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21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議

2001/1 答申等
21世紀の特殊教育の在り方について〜一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について〜 (最終報告)

はじめに

  我が国では、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため、平成5年12月に障害者基本法が制定され、教育、福祉、労働など各分野にわたって、中長期的な観点からノーマライゼーション※1の理念を実現するための取組が進められている。また、特殊教育においては、近年、幼児児童生徒(以下「児童生徒等」という。)の障害の重度・重複化や多様化、より軽度の障害のある児童生徒等への対応や早期からの教育的対応に関するニーズの高まり、高等部への進学率の上昇、卒業後の進路の多様化などが進んでいる。

  本調査研究協力者会議は、こうした特殊教育を取り巻く最近の動向を踏まえ、21世紀の特殊教育の在り方について幅広く検討を行うため、平成12年5月に設置され、平成12年6月から7回の会合を開催し審議を重ねてきた。また、平成12年11月には中間報告を公表し、関係団体からの書面による意見の聴取などを行い、各方面からの意見を踏まえて最終報告をとりまとめた。
   最終報告では、社会のノーマライゼーションの進展、障害の重度・重複化や多様化、教育の地方分権の推進など特殊教育をめぐる状況の変化を踏まえ、今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方を整理するとともに、この考え方に基づいて1.就学指導の在り方の改善、2.特別な教育的支援を必要とする児童生徒等への対応、及び3.特殊教育の改善・充実のための条件整備について検討を行い、特殊教育全般にわたる制度の見直しや施策の充実について具体的な提言を行っている。

  今後、国においては、この報告の提言を踏まえ、特殊教育の改善・充実を計画的に進めていく必要がある。その際、特に、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備や児童生徒の特別な教育的ニーズに対応した就学指導の在り方の改善については、関係省庁の協力を得て相談支援体制を構築したり、教育委員会や学校の理解を得ながら、具体的な制度の見直しや施策の改善・充実を図る必要がある。
   都道府県及び市町村の教育委員会においては、この報告の提言を実現するため、計画的に施策の充実に努めるとともに、盲学校、聾学校、養護学校等においては、学校の自主性、自律性を確立し、それぞれの地域の状況や児童生徒等の実態等に応じて創意工夫した取組を行うことが期待される。また、この報告を契機として、保護者や広く一般の方々が特殊教育により一層理解を深めていただければ幸いである。
   なお、本報告で提言された制度の見直しや施策の改善・充実の成果を踏まえ、今後とも、障害種別の枠を超えた盲学校、聾学校、養護学校の在り方や小学校、中学校等における特別支援教育の在り方等について引き続き検討を行っていくことが必要である。また、学校教育法に規定されている「特殊教育」や「特殊学級」等の名称や文言について見直すべきであるとの意見があるが、今後上記の検討と併せて、例えば「特別支援教育※2」等「特殊教育」に代わるべき適切な名称について、特殊教育関係団体や広く一般の意見を聞きながら検討することが望まれる。さらに、寮母の名称については、近年、男性の寮母が増えてきている状況等を踏まえ、男女共同参画の観点から見直すことが必要である。



※1ノーマライゼーション:障害のある者も障害のない者も同じように社会の一員として社会活動に参加し、自立して生活することのできる社会を目指すという理念
※2特別支援教育:平成13年1月文部科学省の再編に際し、「特殊教育課」の課の名称を「特別支援教育課」に変更。特別支援教育課は、盲・聾・養護学校及び特殊学級における教育に加えて、学習障害児や注意欠陥/多動性障害児等通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応も積極的に行うこととしている。
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