学校施設等の防災・減災対策に関する調査研究協力者会議(第2回)議事要旨

1.日時

令和4年5月30日(月曜日)10時00分~11時30分

2.場所

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

  1. 水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進に向けて(中間報告(案))
  2. その他

4.出席者

委員

木内望,清田隆,佐藤健,清家剛,中埜良昭(主査),吉門直子(敬称略)

特別協力者

齋藤福栄(敬称略)

文部科学省

大臣官房文教施設企画・防災部

笠原技術参事官,都外川参事官付災害対策企画官,田中参事官付参事官補佐,亀井参事官付参事官補佐

5.議事要旨

(◎:主査の発言、〇:委員・特別協力者の発言、●:事務局の発言)

(1)水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進に向けて(中間報告(案))

・事務局より、資料1に基づき、「水害リスクを踏まえた学校施設の水害対策の推進に向けて」中間報告案の概要を説明し、各委員より発言があった。

〇 今後、ケーススタディを踏まえ、中間報告で書かれた具体的な手順などについて、検討していくことになるが、特に、多段階でのハザード情報を活用しながら、対策についても段階的に考えるということについては、かなり先進的な検討になる。
 今後の検討に当たっては、他災害の対策とのバランスの取り方が課題になる。対策としての優先度や、対策として矛盾するような部分について、考え方を整理する必要があると考えている。
また、実際に誰がこの対策を考え、進めていくのかという点も課題である。学校施設全体を見通した議論については、教育委員会が主体になると思うが、例えば、域内のハザード情報の把握等については、治水担当部局の役割が大きい。しかし、市町村の場合、治水担当部局は市町村の外にあることも考えられ、例えば、自治体の防災計画の策定等と一緒に、情報の収集等も一緒に行った方が効率的であることも考えられる。
 個々の学校施設の対策内容の検討についても、学校を抜きに検討を進められない部分がある一方で、あまり現場の負担を増やすようなことにならないようにする必要がある。
 今後の検討において、既に出されている他のマニュアルや計画等と連携させ、現場で検討しやすいものにする必要があると考える。
 
◎ 他災害の対策とのバランスの取り方については、必ず水害のときには出てくる大きな課題の1つである。例えば、上に物を置く場合には、倒れないように固定しておく、耐震設計を行うといったことを示すことになると思うが、現場レベルで実践できるかどうかが重要である。引き続き検討していただきたい。
 
〇 報告書における、地盤災害の観点の記載について、現時点では土砂災害防止法に基づく体制の整備や、ハザードマップを活用した対策について盛り込む形で問題ないと思う。現時点の対策としては、学校の方々に対して、ハザードを周知し、認識していただくしかないと考えている。
 ただ、地盤災害については、複合災害が大きなポイントになる。例えば、河川が満水状態に至らなくても、堤防が地震で決壊すれば水が入ってくるケースがある。また、普段であったら崩落の危険性がない山が、地震とともに崩れるケースもある。洪水の場合、学校の方々でも立地場所の標高等を把握すればハザードを認識できるが、地盤災害のリスクについては、学校の方々が認識するには難しい部分があり、学校の方々に対する啓蒙や指導が必要であると思う。
また、複合災害については、ハード的な部分以上に、緊急時の児童生徒への対応が難しくなってくると思う。今すぐというわけではないが、将来的に考えていかなければいけない観点であると思う。
 
〇 学校施設の脆弱性の確認について、人的被害、社会的損失、経済的損失の3つの観点が示されており、対応が観点を分けて整理されており良い。ハードの整備については、物的被害の防止や学校教育活動の早期再開への貢献等の観点においては効果的である。一方で、子供たちの命を守るという観点において、ハード整備が全く無駄というわけではないが、当然ながら限界もある。そのように観点を明確に分けて、検討に反映させることは重要であると思う。
  また、ソフトの観点については、文部科学省内の学校安全の担当課室との連携を、最終報告に向けて引き続きお願いしたい。
 
〇 実効性の担保という観点において、学校が何をすべきか、そして学校がすべきことを自治体がどのように支えていくか、それぞれの役割の人に何をすべきかが明確に伝わることが一番重要である。
最近、教員においても防災への関心が高まっているものの、教員が全て知識を持っているものではないという前提に立った施策が非常に重要である。文部科学省でも、教員に対する研修など重厚な資料を作っているが、読み解く時間もなかなかないため、端的で分かりやすい説明や施策が重要だと思う。そのような観点から見ると、避難確保計画の作成や避難訓練の実施というメッセージは非常に有効であると考えている。
 また、学校での避難を考えた場合に、垂直避難を取る学校が多いと考えられ、本校も数メートルではあるが、浸水想定区域に入っており、その際は3階に避難することになっている。地域住民の避難場所にも指定されているが、3階に避難する場合はキャパシティーの問題がある。しかし、近隣には本校以上に高い建物はなく、事前避難が現実的な選択肢にならないという問題もあるため、リアリティーを持って地域の中で検討されることが必要であると感じている。
 ただ、自治体や学校にとっては、1つ改善したくても、先立つもの、お金がなければ、対策が後手に回ってしまうだろう。そうした財政的な裏づけがないと自治体が動けない部分もある。
 
◎ 自分事として認識してもらえるようなメッセージの出し方は重要である。一方で、働き方改革が叫ばれている中で、現場の負担ばかりが増えてしまっては、実効性に欠ける取組になってしまう。そのようなバランスも含めて、上手に差配していかなければならない。すぐには答えが見つからない話ではあるが、常に頭の中に入れておく必要があるだろう。
  今回の報告書において、予算に関することは記載しているのか。
● 第4章「国による推進方策」の(3)で、水害対策の推進に係る財政的な支援として記載している。具体的な内容については、今後、検討が必要になると思うが、この中間報告を公表した後に、各自治体において対策に取り組まれる際の要望等を聞きながら、また検討していくことになると考えている。
 
〇 中間報告をどう具体的に現場で生かしていくかについては、今後の取りまとめを行う手引きが重要であると感じている。報告書には、ハザード情報を分析して、リスクを判断し、個別の対策を立てていくということが示されているが、治水部局等の協力を得たとしても、教育委員会が技術者さえ十分に配置できていない体制の中で、治水部局の専門家、あるいは外部の有識者等が加わって、どう複合的な情報を組み合わせていき、具体的な対策まで持っていくかは、現段階ではかなりハードルが高いと感じている。
 脆弱性の確認の中で、人的被害は重要な要素であり、その中で要配慮者の有無は大きな要素となる。この報告書の中では、要配慮者が多い学校施設の例示として、幼稚園あるいは特別支援学校等という表現で包括的には示しているが、最近はインクルーシブ教育システムの構築ということで、一般の学校にも配慮を要する児童生徒、幼児が入ってきている状況である。今後、人的被害を考えるときに、インクルーシブ教育を含め他の動きともすり合わせを行いながら検討を進める必要があると考えている。
  また、防災教育の観点について、報告書の中で施設的な配慮を含めた実践的な訓練の実施が、言及されているが、ハザード情報の整理、収集、分析についても、成果を活用したり、その過程に児童生徒等が加わったりすることで、1つの学習教材として、防災教育に資する要素もあると思う。災害対策においては、当事者意識をいかに持ってもらうかが重要であり、それが継続的な教育活動の中で水害対策を意識されることが、実効的な災害対策にも寄与するのではないか。
 
◎ 頻繁に発生する災害であれば、教育の中、あるいは生活の中にうまく意識として組み込まれている部分はあるが、たまにしか起こらない水害や、今まで水害の経験がなかった地域で水害が起こった際に、普段から自分事として教育や訓練がされてないと、いざというときに間に対応できない可能性がある。そのため、上手に教育や訓練の中に組み込むことが、非常に大事であると思う。
 
〇 電気設備については、安全面やその後の継続性に対しても致命傷になる可能性があるため、対策にお金をかけても良いと思うが、その他については、なかなか決定的なハード対策がないように思う。ハード対策を講じるよりも、水害が起きたら、とにかく児童生徒を安全に逃がすことを最優先に、あとは復旧するお金を文科省が早く配る方が有効なのではないか。復旧の道筋を整理することが有効と思う。
 復旧について、床上浸水や床下浸水が発生した場合、どの程度まで乾いたり、洗浄したりすれば、児童生徒の健康上に影響なく学校再開できるかを、診断する仕組みを整理することが必要ではないか。地震で例えると、応急危険度判定のように、子供の健康のために安全性を測る仕組みを持っていた方が良い。
止水板の設置についてはよく検討する必要がある。止水板を設置すると決めてしまうと、先生方に負担がかかる。児童生徒を逃がすことと止水板を設置することを、同時にできるのかどうかは、訓練を実施するなどして、確認した方が良いのではないか。
 水害が起こったことがない、もしくはあまり大雨の降らない地域で、水害について教育しようとすると、イメージが湧かない上に、避難訓練等をするにも実効性のない訓練になるように思う。少なくとも子供が混乱しないように考えていくことが重要ではないか。一律に訓練や教育を実施するのではなく、もう少し現場の先生方の意見を聞きながら、慎重に検討した方が良いと思う。訓練を実施するよりも、例えば、梅雨や台風のシーズンに備えた雨どいの掃除等を実施する方が、水害に対する意識を持ってもらう上で効果があるように思う。
 
◎ 水害の発生に現実味のない地域で、どのように現場に意識を浸透させるかは、難しい問題である。解決策や特効薬はないかもしれないが、少なくとも大人はそういう認識を持っておいた上で、いざというときに指導できるような体制だけは取っておく必要がある。
 まずは防止対策を考えた上で、全部を防止できるわけではないため、復旧がスムーズにいくという観点は非常に重要であると思う。健康に関わるような観点を取り扱った復旧や、被害の程度を定量的に評価する仕組みは、まだ学校施設ではないと思うので、次のアクションとして調査研究等が必要であれば取り組んでいく必要があると思う。現状、文科省で、水害に関して復旧のためのマニュアルはまだないと認識しているが、間違いないか。
● 認識のとおり。
〇 以前、文科省から、基本的な空気環境等の基準はあると聞いている。しかし、それはあくまで学校はこのような環境にあるべきという基準であって、水害の後の復旧を目指すときに、その基準の環境に戻すためのマニュアル等が必要ではないか。その復旧の費用も出るようにして、正しい環境安全基準に早めに戻す枠組みの構築を含めて取り組めると良い。
● 現状、浸水した場合、材質等を変えたほうが良い場合については、その材質を剥がして張る等の対応はしている。消毒についても、文科省から、基本的な対応として、浸水したら消毒することを示しており、現場では保健室の先生がアドバイスしながら、消毒を実施していると聞いている。一連の対応の中で課題がないか聞いた上で、対応が必要であればどう示していくか考えていきたい。
 
◎ 学校の担当者だけでなく、治水関係を含め情報の共有等で、横連携が必要になってくるため、どのように横連携の体制を実現させるかも非常に重要である。
 また、報告書の中で、「確率」と「頻度」という表現が混在しているが、確率というと、少しとっつきにくい印象を受けた。また、防災に携わっている人間であれば、確率年1,000分の1などの言葉は1,000年に1回の確率とすぐに読み変えることができるが、学校施設管理者から見たときに、これらの表現はとっつきにくい印象を受けると思った。1,000年に1回程度発生する頻度や、低頻度といった言葉に置き換えると、読みやすいのではないか。
〇 100年に1回の水害というと、100年間隔で起こるようにもとらえられ、今年起こったから来年は起こらないといったように、安全寄りの考え方で受け取られる可能性がある。そのため、実際に水害の河川整備を行っている方は、あまりそのような表現はしていないと聞いている。それ自体が分かりやすいかどうかは分からないが、それらの視点を反映した書きぶりになっていると思う。
 
◎ 報告書は、学校のある場所が浸水することを想定して記載されているが、児童生徒等の家が水没する場合は、学校としてはどのように対応するのか。
● 今回の報告書に記載はないが、ソフト面の安全管理に関するマニュアルにおいては、水害が発生したときに、無理に児童生徒等を帰宅させないことも1つの選択肢であると記載されており、それらの整理と併せて考えていくことになる。
 
〇 耐震対策やバリアフリー化と水害対策が対立する部分があることは大きな問題であり、なかなか解決が難しい問題でもある。冒頭の「はじめに」の中などで強調しておく必要があると思う。
 
◎ ケーススタディについては、どのようなイメージか。
● 大まかなイメージとしては、ハザード情報の整理が進んでいる自治体に声をかけて、ハザード情報の把握から、実際にどう対策を進めていくかまで、一連の検討を行うことを考えている。それを、幾つかの自治体で実施していきたい。
◎ 最近、災害を経験した地域を想定して、ヒアリングをかけるイメージか。
● 一部そういったところも入ってくるとは思うが、滋賀県は確率ごとの浸水想定を公表しているなどハザード情報の把握が進んでおり、そのような地域としてハザード情報が充実している自治体にまずアプローチすることを考えている。また、教育委員会だけでなく、防災部局、治水部局等と協力しているようなところにもお願いしたいと考えている。最終的には、他の自治体でも取り組みやすい、手の届くような取組をまとめていきたいと考えている。

・中間報告案の修正を主査一任とすることについて、了承が得られた。

(2)その他

・事務局から、今後のスケジュール等を説明し、会議を終了。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線2239)

(大臣官房文教施設企画・防災部参事官(施設防災担当)付)