資料3-2 施設マネジメントの実施手法

○施設マネジメントの視点と流れ

(施設マネジメントの視点)

  • 施設マネジメントの実施に当たっては,以下の3つの視点に留意する。
  • 施設の質(クオリティ)
    施設利用者の要望に配慮しつつ,安全及び教育研究等の諸活動を支援する機能等を確保し,質の向上を図る。
  • 施設の量(スペース)
    全学的にスペースを管理し,目的・用途に応じた施設の需給度合い,利用度等を踏まえて,既存スペースを適切に配分するとともに,不足する場合には新増築等の施設の確保を行い,施設を有効に活用する。
  • 施設に係るコスト(コスト)
    クオリティ及びスペースの確保・活用に要する費用や施設を維持するために係る費用を管理するとともに予算を確保し,大学経営の視点から,費用対効果の向上,資源価値の維持を図る。

(施設マネジメントの流れ)

  • 施設マネジメントは,大学が想定する事業効果の実現を目的として,以下の一連の業務を行う。事業効果を想定し,施設目標を設定する。
  • 既存施設の現状を把握し,施設目標を達成するための実施方策を決定する。
  • 実施方策に基づき事業を決定し,施設整備・修繕計画を策定する。
  • 施設整備・修繕計画に基づき,具体的な事業を実施する。
  • 事業の実施後,事業の進捗状況を確認するとともに,教育研究等に関連する成果及び当初想定した事業効果の検証,評価を行う。


1.施設目標の設定

  • キャンパスマスタープランを踏まえ,大学が想定する事業効果の優先順位の高いものから,施設目標を設定する。
    (関連:資料3-1 事業効果の想定)

2.実施方策の決定

(現状の把握)

  • 想定する事業効果を考慮して,施設の基本情報(用途ごとの面積,改修履歴,維持管理費等)や老朽度合い,安全性等の必要な情報を収集し,現状の問題点や実施可能な施設整備・管理の内容を整理・分析する。
  • 施設担当部課は,施設の状況のみならず,利用状況(利用方法,稼働率等)や利用者のニーズも把握し,経営者層が実施方策を検討するための資料を作成する。
  • 施設マネジメントを効率的に実施するためには,各部局等で個別に保有している施設に関する情報を定期的に更新し,データベース化により全学的に共有することが重要である。

(実施方策の決定)

○老朽施設等の計画的改善

  • 経年により劣化している施設の修繕,設備の更新や安全性の確保を計画的に行うため,全学的に修繕等が必要な箇所を調査し,現状を客観的に評価して早急に実施すべき事業量と必要な工事費を把握する。財源確保の方策を定め,目標期限を設定し,緊急性等に基づく優先順位を定め,順次計画的に修繕・更新を行う。
  • 現状において機能性,安全性に問題のある施設の修繕,設備の更新に優先して取り組む必要がある一方で,施設の劣化が進行してから事後的に改修を行うと,かえって改修費用がかさむ結果となる。このため,施設のライフサイクルコストを考慮し,予防保全の観点から計画的,定常的に修繕を実施することにより施設の長寿命化を図ることが重要である。

○スペースの創出

  • 教育研究内容の新たな展開等により生じる新たな施設需要に対応するためには,まずは,既存施設の有効活用を徹底することが重要である。
  • 既存スペースの有効活用を行うためには,以下のような方策が考えられる。
  • 教職員や学生の占有意識を排除し,施設の利用状況を踏まえて,同種の用途の室や同様の機能を有する室を集約化する。
    研究内容等を特定しないスペースを共同利用スペースとして確保する。この際,利用効率の向上を図るために,当該スペースの運営を単一の部局で行うのではなく,全学的又は複数の部局により行うことが重要である。
  • 講義室や会議室等については学部の枠を超えた活用を進めるとともに,空き時間や夜間,休日には学生の自律的学修スペースの場や公開講座など地域貢献の場として活用すること等により,稼働率を上げて利用効率を高める。収容人員,設備内容などの情報を公開し,利用者が予約できるシステムの構築も考えられる。
  • 面積一律課金制度やスペースチャージ制は,利用者の施設に対するコスト意識の醸成や,施設の管理運営等の確保など,その導入目的に応じた対象範囲及び料金設定を行うことが重要。また,当該取組は,結果的に利用率の低いスペースの有効活用に資する。
  • アカデミックプランや経営戦略等の実現に向け,戦略的・重点的に進めている取組に対し,経営者層のトップマネジメントにより速やかに配分しうるスペースを確保する。

○管理運営費の適正化

  • 施設の管理運営に必要とされる保守点検,運転監視,清掃,警備,廃棄物処理,緑地管理及び光熱水費等の確保は不可欠であるが,大学の運営経費に占める割合は大きく,効率化を図り,施設経営の改善を行う必要がある。
  • 省エネルギー対策を推進し,エネルギーの使用量を全学的に管理して,光熱水費を抑制することが重要である。その際,学部学科単位あるいは研究室ごと等に光熱水使用料金を学内で公表し,省エネルギーについて理解と協力を得ることが必要である。また,ESCO事業の実施により,エネルギー使用の効率化を図ることも有効である。
  • 保守点検,運転監視,清掃,警備,廃棄物処理,緑地管理等の維持管理費について,役務の一元化(一括契約)や複数年度契約等の維持管理契約の見直しを行うことにより,維持管理の質を確保しつつ,費用の削減を図ることが可能である。

○財源の確保

  • 事業を実施するためには,戦略的な財源の確保が不可欠である。国に財源を求めるものと大学の自己財源等により行うものを分ける基本的な方針を定めることが重要である。
  • また,限られた財源の中で必要な整備・管理を行うためには,ライフサイクルコストを縮減する一方で財源を確保する方策を具体的に検討することが必要である。
  • 財源の確保のためには以下のような方策も有効である。
  • 管理運営費を運営費交付金等から包括的に確保する。
  • 施設利用者から施設利用料(スペースチャージ)の徴収し,管理運営費に充当する。
  • PFIや寄附による整備,地方公共団体や企業等の連携による整備に加え,長期借入金制度を活用した整備など多様な財源を活用し施設整備を行う。

3.施設整備・修繕計画の策定

  • 新増改築事業や大規模改修等の施設整備については,国への概算要求も念頭に施設整備計画を作成する。  国に概算要求を行う事業については,施設部課のみならず,経営者層及び事務局各部課の支援も得て予算の獲得に努める。
  • 保有施設・設備の耐用年数やコスト,既存施設の再配分や使い方等を考慮して費用対効果の検討を行い,実施可能な改修・修繕の施設修繕計画を作成する。
  • 施設整備計画及び施設修繕計画の策定に当たっては,財務部局,各部局,その他関連部局と協議しながら進めるとともに,必要な費用を明示することが重要である。

4.事業の実施

  • 策定した施設整備・修繕計画に基づき概算要求や学内予算による財源を確保し,施設整備・管理を実施する。
  • 事業の実施に際しては,円滑な実施に向け,学内に周知を図り,教職員や学生も含め関係者の理解・協力を得る。

5.事業の評価

  • 策定した施設整備・修繕計画に対して,実施事業の進捗状況を確認し,問題が生じた場合は,その原因を分析し,適宜計画に反映させる。
  • 事業実施の事業効果について,施設の利用状況や施設利用者へのアンケート等により,当初想定した事業効果が得られたか否かについて十分な検証・評価を行い,今後の施設目標の設定に反映させる。 (関連:資料3-1 事業効果の想定)
  • また,事業の実施により見込まれる教育研究等に関連する成果について,事業の実施前後の比較できるよう,関係する部局等と連携して把握することも重要。
  • 上記の検証・評価に伴い,必要に応じ,キャンパスマスタープランの変更を行う。

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大臣官房文教施設企画部参事官付

(大臣官房文教施設企画部参事官付)