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情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて


  はじめに

  今日,社会の様々な分野で情報化が進展している。これまでいろいろなメディアによって伝えられていた情報が,電子化され,情報通信ネットワークを通じて簡単に受発信ができるようになってきた。こうした傾向は今後も加速度的に進み,21世紀の高度情報通信社会に向かうものと思われる。

  情報化に対応した教育の必要性を最初に強調したのは,臨時教育審議会(昭和59年9月〜62年8月)であった。特に,第二次答申において,社会の情報化に備えた教育を本格的に展開すべきこと,情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的な資質(情報活用能力)を読み,書き,算に並ぶ基礎・基本と位置づけ,学校教育において育成すべきことを提言した。また,すべての教育機関の活性化のために情報手段の潜在力を活用すべきとし,効果的な学習指導等のための情報手段の活用を提言するとともに,情報化の影を補い,教育環境の人間化に光をあてるとしている。この考え方は,その後の教育課程の改訂に生かされ,今日も普遍のものとして情報化に対応した教育の根幹をなしている。第15期中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(平成8年7月)においては,この考え方を基本的に踏襲して,情報教育の体系的実施,情報手段の活用による学校教育の質的改善,高度情報通信社会に対応する「新しい学校」の構築,情報化の「影」の部分への対応について提言している。

  21世紀初頭からの教育課程の在り方を審議していた教育課程審議会は,平成10年7月29日に,豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること,自ら学び,自ら考える力を育成すること,ゆとりある教育活動を展開する中で,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実すること,各学校が創意工夫を生かし特色ある学校づくりを進めることをねらいとして,教育課程の基準の改善に関する答申を行った。
  答申では,教育内容を厳選する中で,小学校,中学校,高等学校の各学校段階を通じて情報化に対応した教育を一層充実する方向が述べられている。文部省が平成10年4月に改訂した教育改革プログラムによると,今後,平成10年度中に学習指導要領の改訂が行われ,完全学校週5日制の実施とともに平成14年度から順次新しい教育課程が実施されることとなる。

  本協力者会議は,平成8年10月に発足し,初等中等教育における系統的・体系的な情報教育の在り方について検討を進め,「情報活用能力」の育成を目的とした教育内容に焦点化して,平成9年10月に第1次報告として発表した。その提言の内容は,教育課程審議会の審議に生かされた。
  その後,情報化に対応した教育を実現するために必要な教育環境等の条件整備に関して検討を継続し,今回,最終報告をとりまとめた。本報告では,第1次報告の概要を振り返えるとともに,これまでの関連施策等の実施状況を踏まえながらの改善の方向を示していくこととしている。


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