天井落下防止対策等検討ワーキンググループにおける検討状況報告

1.これまでの検討経過

  • 5月30日の第1回協力者会議を踏まえ、関係委員による事前打ち合わせを複数回実施。
  • 6月28日に第1回ワーキンググループを開催し、以下の内容について検討。
    • 国土交通省における基準整備の検討状況報告
    • 東日本大震災における学校施設等の被害状況
    • 屋内運動場等における天井等の実態調査(速報結果)
    • 各論点に沿った課題の整理
    • 中間まとめ(骨子案)について

2.東日本大震災における被害状況(別紙4ページ~参照)

  • 各種調査結果から得られる被害状況の概略は以下のとおりであるが、天井等が落下しなかった事例も含め、今後更なる調査・分析等が必要。 

(構造体の被害状況)

  • 耐震化されていない学校施設では、構造体に大きな被害が発生。
  • 屋内運動場では、新耐震基準以降の施設でも、RC造柱とS造屋根の接合部のコンクリート剥落や柱脚アンカーボルトの早期破断等により避難所として使用できない事態が発生。
  • 屋根の水平ブレースがきかなくなった時の構面はばらばらに動くため、天井等の落下危険性も大きくなる。

(天井等非構造部材の被害状況)

  • 多くの学校施設において非構造部材の被害が発生。屋内運動場の天井では、全面的に落下した事象や、余震により落下の範囲が拡大した事象が発生。新耐震基準以降の施設でも大きな被害事例あり。
  • 天井落下被害は天井端部や中央部、段差部などの様々な場所で発生。
  • 被害状況は天井仕上げ材のみの落下だけでなく、クリップの外れ、ハンガーの開きも同様に見られた。
  • 今回の被害では、振れ止めやクリアランスなど対策を講じたとする建物でも被害が生じた事例あり。

3.学校施設の屋内運動場等の天井等に関する実態調査結果(速報)

  • 国立教育政策研究所文教施設研究センター小林委員から、本調査の速報結果について説明。
    (別途説明するため本資料からは省略)(資料2参照)

4.論点整理

  • 以下の論点に沿って検討を進め、課題等を整理。

ワーキンググループにおいて検討している論点

  • 東日本大震災の被害状況をどのように分析していくか。
    • 構造・非構造の両面の被害状況を整理し、今後の一体的な検討につなげていくことが必要。
    • 天井被害の傾向や要因等の詳細について、抽出調査の実施も含め更なる調査分析が必要。
    • 被災地でも天井が落下しなかった事例について追加調査が必要。
    • 対策を講じていても被害が生じた事例もあり、対策の水準や実態について議論が必要。
       
  • 大地震動後に落下までしていない天井の損傷、内部の損傷等にどう対応するか。
    • 余震による更なる被害を想定し、本震後の簡易診断(素人でも使えるレベル)を求めていくことを検討。
    • 本震による構造被害や天井のたわみ等が生じた場合、天井内部の緊急点検・診断が必要。
    • 天井があることで内部の損傷等が見えず、危険性が判断できないことが問題。
    • 天井の撤去も含め、天井で見えない内部の被害を可視化していくことが必要。
    • 天井の耐震対策の診断・点検方法の在り方も含めた対策の検討が必要。
    • 天井が無事でも構造に被害があるパターンも含め、構造と一体の診断方法等の検討が必要。
       
  • 学校施設に求める安全レベルをどこに設定するか。
    • 屋内運動場の構造性能と非構造の性能とを一体的に検証していく必要。
    • 学校施設の特性から、児童生徒の安全を確保し、避難所として利用可能なレベルとすべき。
    • 耐震性能レベルとして、大地震動後でも重度の損傷を起こさないレベルが必要。
    • 天井等のメカニズムは十分にわかっていないが、現在判明している知見等を元に、大地震動後でも大規模な落下を起こさないようにすべき。
    • 避難所としての使用可否を判断する上で、素人が行う診断・点検と、専門家が行う診断・点検とがあり、どんなタイミング・レベルで判断するものか分けて整理する必要。
       
  • 屋内運動場等に求められる機能や性能の再整理が必要ではないか。
    • 天井について、照明器具やバスケットゴールのように、学校の屋内運動場に不可欠な要素なのか十分な検討が必要。
    • 天井の撤去も含め、安全性を確保する抜本的な対策を示す必要。
    • 屋内運動場としてどのような機能を要求するのか検討が必要。
    • 天井に求められる諸条件を再整理(安全性に加え、断熱、音響、空調・換気、照度など)
    • 避難所や地域コミュニティの場として、「居住性」という視点にも配慮が必要。
    • 天井を撤去した後に防音対策を講じるなど、環境条件に配慮した一定の対策が必要。
       
  • 実態調査をどのように分析していくか。
    • 天井等の耐震対策に係る要点を整理するとともに、今後の検討につながる部分のクロス集計など調査結果の深掘りが必要。
    • 実態調査の情報を元に、今後の手引きやガイドラインの実例につなげていくこと。

  • 構造・天井のシミュレーションはどこまで可能か。
    • 本調査研究において、どんな場合にシミュレーションが必要なのか、新築に当たって必要な安全性能はどこまでかなど、シミュレーションの必要性を判断する上で前提となる議論が必要。
    • 建物が健全な状況であれば解析モデルは有効だが、そうでない場合、構造の性能を仮想しながらのシミュレーションは困難。
  • 天井落下防止のための対応方策をどこまで提示できるか。
    • 各施設の危険度や対策の優先度について、以下の諸条件等から整理。
      (建設年代、構造形態、架構種別、層間変形角、室面積、天井単位重量、・・・)
    • 考えられる天井落下防止の方策を整理。
      (天井材の撤去、軽量化、耐震対策の実施、落下防止ネット等の措置・・・)
      ※落下防止ネットの有効性については十分に検討
    • 利用上の注意(ギャラリー下への避難など)
    • 設計・施工上の注意(構造・非構造一体的な視点での検討)
       
  • 自治体等の点検・対策を促すため、緊急的なアピールが必要ではないか。
    • 致命的な事故につながる恐れの大きい屋内運動場については、天井を中心としつつ、照明や壁、バスケットゴールなどの点検・対策の実施を、緊急性をもって促す必要。
    • 提言では、対象となるすべての施設の総点検を実施するよう強く打ち出すとともに、今後取るべき対策の考え方を示すこと。
    • 当面の措置として示すものであり、今後国として必要な支援策も提言する必要。財政支援等に加え、対策の手引きや診断・点検手法の開発など、国としての方策を提示する必要。

(別紙)

東日本大震災における学校施設等の被害状況

1.日本建築学会における被害状況調査(山田委員より報告)(参考4参照)

(調査の概要)

  • 日本建築学会では文部科学省の委託で被災文教施設の被災度区分判定・被害調査を実施。
  • 調査した鉄骨造建物216棟のうち、屋内運動場・格技場は全体の7割の147棟。

(構造の震動被害)

  • 診断あるいは補強未対応の建物では大破の割合が多い。一方、新耐震基準の建物、耐震補強済みの建物等では小破程度の被害が多いが、一部で大破・中破の被害あり。
  • 大破被害は、ピンとして設計された柱脚の破壊や、RC造柱とS造屋根の定着部の破壊、変形能力が保証されていないターンバックルブレースの破壊など。
  • 天井の水平ブレースは地震により伸びてきかなくなった時の構面はばらばらに動き、層間変形も増大。本震後も屋内運動場を継続使用する際は屋根構面の構造体も課題。

(天井等の震動被害)

  • 天井の脱落被害のほか、外壁・内装の全面的な剥離など、非構造部材に大きな被害が発生。
  • アリーナ部に天井が吊られていた13棟のうち6棟で全面・大部分の天井が落下、3棟で一部破損の被害。被害が見られなかった4棟のうち2棟は規模の小さい格技場。
  • 耐震対策をした天井裏の水平ブレースや定着部に被害が生じている例あり、天井により内部の損傷が見えなくなり危険。

2.国土技術政策総合研究所等における被害状況調査(脇山委員より報告)(参考5参照)

(調査の概要)

  • 国土交通省国土技術政策総合研究所及び独立行政法人建築研究所で連携し調査を実施。
  • 鉄骨造建築物の被害調査で、茨城県の県立高校、水戸市の小中学校の体育館89棟を調査。
  • 調査した体育館について被災度区分判定を行い、設計基準との関係等を分析。

(構造の震動被害)

  • 鉛直ブレース材の座屈、破断と接合部の破断、RC造柱とS造屋根の定着部のコンクリートの剥離、屋根面水平ブレースのたわみ、座屈、破断などの被害を確認。

(天井等の震動被害)

  • 天井、照明の脱落、内外壁の脱落、軒天の脱落、窓ガラスの破損等を確認。
  • 被害を受けた体育館の天井は木下地天井、在来工法による天井、システム天井等様々。
  • 木下地天井の被害は、構造体に大きな損傷が確認されたものにおいて、天井板・下地ともに全面脱落した事例や、天井端部の損傷に留まる事例も確認。
  • 在来工法による天井の被害は、天井板・下地落下、天井端部等損傷などを確認。天井板と下地がともに脱落した比較的程度の大きな被害事例では屋根ブレースの破断を確認。
  • システム天井の被害は、天井板・下地ともに脱落した事例、天井板が全面脱落した事例などを確認。
  • 勾配部分を在来工法による天井、水平部分を波形で重量のある鋼板を用いた天井とした事例で、程度の大きな脱落被害を確認。
  • 木下地天井や在来工法による天井は、構造骨組の被害との間に明確な相関は確認できなかった。システム天井は、構造骨組の被災度区分が大きくなるに従って天井の被害程度が大きくなる傾向。
  • 天井被害について、旧基準と現行基準に被害棟数の傾向に大きな差はないが、比較的大きな被害の割合は現行基準の方がやや多い。Is値が比較的大きくても非構造の被害が大きい場合があった。

3.建築性能基準推進協会における被害状況調査(清家委員から第1回協力者会議で報告)

(調査の概要)

  • 国土交通省の建築基準整備促進事業として、建築性能基準推進協会では「地震による天井脱落対策に関する検討委員会」及び各種WGを設置し、天井地震被害調査等を実施。
  • 社団法人日本建設業連合会にアンケート調査を依頼し、天井について顕著な被害が見られた建築物211件について集計。うち、体育館は9件(4.3%)。

(天井等の震動被害)

  • 平天井の端部、天井の中央部分での脱落のほか、段差部・折れ曲がり部分や、設備機器との取り合い部での脱落も多く見られた。
  • 斜めの天井での被害事例があり、水平方向だけでなく上下方向の震動も影響。
  • 在来工法で顕著に見られた被害は、野縁と野縁受けを接合するクリップの外れ、野縁から仕上げ材のみが脱落、野縁受けと吊りボルトを接合するハンガーの開き・破断・外れ、斜め部材の溶接の外れなど。
  • 今回の被害では、振れ止めやクリアランスなど対策を講じていても被害が生じた事例あり。
  • 本震後、余震にて落下被害が拡大した事例もあり。被災後に確実に使用できる状況なのか、天井の対策状況について緊急点検することも考えるべき。

お問合せ先

大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室

防災推進係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2235)、03-6734-2290(直通)

(大臣官房文教施設企画部施設企画課防災推進室)