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21世紀の特殊教育の在り方について~一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について~ (中間報告)

平成12年11月
 

 
   

目    次

   

第1章  今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方

  1  我が国の特殊教育の発展 

  2  今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方 

   

第2章  就学指導の在り方の改善について

  1  乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備について 

  2  障害の程度に関する基準及び就学手続きの見直しについて 

  3  就学指導委員会の役割の充実について 

   

第3章  特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応について

  1  障害の状態等に応じた指導の充実方策 

    1-1  障害の重度・重複化や社会の変化に対応した指導の充実 

    1-2  学習障害児、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児等への教育的対応 

    1-3  最新の情報技術(IT)を活用した指導の充実 

  2  特殊教育諸学校、特殊学級及び通級による指導の今後の在り方について 

    2-1  地域の特殊教育のセンターとしての特殊教育諸学校の機能の充実 

    2-2  特殊学級、通級による指導の今後の在り方について 

  3  後期中等教育機関への受入れの促進と障害のある者の生涯学習の 

      支援について 

   

第4章  特殊教育の改善・充実のための条件整備について

  1  盲・聾・養護学校や特殊学級等における学級編制及び教職員配置について 

  2  特殊教育関係教職員の専門性の向上 

    2-1  特殊教育教諭免許状の保有率の向上及び今後の免許状の在り方について 

    2-2  研修の充実 

  3  特殊教育を推進するための条件整備について 

  4  国立特殊教育総合研究所の充実 

   





21世紀の特殊教育の在り方について(中間報告)

〜一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について〜

   

第1章  今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方

   

1  我が国の特殊教育の発展

   

    わが国の特殊教育制度は、昭和22年に制定された学校教育法において、盲学校、聾学校、養護学校(以下「盲・聾・養護学校」という。)、特殊学級が明確に位置付けられ、昭和23年から盲学校及び聾学校教育の義務制が開始され、昭和31年度には、義務制が完成した。一方、養護学校についても着実に整備が図られ、昭和54年からは養護学校教育の義務制が実施された。また、同年、障害のため通学して教育を受けることが困難な盲・聾・養護学校小学部、中学部の児童生徒に対して、養護学校等の教員が家庭や医療機関等を訪問して教育を行う「訪問教育」が実施された。この養護学校教育の義務制と訪問教育の実施を境に、障害を理由とする就学猶予・免除者が減少している。その後、平成5年には、通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒が通常の学級で教科等の授業を受けながら、特別の指導を特別の場で行う「通級による指導」が実施された。さらに、平成12年度からは養護学校等の高等部でも訪問教育が本格実施されることとなった。  

    こうした取組により、平成11年度には、全国に盲・聾・養護学校が988校、幼児児童生徒数約8万9千人、小・中学校の特殊学級が約2万5千学級で児童生徒数約7万人、通級による指導の対象児童生徒数約2万6千人となっている。特殊教育対象の幼児児童生徒数は約18万5千人で全幼児児童生徒の約1%であり、このうち、義務教育段階は約14万5千人で全学齢児童生徒数の約1.2%となっている。  

    このように、特殊教育の制度が整備されてきており、障害のある児童生徒が、自己の持つ能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するための基盤となる力を身に付けるための自立活動の指導や、小・中学校の児童生徒や地域の人々と活動を共にする交流教育の積極的な推進が図られている。  

   

2  今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方

    

  特殊教育については、これまで児童生徒の障害の種類、程度に応じて特別の配慮の下に手厚くきめ細かな教育を行うため、盲・聾・養護学校や特殊学級などの整備充実に努めてきたところである。  

  しかし、近年、ノーマライゼーション(※語句説明)の進展や障害の重度・重複化や多様化、教育の地方分権など特殊教育をめぐる状況の変化が生じており、以下に詳しく述べるように、これからの特殊教育は、障害のある幼児児童生徒の視点に立って一人一人のニーズを把握し、必要な支援を行うという考えに基づいて対応を図る必要がある。  

  

(1)ノーマライゼーションの進展に向け、障害のある児童生徒の自立と社会参加を社会全体として、生涯にわたって支援する。
  
   
   政府は、ノーマライゼーションの理念の実現に向けて「『障害者対策に関する新長期計画』−全員参加の社会づくりをめざして−」を策定し、教育、福祉、医療、労働等の分野において様々な取組を進めている。平成5年には、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため、「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に改正したところである。  

  今後、障害のある者と障害のない者が同じ社会に生きる人間としてお互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことが大切である。このような考え方の下に、障害のある児童生徒が、地域社会の一員として、生涯にわたって様々な人々と交流し、主体的に社会参加しながら心豊かに生きていくことができるようにするためには、教育、福祉、医療、労働等の各分野が一体となって社会全体として、当該児童生徒の自立を生涯にわたって支援していく体制を整備することが望ましい。  

  障害のある児童生徒の教育についても、その児童生徒が持つ能力や可能性を最大限に伸ばし、将来、社会的に自立し、社会参加することができるよう、その基盤となる「生きる力」を培うために、福祉、医療、労働等との連携を強化し、社会全体の様々な機能を活用して障害のある児童生徒の教育の充実に努める必要がある。  

  例えば、盲・聾・養護学校の児童生徒にとっては、地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きることができるよう、地域の同世代の子どもや人々との交流を行うことなど地域での生活基盤を形成することが求められている。  

  また、障害のある者が学校卒業後、地域の中で自立し、社会参加するためには、教育と福祉、医療、労働等との連携の下に、盲・聾・養護学校や福祉関係施設等において、障害のある者のための生涯学習の機会や就労支援、生活支援などを充実していくことが必要である。  

※ノーマライゼーション  障害のある者がない者と同等に生活し、活動する社会を目指すという理念



(2)教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制を整備する。
  
   
  障害のある児童生徒に対する特別な支援を適切に行うためには、児童生徒の自立を目指し、乳幼児期から学校卒業後にわたって、教育、福祉、医療、労働等が一体となって、障害のある子ども及びその保護者等に対する相談と支援を行うための一貫した体制を整備することが必要である。  

  このような相談支援体制を整備するとともに、教育、福祉、医療等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、保護者等からの教育・発達相談にきめ細かく対応することによって、保護者等はもちろん、教育、福祉、医療等の関係者の間で、子どもの障害の状態を正確に把握し、子どものもつ能力や可能性を最大限に伸ばしていくためにはどのように接していくのがいいのか、どのような教育や医療、福祉などの支援が必要であり、また可能かといった特別な支援の内容に関する共通理解が図られることとなる。  

  また、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームは、こうした教育・発達相談の記録をファイルするなど継続的に活用し、教育・発達相談を積み重ねていくことによって、保護者や子どもと関係者の間で相互理解と相互信頼が培われ、乳幼児期から学校卒業後にわたるそれぞれの段階で、その子どもに適し、かつ、可能な教育や医療、福祉、労働等の具体的な支援の内容が選択されることとなる。  

  さらに、子どもに対する特別な支援が行われた後、各分野の関係機関等がその子どもに対して選択された内容が真に適していたかどうかの評価を適切に行い、その評価の結果に基づいて、保護者や子どもと特別の相談支援チームの間で、さらに教育・発達相談が行われ、次の支援の選択に生かしていくこととなる。  

  以上のように、障害のある幼児児童生徒の一人一人の特別のニーズを把握し、必要な支援を行うため、教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制を整備し、乳幼児期から学校卒業後にわたって、障害のある子どもやその保護者等に対して相談と支援を行うことが必要である。    



(3)障害の重度・重複化や多様化を踏まえ、盲・聾・養護学校等における教育を充実するとともに、通常の学級の特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応する。
  
   
  最近の特殊教育をめぐる状況としては、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化、早期からの教育的対応の必要性の高まり、高等部への進学率の上昇、卒業後の進路の多様化等が進んでいることがあげられる。  

  これまで、昭和54年に養護学校の義務制が実施され全国的な養護学校の整備充実が図られる中で、重度・重複障害の児童生徒の養護学校への就学が進んだことから、訪問教育の充実や医療、福祉等と連携した重度・重複障害児への指導内容、方法の充実に努めてきたところである。  

  しかし、近年、盲・聾・養護学校においては、移動、食事、排泄、衣服の着脱等に際して全面的に介助が必要になるなど、障害の重い者の割合が増しているほか、言語障害や情緒障害などを含む二つ以上の障害を併せ有する者の割合が増加している。更に、盲・聾・養護学校は乳幼児期の教育的対応や学校卒業後の相談が求められているが、就学前の乳幼児に対する相談については、福祉、医療により行われることが多く、卒業後の就労や社会参加等については、これまで福祉、医療、労働等において対応されることが多く、教育との連携に欠けることもあった。  

  このため、今後、卒業後の職業的自立や社会的自立の実現のため、福祉、医療、労働等との連携を十分に図り、盲・聾・養護学校等における教育を充実することが必要である。  

また、通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒に対しては、平成5年に、学校教育法施行規則に通級による指導が規定され、通常の学級に在籍しながら、特別な指導を行うことが可能になった。更に、今日、小・中学校の通常の学級に在籍する学習障害児や注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児等特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応が求められるようになった。  

  しかし、これについては、特殊教育が、これまで盲・聾・養護学校や特殊学級等に就学する児童生徒への教育が中心であったため、必ずしも十分には対応できていない。  

このため、小・中学校の通常の学級に在籍する学習障害児や注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児等特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対しても積極的に対応していく必要がある。  

   

   


(4)児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し、必要な教育的支援を行うため、就学指導の在り方を改善する。
  
   
  これまでの特殊教育は、盲・聾・養護学校や特殊学級などの特別な場において、障害の種類、程度に応じた適切な教育を行うという考え方に基づいていた。しかし、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化及び社会の変化等を踏まえると、これからの特殊教育は、障害のある児童生徒の視点に立って児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し、必要な教育的支援を行うという考え方に転換する必要がある。  

  障害のある児童生徒の就学すべき学校の指定については、学校教育法施行令第22条の3に規定する盲学校・聾学校・養護学校に就学すべき児童生徒の障害の程度に関する基準(以下「就学基準」という。)に基づいて判断される。しかし、近年、視覚補助具、補聴器、補装具等の性能の向上などの医学・科学技術の進歩や学校施設の整備充実が図られてきたこともあり、適切な条件が整えられる場合には、通常の教育において対応することが可能な例も見られるようになってきている。  

  また、平成12年4月にいわゆる地方分権一括法が施行されたことにより、児童生徒の就学に関する事務については、国の機関委任事務から地方の自治事務に変更され、就学すべき学校の指定は、法令に基づき教育委員会の判断と責任において行うこととなっている。  

  このようなことを踏まえ、市町村教育委員会が児童生徒の特別な教育的支援の必要性を総合的な観点から判断し、適切な教育の場を決定することができるよう就学手続きを見直していくことが必要である。  

   

(5)学校や地域における魅力と特色ある教育活動等を促進するため、特殊教育に関する制度を見直し、市町村や学校に対する支援を充実する。
  
   
  障害のある児童生徒の視点に立って一人一人の特別なニーズを把握し、必要な支援を行うためには、各学校において地域の状況を踏まえて魅力と特色ある教育活動が行われるとともに、地域全体として障害のある児童生徒の自立を支援していくような取組が展開されることが必要である。  

  わが国の教育行政においては、国の定める制度の基本的な枠組みの下で、国、都道府県、市町村が連携協力して教育の機会均等とその水準の維持向上が図られてきたが、近年、様々な行政分野にわたって地方分権を推進するための取組が進められている。  特殊教育においても、各学校や地域における主体的かつ積極的な活動を促進する観点に立って、特殊教育に関する行政の仕組みや制度のあり方を見直すとともに、国や都道府県による市町村や各学校に対する支援を充実することが必要である。  

  具体的には、市町村教育委員会が、児童生徒の特別な教育的支援の必要性を総合的な観点から判断して適切な就学指導ができるように、就学手続き等の見直しや就学指導委員会の機能の充実、相談支援体制の整備充実を図るとともに、国及び都道府県教育委員会は、それを支援していくことが必要である。  

  また、盲・聾・養護学校や小・中学校等において、学校の自主性・自律性を確立し、校長のリーダーシップの下に、児童生徒の実態や地域の状況に応じた魅力と特色ある教育活動を展開することができるよう、関連する制度の見直しや運用の在り方を検討することが必要である。特に、盲・聾・養護学校は、その専門性や障害に応じた施設・設備を生かして地域の特殊教育のセンターとしての機能を充実することが望ましい。  

  更に、特殊教育関係教職員の専門性の向上を図るため、国や都道府県教育委員会等が協力して、すべての盲・聾・養護学校の教員が特殊教育教諭免許状を保有することを目指した取組を進めるとともに、様々な課題に応じた研修の充実を図る必要がある。  

  なお、市町村教育委員会が主体的に施策を実施したり、各学校が自主的に教育活動を行うことに伴い、教育委員会や学校はその経営責任を明確にすることが求められる。  このため、各学校は、学校運営や教育課程等の実施状況について自己点検・自己評価を行い、その結果を保護者や地域の人々に説明し、その意見を聞いて絶えず学校運営や教育課程等の見直しを行い、地域に開かれた特色ある学校づくりに努める必要がある。また、教育委員会は、各学校が自己点検・自己評価した結果を把握し、学校教育の改善充実に生かしていくことが重要である。  

   
  上記のとおり、本調査研究協力者会議においては、ノーマライゼーションの進展、障害の重度・重複化や多様化、教育の地方分権の推進など特殊教育をめぐる状況の変化を踏まえ、これからの特殊教育の在り方についての基本的な考え方を整理するとともに、この考え方に基づいて特殊教育に係る制度の見直しや施策の充実について具体的な検討を行った。具体的な制度の見直しや施策の改善・充実の内容及び方策等については、次章以下において順次述べることとする。  

  なお、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備や児童生徒の特別な教育的ニーズに対応した就学指導の在り方の改善を実現するためには、関係省庁の協力を得て相談支援体制を構築したり、教育委員会や学校の理解を得ながら、具体的な制度の見直しや施策の改善・充実を図ることが必要である。また、現に学校に在籍している障害のある児童生徒やその保護者に不安が生じたり、教育委員会や学校関係者に混乱が生じることがないよう十分留意しながら、実態を踏まえて慎重に実施していく必要があると考える。今後、このような制度の見直しや施策の改善・充実の成果を踏まえ、特殊教育の教育全体の中での位置付けや内容等について検討を行っていくことが必要である。  

  また、学校教育法に規定されている「特殊教育」や「特殊学級」等の名称や文言について、審議の中で、「特殊教育」の名称を検討すべき時期にきており、例えば「特殊教育」を「特別支援教育(※語句説明)」に代えてはどうかという意見もあったが、これらについては関係者の間で意見が様々であることやこれに代わるべき適切な名称について広く一般の合意が得られていない状況にあることから、引き続き、関係者や一般の意見を聞きながら検討することが望ましい。  

   

※特別支援教育: 

  平成13年1月文部科学省の再編に際し、「特殊教育課」の課の名称を「特別支援教育課」に変更する予定である。 

  特別支援教育課は、盲・聾・養護学校及び特殊学級における教育に加えて、学習障害児や注意欠陥/多動性障害児等通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応も積極的に行うこととしている。  


第2章  就学指導の在り方の改善について
   

1  乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備について

1.市町村教育委員会は、住民に最も身近な地方公共団体として、教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備すること。また、教育委員会や学校、医療機関、児童相談所、保健所等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、教育・発達相談  の機会の充実を図ること。

2.国は、各地域において教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制が整備されるようその体制の下で組織される特別な相談支援チームの機能や構成員等について検討すること。

3.都道府県教育委員会においては、県段階での福祉、医療等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において福祉、医療等と一体となった相談支援体制を整備し、その成果を域内の各市町村に普及させるよう努めること。

4.盲・聾・養護学校においては、その専門性や施設・設備を生かして地域の特殊教育の相談センターとして、福祉、医療関係機関等が一体となった相談支援体制の下で、教育・発達相談を実施したり、特別の相談支援チームへの協力に努めること。
   
(1)  障害のある乳幼児に対する早期からの相談に関し、米国では、2〜4歳児に対して検査を実施し、障害のある乳幼児に対しては、保護者、医師、保健婦、保健所等のスタッフにより、早期発見プログラムに基づく必要な支援を受けるとともに、特殊教育、心理学、ソーシャルワーカー等の多領域の専門家によって個別教育計画が作成されている地域もある。また、英国では、地方保健局が5歳未満児に対して検査を行い、特別な支援が必要であると判断した場合は、保護者の同意を得て地方教育局に連絡し、地方教育局と地方保健局が共同して対応することとされている。  

  このように、欧米では、教育、福祉、医療機関等が一体となって早期からの対応を行っているが、わが国では、3歳児健診など医療、福祉機関等を中心に行われており、最近では、聾学校等の幼稚部において教育相談を行う取組が活発になってはいるが、教育、福祉、医療等が一体となった早期からの相談体制は必ずしも十分とはいえない。  

    また、近年の子どもの障害の重度・重複化や多様化に伴い、保護者等の不安や悩みが増大し、教育、福祉、医療、労働などにまたがる様々な問題について相談を求める要望が強いが、関係機関の連携が十分でないため保護者等がどこに相談すればいいかわからないなど保護者等の要望に十分対応できていない場合がある。  

    このため、教育、福祉、医療、労働等が一体となって、障害のある子ども及びその保護者等に対する相談と支援を行うための一貫した体制を整備するとともに、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、保護者等からの教育・発達相談にきめ細かく対応することが望ましい。これにより、保護者等はもちろん教育、福祉、医療、労働などの関係者の間で、子どもの障害の状態を正確に把握するとともに、子どもの持つ能力や可能性を最大限に伸ばしていくためにはどのように接していくのがいいのか、どのような教育や医療、福祉、労働などの支援が必要であり、また可能かといったことについて共通理解が図られることとなる。  

    また、教育、福祉、医療等の関係者で構成する特別の相談支援チームは、こうした教育・発達相談の記録をファイルするなど継続的に活用し、教育・発達相談を積み重ねていくことによって、保護者等や子どもと関係者の間で相互理解と相互信頼が培われ、乳幼児期から学校卒業後にわたるそれぞれの段階で、その子どもに適し、かつ、可能な教育や福祉、医療、労働等の具体的な支援の内容が選択されることとなる。  

    さらに、子どもに対する特別な支援が行われた後、各分野の関係機関等がその子どもに対して選択された内容が真に適していたかどうかの評価を適切に行い、その評価の結果に基づいて、保護者等や子どもと特別の相談支援チームの間で、教育・発達相談が行われ、次の支援の選択に生かしていくこととなる。  

(2)  市町村教育委員会においては、地域の実態等に応じて福祉、医療、労働等の関係部局と連携しながら、教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備するとともに、教育委員会や学校、医療機関、児童相談所、保健所等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、健康診断や育児相談等の場において、教育相談を同時に開催するなどにより、教育・発達相談の機会の充実を図ることが望ましい。  

    また、教育相談体制の充実を図るため、特殊教育について豊かな経験と知識を有する退職教職員等を教育相談担当者として活用したり、教育相談担当者の研修を充実するなどの取組に努めることが望ましい。さらに、障害のある乳幼児が就園している幼稚園や保育所に、教育相談担当者を定期的に派遣する巡回教育相談を行ったり、幼稚園や保育所の職員と合同の職員研修会を開催するなど関係する機関の職員間の交流を行うことが重要である。      

(3)  国は、各都道府県内の各地域において教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制が整備されるよう、その体制の下で組織される特別の相談支援チームの具体的な機能や構成員、教育・発達相談の記録の継続的な活用方策、具体的な支援の内容を選択するための手続き、相談支援体制や特別の相談支援チームと就学指導委員会等の機関との役割分担等について検討することが必要である。  

(4)  都道府県教育委員会においては、こうした国の検討状況を参考にしつつ、県段階での福祉、医療、労働等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において福祉、医療、労働等と一体となった相談支援体制を整備し、その体制の下で、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作るとともに、教育・発達相談を行う等の取組を実施し、その成果を域内の各市町村に普及させるよう努めることが望ましい。  

    また、都道府県等の特殊教育センターや教育事務所等の特殊教育担当の指導主事等が、市町村の教育相談担当者に対して定期的に巡回相談を行ったり、都道府県内の教育相談に関する指導者に対する研修を行うなど早期からの教育相談体制の充実のため、市町村教育委員会への支援に努める必要がある。  

    
(5)  盲・聾・養護学校は、平成11年3月に改訂された盲・聾・養護学校学習指導要領等において、地域の特殊教育の相談センターとしての役割が明確に規定されたところである。これまでも、例えば、聾学校において早期から聴覚を活用するなどの教育的対応を行うことにより、コミュニケーションの向上が図られるなど早期からの対応を行うことにより、障害のある幼児の能力を効果的に伸ばすことができた事例がある。今後は、盲・聾・養護学校は、こうした経験を参考にしつつ、その専門性や施設・設備を生かして、地域の特殊教育の相談センターとして、特殊教育センターや福祉、医療関係機関等と連携しながら教育相談を実施したり、学校の教職員が特別の相談支援チームに参加することが望まれる。    

    また、盲・聾・養護学校や小・中学校では、体験入学や教育相談を実施したり、積極的に学校開放を行うことにより、障害のある子どもの保護者等や一般の人々の特殊教育に対する理解の促進を図ることが望ましい。  

      
(6)  市町村教育委員会や都道府県教育委員会等においては、保護者等に特殊教育に関する情報を提供するため、教育相談のための常設の窓口を設置したり、電話相談やインターネットによる相談事業を実施するとともに、障害のある子どもをもつ保護者等が情報を交換したり、不安や悩みを解消するため、例えば、子育てサークルの開催やインターネットのホームページの開設、レクリエーションを実施するなど保護者等を支援するための取組に努めることが望ましい。  

    また、障害のある子どもや保護者等の特殊教育に対する理解や周りの人々の障害に対する理解と自発的なボランティア活動が促されることが重要である。このため、就学指導の手引き等のガイドブックや盲・聾・養護学校等における取組の事例集、ビデオ等を作成して、教員や保護者、一般の人々に配布したり、インターネットで公開するなど様々な方法を用いて特殊教育の情報を幅広く普及することが望ましい。  

   

   

2  障害の程度に関する基準及び就学手続きの見直しについて

    

1.特別な教育的ニーズに応じた教育を行うため、学校教育法施行令第22条の3に規定する盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒の障害の程度に関する基準を医学、科学技術等の進歩を踏まえ、医学的、心理学的、教育的な観点から見直すこと。
    また、市町村教育委員会が、児童生徒の障害の種類、程度、小・中学校の施設・設備の状況等を総合的な観点から判断し、小・中学校において適切に教育を行うことができる合理的な理由がある特別な場合には、盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であっても小・中学校に就学させることができるよう就学手続きを見直すこと。

2.特殊学級において教育すべき者や通常の学級において留意して教育すべき児童生徒については、その特別な教育的ニーズに応じた教育を行い、全国的に一定の教育水準を維持する必要があるため、その対象範囲等について明確にすること。

3.市町村教育委員会が盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であると判断を行ったことを明確にするため、市町村教育委員会が児童生徒の保護者等に対し、その判断の結果を通知するよう就学手続きを見直すこと。また、障害のある児童生徒が、その住所の存する都道府県教育委員会が設置した盲・聾・養護学校以外の学校に就学する場合の手続きを明確にすること。

4.就学指導が円滑に行われるために、市町村教育委員会は、児童生徒の保護者等が意見表明をする機会を設けること。また、市町村及び都道府県教育委員会は、就学後、児童生徒の障害の状態に応じ、盲・聾・養護学校と小・中学校との転学、特殊学級と通常の学級間の異動等を円滑に行うことができるよう転学手続き等の簡素合理化に努めること。
    
(1)障害のある児童生徒の就学すべき学校の指定については、市町村教育委員会が学校教育法施行令第22条の3に規定する盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒の障害の程度に関する基準に基づいて判断し、この基準に該当する児童生徒は、盲・聾・養護学校に就学措置が行われることとなる。  

    具体的には、当該児童生徒の障害の種類、程度が学校教育法施行令第22条の3に該当する場合は、市町村教育委員会から都道府県教育委員会に盲者、聾者、知的障害者、肢体不自由者及び病弱者である旨を通知し、都道府県教育委員会が就学すべき盲・聾・養護学校を保護者等に対して通知する。また、就学基準に該当しない比較的軽度の障害のある児童生徒については、就学措置された小・中学校の校長が、児童生徒の障害の状態等を考慮して特殊学級への受入れや通級による指導等を行うかどうかを決定することとなる。  

      
(2)学校教育法施行令第22条の3に規定する就学基準は、昭和37年に制定され、昭和63年に技術的な改正を行っているが、対象となる児童生徒の障害の種類、程度については、基本的に変わっていない。  

    しかしながら、近年、視覚補助具、補聴器、義手、義足などの補装具等の性能の向上により、基準上は、盲学校や聾学校、肢体不自由養護学校に就学すべき障害の程度に該当する児童生徒であっても通常の学校で教育を受けることが可能な場合が生じていたり、病弱養護学校に就学すべき基準である6ヶ月以上の医療又は生活規制が必要との診断がなされなくなっているなど、医学、科学技術の進歩等により、実態と合致しない面が生じている。  

    このため、学校教育法施行令第22条の3に規定する就学基準については、医学、科学技術の進歩等を踏まえ、実態に合致するよう医学的、心理学的、教育的な観点から見直すことが必要である。  

      
(3)  障害のある児童生徒の就学指導については、平成12年4月1日に施行したいわゆる地方分権一括法において、就学に関する事務が国の機関委任事務から地方の自治事務に変更され、法令に基づき教育委員会の判断と責任で行うことになっている。  

    こうしたことを踏まえるとともに、一人一人の特別な教育的ニーズに応じた教育を行うためには、児童生徒の障害の状態及び地域や学校の状況を最もよく把握でき、就学関係事務の権限と責任を有する市町村教育委員会が、障害の種類、程度の判断だけでなく、その地域や学校の状況、児童生徒への支援の内容、本人や保護者等の意見等を踏まえて総合的な判断を行い、小・中学校において適切に教育を受けることができる合理的な理由がある特別な場合には、就学基準上は盲・聾・養護学校へ就学すべき障害の程度に該当する児童生徒であっても、小・中学校に受け入れることができるよう政令で定める就学手続きを見直す必要がある。具体的には、例えば、車いすを利用している児童生徒が、エレベータやスロープなどの学校施設が整備された小学校等に就学する場合や、コンピュータ等の情報機器を活用すれば意思表示や筆記の代替が可能な児童生徒がそれらの設備が整備された小学校等において適切な教育を受けることができると考えられる場合が挙げられる。  

    ただし、市町村教育委員会が、その総合的な判断を行うに当たって、重複障害や情緒障害などによる行動上の問題を有する場合など障害の種類、程度によっては、当該児童生徒の生命の安全や他の児童生徒への影響等を十分配慮する必要があることや適切な指導が行われる必要があることに留意して、慎重に判断する必要がある。    

    
(4)  特殊学級に就学すべき障害の種類、程度や通常の学級において留意して指導すべき児童生徒の取扱いの基準等については、昭和53年10月6日付け文部省初等中等教育局長通達(文初特第309号)において定められていたが、平成12年4月1日に施行した地方分権一括法により就学に関する事務が国の機関委任事務から地方の自治事務に変更されたため通達の該当部分については失効している。  

    従って今後、特殊学級に就学すべき障害の種類、程度や通常の学級において留意して指導すべき児童生徒の取扱いの基準等については、児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた教育を行い、全国的に一定の教育水準を維持する必要があるため、その対象範囲等について法令に規定すること等により明確にする必要がある。  

    
(5)  市町村教育委員会が行った盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であるとの判断の結果については、学校教育法施行令第11条において都道府県教育委員会に通知することになっているが、保護者等に通知することにはなっていないため、都道府県教育委員会から具体的に就学すべき盲学校、聾学校及び養護学校が通知されて初めて保護者等が市町村教育委員会の判断の結果を知る場合もある。  

このため、市町村教育委員会が盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であるとの判断を行ったことを明らかにするため、市町村教育委員会がその判断の結果を保護者等に通知するように就学手続きを見直す必要がある。  

また、障害のある児童生徒が、その住所の存する都道府県以外の都道府県の教育委員会が設置する盲・聾・養護学校又は市町村教育委員会が設置する盲・聾・養護学校等に就学する場合、学校教育法施行令第17条の規定により、当該学校を設置する教育委員会等の承諾を得て、その住所の存する都道府県教育委員会に届け出ることになっているが、一連の手続きが必ずしも明確でないことから、これを明確にする必要がある。  

    
(6)就学指導が円滑に行われるためには、教育委員会が、学校の校長等と連絡をとりながら、保護者等と緊密に就学相談の機会を持ち、その意見を聞き、信頼関係をつくりながら保護者等の理解と協力を得て就学すべき学校の判断を行うことが重要である。  
    このため、市町村教育委員会は、就学指導にあたり、保護者等が意見表明する機会を設けるなどの取組が必要である。  
    また、就学措置後においても、学校内の就学指導委員会や教育委員会の就学指導委員会が、必要に応じて就学指導のフォローアップを行い、その結果に基づいて、例えば、盲・聾・養護学校や特殊学級の児童生徒が在学途中で通常の学級に転学等をするなど特殊教育と通常の教育との間で児童生徒の障害の状態に応じて弾力的、かつ、機動的な異動が可能となるように努めることが望ましい。  

    このため、市町村及び都道府県教育委員会は、盲・聾・養護学校と小・中学校等との転学や小・中学校における特殊学級と通常の学級との異動が円滑に行われるよう、転学手続き等の簡素合理化について、積極的な取組が求められる。  

3  就学指導委員会の役割の充実について

  

1.就学指導委員会は、その位置付けを明確にすること。

2.市町村教育委員会に置かれる就学指導委員会は、障害のある児童生徒の就学指導にあたり、児童生徒の障害の種類、程度や必要な教育的支援等について専門的な立場から調査や審議を行い、教育委員会に助言を行っているが、今後は、早期からの教育相談の成果を踏まえて十分な審議を行うとともに、障害のある児童生徒の保護者等に専門家の意見を聞く機会を提供することなど機能の充実を図ること。
    また、市町村教育委員会は、幅広い分野の専門家を就学指導委員会の委員とするよう努め、小規模の市町村教育委員会は、共同で就学指導委員会を設置することも検討すること。都道府県教育委員会においては、市町村の就学指導体制の整備充実を支援すること。

3.都道府県教育委員会に置かれる就学指導委員会については、これまでの専門的な立場から調査や審議を行い教育委員会に助言するほか、市町村教育委員会の判断と保護者等の意見がくいちがう場合、客観的な立場から専門的な助言を行う等の機能を果たすことについても検討すること。
    
(1)  都道府県及び市町村教育委員会においては、教育上特別な取扱いを要する児童生徒の障害の種類、程度等の判断について調査や審議を行うために、医師、教育職員、児童福祉施設等の職員で構成する就学指導委員会を設置し、その結果を参考にしながら、就学指導を行っている。  

    市町村及び都道府県教育委員会におかれる就学指導委員会の設置、構成、役割等については、前述の昭和53年10月6日付け文部省初等中等教育局長通達(文初特第309号)において規定されていたが、平成12年4月1日地方分権一括法の施行に伴い機関委任事務制度が廃止されたことにより通達のうち就学指導委員会に関する部分については失効している。  

    このことも踏まえ、障害のある児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた教育を行うために就学指導委員会は今後とも必要であり、その位置付けを明らかにする必要がある。  

           
(2)  市町村教育委員会に置かれる就学指導委員会については、市町村教育委員会が障害のある児童生徒の就学すべき学校を判断するに当たって、専門的な立場から調査や審議を行い助言を行っているが、今後は、児童生徒の障害の状態等を十分に把握するため、早期からの教育相談の成果を踏まえて十分な審議を行う必要がある。また、就学指導委員会が、保護者等に専門家の意見を聞く機会を提供することや、特殊学級、通級による指導等の教育的支援の内容等について校長に助言することや、必要に応じて当該市町村立の小・中学校や養護学校等に就学した障害のある児童生徒に対する就学指導のフォローアップを行うことなどその機能の充実を図る必要がある。  

    就学指導委員会の委員は、幅広い検討を行うため、様々な分野の専門家から構成されることが望ましいが、地域によっては、特殊教育の専門家が十分に確保できない場合がある。このため、小規模市町村教育委員会は、共同で就学指導委員会を設置することを検討することが望ましい。また、都道府県教育委員会は、域内の市町村教育委員会に対して特殊教育の専門家による巡回相談を行ったり、教育相談、就学指導に関する研修会を開催するなど市町村教育委員会の行う就学指導への支援を行うことが望ましい。  

      
(3)  都道府県教育委員会に置かれる就学指導委員会については、具体的な盲・聾・養護学校の指定や盲・聾・養護学校に在籍している児童生徒の転学等について専門的な立場で、調査及び審議を行い教育委員会に助言するなど重要な役割を果たしている。  

    今後、障害のある児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた教育の充実を図るため、都道府県教育委員会が設置する就学指導委員会の役割として、上記の他に1市町村に置かれる就学指導委員会の審議に基づき行った当該市町村教育委員会の判断と保護者等の意見がくいちがう場合、客観的な立場から専門的な助言を行ったり、2必要に応じて都道府県立の盲・聾・養護学校に就学した児童生徒に対する就学指導のフォローアップを行うなどその機能の充実を図ることを検討する必要がある。  

    

   

   

第3章  特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応について

   

1  障害の状態等に応じた指導の充実方策

   

1−1  障害の重度・重複化や社会の変化に対応した指導の充実 

1.障害の重度・重複化や社会の変化に対応して、指導の一層の充実を図るため、盲・聾・養護学校は、個別の指導計画、自立活動、総合的な学習の時間の実施や長期休業中における対応などについて、地域や児童生徒等の実態に応じた創意工夫した取組に努めること。

2.養護学校に在籍する日常的に医療的ケアが必要な児童生徒等への対応については、教育関係機関と福祉、医療関係機関がそれぞれの機能をより効果的に果たすための相互の連携の在り方や医師、看護婦、養護教諭、教諭、保護者による対応の在り方、養護学校における医療機関と連携した医療的バックアップ体制の在り方等について検討を行い、その成果を踏まえ指導の充実を図ること。
   
(1)盲・聾・養護学校においては、小・中学校等に準ずる教育を行うとともに、障害に基づく種々の困難を改善・克服するために、幼児児童生徒(以下「児童生徒等」という。)の障害の種類、程度に応じて手厚くきめ細かな指導を行っている。  

    近年、障害の重度・重複化や多様化、早期からの教育的対応の必要性の高まり、高等部への進学率の上昇、卒業後の進路の多様化など障害児を取り巻く環境が急速に変化している。こうした変化に適切に対応するため、盲・聾・養護学校は、福祉、医療、労働等の関係機関と連携しながら地域の状況や児童生徒等の実態等に応じた教育活動を展開する必要がある。  

    盲・聾・養護学校の学習指導要領は、完全学校週5日制の下、「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し、児童生徒等に自ら学び自ら考える力、豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力など、「生きる力」を育成することをねらいとし、児童生徒等の障害の重度・重複化や社会の変化等を踏まえ、一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を一層充実することなどを基本方針として、平成11年3月に改訂されたところである。  

    新しい学習指導要領においては、障害の状態を改善・克服するための指導領域である「養護・訓練」について、自立を目指した主体的な教育活動を一層推進するため、名称を「自立活動」に改め、目標や内容の見直しを図るとともに、自立活動や重複障害の児童生徒の指導に当たっては、「個別の指導計画」を作成することとしたところである。また、各学校が児童生徒や地域の実態等を踏まえ、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開できるよう「総合的な学習の時間」を創設するなどの改善を図ったところである。  

    今後、盲・聾・養護学校においては、新しい学習指導要領の改善の趣旨が生かされるよう、自立活動、個別の指導計画、総合的な学習の時間などについて、地域や児童生徒等の実態に応じ、学校の創意工夫を生かした取組の充実に努めることが求められる。また、盲・聾・養護学校は、夏期休業中の登校日等の在り方や地域における体験活動、交流活動の充実などについて児童生徒一人一人の障害の状態に応じた指導を工夫することが求められる。  

    国においては、先進的な事例を取り上げた事例集等を作成・配布するなど、各学校の取組を促進し、全国的な普及を図っていくことが求められる。  

    
(2)また、養護学校において、日常的に医療的ケアが必要な児童生徒等への対応が求められている。この課題については、これまで国から都道府県教育委員会に委嘱し調査研究を行ってきたが、教育関係機関と福祉、医療関係機関がそれぞれの機能をより効果的に果たすための相互の連携の在り方や医師、看護婦、養護教諭、教諭、保護者による対応の在り方、養護学校における医療機関と連携した医療的バックアップ体制の在り方等について引き続き実践的な研究を行い、その成果等を踏まえて指導の充実を図ることが必要である。  
   
(3)  なお、自閉症児への教育的対応については、知的障害を伴う場合は、知的障害養護学校や知的障害特殊学級で、知的障害を伴わない場合は、情緒障害特殊学級、情緒障害の通級指導教室等で対応することとなっている。  

  知的障害を伴う自閉症児については、知的障害養護学校等でこれまで培われた実践により、卒業後の望ましい社会参加を実現している例も多いが、知的障害教育の内容や方法だけでは適切な指導がなされない場合もあり、知的障害と自閉症を併せ有する児童生徒に対し、障害の特性に応じた対応について今後も研究が必要である。  

    このため、これまで国立特殊教育総合研究所、大学、特殊教育センターなどにおける自閉症児への指導方法等に関する数多くの調査研究の成果を踏まえ、今後、国は、知的障害を伴う自閉症児への教育と知的障害を伴わない自閉症児への教育の違いを考慮しつつ、知的障害養護学校等におけるより効果的な指導の在り方について調査研究を行う必要がある。  

    
(4)  また、近年、障害の重度・重複化が進む中で、通学にかかる時間を考慮したり、児童生徒の障害の状態等に応じた指導の充実を図ることを目指して、知的障害養護学校や肢体不自由養護学校等が培ってきた指導内容・方法を活用しながら、様々な専門性を有する教員の協力体制や複数の障害に対応した施設・設備を整備し、障害種別を越えた知的障害と肢体不自由を併置した養護学校を設置している事例がある。こうした取組にあたって、併置校における施設の国庫補助は、障害の種類に応じて必要な面積を適用することとされており、自立活動を担当する教員も児童生徒の障害の状態を踏まえ配置されている。現在、国においては、研究開発学校を指定し、障害種別の枠を超えた教育課程の在り方、学校の組織運営体制や指導体制の在り方、教職員や施設設備などの教育条件の整備等について基礎的な研究を行っているところであり、今後こうした研究の成果を踏まえ、重度・重複化に対応した養護学校の教育課程の内容や類型の在り方等について検討していく必要がある。都道府県教育委員会等においては、今後、各県の取組事例や国における検討を参考にしながら、地域の実態に応じてこうした障害の重度・重複化に対応した取組を工夫することが望ましい。  
    

1−2  学習障害児、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児等への教育的対応 

1.学習障害児、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児等通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する指導の充実を図るためには、その実態を把握し、判断基準や指導方法を確立することが必要。このため、これらの特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態や指導の状況等について全国的な調査を行うとともに、その成果を踏まえ、教育関係者や国民一般に対し幅広い理解啓発に努めること。

2.学習障害児への教育的対応については、一人一人の学習障害の状態に応じた指導方法を確立するため、全国的な実態調査の成果等を踏まえ、実践的な研究を行うこと。
    また、都道府県及び市町村教育委員会においては、学習障害の実態把握のための体制を整備するとともに、専門家による各学校への巡回指導により、指導方法の充実に努めること。

3.注意欠陥/多動性障害(ADHD)児や高機能自閉症児等への教育的対応については、  国立特殊教育総合研究所における調査研究の成果等を踏まえ、さらに調査研究を行い、判断基準等を明らかにするとともに、効果的な指導方法や指導の場、形態等について検討すること。
   
(1)いわゆる学習障害とは、一般に「全般的な知的発達に遅れはないが、読み書き等のうち特定のものの習得と使用に著しく困難を示す」状態を指す。学習障害の実態については、国内外において学習障害の定義や判断基準が様々であるため、十分明らかになっていない。文部省においては、これまで調査研究協力者会議を設置して検討を行い、昨年7月に学習障害の判断基準や実態把握等についての試案を提言した報告書がまとめられた。今後、この試案に基づき、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態や指導の状況等について全国的な調査を行うことが必要である。  

    また、この全国的な調査や注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉症児、学習障害児等への教育的対応に関する調査研究の成果を踏まえ、教育関係者や国民一般への幅広い理解啓発に努めることが望ましい。  

    
(2)国においては、全国的な実態調査や国立特殊教育総合研究所における学習障害児への指導方法等に関する調査研究等の成果に基づき、一人一人の学習障害の状態に応じた指導方法を確立するための実践的な研究を行うことが必要である。また、都道府県教育委員会や市町村教育委員会においては、各学校において学習障害の実態を把握するための組織づくりを行うとともに、各学校における実態把握を支援するため、専門家によるチームを構成して各学校等への巡回指導を行うことなどにより、学習障害に対する実態把握の体制の整備と指導方法の充実に努めることが必要である。  

    なお、学習障害に対する指導体制については、上記の調査研究の成果等を踏まえ、通級による指導の対象の可能性について引き続き検討する必要がある。  

    
(3)また、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児や知的障害を伴わない自閉症である高機能自閉症児などの通常の学校に在籍する児童生徒については、まだ原因が究明されておらず、研究機関や国立大学付属養護学校等においてその判断基準や指導方法等を確立するための取組が進められている。このため、国において、これまでの国立特殊教育総合研究所における注意欠陥/多動性障害(ADHD)児や高機能自閉症児等への指導方法に関する調査研究の成果等を踏まえ、今後、注意欠陥/多動性障害(ADHD)児や高機能自閉症児等への教育的対応に関する調査研究を行い、判断基準等について明らかにするとともに、効果的な指導方法や指導の場、形態等について検討することが必要である。  

また、高機能自閉症児への教育は、現在、かん黙や習癖の異常などのいわゆる情緒障害児と同様に情緒障害教育の対象として主に情緒障害特殊学級等において行われている。しかし、自閉症は中枢神経系の機能不全による発達障害とされている一方、いわゆる情緒障害は、主として対人関係の軋轢などの心因性によるものとされている。  このように、自閉症児と心因性の情緒障害児に対する指導内容や方法は異なるにも係わらず両方とも情緒障害教育の対象となっていることから、それぞれの特性に応じた指導が適切に行われていない場合もある。このため、今後、高機能自閉症児への教育と心因性の情緒障害児への教育の違いを考慮しつつ、両者に対する教育的対応の在り方を見直していく必要がある。  

   

1−3  最新の情報技術(IT)を活用した指導の充実

1.最新の情報技術(IT)を活用して障害のある児童生徒が障害に基づく種々の困難を改善・克服し、自立や社会参加を促すため、一人一人の障害の状態等に応じた情報機器等の研究開発を行うとともに、情報技術(IT)を活用した指導方法や体制の在り方について検討を行うこと。
    また、盲・聾・養護学校において、情報ネットワーク環境を整備するとともに、障害に応じた最新の情報機器の計画的な整備を図ること。

2.訪問教育を受けている児童生徒や入院中の児童生徒がマルチメディアを活用して学習意欲を高めたり、社会とのつながりを強めるため、これまでの研究の成果を踏まえ、盲・聾・養護学校においてマルチメディアの積極的な活用に努めること。
   
(1)障害のある児童生徒については、最新の情報機器や情報ネットワークにより障害を補完したり、学習を支援する補助手段として活用することなどにより障害に基づく種々の困難を改善・克服し、社会とのコミュニケーションを広げ、新たな情報技術(IT)や能力を切り拓いて自立や社会参加を促すことが重要である。  

    近年の情報技術(IT)の進展により、例えば、視覚障害者のための点字や音声による入・出力が実現している。また、運動機能に障害がある人のための種々のスイッチの開発等によってこれまで困難とされてきたコンピュータやインターネットを活用した新たな職域も開拓されることになり、その結果、社会参加への道が大きく広がるなど、障害のある児童生徒が社会に積極的に参加することが可能になってきている。  

    平成12年3月末現在、公立の盲・聾・養護学校においては、99.6%の学校に平均15.3台の教育用コンピュータが設置されており、インターネットの接続率は59.9%である。今後、平成17年度までに、すべての学級のあらゆる授業においてコンピュータ等を活用できる環境を整備することとされている。  

    このように情報機器を整備し、情報ネットワークを活用することにより遠隔地間の共同授業が実施できたり、今まで手に入りにくかった他の地域の教育情報の入手が容易になるなど、最新の情報技術(IT)による教育内容・方法の充実が期待される。  

    こうしたことを踏まえ、特殊教育における情報機器等の活用については、一人一人の障害の状態等に応じた情報機器(周辺入出力機器を含む)や学習支援ソフト等を整備したり障害に基づく種々の困難を改善・克服し、自立や社会参加を促すための様々な場面での活用の在り方について検討する必要がある。また、前述したように情報技術(IT)の進展により障害のある児童生徒の新たな職域や学習の機会が広がっており、情報技術(IT)を活用して社会参加や就労を目指した指導を行う等の取組を行うためには、企業や地域の人々の協力を得ることが重要な役割を果たすと考える。  

    このため、国においては、国立特殊教育総合研究所における情報機器等を活用した指導方法に関する調査研究の成果や産業界の動向、研究成果等を踏まえ、今後、最新の情報技術(IT)を活用して一人一人の障害の状態等に応じた指導方法や体制の在り方等について調査研究を行い、先進的な事例を紹介したり、指導の在り方等について指導資料等を作成して、各学校に配布する等により、特殊教育関係教職員の情報機器活用能力の向上に努める必要がある。  

    盲・聾・養護学校においては、児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた指導を可能にするため、インターネット等を用いた情報ネットワーク環境や一人一人の障害に対応した最新の情報機器等の設備を計画的に整備することが必要である。  

    
(2)マルチメディアを活用して院内学級と本校、病室と病弱養護学校を情報通信手段で結んで行う補充指導については、これまで文部省において「マルチメディアを活用した補充指導に関する調査研究」を実施してきたが、障害のある児童生徒が学習意欲を高めたり、社会とのつながりを強めるなど大きな成果をあげている。こうした研究の成果を踏まえるとともに、近年の情報技術(IT)の進展により学校間や学校と家庭との双方向の交流が可能となっていることを考慮すると、今後、障害が重度であるため通学できず訪問教育を受けている児童生徒や入院中の児童生徒に対して、マルチメディアを積極的に活用して指導の充実を図ることが望ましい。その際、児童生徒への指導に当たっては、教員との人間的なふれあいが不可欠であることに留意しながら実施する必要がある。  
    

2  特殊教育諸学校、特殊学級及び通級による指導の今後の在り方について

   

2−1  地域の特殊教育のセンターとしての特殊教育諸学校の機能の充実  

1.盲・聾・養護学校は、その専門性や障害に対応した施設で早期からの教育相談を実施したり、幼稚園等の障害のある幼児を指導するなど、地域の特殊教育に関する教育相談センターとしての役割を果たすこと。

2.盲・聾・養護学校は、その専門性や施設・設備等を生かして、地域の小・中学校や幼稚園等に対して、求めに応じて教材・教具や情報機器等を貸し出したり、盲・聾・養護学校の教員が小・中学校等の教員に対して情報提供したり、小・中学校等  の教員が盲・聾・養護学校を訪問して研修するなど、小・中学校や幼稚園等への支援センターとしての役割を果たすこと。
   
(1)盲・聾・養護学校においては、障害の状態等に対応した指導方法・内容について専門性を培っており、小・中学校の通常の学級に在籍する学習障害等の特別な教育的支援が必要な児童生徒への対応に寄与することが期待される。また、近年、盲・聾・養護学校と小・中学校等や地域の人々との様々な交流活動が展開されるようになっている。こうしたことを踏まえ、盲・聾・養護学校は、その専門性や障害に応じた施設・設備を生かして地域の特殊教育のセンターとしての役割を果たすことが必要である。  
    
(2)平成11年3月に改訂した盲・聾・養護学校の学習指導要領等においては、盲・聾・養護学校は、「地域の実態や家庭の要請等により、障害のある児童若しくは生徒又はその保護者等に対して教育相談を行うなど、各学校の教師の専門性や施設・設備を生かした地域における特殊教育に関する相談センターとしての役割を果たすよう努めること。」とされている。今後、障害のある児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた教育を行うためには、早期からの教育相談を実施したり、幼稚園や保育所等にいる障害のある幼児を指導するなど、地域の特殊教育に関する教育相談センターとしての役割を果たすことが必要である。  
    
(3)また、盲・聾・養護学校においては、その専門性や障害に応じた施設・設備を生かして地域の特殊教育のセンターとして、地域の小・中学校や幼稚園等を様々な方法により支援することが必要である。例えば、盲・聾・養護学校においては、生徒等の障害の状態等に応じて教材・教具を開発したり、障害の種類、程度等に応じた情報機器を整備し、それらを活用した情報教育が行われているが、今後、盲・聾・養護学校においては、こうした取組の成果を生かして、都道府県の特殊教育センター等と連携しながら、小・中学校等の求めに応じて、小・中学校等に在籍する障害のある児童生徒等の指導の充実を図るため、教材・教具や情報機器等の貸し出し、学習コンテンツの提供などの支援を行うことが求められる。また、卒業生を始め地域の障害者が情報活用能力を身に付けるための情報教育センターとしての役割を果たすことが期待される。  

    更に、盲・聾・養護学校の教員が、小・中学校や幼稚園、保育所等関係職員の相談に乗ったり、共同で授業研究を行ったり、指導事例や教材その他の関係情報を提供することや、逆に、小・中学校や幼稚園、保育所等の関係職員が、盲・聾・養護学校を訪問して研修を行うことなども重要である。  

   

   

2−2  特殊学級、通級による指導の今後の在り方について 

1.特殊学級における教育の充実を図るため、小・中学校においては、特殊学級担当教員だけでなく、学校の教職員全体で支援するとともに、特殊教育に関する知識を有し指導力のある教員や、非常勤講師や特別非常勤講師、高齢者再任用制度による  短時間勤務職員等の活用について検討すること。

2.通級による指導の充実を図るため、小・中学校においては、学校の教職員全体の理解を得るとともに、通常の学級の担任は、通級指導担当教員との連携を密にし、ティームティーチングを活用して指導を行うこと。
    また、非常勤講師や特別非常勤講師、高齢者再任用制度による短時間勤務職員等の活用について検討すること。
   
(1)小・中学校に設置されている特殊学級の設置学校数や特殊学級数の全学校数に占める割合及び児童生徒全体に占める在籍率は年々増加している。また、それらの学校には、複数の学年にまたがる児童生徒が在籍したり、児童生徒の障害の状態が多様化し、それに応じて複数の教育課程が必要となるなど児童生徒の特別な教育的ニーズに応じた指導の充実を図ることが必要となっている。  

    また、特殊学級と通常の学級との交流は積極的に行われるようになっており、児童生徒が社会性や豊かな人間性をはぐくむとともに、障害のある児童生徒に対する理解と認識を推進することにつながっている。更に、平成10年12月に改訂した小・中学校学習指導要領において、「障害のある児童などについては、児童の実態に応じ、指導内容や指導方法を工夫すること。特に、特殊学級又は通級による指導については、教師間の連携に努め、効果的な指導を行うこと。」と新たに規定されており、特殊学級における教育について担当教員だけでなく、学校全体で支援していく体制をつくることが必要である。また、各学校においては、特殊学級における教育の充実を図るため、特殊教育に関する知識を有する指導力のある教員や非常勤講師、特別非常勤講師、高齢者再任用制度による短時間勤務職員等の活用についても検討することが望ましい。  

    
(2)また、通常の学級に在籍する軽度の障害のある児童生徒に対して、特別の場で特別な指導を行う「通級による指導」については、平成5年に学校教育法施行規則第73条の21に規定され、実施された。対象児童生徒数は、当初は1万2千人であったが、平成11年には2万6千人となり、著しく増加している。通級による指導は、通常の学級に在籍しながら特別な教育的ニーズに応じて指導を受けることが可能であり、今後も増加することが予想される。通級による指導には、児童生徒が在籍校で通級による指導を受ける自校通級方式、在籍校とは別の学校に通う他校通級方式、他校の教員が巡回して指導する方式があるが、地域の実態に応じて児童生徒の負担に配慮しながら、通級による指導の充実を図る必要がある。また、通級による指導を受けている児童生徒の学級担任は、通級による指導担当教員と連絡を密にして、当該児童生徒の特別な教育的ニーズに十分配慮して指導を行うことが必要である。  

  このため、通級による指導の一層の充実を図るためには、通級指導担当教員だけで対応するのではなく、各学校において、学級担任をはじめ全ての教職員の理解を得て学校全体で支援する体制をつくり、通常の学級において授業を受ける際、ティームティーチングを活用することなどの工夫を行うことが望ましい。  

  また、小・中学校の通級指導担当教員が盲・聾・養護学校の教員に障害のある児童生徒への指導方法等について相談し、指導、助言をうけることができるというような支援体制をつくるなど、小・中学校と盲・聾・養護学校との連携を図ることも重要である。さらに、非常勤講師や特別非常勤講師、高齢者再任用制度による短時間勤務職員等を活用して、通常の学級における軽度の障害のある児童生徒に対する指導体制の充実を図ることが望ましい。  

    
(3)なお、特殊学級及び通級による指導における教育の充実を図るため、1学校全体としての支援体制の在り方や2盲・聾・養護学校による小・中学校への支援の在り方等について、特殊学級や通級による指導の実態を踏まえ、調査研究することが必要である。  
3  後期中等教育機関への受入れの促進と障害のある者の生涯学習の支援について
1.盲・聾・養護学校高等部への進学希望者の状況等を踏まえ、各都道府県においては、高等部の整備及び配置、高等養護学校の設置促進等について検討を行い、地域の実態に応じた整備に努めること。
    また、高等学校では、障害のある生徒の入学者選抜における配慮や障害に応じた施設の整備に関する取組を引き続き進めること。

2.生徒の職業的自立を促進するため、就業を支援する方策について実践的な研究を行い、その成果を踏まえ、盲・聾・養護学校は、保護者や企業、労働、福祉関係機関等と連携しながら、児童生徒の障害の状態に応じた在学時から卒業後までを見通した個別の就業支援計画を策定すること。

3.障害のある児童生徒等が、社会の一員として主体的に活動し、自立し、社会参加するための基盤となる「生きる力」を培うため、福祉団体やボランティア等の協力を得て各地域の様々な活動等の機会を充実するとともに、活動に関する情報を提供し、体験活動の充実に努めること。

4.教育委員会は、障害のある者が学校を卒業した後も地域の中で自立し、社会参加することができるよう福祉関係機関や福祉団体等と連携して生涯にわたる学習機会の充実に努めること。
    盲・聾・養護学校は、その専門性や施設・設備を生かして、障害者のための生涯学習を支援する機関としての役割を果たすこと。また、放送大学は更なる充実を図るとともに、障害者の受講等に対して一層配慮すること。
    
(1)盲・聾・養護学校の高等部は、職業に関する各種の専門学科を設置したり、普通科の中に専門コースを設置するなど、生徒の実態に応じて多様な職業教育を実施しており、生徒の自立や社会参加のために重要な役割を果たしている。盲・聾・養護学校中学部及び中学校特殊学級卒業者の盲学校等の高等部等への進学率は年々増加し、平成11年度は87.7%となっている。しかし、中学校卒業者の高等学校の進学率が約97%であることと比較すると、障害のある生徒の後期中等教育の機会を更に充実する必要がある。このため今後とも、進学希望者の状況等を踏まえ、各都道府県教育委員会においては、地域の実態に応じて盲学校等の高等部や高等養護学校を整備するよう努めることが必要である。なお、高等部の整備に当たっては、生徒がより身近な地域で教育を受けることができるよう、できる限り適正配置に努めることが望ましい。  

    また、高等学校では、障害のある生徒の入学者選抜において、各高等学校、学科等の特色に配慮しつつ、その教育を受けるにたる能力、適性等を判定して行うという基本的な考え方の下に、障害があることのみをもって不合理な取扱いがなされることがないよう障害の種類や程度に応じて、点字・拡大文字による受検、別室受検、ヒアリングに代わる筆記問題、検査時間の延長、代筆解答などの特別な措置が講じられている。また、学校施設については、障害のある人がその障害の程度に応じた十分な教育を受けられるようにするため、スロープ、エレベータ、障害者用トイレ等施設のバリアフリー化が進められている。今後も、障害のある生徒が、その能力と適性等に応じて後期中等教育の機会の充実が図られるよう、各高等学校において、こうした取組に努めることが期待される。  

    なお、障害のある者が、その能力・適性等に応じて高等教育機関で十分な教育を受けることができるよう各大学等においては、受験機会の確保、必要な施設・設備の一層の充実を図ることが期待される。  

    
(2)また、盲・聾・養護学校の児童生徒の障害の重度・重複化や近年の経済状況を反映して、高等部卒業後の進路が多様化している。今後、生徒の職業的自立を促進するためには、盲・聾・養護学校が、保護者や、企業、労働、福祉関係機関等と連携しながら、児童生徒の障害の状態に応じた職業教育や進路指導を充実する必要がある。このため、都道府県教育委員会等において、公共職業安定所、地域障害者職業センター等の関係機関や企業、経済団体等で構成する継続的な就業支援体制を整備するとともに、盲・聾・養護学校が中心となって関係機関と連携して、障害のある生徒の在学時から卒業後にわたる個別の就業支援計画を策定し、就業支援の充実を図ることが求められており、国は、こうした取組を推進するための実践的な研究を行うことが必要である。  
   
(3)近年、ノーマライゼーションの進展により、障害のある者が住んでいる地域社会の中で、積極的に活動し、その一員として豊かに生きることが重視されるようになっている。このことは、居住地から離れた学校に就学することが多い盲・聾・養護学校の児童生徒にとって大きな課題となっている。  

    このため、夏期休業日など長期休業中の過ごし方や平成14年度からの完全学校週5日制の実施も見据え、教育委員会は、学校、地域社会との連携を図りながら障害のある児童生徒が、社会の一員として主体的に活動し、自立し、社会参加するための基盤となる「生きる力」を培うため、地域において自らボランティア活動を行ったり、地域の学校施設等において文化、芸術、スポーツなどの様々な活動を行ったり、福祉団体やボランティア等の協力を得て地域の様々な活動に参加する等の機会を充実するとともに、活動に関する情報を提供し、体験活動の機会の充実に努めることが望ましい。  

    更に、障害のある児童生徒が様々な活動を行う際にボランティアの協力が必要な場合、地域の生涯学習ボランティアセンターにおいて人材を紹介したり、相談を受けつけるなどその活動を支援するための体制の整備が重要である。  

    また、国においては、盲・聾・養護学校の児童生徒等が、地域の同年代の子どもを含めた地域の人々と交流し、様々な活動を通して、自立し、社会参加するための方策について実践的な研究を行う必要がある。  

          
(4)障害のある者が学校を卒業後、地域の中で自立し、社会参加するためには、教育委員会が、福祉関係機関や福祉団体等と連携するとともに、学校が福祉等の関係施設と協力して生涯にわたる学習機会の充実を図り、障害者のための生涯学習を支援することが必要である。  

    このため、盲・聾・養護学校においては、その専門性を生かして障害者のために専門学科等の施設・設備を活用してパソコン教室、木工教室、ガーデニング教室等の公開講座を開催するとともに、障害者の生涯学習に資するよう広く地域の住民に対し運動場や体育館、プールなど学校の施設を開放したり、障害者の理解やコミュニケーション技法の習得、地域のボランティアリーダーの養成等を行うボランティア講座を実施するなどの取組を行い、生涯学習を支援する機関としての役割を果たすことが重要である。  

    また、放送大学については、時間的・空間的制約のない学習機会を提供する観点から、更なる充実をはかり、障害者の受講等に対して一層配慮することが重要である。  




第4章  特殊教育の改善・充実のための条件整備について
   

1  盲・聾・養護学校や特殊学級等における学級編制及び教職員配置について

1.都道府県教育委員会においては、各学校で児童生徒の実態等に応じた特色ある教育活動を積極的に展開するため、地域や盲・聾・養護学校の実態や規模、児童生徒の実態に応じて、機動的、弾力的に教職員配置を行うこと。

2.都道府県教育委員会においては、指導の充実等を図るために必要があると判断する場合には、義務標準法に基づく教職員定数を活用して、義務標準法で定められている学級編制の標準を下回る学級編制の基準を定めることが可能となるよう法改正の準備が進められている点を考慮して、盲・聾・養護学校の児童生徒の実態等を踏まえ、必要の応じ適切な学級編制を基準を定めることについてを検討すること。

3.盲・聾・養護学校は、その自主性、自律性を確立し、児童生徒の障害の状態等に応じた特色ある教育課程を編成することが求められているため、学級という概念にとらわれず、より柔軟に工夫を凝らして多様な学習指導の場を設定するなど指導形態、指導方法を工夫すること。

4.盲・聾・養護学校や特殊学級においては、総合的な学習の時間をはじめとする多様な教育活動の展開や、自立活動や職業教育の指導の必要性に対応するため、非常勤講師や高齢者再任用制度等の制度を活用したり、地域社会の多様な人材を特別非常勤講師やボランティアとして活用することにより、幅広い指導スタッフを整備すること。

5.小・中学校の特殊学級については、特殊学級の教育を教職員全体で支援するとともに、通級による指導については、対象児童生徒に対し適切な教育ができるよう教員の配置に努めること。
    また、盲・聾・養護学校の教員が通級による指導を実施したり、小・中学校を支援すること。
   
(1)障害のある児童生徒の教育については、自己のもつ能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うため、盲・聾・養護学校や特殊学級等において、障害に応じた特別な教育課程を編成したり、専門性ある教職員を配置し、比較的少人数による指導を行っている。  

盲・聾・養護学校では、従来から義務標準法で定められている学級編制とは別に個別指導やグループ別の指導等を行ってきたが、近年、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化、社会の変化により児童生徒一人一人に対する指導の内容、方法等の実態が大きく異なっているため、児童生徒の特別な教育的ニーズに対応したきめ細かな指導が行えるよう指導方法や指導体制の工夫や改善がますます必要となっている。  

    また、教科指導に加え、障害に基づく種々の困難を改善・克服するための自立活動の担当教員や教育相談担当の教職員、養護教諭等児童生徒が学校生活を送る上で必要な教職員の充実が求められており、このような教職員の定数の改善を図る必要がある。  

    各都道府県教育委員会においては、各学校で児童生徒の実態等に応じた特色ある教育活動を積極的に展開するため、義務標準法に示されている学校の学級数に応じた係数は、都道府県全体の教職員の総定数を算定するものであり、各学校への配置数を決めているものではないことを踏まえ、地域や盲・聾・養護学校の実態や規模、児童生徒の実態に応じて、機動的、弾力的に教職員配置を行うことが必要である。  

    
(2)  また、指導の充実等を図るために必要があると判断する場合に、義務標準法に基づく教職員定数を活用して、義務標準法で定められている学級編制の標準を下回る学級編制の基準を定めることが可能となるよう法改正の準備が進められている点を考慮し、各都道府県教育委員会においては、盲・聾・養護学校の児童生徒の実態等を踏まえ、必要に応じ、適切な学級編制基準を定めることについて検討する必要がある。  

    なお、盲・聾・養護学校の指導の充実や地域の特殊教育センターとしての機能の充実を図るため、盲・聾・養護学校間や盲・聾・養護学校と小・中学校間で交流教育や共同の授業研究などの取組を進めることが期待される。  

    
(3)  実際の指導に際しては、盲・聾・養護学校は、その自主性、自律性を確立し、児童生徒の障害の状態等に応じた特色ある教育課程を編成することが求められているため、学級という概念にとらわれず、より柔軟に工夫を凝らして多様な学習指導の場を設定するなど指導形態、指導方法を工夫する必要がある。このため、各学校においては、このような多様な指導形態、指導方法について教職員が適切な指導組織を構成したり、校務を分掌するなど学校全体で取組む必要がある。  
    
(4)  盲・聾・養護学校や特殊学級においては、今後、総合的な学習の時間をはじめとする多様な教育活動の展開や、自立活動や職業教育の指導の必要性に対応するために、非常勤講師や高齢者再任用制度等の制度を活用して、自立活動、外国語教育、情報教育等に専門分野、得意分野を異にする幅広い指導スタッフを整備することが求められる。また、地域社会の多様な人材を特別非常勤講師やボランティアとして活用することにより学校の指導体制の充実を図ることも重要である。  

    また、近年、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化に対応するため、都道府県の中には、独自で福祉、医療と連携して理学療法士、作業療法士等を特別非常勤講師として雇用する、看護婦等を非常勤職員として活用したり他機関から派遣する、労働省所管の緊急地域雇用特別交付金制度において情報技術の専門家を特別非常勤講師として雇用するなどの取組が見られるが、こうした人材活用例を参考にして、今後、各都道府県において、地域や学校の実態等に応じてこのような取組が進むことを期待したい。  

    
(5)  小・中学校の特殊学級については、特殊学級の児童生徒の障害の状態が多様化しているため、それに応じて様々な教育課程の編成、実施が求められている。また、近年、通常の学級との交流が積極的に行われるようになっているが、特殊学級の児童生徒に対する指導は特殊学級担任教員だけに任される場合も多く、ともすれば孤立しがちであるとの声が聞かれる。このため、特殊学級を教職員全体で支援するとともに、通常の学級の児童生徒への理解・啓発に努めるなど、学校全体で特殊学級における教育の充実を図っていくことが必要である。  

    通級による指導の導入に伴う教員配置については、平成5年度から実施してきた第6次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画を、毎年度計画的に推進し、平成12年度で完成したところである。今後とも、通級による指導をうける児童生徒に対し適切な教育ができるような教員の配置に努めることが必要である。  

また、例えば、聾学校の幼稚部等において早期からの教育的対応によって十分な言語習得を図り、小・中学校へ就学した難聴の児童生徒については、引き続き聾学校の教員が支援する必要があるとの指摘がある。このような事例を踏まえ、小・中学校に就学した軽度の障害のある児童生徒の更なる指導の充実を図るために、盲・聾・養護学校の教員がもっている専門的な指導力を活かして通級による指導を実施するなど、小・中学校を支援することが必要である。  

    
(6)  なお、今後、就学指導の在り方の改善に伴い、特別な場合に小・中学校に就学する児童生徒に対し教育上の配慮が必要になることが想定される。今後、こうした障害のある児童生徒に対して適切な指導を行うために特殊教育で培った指導方法等の知見を生かすことがますます必要になる。このため、小・中学校においては、教職員全体が障害のある児童生徒に対する理解・啓発に努めるなど学校全体で指導体制の充実に努めるとともに、日頃から盲・聾・養護学校との連絡を密にとり、障害のある児童生徒への教育的対応についての情報を常に交換できるようにしておくことが重要である。  
   

2  特殊教育関係教職員の専門性の向上

   

2−1  特殊教育教諭免許状の保有率の向上及び今後の免許状の在り方について 

1.可能な限り早期にすべての盲・聾・養護学校の教員が特殊教育教諭免許状を保有することが必要であり、設置者である各都道府県教育委員会等の積極的な取組が求められる。このため、各都道府県等においては、特殊教育教諭免許状の保有率等を踏まえ、特殊教育教諭免許状の保有率向上の目標と計画を策定し、次のような取組を進めること。
  1  教員採用に当たって特殊教育教諭免許を有する者の採用を基本とすること。
  2  教員配置に当たって免許保有等の要件を明確にしたり、配置後一定期間に免許を取得するよう促すなどの工夫をすること。
  3  認定講習の充実や情報提供などに努め、教員が計画的に単位を修得する機会が得られ、免許が取得できるようにすること。

2.国は、各都道府県における特殊教育教諭免許状保有率の状況を踏まえ、全国的に必要となる保有者数を把握するとともに、各都道府県教育委員会等の免許状保有率の向上のための目標と計画及び改善状況等を調査し、教育委員会等における取組を支援すること。国立特殊教育総合研究所において、情報通信技術を活用し、講義を配信するなど引き続き認定講習の充実に寄与すること。
    また、学校種ごとに定められている免許のほかに盲・聾・養護学校のすべての校種において教授することを可能とする「総合免許状」については、関係者の意見を聴取しながら検討すること。
  
   
(1)盲・聾・養護学校の教員については、児童生徒の障害の状態に応じて、特別な教育的ニーズに応じた教育を行う必要があることから、小・中学校等に比べて特別な専門性が要求される。このため、盲・聾・養護学校の教員は、小・中学校等の教員のいわゆる基礎免許状に加えて、盲・聾・養護学校の学校種ごとの特殊教育教諭免許状の所有が必要とされている。  

    しかし、現状では盲・聾・養護学校の教員の特殊教育教諭免許状の保有率は、盲学校21%、聾学校31%、養護学校52%となっている。  

    各都道府県ごとの特殊教育教諭免許状の保有状況をみると、例えば養護学校でおよそ9割から3割までかなりのばらつきがみられるが、保有率の高い県では、特殊教育における専門性の重要性を十分認識した上で様々な取組によって保有率の向上に努力し成果を挙げている。  

    具体的な取組としては、例えば、採用について、特殊教育諸学校の試験区分を設け当該免許の保有を条件とするとともに、やむなく当該免許を有しない者を採用せざるを得ない事情がある場合でも、できるだけ早期に免許取得を求めているところがみられる。  

    また、小・中・高等学校との間で人事交流を行う場合には、特殊教育に意欲があり、実践的な指導力を有する教員を配置するよう努めており、当該教員が特殊教育教諭免許状を有していない場合には、免許状を取得するよう促しているところもみられる。  

    さらに、特殊教育教諭免許のための認定講習について、例えば盲・聾・養護学校を講習会場とするなど、教員が受講しやすくなるよう配慮するとともに、近隣の県との間で認定講習の開設情報を交換し教員に提供したり、受講希望者を相互に受け入れるなどの工夫をしているところもみられる。  

    
(2)このような実情を踏まえ、可能な限り早期にすべての盲・聾・養護学校の教員が特殊教育教諭免許状を保有することが必要であり、設置者である各都道府県教育委員会等の積極的な取組が求められる。このため、各都道府県教育委員会等においては、特殊教育教諭免許状の保有状況や学校の状況等を踏まえ、具体的な改善の目標及び計画を策定し、その実現に向け、人事管理、教職員研修、教育指導など総合的な観点から次のような採用、配置、研修等を通じた取組を積極的に進めることによって、特殊教育教諭免許状の保有率を向上させる必要がある。  

    第一に、盲・聾・養護学校の教員の採用に当たって、教員養成課程で特殊教育を修め、当該免許を有する者の採用を基本とする必要がある。  

    第二に、教員の盲・聾・養護学校への配置に当たっては、当該免許の保有その他の要件を明確にしたり、当該免許を保有していない教員を継続的に配置する場合には、3年間など一定期間に当該教員が免許を取得するよう促すなどの工夫をする必要がある。  

    第三に、現職教員の当該免許の取得については、地元の大学や近隣の都道府県等との一層の連携を進め、認定講習の充実や情報提供などに努めることにより、教員が計画的に単位を修得する機会が得られ、免許が取得できるようにする必要がある。  

    なお、特殊学級や通級による指導担当の教員についても、児童生徒の障害の種類、程度に応じた教育の専門性が必要であり、特殊教育教諭免許状の保有者を充てたり、特殊学級や通級による指導担当の教員が特殊教育教諭免許を取得するよう促すことにより専門性を高める必要がある。  

    
(3)国は、各都道府県における特殊教育教諭免許状保有率の状況を踏まえ、全国的に必要となる保有者数を把握するとともに、各都道府県教育委員会等が策定する特殊教育教諭免許状の保有率の向上のための目標と計画及びそれに基づく毎年の改善状況等を調査し、教育委員会等における取組を支援する必要がある。また、国立特殊教育総合研究所は、情報通信技術を活用し、教育委員会と連携を図って講義を配信するなど引き続き認定講習の充実に寄与する必要がある。  

    また、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化が進んでいる中で、特殊教育教諭免許状が、盲・聾・養護学校に分かれていることが現実に合わない状況が生じている。こうしたことを踏まえ、今後、複数の障害に対応した専門性と実践的指導力を有する教員を養成するため、学校種ごとに定められている免許のほかに盲・聾・養護学校のすべての校種において教授することを可能とする「総合免許状」について関係者の意見を聴取しながらその創設について検討する必要がある。  

    

2−2  研修の充実 

1.障害のある児童生徒の教育を支えるすべての教員が職務や役割などに応じて力を発揮できるよう研修の在り方を見直し、国と都道府県等が協力して教員の資質の向上に努めること。

2.盲・聾・養護学校の教員の専門的な指導力の向上を図るため、研修目的や研修者の特性に応じて適切な研修プログラムを策定すること。また、インターネットや衛星通信など情報通信手段の活用を工夫し、研修事業の成果を効果的に普及し、活用すること   。

3.特殊学級担当教員及び通級指導担当教員については、都道府県教育委員会等において免許状を保有する教員を配置したり、特殊学級や通級指導教室を設置する小・中学校に、特殊教育の理解の深い校長や教頭を配置するなど人事上配慮するとともに、研修の全体計画に位置づけ、経験年数やニーズに応じて計画的、体系的な研修プログラムの提供に努めること。

4.小・中学校の教員についても特殊教育に関する知識を身に付ける必要があり、都道府県教育委員会等においては、小・中学校の教員の初任者研修等の中で、盲・聾・養護学校において研修を実施することを検討すること。また、通級による指導を受けている児童生徒の学級担任に対する研修の機会を設けること。
    学習障害等の児童生徒への教育的対応について、国立特殊教育総合研究所において専門的な研修を実施するとともに、都道府県において専門家の巡回相談事業を活用し事例研究などを進めること。

   
(1)児童生徒の障害の状態等に応じたきめ細かな指導を行うためには、特殊教育担当教員の資質の向上が必要である。このため、これまで、文部省及び国立特殊教育総合研究所においては、種々の特殊教育に係る指導者講習会や喫緊の課題に関する研修を行い、都道府県教育委員会等は職務経験に応じた研修や専門教科等に係る基本的な研修を行うなど、それぞれが役割分担して研修体系の整備に努めてきた。  

    盲・聾・養護学校の教員については、各都道府県の特殊教育センター等において、初任者研修、中堅職員研修、新任校長・教頭研修、自立活動、専門教科、訪問教育、通級による指導など、経験、職能等に応じた研修が行われている。  

    特殊学級担当の教員及び通級指導担当の教員についても、都道府県教育委員会等では、特殊学級担任等を対象とした研修を行っているところが多いが、特殊学級担任が他の教員に任せて学校外で研修を受けることが難しかったり、研修の内容も、受講者の経験や力量などの幅が大きく、多様なニーズに十分応じたものになっていないなどの問題がある。  

    また、小・中学校の教員については、障害のある児童生徒や基本的な指導上の配慮事項などへの理解が求められており、都道府県の特殊教育センター等において、特殊教育に関する情報を広く提供するための公開講座を実施したり、学校において、校内研修に特殊学級の研究授業を盛り込むなど理解・啓発に努めているところもある。しかし、通常の学級の教員が特殊教育に関する研修を受ける体制は、必ずしも十分ではない。  

    このような状況を踏まえ、今後、障害のある児童生徒の教育を支えるすべての教員がそれぞれの職務や役割などに応じて十分力を発揮できるよう、研修の在り方を見直し、国と都道府県等が協力して教員の資質の向上が図られるようにすることが必要である。                                                    

   
(2)  盲・聾・養護学校の教員を対象とした研修については、児童生徒一人一人の障害の状態に応じた専門的な指導や障害の重複化に対応した一層きめ細かな指導ができる力の向上を図るため、それぞれの地域や学校の実態を踏まえ、特殊教育に関する最新の情報や、必要に応じ福祉、医療、労働などの関連分野と連携を図った研修の機会などを提供することが求められる。平成13年度から実施される大学院修学休業制度を活用して専門性を高めることも検討すべきである。  

    また、盲・聾・養護学校において専門性の高い教育の充実を図るためには、特殊教育に対する十分な知識と深い理解を有する者を校長や教頭に配置するよう配慮するとともに、校長や教頭に対する研修の充実を図ることが求められる。  

    さらに、他校種から盲・聾・養護学校への転任を希望する教員に対しても計画的な研修が望まれる。  
    このため、都道府県の特殊教育センター等において、研修の目的や特殊教育の経験年数などの対象者の特性に応じて一層適切な研修プログラムを策定することが必要である。  

    また、インターネットや衛星通信など情報通信手段を活用したり、都道府県主催の研修の受講修了者が市町村主催の研修の講師になったり、各学校の校内研修において他の教員を指導するなどの工夫により、研修事業の成果が効果的に普及し、活用されるようにすることが重要である。  

   
(3)  特殊学級担当教員及び通級指導担当教員については、特殊教育に対する基本的な理解、障害を改善・克服するための指導方法、子どもとのかかわりや保護者への教育相談の心構えなどの知識・技能等の専門性が不可欠である。しかし、一般的に、通級指導担当教員は、経験豊富な指導力のある教員が配置されることが比較的多いが、特殊学級担当の教員については、地域によっては、経験の少ない若手の教員が配置されたり、学校内の教員が交替で担当していることから、特殊教育に関する専門性が必ずしも十分でない場合もあるとの指摘もある。  

    地域によっては、研修を行うに当たって、研修希望のある学校に指導者を派遣し特殊学級における校内研修会を行ったり、特殊学級の担任が養護学校の授業に参加して実践的な指導力を身につけるようにするなどの工夫をしているところもある。  

    都道府県教育委員会等においては、特殊教育教諭の免許状を保有する教員を特殊学級担当教員等に配置したり、盲・聾・養護学校との人事交流を推進するなど、人事上の配慮を積極的に行うとともに、教職員研修担当者と特殊教育担当者が連携を図り、特殊学級担当教員等に対する研修を全体の研修の中に位置づけ、特殊学級担当教員等の経験年数やニーズに応じて計画的、体系的な研修プログラムを提供できるよう努める必要がある。また、特殊学級や通級指導教室を設置する小・中学校には、特殊教育に理解が深い者を校長や教頭として配置することや、新任の校長や教頭に対する研修の充実を図ることについて配慮することが求められている。  

    市町村教育委員会においても、都道府県教育委員会等と役割分担しながら、特殊学級担当教員等の研修の機会の充実を図ることが期待される。また、小・中学校の校長は、特殊学級担当教員等の専門性の重要性を認識し、学校全体で協力して特殊学級担当教員等の研修の機会の充実に取組むことが必要である。  

   
(4)  小・中学校における通級による指導を受ける児童生徒の増加や学習障害等への対応が求められていることや、盲・聾・養護学校と小・中学校等との交流を進め、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流を積極的に推進する上で、今後、通常の学級を担当するすべての教員が障害のある児童生徒とその教育に関する理解と認識を深めることが必要となっている。  

    小・中学校の教員については、普通免許状の授与を受ける場合の教職に関する科目として障害のある児童生徒の心身の発達及び学習の過程が含まれることとなり、また、小・中学校の普通免許状取得希望者は、盲・聾・養護学校や福祉施設における介護等体験を必ず行うこととされたところであり、今後は、普通免許状取得者の特殊教育に関する理解が深まることが考えられる。  

    また、教員養成大学等においては、障害のある児童生徒の発達や学習の過程などに関する科目の開発を行ったり、授業の内容や方法の改善を図るための組織的な研修や研究の充実に努めている。採用後も、都道府県教育委員会等において、小・中学校の教員の初任者研修等の中で、盲・聾・養護学校において研修を実施することを検討することが望まれる。  

    なお、身体に障害のある者が教員になることは、児童生徒の障害者に対する理解を深めるとともに他の教員の特殊教育に対する関心を深め、学校全体として障害のある児童生徒への指導体制の充実が図られるという観点から極めて重要であり、各都道府県教育委員会は、教員免許状を保有する障害者を積極的に公立学校教員に採用することが望まれる。  

    また、通級による指導を受けている児童生徒の学級担任が、通級指導担当教員と連絡を密にしながら児童生徒の特別な教育的ニーズに配慮した指導を行うことができるよう、通級による指導に関する理解や障害のある児童生徒への指導上の配慮事項などについて研修の機会を設けることが必要である。  

    特に、学習障害等の児童生徒への教育的対応について、関心が高まっており、こうした新たな課題に関する教員の理解と指導力の向上を図ることが必要となっている。  

  学習障害等については、まだ実態が十分明らかになっておらず、指導方法等についての調査研究を行っている段階にあり、必ずしも指導方法が確立しているとはいえない状況である。また、地域によっては、専門の指導者も確保できない場合もある。  

    このような状況から、ほとんどの都道府県等において学習障害等に関する研修が行われているが、研修日数が短く、研修内容は理解・啓発や実態把握が中心になっている。  

  このため、今後、国立特殊教育総合研究所においては、学習障害等に関する専門的な研修を実施する必要がある。また、都道府県においては、文部省が各都道府県教育委員会に委嘱して行っている学習障害に関する専門家の巡回相談事業を活用し、事例研究などを進めることが期待される。  

   
(5)  なお、今後、国立特殊教育総合研究所を中心に、全国の特殊教育センター等が一層の連携を図り、研修事業等に関する情報交換や研究協議等を通じて教員研修の充実に寄与することが期待される。  

    国立特殊教育総合研究所においては、その総合的、実践的な研究の成果を生かし、全国の特殊教育の指導者を対象とした講習会や喫緊の課題に関する研修を一層充実するとともに、全国の特殊教育に関する研修事業の情報をインターネット等を通じて提供したり、情報通信ネットワークを活用して研修の講義を配信するなど、各都道府県における研修の充実を支援することが期待されている。  

    都道府県の特殊教育センター等では、研修事業の充実を図るとともに、その成果を効果的に普及し、校内研修や自主的な研修を支援するため、インターネット等により研修情報や公開講座の要旨などの情報提供をしたり、マンツーマンで教員の相談に当たるなどの取組を行うことが望ましい。  

3  特殊教育を推進するための条件整備について
1.児童生徒の「生きる力」を育成するための教育内容や方法の多様化や、障害の重度・重複化や多様化に対応するため、教育委員会においては、盲・聾・養護学校や小・中学校等における施設のバリアフリー化を含む学校施設の整備充実に努めること。

2.盲・聾・養護学校等における特殊教育に係る設備については、新学習指導要領における改善内容に対応した教材の整備や最新の情報技術(IT)に対応した教材の整備を図ること。

3.特殊教育に関する就学奨励については、近年の社会の変化等を踏まえ、対象経費や負担割合等について関係団体等の意見を聞きながら必要な見直しを検討すること。
    
(1)  近年、国際化や情報化などの社会の変化に対応し、児童生徒が自ら学び自ら考えるなどの「生きる力」を育成するため、教育内容や教育方法の多様化を工夫したり、家庭や地域との連携を促進することが求められており、学校施設の整備についても、こうした観点から改善が求められている。また、盲・聾・養護学校は、児童生徒の障害の重度・重複化や多様化、教育内容や指導方法の変化等への対応についても求められている。このため、文部省においては、平成10年度、平成11年度に自立活動の充実、特別教室の充実、屋内運動場の車いす利用への対応など、盲・聾・養護学校の各施設の整備に必要な経費を補助する国庫の基準面積について全面的な改定を行ったところである。  

    また、学校施設については、障害のある児童生徒等が支障なく学校生活を送ることができ、障害の種類と程度に応じたきめ細かな教育が展開できるようにすることが必要であることはもちろん、地域社会における学校活動や交流活動を行う場として利用される公共的な施設であることから、高齢者や障害者が円滑に利用できるよう施設のバリアフリー化を進めることが必要である。このため、文部省においては、盲・聾・養護学校や小・中学校等が、エレベータやスロープ等障害のある児童生徒の学習環境を整備するための施設整備について、国庫補助の対象として必要に応じて整備を図ってきたところである。なお、今後は、就学指導の在り方の見直しに伴い、例えば、車いすを使用する肢体不自由児が小・中学校に就学する場合もあり、学校施設のバリアフリー化はますます重要となってくることが考えられる。  

以上のような状況を踏まえて、教育委員会においては、盲・聾・養護学校や小・中学校等における施設のバリアフリー化を含め児童生徒の教育的ニーズに応じた必要な学校施設の整備充実に努める必要がある。  

      
(2)  特殊教育に係る設備については、盲・聾・養護学校等に、スクールバスや集団補聴装置、点字器具等を整備する場合に国が補助を行ってきたが、今後、ノンステップ等の低床型のスクールバスの要望が増えることが予想される。  

    また、例えば、コンピュータ等情報機器の活用や知的障害養護学校高等部の専門教科「流通・サービス」の新設など、新しい学習指導要領で充実を図った内容に対応した教材や最新の情報技術に対応した教材を整備する必要がある。さらに、障害のある児童生徒が容易に利用できる最新の情報技術(IT)を活用した情報教育環境の向上を目指して、盲・聾・養護学校において最新の情報技術(IT)を活用した教育の研究開発を行ったり、マルチメディアを活用した訪問教育や補充指導に関する調査研究を行う必要がある。  

    各都道府県教育委員会においては、こうした教材等の整備の必要性や情報技術を活用した研究開発の成果を踏まえ、これからの盲・聾・養護学校等の教育に必要な設備の充実を図る必要がある。  

   
(3)盲・聾・養護学校や特殊学級に在籍する児童生徒については、「盲学校・聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律」等により、障害のある児童生徒の就学の機会が阻害されることのないよう、保護者の経済的負担能力の程度に応じて、交通費や修学旅行経費、学用品費、寄宿舎費等について、保護者が負担する経費の全部又は一部を国及び地方公共団体が負担している。本制度については、近年の社会の変化等を踏まえ、対象経費及び負担割合等について関係団体等の意見を聴取しながら必要な見直しを検討する必要がある。  
4  国立特殊教育総合研究所の充実
1.国立特殊教育総合研究所は、独立行政法人に移行するに当たって、我が国の特殊教育のナショナルセンターとしての機能を高めるため、特に次のような機能を充実すること。

1  国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究を行うとともに、国内外の研究機関や各都道府県の特殊教育センター、盲・聾・養護学校、小・中学校等との協力を推進すること。また、課題に応じて総合的、弾力的に研究に取組める体制を整備するとともに、特に大学等の研究機関との協力を進め、研究の深化・高度化を図ること。

2  体系的、専門的な研修の一層の充実を図るとともに、情報通信技術を活用して特殊教育に関する専門的な講義や新しい課題に対応した講義等を全国に配信するなど、各都道府県の取組みを積極的に支援すること。

3  教育相談について、臨床的研究との関連を深め、相談活動の在り方や方法に関する実際的な研究を充実するとともに、インターネット等を活用して都道府県等の特殊教育センターとの間で全国的な教育相談情報の流通を促進するようなネットワークの整備を検討すること。

4  特殊教育のデーターベースを充実し、広く一般への研究成果の普及に努めること。  また、教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)等を整備するなど、その情報発信機能の充実に努めること。

5  特殊教育分野の国際共同研究や国際協力事業を推進するため、引き続き、ユネスコと共催している「APEID特殊教育セミナー」の充実を図るとともに国際機関や諸外国の研究機関との連携、協力、交流を積極的に推進すること。
   
(1)国立特殊教育総合研究所は、昭和46年に設立されたわが国唯一の特殊教育に関する総合研究所であり、実際的な研究、専門的な研修、教育相談、情報普及、国際交流等幅広い分野にわたって多くの成果を挙げている。  

    研究については、例えば特殊教育に関する指導内容や指導方法など、主として実際的な研究を総合的に実施してきている。具体的には、1障害種別に組織された各研究部・室ごとの基礎的、日常的な一般研究、1特別な研究テーマについての研究部・室の組織を超えたプロジェクトチームによる特別研究、3国内外の特殊教育の現状や動向に関する調査研究など、これまでのべ約470課題にのぼる研究が実施されている。  

    研修については、研究の成果を活かし、長期研修(1年間)及び短期研修(3か月)を行い、特殊教育関係教職員の指導者の養成と中堅教員の資質の向上に努めてきた。平成11年度までの両研修の修了者は6千4百人にのぼっている。これらの研修は、認定講習の指定を受けており、単位修得者はのべ1千6百人近くになる。また、新任の校長・教頭講習会を行うとともに、教育相談、通級による指導、学習障害など時代に応じた重要な課題について人材の養成を行い、各都道府県の特殊教育教職員の専門性の向上に大きな貢献をしてきた。平成11年度までのこれらの講習会の総修了者数は、3千人を超える。  

    教育相談については、家庭等からの依頼に応じて障害のある子どもの養育や教育に関する相談が行われており、平成11年度までの相談総件数は5千件を超えている。  

    情報普及については、内外の大学や研究機関の研究論文集や特殊教育諸学校等の教育実践研究論文集約8千4百種、図書、学術文献約5万冊などを収集し提供したり、特殊教育関係文献目録や特殊教育実践研究課題等のデータベース化や、インターネットによる情報提供、研究成果報告会及びセミナーの開催などが行われている。  

    国際交流については、毎年1回ODA事業の一環として、日本ユネスコ国内委員会との共催により、APEID(アジア・太平洋地域教育開発計画)参加国から特殊教育の専門家を招聘して「APEID特殊教育セミナー」を開催したり、海外の研究機関と交流協定を締結し、共同研究の実施、特殊教育情報の交換、研究者の交流などを行っている。  

    
(2)国立特殊教育総合研究所は、平成13年4月に独立行政法人に移行することになるが、独立行政法人に移行するに当たって、わが国の特殊教育のナショナルセンターとしての機能をより一層高めるために、特に次のような機能を充実する必要がある。  
    
1  国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究の推進と実践的な研究の充実  

    国立特殊教育総合研究所では、今後、特殊教育をめぐる状況の変化に対応し、より質が高く、よりニーズに対応した研究を行う必要がある。  

    このため、今後、国の行政施策の企画立案及び実施に寄与する研究を積極的に行うなど国との連携を引き続き図る必要がある。また、国内外の研究機関や各都道府県の特殊教育センター、盲・聾・養護学校、小・中学校等との協力を推進する必要がある。特に、大学等の研究機関との連携による共同研究等の効果的な研究体制をつくり、研究の一層の深化・高度化を図ることが必要である。  

    さらに、各障害ごとに設けられている研究部・室の組織を超えて、課題に応じて総合的、弾力的に研究に取組めるような体制を整備するとともに、競争的資金の活用、効果的な運営、業績の評価等について検討する必要がある。  

    
2  体系的、専門的な研修の充実及び情報通信技術を活用した研修の提供  

    障害の重度・重複化や多様化などから特殊教育の専門性の向上がますます求められる中で、長期研修や短期研修、様々な課題に応じた講習会などの研修プログラムを見直し、より体系的、専門的な研修の一層の充実を図る必要がある。  

    また、都道府県教育委員会や特殊教育センター等が行う、特殊教育関係教職員に対する研修への支援機能を強化する必要がある。このため、情報通信技術を活用して特殊教育に関する専門的な講義や新しい課題に対応した講義等を全国に配信したり、国立特殊教育総合研究所の研究者が講師として協力するなどにより、各都道府県教育委員会等の取組みを積極的に支援する必要がある。  

    
3  教育相談活動の研究の充実と教育相談に関する情報提供  

    教育相談については、臨床的研究との関連を深め、相談活動の在り方や方法に関する実際的な研究を充実するとともに、インターネット等を活用して都道府県等の特殊教育センターとの間で研究成果の普及及び全国的な教育相談情報の流通を促進するようなネットワークの整備を検討する必要がある。その際、平成17年度を目標として文部省において開発中の「教育情報ナショナルセンター」(教育情報ポータルサイト)との連携も考慮する必要がある。  

    
4  情報発信機能の充実  

    都道府県教育委員会や特殊教育センターあるいは特殊教育諸学校等においては、特色ある事業を実践したり、豊かな教育実践を展開する上で、国の情報提供・発信機能の充実に期待する声が多い。国立特殊教育総合研究所は、このような要望に応えるため、特殊教育のデーターベースを充実し、広く一般への研究成果の普及に努めることが必要である。  

    また、教育情報衛星通信ネットワーク(エル・ネット)等を整備するなど情報発信機能の充実に努める必要がある。  

    

    

    

5  国際交流、国際協力の推進  

    国立特殊教育総合研究所は、特殊教育分野の国際共同研究や国際協力事業を推進するため、今後も引き続き、ユネスコと共催している「APEID特殊教育セミナー」の充実を図るとともに、国際機関や諸外国の研究機関との連携、協力、交流を積極的に推進することが必要である。  

-- 登録:平成21年以前 --