域内の幼稚園や養成機関・関係団体・研修グループ、他の地方公共団体や関係機関などと十分に連携をとり、情報共用を図ることなどが重要である。
2   市町村間での研修協力体制
  単独の市町村では、園数が少なかったり、研修を行う人的物的資源が限られていたりするため、幼稚園教育に特化した研修を多岐にわたって展開することが、困難な場合もある。都道府県が調整役を果たしつつ、近隣の複数市町村が合同研修を行うなどの工夫が必要である。
  また、教員が所属市町村の研修に参加できない事情があった場合、他の自治体の研修に参加することを認めるなど、自治体間での柔軟な協力体制を構築することも有効である。
3   国公私立幼稚園の合同研修
  国公私立の幼稚園教員が合同で研修を受ける機会を、研修日程などの調整を十分に行うことなどにより、充実させることは、研修の効果をあげるためにも重要である。
(8)   養成機関との連携及びその研修機能の強化
    養成機関は、その専門性を発揮して、現職教員の研修機能を充実させることが期待される。
二種免許状を有する現職教員が一種免許状を取得するため、また、幼稚園教員や経験者が小学校教員等の免許状を併せて取得するための、文部科学大臣が認定する免許法認定講習等を養成機関が開催し、養成機関の現職教員を研修する機能を充実させることは、養成機関の専門性を発揮する機会であり、また、現職教員が抱える実践上の課題を養成機関が直接に把握できる機会となる。
  現職教員が専修免許状を取得するために、大学院修学制度を活用して、大学院生として授業やゼミナールなどに参加することは、現職教員にとっては新しい理論や研究を学ぶ機会となり、学生にとっては現職教員の経験から実践について学ぶ機会となることが期待される。
(9)   管理職の登用と円滑な登用のための研修
    幼稚園長が管理職として幼稚園教員をリードしていく役割を果たすためには、幼稚園教育の理念や基本的知識を理解していることが必要である。しかし、必ずしも幼稚園教育経験者にだけ限る必要はなく、小学校教員の経験などをもつ者が幼稚園長として登用され、その結果、幼稚園と小学校の連携が進めやすくなる場合もある。
  小学校の校長や教頭が幼稚園長を兼任する事例があるが、兼任の園長の幼稚園教育に対する認識が不足していることから、教員等との間で齟齬が生じるケースもあり、幼稚園教育の認識が不足する園長には、それを補う研修を行うなど、円滑な運営のための工夫を図る必要がある。


コラム4   社会体験・企業研修
  U幼稚園の主任のD先生は、休日は自分が住む地域の青少年を対象にした育成会のリーダーとして活躍している。育成会では、月1回の定例研修会の他に夏の宿泊研修会やレクリエーション大会等の企画立案をし研修教材を準備して、青少年に対する指導にあたっている。また、育成会のリーダーとしての指導力を高めるために、育成者研修会にも参加しているので、D先生の休日は忙しい。
  しかし、D先生は、育成会活動に参加していると、たくさんの人との出会いがあり、充実感を感じている。特に、小学校以上の子どもと一緒に活動することは、自分にとって新鮮である。児童期の子どもたちのものの見方や感じ方に触れることを通して、児童期の発達の特性を知り、改めて幼児期から児童期への発達を見直すことができた。また、児童の保護者とかかわる中で、幼児をもつ保護者の悩みとは異なっていることを知った。
D先生は、夏の長期休業期間中に、ある商社の管理職の研修に3日間参加し、リーダーとしての役割や組織づくりについて学んだ経験もある。こうした研修の成果は、すぐに幼稚園教育に活かせるものではないがこれまでの自分にはない視点を学び、広い視野をもって、幼稚園教育を考えることができるようになったと報告している。
  U幼稚園の園長先生は、幼稚園教員の研修について、まず保育の専門性を高めることが重要だが、幼稚園の世界の中だけで研修を受けていては、その経験は限られてしまうと考えている。そこで、教員自身の視野を広げるという観点から、社会体験や企業体験を積極的に進めている。もちろん、こうした研修は、意欲のある教員がそのライフステージに応じて行うことが有効である。

コラム5   幼児教育分野における青年海外協力隊の活動
  A先生は、改革期のモンゴルに行き、2年間、幼稚園での実践活動を経験した。
  モンゴルでは就学前教育機関である幼稚園に、おおよそ3歳から7歳までの子どもが通っている。子どもは教員が準備したスケジュールにそって一日約8〜10時間を幼稚園で過ごす。内容は、机に向かい先生の質問に答えるという授業形式がほとんどであった。
  年に一度、教員がそれぞれのテーマにそって教材を準備し、初めて接する子どもに30分間保育をするというコンテストが、区や市単位で開催される。そこで、A先生は、子どもが「遊びながら学ぶ」という日本の幼稚園教育の方式をモンゴルの教員たちに伝え、それに基づいた発表を試みた。コンテストでは、「子どもたちの表情が生き生きとしていてよかった。」という評価と、「日本のやり方は楽しそうだがモンゴルでは通用しない。教えるべきことはきちんと教える必要がある。」という評価を受け、日本の幼稚園のよさを伝えることがある程度できたが、幼稚園教育も国のもつ文化や社会状況を背景に成り立っていること、日本の幼稚園教育が様々に評価されうることを知った。
  また、幼稚園の年長の子どもが出場する歌・踊り・体操などの大会がある。子どもたちが練習する様子は、A先生の目から見るととても厳しいものと思えたが、子ども自身が出場に誇りをもつとともに、教員たちは子どもたちの力を信じて、練習を毎日続けていた。その姿が印象に残り、子どもが本来もつ力や可能性をどのように引き出していくか、という幼稚園教育がもつ本来の役割を再考させられ、国により、その方法も異なるということに気付いた。
  このような経験を経て日本に戻ったA先生は、モンゴルで感じた視点を大事にしながら、日本の子どもたちには何が必要か、何を大事にしていかなければならないかをよく見極めて、日々の保育に努めたいと考えている。

コラム6   教員養成課程の学生を受け入れて
  教員養成大学の四年生になったSさんは、卒業論文のテーマに幼児教育を取り上げたことから、資料収集のため週2日、N幼稚園に通うことになった。幼稚園では、五歳児の学級で幼児たちと一緒に生活しながら幼児の観察記録を継続的にとった。
  Sさんは、以前に教育実習で、幼児の発達を理解した上で指導計画を作成してきたつもりだったが、今回の園訪問は教育実習と異なり、比較的長かったので、幼児の変容を実感としてとらえることができ、指導計画がもつ意義を、やっと実際の幼児の姿と結び付けて考えられるようになったと実感した。また、教育実習のときと異なり、ゆとりをもって幼児とかかわることができ、その結果、幼児の豊かな活動を引き出すための教員のかかわりについて、多角的な視点からとらえることもできるようになった。これから教員として仕事をしていくことへの自信にもつながったと思う。
  一方、N幼稚園の先生たちも、Sさんを迎えることで、新たな発見をしている。Sさんの記録には、担任では気付かない幼児の姿が書かれていることが多く、担任のY先生は、Sさんの記録を読むことにより、改めて幼児の姿を見直し、幼児理解を深めている。
  また、Sさんを通して、教員養成大学の教員とも交流できるようになり、時々園内研修に来てもらい、助言をもらえるようになった。N幼稚園は、小規模で教員数が少なく、園内での研修では議論が堂々巡りになりがちであったが、専門家からの客観的な助言をもらうことにより議論が活発になり、研修を充実することができた。


3  幼稚園教員の資質向上に向けた方策

  養成と採用・現職の円滑な接続によるトータルな教員の資質向上
    養成、採用段階からの実践力を重視する観点から、養成段階において、実践力を重視したカリキュラムにより理論と実践を結び付けること、インターンシップの活用や実践力に着目した採用と試用期間の適切な運用を図ることが考えられる。さらに、現職段階では、幼稚園教員にとり適切な10年経験者研修の実施など、経験や年齢に応じた研修を推進し、また、養成機関と幼稚園が連携を強化し、トータルな教員の資質向上を推進することが重要である。
  専門性の向上
    上級免許状の取得や免許状の併有の促進が重要である。
  保育公開や専門家の活用による実践力の強化、他園研修や企業やボランティア団体などでの職場研修、教員の表彰制度の活用など研修に対する動機づけなど、専門性の向上を図ることが重要である。
  コンピュータや通信環境など、情報通信技術を活用できる環境の整備が重要である。
  幼稚園教育を支える環境の整備
    開かれた幼稚園を構築し、自己点検・自己評価を進め、情報を提供するとともに、幼稚園に対する保護者や地域のニーズなどを把握して、的確に対応することは、教員が地域に根ざした幼児教育の担い手としての能力を発揮することにつながる。
  幼児教育に関する研究成果を収集・分類し、広く情報提供し、また、幼児を対象とする様々な分野にかかわる学術的な研究と実践を統括する学際的研究センター機能が期待され、教材開発や研修支援の機能も担うことが期待される。

  養成と採用・現職の円滑な接続によるトータルな教員の資質向上
    養成・採用から現職までの段階を、全体を見通して、教員が資質向上を図ることができる環境を整備していくことが重要である。具体的には、多様なニーズに対応していくことが求められている時代において、資質のうち養成段階で特に力を入れる部分と教員になった後の現職段階で重点的に修得する部分を分けつつ、養成と採用・現職を関連付けながら、養成機関、幼稚園、地方公共団体などにおけるあらゆる資源や機能を活用して、個々の教員が自ら資質向上を図れるようにすることである。
(1) 養成・採用段階からの実践力の重視
 
1   実践力の向上とインターンシップの活用
  養成段階から採用を経て現職の教育活動へ円滑に移行するためには、幼稚園教員の基盤となる専門性を形成する養成段階において、実践力を重視したカリキュラムの検討、授業における理論と実践を結び付けることが必要である。このため、幼稚園の現職教員や園長が学生に講義する機会を設けたり、在学中の早い段階から、学生がインターンシップを活用して、幼稚園現場を経験することは、教員としての自らの適性を自覚し、また教員という職種をできるだけ理解するためにも有効である。なお、インターンシップとは、学生が在学中に、企業等で自らの専攻や将来の職歴に関連した就業体験を行うことを、一般的には広く総称する。
  通常のカリキュラムとの関係を考慮する必要があるが、インターンシップの活用を進めるためには、養成機関が学生に対して制度の趣旨や内容を十分に情報提供するとともに、インターンシップを授業科目として位置付けるなど、早い段階から幼稚園現場での実践を経験する機会を与えるなどの工夫をすることが望ましい。また、学生を受け入れることができる幼稚園との間でどのような準備をしていけばよいか、幼稚園に関する情報を、養成機関や学生に対してどのように提供すれば効果的か、どの程度の期間をとればよいかなどについて、各地方での取組を含めて、より効果的な実施のための検討が進められることを期待する。
  また、採用段階においても、インターンシップの経験及び成果を適切に評価することが望ましい。
2   実践力に着目した採用と試用期間の適切な運用
  採用段階では幼稚園の実情に通じた園長などが面接を担当し、専門性を発揮する基盤となる豊かな社会体験、例えばボランティア活動への参加の有無などから、限られた時間の中で実践力の基礎があるかどうかを見極めることが求められている。
  また、いったん採用されると教員として長期間活動することが一般的な場合は、採用時の試用期間内に、教員としての資質が備わっているか、今後伸びる可能性があるかなど、慎重に教員としての適性の有無を十分に見極めることが、幼稚園にとっても本人にとっても必要である。採用試験時は、本人は幼稚園教員としての実務経験がほとんどない段階であり、試用期間中に初めて判断できる場合もあると考えられる。ただし、試用期間の厳正な運用による教員への適格者の確保に努めるとともに、試用期間中に問題が生じた場合には、その理由やどのような条件が備われば採用となるかについて、試用期間が満了する前から、雇用者や管理職と本人の間で、対話を通じて客観的な説明を行うなど、制度の運用については細心の注意が望まれる。
(2)   経験や年齢に応じた研修の推進
    現職教員の経験や年齢に応じて、修得すべき知識や技術及び幼稚園の運営能力、抱える課題が異なるので、基本的に、経験年数に応じて研修すべき事項を分類・体系化し、きめ細かく対応した研修体制を採ることが望ましい。現状において、ライフステージに応じた研修の実施例は必ずしも多くない。一方、人的及び物的な研修資源には限界があるので、それらを的確に配分し、多様な研修機会を活用して、ライフステージに応じた研修の充実を図っていくことが重要である。
  地方公共団体や研修団体は、この点を考慮し、研修計画を立てるとともに、国公私立合同の研修の企画、養成機関による認定講習、研究団体・研究グループとの連携により、教員の研修環境を整備することが期待される。
  また、教員経験10年を経過した中堅教員で国立または公立幼稚園の教員に対して、任命権者が研修を行うことが義務付けられたが、これは経験や年齢に応じた研修の一環であり、教員としての基本的な資質が概ね確保され、得意分野の育成が始まる時期であり、幼稚園運営の中堅的機能も担う時期である、中堅教員の能力と実績を評価し、その評価に即し、かつ、教員の主体性も反映させ、幼稚園教育の特徴や実情を踏まえた、高い専門性の修得を目的とする研修計画を立てることに留意すべきである。国は研修計画の作成にあたり参考となるものを、都道府県教育委員会等に提供することが必要である。
  なお、上記のいわゆる10年経験者研修については、実施が義務付けられていない私立幼稚園教員についても参加の機会が与えられることが望まれる。
(3)   養成機関と幼稚園の連携強化
    養成機関と幼稚園との間の連携強化は、教育実習やインターンシップの実施が円滑に進められるという効果だけではなく、定期的な連絡会議の開催による両機関の情報交換や交流の促進、現職教員による幼児教育の実情を踏まえた講義の実施など、実践的な教員養成に資する効果が期待できる。例えば、地方公共団体が、地域における幼児教育をとりまとめる機関として両者を結び付ける役割を果たすことも有効である。
  また、養成機関は、幼稚園の現場ともっと近い関係になるという観点から、社会人入試や大学院修学制度などにより現職教員を学生として受け入れる、文部科学大臣の認定する講習会の開催に協力するなど、教員研修の充実などに積極的な役割を果たすことが望まれる。

  専門性の向上
 
(1)   上級免許状取得の促進
  幼稚園教員に求められるニーズが高度化・多様化しており、これらのニーズに見合った専門性を養成段階の修了時において確保するためには、質量とも充実した履修内容に見合った養成期間の確保が求められてきている。短期大学から大学への課程変更や、短期大学から大学への編入学・社会人入学など、様々な制度を活用することが望ましい。
  また、二種免許状を有する現職教員が一種免許状を取得するなど上級免許状の取得や、小学校教員免許状の併有のため、地方公共団体や養成機関が提供する機会を充実させることが重要である。
(2)   実践的研修の強化と研修環境の整備
現職教員が実践力を付け、専門性を高めていくためには、保育公開と専門家によるアドバイスを受ける機会を増やすことや、外部講師や専門家などを招聘して幼稚園教育の向上に資する知識などの習得に努めることが重要である。そのためには、的確な指導ができる専門家の育成や専門家に関する人材データベースの整備が望まれる。同じ地方公共団体内や近隣にある幼稚園が協力して行う研修の場を活用することも有効である。
  実践力の基礎となる幅広い社会経験などを得るために、公立間や私立間だけでなく公私立間での交換研修など、他園での保育を経験し、また、企業やボランティア団体での実地研修を経験する機会を増やすことは、重要である。
  地方公共団体は、上記を踏まえた研修プログラムを組むことや、園外研修への参加など研修環境を整備するために保育代替要員の確保や大学院や大学への入学や聴講などの機会の確保に努めるとともに、研修を実施するために近隣の地方公共団体や養成機関との協力関係を構築することが求められる。また、国は、地方公共団体が円滑に取り組むことができるよう、環境の整備を図る必要がある。
  研修において、その自主性は、研修の成果をあげるためにも重要であり、自主的研修や研究グループ活動を奨励することは重要である。例えば、自主的な研修についても、その成果を評価する仕組みを作ることも、研修の効果をあげるための有効な一策と考えられる。
  研修に対する動機づけとしては、当面は、研修により成果をあげた教員の表彰などを行うなど、現在の制度の中で工夫を重ねる必要がある。
  一方、指導力に問題があり、自主性に欠ける教員について、その教員に対応した研修への動機づけについても、検討を行うべきである。
(3)   情報通信技術の活用
  園を離れることなくインターネット等情報通信を活用して研修や教材を開発し、また直接参加していない研修成果を共有できるようなシステムを活用して、資質の向上に努めることも重要である。そのためには、コンピュータなどインターネット環境を整備し、教員への技術研修を行うことが必要である。

  幼稚園教育を支える環境の整備
 
(1)   幼児や幼稚園教員を見守る地域に根ざした幼児教育
  開かれた幼稚園を構築して、幼稚園に対する保護者や地域のニーズや情報を把握して、幼稚園が的確に対応することは、教員が地域に根ざした幼児教育の担い手として能力を発揮することにつながり、その資質向上に資する。
  幼稚園は、自己点検・自己評価を行うことに努めるべきであり、これは幼稚園教員の資質向上にも寄与する。その具体的項目は、地域の実情などを踏まえて、各地方や各幼稚園での工夫が期待される。幼稚園の園長や教員が行う自己点検・自己評価だけでなく、保護者や地域住民等を加えた評価を試みることも考えられる。
  幼稚園運営に関する情報の発信にも努めるべきであり、地域で求められている情報を発信できるような体制を整備することが必要である。なお、情報通信技術を活用する場合でも、電子的手段だけに頼るのではなく、会議・会合や日常顔を合わせる場で、幼稚園への理解を増進し、意見を交換するなどのコミュニケーションを組み合わせるなど、心の通った情報発信にするための工夫が必要である。
  幼稚園教育の次世代の担い手として、豊かな資質をもつ人材をできるだけ幅広く確保するためにも、高校生などを対象とした保育参加プログラムや専門学科に在籍しない学生も対象としたインターンシップやボランティア活動を活用して、幼稚園に学生を受け入れ、幼稚園教育や教員への関心を高めることが必要である。
(2)   幼稚園教育の高い水準確保を目指す学際的・実践的な研究体制の整備
  全国で行われている幼児教育に関する研究成果を収集、分類し、全国の幼稚園教員や保育士、研究者、学生、一般の保護者など関係者や関係団体に広く情報を提供し、効果的に活用することにより、幼児教育に対する理解を増進するとともに、幼児教育の水準向上を図る、幼児教育に関する研究センター機能が必要である。地域によっては、研究に関する情報を入手することが特にむずかしいので、この機能の必要性は高い。
  幼児教育、保育、発達、子育て支援など、幼児を対象とする様々な分野にかかわる学術的な研究と実践を統括する学際的研究センター機能が期待される。
  現職教員の研修においてその専門性を向上させる要請が高まっているが、情報通信技術などを活用して、個々の地域で対応が困難な専門性の高い研修を中心に、その教材開発や研修支援を担う機能が期待される。


コラム7   自主的な研究グループの研修会に参加して
  H先生とM先生は、幼稚園教員になって5年目である。これまでに教育委員会主催の研修や所属する地域の教育団体主催の研修には欠かさず参加し、自らの資質向上に努めてきた。夏の長期休業期間中、二人は、初めて自主的な研究グループが主催する全国規模の研修会に参加し、これまでの研修では得られない貴重な経験をすることができた。
  まず、その研修で出会った教員は、園長やベテラン、公立や私立など、自分とは異なる様々な立場にある教員なので、保育に対するいろいろな考え方があることや、園を運営することの大変さ等がわかり、広い視点から幼稚園教育を考えることができた。また、公開保育を参観し、他の園の保育には、自分の園の保育にはない環境や教師のかかわりがあるので、自分の保育を振り返るよい機会になった。全国の先生と話し合う中で、改めて自分の地域の幼稚園の課題を認識することもできた。
  ただ、こうした自主的な研究グループに参加するためには、当然、休暇をとらねばならないし、園長や他の先生方の理解がなければなかなか出かけられない。こうした自主的な研修にも気軽に参加できる職場の雰囲気がもっとあればよいと感じた。
  さらに、二人がこうした自主的な研究グループによる研修に参加することで、何よりも刺激を受けたことは、教員としての使命感や向上心である。参加している誰もが、幼稚園教育を取り巻く的確な情報を得て、より一層幼稚園教員としての資質を高めたいという意志をもって集まってくるので、そういった仲間と研修することを通して、改めて教員として自ら学ぶこと、学び続けることの大切さを認識することができたということである。

コラム8   養成機関と現職教員・学生の連携
  ある大学のM研究室では、月に1回、金曜日の夜や土曜日の午後などに、幼児教育をめぐる研究会を開いて、公開している。参加者は、その大学の幼児教育や発達心理学を専攻する大学教員、幼児教育や幼児心理学や臨床心理学を専攻する学部生や院生、幼児教育の養成機関にいる教員、また現職の幼稚園や保育所の教員・保育士である。特に、出席を取るわけではないので、出席は毎回のテーマ毎に変わり、10名程度のこともあれば、40名ほどのこともある。その大学の卒業生が多いが、それ以外に、大学附属幼稚園の教員、公立や私立の幼稚園の教員や保育士が伝え聞いて、参加するようになってきた。
  毎回のテーマは、誰か一人が自分の研究を発表する。保育の学会に発表するような学術的なものもあり、新しい保育の試みなどもあり、あるいは、保育でぶつかる問題を整理して、実践者が報告する場合もある。
  特に、大学の教員や院生には、自分の研究を現場の実践者に伝えて、理解と批判を得る場となっている。実践者には、保育界の最新の動向や保育実践の新たな試みを知る機会となる。例えば、幼小連携の在り方、預かり保育の進め方、イタリアの保育のレッジョ・エミリアの様子、また、幼児の発達の心理学の研究、保育実践の観察研究、等々が報告されて、勉強になっている。また、時には、外部から著名な研究者や実践者を招いて講演会も開いている。
  向学心に燃えた保育者にとって、すぐに役立つ技能の講習ではなく、少し離れたところから保育を見直す機会は貴重である。また、園長のような立場になったり、保育者養成の専門学校の講師になっていく場合なども、自分の実践をどのように保育者や保護者や学生に伝えるかで参考になることも多い。
  大学の研究者から見ても、保育現場から遊離することなく、研究を進める上で大事な場となっている。この研究会を通して、互いに知り合いになり、園に研究者や院生に来てもらうといったことや、あるいは研究に赴いた先の園の教員が研究会に参加するなどの交流もよく見られる。

コラム9   地域の先生
  K幼稚園には、時々、地域に住む70歳の男性Mさんが、手作り遊具をもって遊びに来てくれる。Mさんは、幼児が楽しめるいろいろな遊びを知っている。
  入園当初はMさんと一緒に遊ぶことに消極的だった幼児も、Mさんからいろいろな遊びを教えてもらうことを通して、親しみの気持ちをもつようになり、だんだんMさんの来園を楽しみに待つようになってきた。
  あるとき、Mさんが体調を崩し、しばらく幼稚園に姿を見せなかった。元気になったMさんが久しぶりに来園することになった時、幼児たちは、前日からMさんの来園を楽しみに待っており、当日、Mさんの姿を見つけると、3歳児から5歳児までの園全体の幼児たちがMさんの周りに集まってきた。Mさんは、新聞紙で作ったボールとバットをもってきてくれたので、すぐに野球ごっこが始まった。中には、Mさんが作った遊具を見よう見まねで作り始める幼児もいる。Mさんは、ゆったりとした雰囲気の中で、幼児一人一人の要求に耳を傾けながら、丁寧にかかわっている。
  Mさんの手作り遊具には、身近にある素材を活かしたものが多く、幼児が喜びそうなアイディアがいっぱいに詰め込まれているので、教員自身も学ぶことが多い。また、Mさんのゆったりとした話し方や動きの中で、幼児たちが安心した表情を見せている姿から、教員自身が自分の幼児とのかかわりを振り返り、自分はせかせかと動いていたのではないかと反省することもある。このように、地域の方の幼稚園の教育活動への参加は、幼児の活動の幅を広げるだけでなく、教員の資質向上にも資するものである。

(初等中等教育局幼児教育課運営支援室)

-- 登録:平成21年以前 --