高等学校施設部会(令和元年~)(第2回)議事要旨

1.日時

令和元年9月30日(月曜日)14時00分~16時00分

2.議題

  1. 視察報告について
  2. 今後の高等学校施設の在り方について
  3. その他

3.出席者

委員

(委員)  伊藤俊介,岩井雄一,織田克彦,加茂紀和子,北村公一,菅野光広,高際伊都子,長澤悟,牧田和樹,𠮷田宏(敬称略)
(特別協力者) 丹沢広行(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画・防災部】 笠原施設企画課長,西村施設企画課企画調整官,松下施設企画課課長補佐,木村施設助成課課長補佐

オブザーバー

【初等中等教育局】 高田教育課程課教育課程企画室企画係長
【高等教育局私学部】 三好施設助成課専門官

4.議事要旨


・事務局より資料1に基づき,7~8月に実施した現地視察について説明。
・視察に関する意見交換。
(○委員の発言,●事務局の発言)

○視察を踏まえ,屋外環境や運動施設について,高校としての特徴はあったのか。

●全般的に小中学校よりも広いグラウンドがとられている。特色のある事例として,文化祭等の催し物を広い中庭で行っている事例や体育館を学校の中心に計画した事例があった。

○授業時間外や課外活動に使用できるように実験・実習設備や工房が生徒に開放されている事例はあったか。

●横浜サイエンスフロンティア高等学校では,実験室や実習室などで部活動も含めて生徒が自主的に活動できるようになっていた。専門高校など実験室・実習室のある学校では,ある程度生徒が主体的に活動できる環境があった。

○建築計画的観点から見ると,生徒たちが校内で学習し移動する状況において,各視察校が多様な選択をしながら,それぞれの観点で学校の中心となるものを設定し,施設の計画が行われているような印象を受けた。

○これからの時代,情報通信機器の整備は必須であるため,ハード面の整備としては,Wi-Fi等の通信機器が教室にそろっていること,コミュニケーションがとれる空間を確保すること,コミュニケーションのベースとなる情報共有を学校全体で推進するため,廊下から教室や職員室の中が見えるといったことが求められるのではないかと考えている。

○小中学校と高等学校の大きな違いとして多様なクラス単位とクラブ活動の2点があげられる。生徒達の学びが多様になり,ニーズに合わせた授業展開を行うため,12名程度から,80名近い大人数でのクラス単位が編制されている。これらに対応するため,視察した各学校では大小の教室の整備のほか,教室外の広い空間で授業を行うなど多様な工夫をしていたのが印象的だった。

○もう一つ,クラブ活動に対しても,各学校において多様な取り組みがされていた。地方では,学校の中に様々な機能を持たせ,地域の方々を呼び入れて全て学校の中で活動を行うというタイプが多く,都市部にある学校は,生徒を大学や公共施設など学校外で活動させることで生徒達の興味関心をつないでいた。

○高大接続の議論でもこの2つが注目されているが,生徒の活動や学校施設の使い方と近隣との関係性を踏まえ,各学校において施設計画を工夫している点が高等学校ならではだと感じた。

○小中学校に比べると,高等学校は一般的に特別な支援が必要な生徒が少ないという認識が強いのではないかと感じた。まだ障害のある子を受け入れる高校も多くはない中で,施設面における環境整備の重要性については,より丁寧に書き込んでほしい。

○最近は定時制と全日制で別教室を持つ学校もあるが,公立では時間を分けて教室を共用している学校も多いと思う。使いやすさの面で,建物面からも配慮が必要。

○隠岐島前高等学校は既存の老朽化した校舎を改修して使っていながらも,各教室にはWi-Fiがあり,プロジェクター等の機器類がしっかり整備されていた。それゆえ,アクティブ・ラーニングでは最先端の教育を行うことができており,教員の業務効率化の面からもICT整備の重要性を強く感じた。

○教室に整備されるICTのうち,プロジェクターの多くは天井つり下げ型。利便性は高いが,機器の更新が高額になるのが課題。視察事例のひとつに,移動式のプロジェクターをホワイトボードと一体的に使用している学校があり,投影場所を選ばずに双方向のコミュニケーションが行いやすい環境の先端的な事例として感心した。

○情報通信機器の進化は日進月歩ゆえ,これからはWi-Fiの整備など必要最低限の整備で十分になると思う。

○子どもの学びが多様化することによって,様々な空間が学校の中に作られているが,収納の不足など新たな空間を整備することで生じる課題についても検討していきたい。

○グループ学習を行う上で,生徒の荷物が机の周りに置かれていると素早く対応できない。荷物の収納スペースの確保は重要な視点。

○完成してから時間の経つ学校であっても,オープンスペース等にICTを整備したり,グループで学習できる空間を整備したりしている事例があった。少しゆとりのある空間をつくっておくことは,授業方法や機器類の変化に柔軟に対応できることにつながると感じた。


・資料2に基づき前回会議及び視察における意見について説明。
・各委員による意見交換。
(○委員の発言,●事務局の発言)

○施設をソフト面とハード面に分けて考えた場合,ハード面として最低限備えなければならないものを,機能面であげると,バリアフリーと防災への対応だと考えている。それに加えて,今後の学校づくりにおいては,将来の学校以外への転用を念頭におき,施設にフレキシビリティーを持たせる,つまり汎用性を高めることが大切ではないか。

○これからの時代,個々の特色に合わせた教育はICTなど施設のソフト面で補っていけるようになると思う。例えばプロジェクターに関しても,タブレット端末の普及により必要なくなる可能性もある。それ故に,ICT対応としてはインターネットへのアクセス性をよくすることが非常に重要。

○子供たち一人あたりのスペースを十分に確保することや,ゆったりとした気持ちの良い屋外環境を子供たちの目の届く場所に整備することは,子供たちの力を伸ばしていくためにハードとして求められる要素ではないかと考えている。

○グローバル化という観点の一つとして,施設面においても,外国籍の生徒への対応や海外の教育への理解といった視点を持つ必要があるのではないか。

○平成30年より高校でも通級による指導が制度化され,現在,数は少ないものの全ての都道府県で通級による生徒を受け入れている学校が出てきた。今後,高等学校の整備指針でも通級による指導に関しての視点が求められてくるのではないか。

○今よりも生徒が自由に使える設備や空間を充実させる方向に進んでもよいのではないか。

○学校が統廃合されて高校の分布が狭くなると,寮や寄宿舎がないと過疎化に拍車がかかり,地域による教育機会の格差が広がるため,そういう施設や設備の重要性を記載すべきだと思う。

○学びの場は,学ぶための空間を用意するだけでなく,教員や相談できるスタッフのような学びをフォローする人材がいる場所があることが必要なのではないか。

○インクルーシブ教育への理解が施設面でも進むことは重要。

○生徒が自由に使用できる実験室等の空間や,生徒が広々と使える空間に関するコメントがあったが,学校づくりは,学習指導要領が規定する単位数や放課後の時間管理,教員の人員や給与体系との関係など様々な条件に配慮しながら行う必要がある。

○隠岐島前高等学校の事例にあったような半官半民の公営塾や横浜サイエンスフロンティア高等学校のようなPFI事業での施設整備など民間活力の活用や県と市町村の協働といった学校施設整備・運営もこれからの視点として重要。

○これまでの施設は,ハード面で子細にわたって様々な規則が決められており,それらを厳密に守ることが求められてきたが,最近は,例えば目まぐるしく進歩する様々な情報機器の活用等ソフトの充実がうたわれるようになった。このソフト面を施設として扱うかの線引きをしていかないと議論が8割方ソフト面になる気がしている。

○学校の寮は,形態や管理体制・方法も千差万別。寮については,この部会で議論するべきかといったことも含め,少し整理してご提案いただきたい。

○子供たちに提供したい学びの環境を施設面から考え,新たに整備を行うことは理想的だが,公立の高等学校においては,既存の施設における空き教室の活用方法や改修によって新しい学びの場をつくる事例のような情報も非常に有益だと思う。

○地方の学校では,中心部以外では定員割れをしている学校も多く,統廃合が進んでいる。高校の存続は,地域の活性化にも大きく関係する事であるため,特色を生かした学校づくりが一層重要になるのではないかと考えている。

○大多数の公立高校は老朽化が課題であり,限りある財源の中で,これからの学びを行うために最低限必要となる設備や空間について議論していく視点も必要だと思う。

○高等学校施設部会は,学習指導要領の改訂及び,中教審の諮問や教育再生実行会議の提言等を踏まえ,それらを施設の問題として捉え直し,施設整備指針に落とし込んでいくことを目的としている。今日の議論を踏まえ,部会としてのビジョンをまとめることと,施設整備指針に落とし込む部分について,具体的な施設的配慮を整理し直すことの両面について議論を重ねていく必要があると感じた。

○教室におけるコミュニケーションの方法がバーチャルなものが含まれてくる中で,物理的な教室の在り方について捉え直す視点もあるように思う。部会の限られた時間内ではあるが,出来るだけ議論を深めていきたい。

・以上で,意見交換を終了。
・事務局より今後のスケジュール及び現地調査について説明。


―了―
 

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指導第一係

(大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課)