高等学校施設部会(令和元年~)(第5回)議事要旨

1.日時

令和3年1月14日(木曜日)14時00分~16時00分

2.議題

  1. 今後の高等学校施設の在り方について(報告書素案の検討)
  2. その他

3.出席者

委員

(委員)  伊藤俊介,岩井雄一,加茂紀和子,北村公一,柴田功,高際伊都子,長澤悟,山口直人,𠮷田宏(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 森施設企画課長,廣田施設企画課企画調整官,木村施設企画課課長補佐,田中施設助成課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】 酒井参事官(高等学校担当)付参事官補佐,新見教育課程課企画係長

4.議事要旨

・事務局より、会議資料の確認
・事務局より、資料1に基づき第4回高等学校施設部会における主な意見を説明
・事務局より、資料2、3に基づき報告書の構成案、報告書素案の第1章について説明

(○委員の発言,●事務局の発言)
○ 資料2のP.13の「(2)カリキュラム・マネジメントの一環としての環境整備」については、「いかに整備するか」ということだけでなく、「いかに活用するか」「いかに改善するか」をしっかり示してくれている。そして、2つ目のポツに設計・計画において、学校設置者と設計者だけで進めるのではなく、コーディネーター役となる学識経験者等が参画することも有効であることが示されているので、よくできている。

○ この1年間で環境が大きく変わり、施設の在り方も変わっていかなければならない。資料2の報告書素案では、ICT関係をはじめとして、世の中の動向がしっかりと、取り込まれている。
学校現場では、端末の充電や机が狭いという問題に加え、限られた空間でソーシャルディスタンスを保ちながらのグループワークを行うために、やり方を工夫している。

○ GIGAスクール構想については、資料2のP.6の「近年の教育の動向」よりも、P.8の「学校施設を取り巻く現況について」に、入れたほうがよい。災害時の避難者対応としても、Wi-Fiを含めた通信環境の整備が望まれている。

● 教育の在り方、学びの在り方が変わる中で、一人一台端末環境が重要になっている側面もあるため、「近年の教育の動向」の中で触れつつも、「学校施設を取り巻く現況」として通信環境整備の必要性に触れていくということは考えられるので、検討する。

○ 資料2のP.1の「背景」に高校生の多様化という項目があり、「多様化に対応した環境整備を進めていくことが重要」という記載で結ばれている。その下の、括弧で示された2項目、産業構造や社会システムの急激な変化、少子化の影響の部分でも、「環境整備を進める」ことについて記載する必要がある。
もう一点、資料1の最後に記載しているが、実習用の設備の老朽化への対応についても、報告書に記載されるべきではないか。

● 指摘いただいた資料2のP.1のそれぞれ2番目、3番目の要素にも環境整備の必要性を書くことについて対応させていただく。
老朽化への対応については、P.9の「(3)インフラ長寿命化基本計画」で、高等学校の老朽化が進む中、経年25年以上の建物が8割を占めるなど深刻な老朽化に悩まされている旨を書いているが、老朽化した施設の改修整備等が重要となっていることまで含めて書いてみたい。

○ インクルーシブ教育についてきちんと書き込んでいただき、なおかつ、特別支援教育だけではなく生徒の多様化にどう対応するか押さえられているのはありがたい。今後は、指針等の具体的な内容を議論するとき、どのような多機能トイレを整備することが有効かということや、災害時の避難等に対応するときに、視覚障害や聴覚障害のある生徒にどのように情報保障していくかということが課題となる。その点、災害時に避難された方が使えるような設備があるとよい。

● 多機能トイレについては、学校施設のバリアフリー化に関する協力者会議において、令和2年12月に報告書をまとめていただいている。この報告書の中では、多機能トイレの整備をはじめ、これまで以上にバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化を進めていく必要性があることが示され、報告書を踏まえ「学校施設バリアフリー化推進指針」を改訂した。この指針は、高等学校も含めて全ての学校種に対応しており、今回の高等学校施設整備指針の改訂で書ける部分と、学校施設バリアフリー化推進指針を参照していただく部分を組み合わせながら、しっかりと各学校設置者に対して周知を図っていきたい。後段の避難所としての機能、情報保障という観点も、バリアフリー化推進指針の中で記述を充実させているので、両方をしっかり参照していただけるような形で整理をしたい。

○ 資料2の第1章については、昨今の高等学校施設をめぐる環境について、よくまとめられている。P.8の「学校施設を取り巻く現況」の「激甚化・頻発化する災害への対応」に関連して、公立高等学校の75%が災害時の避難所に指定されており、防災機能を一層強化する必要がある。公立高等学校は圧倒的に都道府県立が多い一方で、災害時の対応は市町村の防災担当部局が中心で、どちらの財源で整備するかの調整が非常に難しい。
2段落目の最後に、「また、都道府県立の高等学校は、都道府県と市町村の役割分担の下、災害時の帰宅困難者の一時滞在施設となることがある」と記載があるが、これでは災害時の帰宅困難者の一時滞在施設に限定された記載になるため、都道府県立の高等学校への避難所としての防災機能の一層の強化というのは、都道府県と市町村の適切な役割分担の下行われることが伝わる表現にするべき。

● 指摘の点も踏まえ、記述の明確化について検討する。

○ P.8の「3.の学校施設を取り巻く現況」の内容は公共施設一般に対して課されている課題だと思う。見出しと内容を合わせるため、「公共施設としての学校を取り巻く現況」などと表記したほうが、位置づけがはっきりする。

● 指摘を踏まえて検討する。

○ 併せて、例えば脱炭素やSDGsなども学校を取り巻く現況として押さえておけるとよい。

・事務局より、資料2に基づき報告書素案の第2章前半について説明

○ 施設整備やICT環境の整備などについての指針はそれぞれがお互い引用し合うようなつくりになると良い。学校や教育委員会から見て一体になった指針になっている形を期待する。

● 報告書をまとめるに当たって、お互いの関連性を意識しながら整理する。

○ P.13の「2.生徒の主体的な学習活動を支援する施設整備」の(1)について質問だが、この報告書は全般的に教育や施設が大きな方向性としてどう変わっていくべきかについて記載されている。主体的・対話的で深い学びの実現という大きな目標を示しているときに、文中の「例えば」で挙げられている例が極端に具体的である。極論すると、読む人によっては、ラーニング・コモンズという名前の部屋をつくりさえすれば良いと誤解される心配がある。例の挙げ方としてこれらを選んだ趣旨を教えていただきたい。

● 今回の記載ぶりを考えるに当たっては、高等学校の検討のみならず、「これからの小中学校施設の在り方について」の検討も参照している。新しい指導要領になり、アクティブ・ラーニングということが提言されているが、それは高等学校に限らず、小中学校も含めて全体を通じた理念である。したがって、先行して改訂されている小中学校施設整備指針の議論や、視察を行った高等学校において、オープンスペースの整備やラーニング・コモンズ、あるいは図書館のセンター化などが有効であると表現されているため、そこから引用している。
資料2の2章にはこの具体的な表現があるが、一方、第3章で今後提示する予定の指針の改訂案ではここまで具体的な表現はしない予定である。あくまで第2章において、具体的なイメージが湧きやすいようなもの、今までの提言、あるいは視察の中で有効とされていたものを取り上げて紹介する趣旨で盛り込んでいる。

○ それぞれの柱に関連する写真を掲載予定と記載があるが、あくまでイメージとして見せるもので、文章で明確に表現しないほうが良い。例えば反転学習はアクティブ・ラーニングの一つの方法であるにもかかわらず、アクティブ・ラーニング、イコール反転学習というような捉えられ方をされることが多いため、特定の設計の仕方を書かないような表現としたほうが良い。

● イメージが持ちやすいようにという趣旨であったが、指摘を踏まえ、どのように書くのか検討する。

○ 例えば老朽化している高等学校を建て替える予定の学校設置者の中にも、これから教育がどのように変わっていくか具体的イメージがないこともある。設計者や様々な人たちが空間、施設を議論して造っていくことが理想的だが、それには、準備期間や設計期間、あるいは見学や勉強をするための期間が必要。こういった時間の要素を指針の中にも盛り込むことも有効ではないか。

● 今の報告書の中では、まさに今後策定されていくスクール・ミッション、あるいはスクール・ポリシーも踏まえながら、学校設置者と設計者が、あるいは当該高校としっかりと意思の疎通を図りながら、計画に反映をしていくというプロセスが必要になるので、丁寧に議論を喚起しながら施設整備に反映していくことが重要。

● スクール・ミッション、スクール・ポリシーについては、中央教育審議会においても議論が行われており、1月にも答申を取りまとめるべく検討を進めている状況である。それを受けて、初等中等教育局では今年度中に関係法令の改正などを進めていきたいと考えている。特にスクール・ポリシーの策定については、早い学校は令和4年度から進めてもらう前提で制度改正を進めていきたい。

● 計画、設計、工事、そして新しい学校施設への再生をしていくスケジュール感がこの報告書の中でどういう形で描けるのか指摘を踏まえて、検討させていただく。

・事務局より、資料2に基いて報告書素案の第2章後半について説明

○ 様々な会議の報告書等の部分を入れながら内容を構成しているが、「学校施設のバリアフリー化等の推進に関する調査研究協力者会議」の報告書など、少しずつ参考になるような部分を書き込んでいただきたい。
複合施設については様々なケースが考えられる。ここでは高校の立場から小中学校を活用する記述になっているが、これは相互の問題だと思うので、両者の立場から記載する表現がよい。
インクルーシブ教育については、通級に関する記載を書き込んではどうか。

● 様々な報告書などを参考として今回も記載しているところがある。どのように引用したかなどをまとめて見られるような何か工夫を、報告書の中でできるように検討したい。また、後段の指摘については、両方の見方があるということで、適正化について引き続き検討していく。

○ P.17の「機能性への配慮」について、断熱性や調湿性に優れた材料を使うことが「望ましい」という書き方がされていて、必要であることに異論はないが、他の文章と比べて、ここだけ望ましいというのは、違和感がある。

● 内容によって、「有効である」、「望ましい」、「重要である」、といった語尾を書き分けているが、指摘を踏まえて検討する。

○ 「重要である」、「有効である」、「望ましい」と重要性の度合いで書き分けるのであれば、断熱材は「重要である」ではないか。トイレに関して、性同一障害の方に対応するため、男女共用便所なのか、多目的便所なのかなど具体的に書くのであれば、議論した上で書かなくてはならない。

● 今回、文章の結びについては、内容を一つ一つ考えて設定する。引き続き指摘について検討する。

○ P.16「4.安全でゆとりと潤いのある施設設備」で、ここでは性能や機能性を中心に書かれている。P.2の2つ目の段落で、高校は学習機会、学力を保障する役割のみならず、安全・安心な居場所を提供する、あるいは生徒の社会性・人間性を育む、そういう観点で、空間そのものの豊かさを検討して書き込んでいただきたい。例えばインクルーシブ教育についても、幅広く捉えた場合に、国籍の違う者同士や個性の違う者同士が交流して共に育っていく等の観点も含めて、そのための豊かな場所ということが何らかの形でここで示せれば良い。

○ 「4.ゆとりと潤いのある施設整備」に関連して、高校も大事な青春時代の一日の大半を過ごす場所であるから、それに見合った快適で楽しい、すなわち精神的な安定や交流の拡大などが見込める、よい空間が望まれることについて記載すべきではないか。

○ 国際化に関連して、ジェンダーの意識を知らず知らずに生徒たちに植え付けているような建物やサインになってしまっていることも多いため、ジェンダーや宗教に対する課題など多様性にきちんと対応することを書き入れていただきたい。
  もう一つは、施設は学習指導要領と表裏一体になっているので、最初のところにも書いていただいてはいるものの、これをどうやって落し込んでいくか難しいと感じた。

○ 資料2の第2章は、本当に高等学校の学習指導要領を踏まえてきちんと書かれていると感じている。各学校の校長、先生方がこれから何を改革していかなくてはならないのか、内部で何をしてどういうことを学校設置者、教育委員会に要望していかなくてはならないのかの指針になると思う。地方公共団体等においては、新しい学校をつくる際に、これが基になって、どういう学校をつくるのか、企画の段階でどのように設計者と連携していくかの指針になる。
学習指導要領の中で、キーワードとして気になるのが、「地域に開かれた教育課程」と「電子教科書」である。ICT、通信環境ということになると思うが、タブレット端末や、電子教科書といったワードも報告書に挟んだほうが良い。地域に開かれた教育課程は、要するにコミュニティ・スクールの基になるような学習指導要領の考え方であるから、少しその要素を2章の5.などに入れたほうが良い。

・事務局より、資料2に基づき報告書素案第3章について説明

○ 資料2の第3章の「4.高等学校施設整備を推進していくための方策」として、財政支援策については地方財政措置を積極的に活用することを周知する旨の記載があるが、教育委員会が予算を確保していくのに支援になるような書きぶりとして欲しい。

○ 中学までと違って、高校は私立で学ぶ子供たちも多いことから、学校設置者に関わらず、施設の整備が進むように図っていただきたい。
もう1点、今、非常に困難な状況にあるのは、海外の在外教育施設で学ぶ日本の子供たちも同様なので、そういった子供たちの教育に関わる部署がよく連携して、取り残されないような配慮をいただきたい。

● 後段の在外施設については、意見があったことを担当課のほうに伝達する。

・事務局より、資料4に基づき今後の会議のスケジュールについて説明

―― 了 ――

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指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)