幼稚園施設部会(平成28年度~)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成29年9月6日(水曜日) 15時00分~17時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎4階 文教施設企画部会議室

3.議題

  1. 視察報告
  2. 整備事例紹介
  3. 幼稚園施設整備指針改訂に向けた検討
  4. その他

4.出席者

委員

【委員】 東重満,木下勇,倉斗綾子,長澤悟,日比野拓,松村和子,山下文一(敬称略)
【特別協力者】 磯山武司(敬称略)

文部科学省

【大臣官房文教施設企画部】 山川施設企画課長,金光施設企画課企画調整官,小谷施設助成課企画官,西村施設企画課課長補佐
【初等中等教育局】 桑田指導係長

5.議事要旨

・長澤部会長より挨拶。
・事務局より資料1に基づき,視察報告。
・日比野委員より資料2に基づき,最近の幼稚園施設動向に関する講義。
・事務局から資料3に基づき,第1回部会の発言を踏まえた主な論点について説明。
・視察報告及び資料3を踏まえ,本部会における論点について意見交換。


(○:委員等の発言,●:事務局の発言)


○学校の校と幼稚園あるいはこども園の園の違いを感じた視察だった。子供が遊びきることのできる環境を用意するための様々な工夫から多くのことが読み取れると思う。また,「これからの幼稚園施設」という文部科学省から出されているパンフレットが新しい園を考えるときや園のコンセプトについて保護者からの理解を得るために役だったという御意見もあった。今後の議論を踏まえ,発信力のあるものにまとめていきたい。

○視察報告を聞いていて,屋外環境が印象的な園が多かった。都市部等では園庭でしか自然環境が確保されないとか,地方で自然豊かな環境でも子ども一人で遊びに出せないという問題もある。自然環境や体験の確保は園舎に求められてきている要素なのではないか。また,素材や風通しといったような日常生活を通して,自然環境や学びに対しての興味関心を育成するという視点を論点に加えてもよいのではないかと感じた。

○お茶の水女子大学附属幼稚園の視察では,環境が子供の主体性を育むというフレーベルや当時の倉橋園長の思想を感じられた。安全性においても,先回りするのではなく,子供の自主性を補完するような環境や装置作りが,大人が考えるべきことだと感じた。

○制度が変わってきている中で,幼稚園教育の施設整備をするに当たり,保育所機能との併有を視野に入れて質の方向性や論点を示すことは大事だと思う。これからの子供の生活環境も踏まえ,様々な教育資源を再構築し,今の子供の学びや生活に生かしていくような場を作ることが大事な観点になる中,学校施設自体はそうころころと建て替えられない。そういう面でも改修・改築に関する視点は盛り込むべきだろう。また保育室内だけでなく,園庭環境においても作って終わりではなく,時間をかけて保育者や保護者が変えていくという視点が大切なのではないか。

○安全に関する視点に関連して,水回りに関する注意は消費者庁の勧告や,文科省の指導指針でも既に整理はされているが,施設整備の面でも留意点を示すべきではないか

○視察したのが全て私立の幼稚園だったので,園の理念が形になったものが印象的だった。よりよい施設環境を作っていく上で,園の理念は根幹となるが,プラスして体力面といったような現代の子供たちが置かれている生活環境を鑑みる必要があるだろう。また,今ある環境において,こんな工夫をすると子供にこういった経験をさせることができるというような事例がたくさんあると,参考になると思う。

○セキュリティ面で配慮は必要だが,子供が育つ原風景として,地域性や地域とのつながりを大切にする視点が設計のコンセプトの中に入ってくるとよいのではないかと思った。

○子供の命を守る施設として,震災等想定される災害時の避難場所になる可能性についても言及する方がよいように思った。また,複合施設としての幼稚園という視点も将来の変化に対応する整備の在り方のようなところで触れてもよいのではないか。

○変化に富んだ空間は幼児の活動に確実にプラスに働いていると感じた。そういった空間を生み出すためには建築計画や遊具・家具の活用,敷地の高低差や地形等だけでなく,デッドスペースになりがちな空間をデンとして計画するような様々な工夫の余地があると感じた。こういった視点を幼稚園施設の計画時に盛り込むことは大事だと思った

○保育所保育指針の改定に関する報告書において,過度な遊びの制約は一定の考慮が必要であり,遊びを通して危険を回避する力を身につける重要性にも留意すべきとあるように,少しのけがや傷は子供にとって,悪ではなく,むしろ自ら危険を回避する力を身につけるチャンスと捉えられるべきである。そのため,けがが一切できない安全すぎる施設は,本当に子供のためとは言えない。また,ユニバーサルデザインやインクルーシブデザインも確かに重要だが,それで全てを解決できる訳ではない。大人にとって大切なことは,障害者は多様であると知ること,かつそれを子供たちに教えることだと思う。セキュリティの話も同様で,大人が経験から得た知識を子供たちに教えることが非常に重要だと思っている。今後,本部会にて文書化する上で入れられるかはわからないが,子供を成長させるのは前述のようなことではないかと考えている。

○園舎が置かれている環境は常に異なり,一つの指針ではなかなかくくれないと感じている。そういった実状に対して,指針をまとめる上で,多様性をどこまで文章化できるのかが1つの鍵だと思っている。

○肥満児が世界中で問題になる中,幼児の身体能力の向上が園内で求められているのは時代性のように感じる。また,ゆうゆうのもりであれだけ仕掛けを園内に作っても,子供らは自分で自分たちの空間を作る。そういう自主性が子供の探究心や創造性にとって重要なことだと思う。また,幼稚園の先生や保育士さんは空間や仕掛けの作り方を養成の課程で学ぶ機会は少ない。建築家だけが作る空間が全てでなく,子供や先生自身が作っていくという可変性が大事だと思う。半屋外空間といった中間領域も幼児教育においては大切な要素だろう。

○幼稚園における2歳児の受入れの可能性については,この部会で議論すべきか。

●方針として具体に固められたものではないので,本部会での議論において,前提にする必要はないと考えている。

●幼稚園に入園できる対象年齢を満3歳児から2歳児にするというようなことではない。ただ,待機児童の課題がある中で,幼稚園での預かり保育は今までも行ってきたし,今後も一層重要になるものと考えている。

○実体験としても,2歳児と3歳児だと環境づくりでの留意点が結構異なると思っていため,新聞報道を見て,ただ2歳児が来るかもしれない程度に考えていていいのかと,個人的に少し疑問を感じていた。

○既に実態として2歳児が幼稚園の中で保育されているケースは多い。子供の受入れ方について様々な実態がある中で,今回の施設整備指針で境界をどこに置くかというのは一旦整理する必要があるのではないか。

●行く行くは明文化したいと思っているが,基本的には幼稚園の施設整備指針なので,幼稚園をターゲットにしたものである。それに加えて,様々な保育形態や活動に対して,それぞれの留意点を整理していくのが基本的な構図と考えている。

○最終的な表現の仕方は今回の会議の趣旨に添った形でまとめることになると思うが,今回の視察から得られた知見は違った形で活用できればと考えている。

○変化や可変に関連して,設計者として施設整備で気をつけているのは,やりすぎないこと。子供が自発的に遊びを創造できるようにすること,大人から遊びを全て提供してしまわないというバランス感が大切だと思っている。

○受け身一方でなく,新しい世界を自ら広げていくということは幼児教育の基本中の基本であり,先ほどの作りすぎないというような自制的な観点も誤解されない形で示されるとよいと思う。

○現場の自由な発想に対して答えていけるような可変性や可塑性をどう用意していくのかは1つのテーマになろうかと思う。また,3~5歳児であれば重篤なけがにならない,あるいはその年代でしか経験できないことを存分に体験することはその後の成長過程においても重要であり,けがの問題も含めてそういった観点を考える必要があるだろう。幼稚園と小学校の違いは学習に対する時間の自由度にあると思う。社会的な期待を受けている延長保育等,今後園の中で過ごす時間が長くなることも考えられる。その長くなる時間を教育内容の達成に生かすことができる一方で,1時半や2時までの日常生活とは区切られた環境に求められる要素も有り,様々な観点から園での子供の活動を施設として受け止める必要があると感じた。この議論は今後も事務局で論点を整理してく中で続けていきたい。


・以上で,意見交換を終了。
・事務局から,資料4に基づき今後のスケジュールについて説明。
会議終了

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大臣官房文教施設企画部施設企画課

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