「学校施設のバリアフリー化等に関する調査研究協力者会議」の報告について

平成16年4月1日
文部科学省

 経緯
(1)  「ハートビル法(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)」の一部改正(平成15年4月施行)に伴い、学校施設がバリアフリー化の努力義務の対象に位置づけられた。
(2)  「障害者基本計画(平成14年12月閣議決定)」に基づく「重点施策実施5か年計画(平成14年12月障害者施策推進本部決定)」において、小・中学校等の施設のバリアフリー化の参考となる指針及び事例集の作成が定められた。
(3)  このため、平成15年8月に本調査研究協力者会議を設置し、学校施設におけるバリアフリー化等の方針や計画・設計上の留意点について検討が行われ、今般、文部科学省に対して最終報告「学校施設のバリアフリー化等の推進について」が提出された。

 報告書の主な内容
(1)  学校施設のバリアフリー化等の推進に関する基本的な考え方
障害のある児童生徒等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるようにするとともに、生涯学習の場として、高齢者や身体障害者等を含めた多様な地域住民の円滑な利用を考慮した計画とすること
施設の運営・管理、人的支援等のサポート体制との連携についても考慮した計画とすること
既存学校施設のバリアフリー化に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進すること 等
(2)  学校施設のバリアフリー化等に係る計画・設計上の留意点
関係者の参画と理解・合意を得ながら、適切な整備目標を設定
外部から建物までの間等がわかりやすく、円滑に移動できる配置計画
建物内を快適に移動でき、動線が簡明でわかりやすい平面計画
教室や便所、昇降口、廊下等を誰もが安全で快適に利用できる各室計画 等

 今後の対応
(1)  文部科学省としては、この最終報告を基に、学校施設のバリアフリー化等に関する指針を策定し、各都道府県教育委員会・市町村教育委員会等に対して送付する予定。
(2)  また、学校施設のバリアフリー化等に関する事例集の作成等について、平成16年度に実施する予定。



報告書の概要

第1章 学校施設のバリアフリー化等に関する基本的視点
 背景
学校施設は、児童生徒の学習・生活の場、地域コミュニティの拠点、災害時の応急避難場所としての役割を果たすことから、バリアフリー化を推進することが重要。
「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」の一部改正(平成15年4月施行)に伴い、学校施設が新たにバリアフリー化の努力義務の対象。
「障害者基本計画」(平成14年12月閣議決定)において、教育施設のバリアフリー化の推進を規定。
「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(平成15年3月)において、「特別支援教育」の考え方を提唱。

 学校施設のバリアフリー化に関するこれまでの施策
「学校施設整備指針」で基本的な留意事項を提示するとともに、学校施設のバリアフリー化に係る経費を国庫補助の対象。

 ユニバーサルデザインと学校施設のバリアフリー化
学校施設の整備に当たっては、ユニバーサルデザインの観点から、多様な人々の利用を配慮して計画・設計するよう努めることが重要。

 学校施設のバリアフリー化等の推進に関する基本的な考え方
(1)  学校施設のバリアフリー化等の視点
障害のある児童生徒等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるように配慮。
学校施設のバリアフリー化等の教育的な意義に配慮。
運営面でのサポート体制との連携を考慮。
地域住民の学校教育への参加と生涯学習の場としての利用を考慮。
災害時の応急避難場所となることを考慮。
(2)  既存学校施設のバリアフリー化の推進
幅広く関係者の理解・合意を得ながら、既存学校施設のバリアフリー化に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進。

第2章 学校施設のバリアフリー化等に係る計画・設計上の留意点
 計画・設計上の基本的留意事項
(1)  関係者の参画と理解・合意の形成
学校、家庭・地域、行政等の参画による総合的な検討の実施。
(2)  適切な整備目標の設定
施設利用者の特性等に対応した適切な整備目標の設定。
(3)  バリアフリー化等の事後点検の実施
定期的な施設利用者との情報交換の実施や施設のバリアフリー化等の状況についての検証。

 わかりやすく、円滑に建物に至ることができる配置計画
(1)  外部から建物に出入りしやすい建物配置
敷地境界及び駐車場等から明確で、できる限り段差のない建物配置。
(2)  建物間の移動がしやすい建物配置
動線が短く、できる限り平面移動が可能な建物配置。
(3)  安全で移動しやすい敷地内通路
歩行者と車の動線を分離し、安全かつ円滑に利用できる敷地内通路。
(4)  建物から円滑に移動できる屋外運動場
できる限り段差を設けない建物の児童生徒用出入口から屋外運動場へ至る通路。
(5)  利用しやすい駐車場
建物の出入口に最も到達しやすい安全な位置に、車いす使用者等の利用する駐車場を確保。

 わかりやすく、快適に動きやすい平面計画
(1)  どこにでも円滑に移動できる平面計画
同一階においては、できる限り段差を設けず、平面移動が可能な計画。
障害のある児童生徒等が利用する教室等が複数階にわたる場合のエレベーター等の設置。
(2)  動線が簡明な平面計画
動線が短く、簡明な平面計画。
(3)  認知・把握がしやすい明確な空間構成
建物内での自分の位置を認知・把握しやすい明確な空間構成。
(4)  安全で移動しやすい避難経路の確保
できる限り段差のない経路を確保するとともに、運営面でのサポート体制と連携した安全かつ円滑な避難への考慮。
(5)  誰にでもわかりやすい案内表示
利用者が認知しやすく、わかりやすい案内表示の設置。

 使いやすく、安全で快適な各室計画
(1)  利用しやすい教室等
児童生徒の多様な行動に対する十分な安全性の確保。
(2)  移動しやすい屋内の通路
できる限り段差を設けず、安全でわかりやすい動線計画。
(3)  円滑に利用できる階段
安全かつ円滑に利用できる幅員及び勾配の確保された階段
(4)  利用しやすいエレベーター
主要な経路に隣接して設置し、安全かつ円滑に利用できるように計画。
(5)  誰もが利用できる便所
障害のある児童生徒等が利用可能なように計画し、車いす使用者用便房を設置。
(6)  出入りしやすい教室等の出入口
車いす使用者が通過可能な幅を確保するなど、安全かつ円滑に通行できるように配慮。
(7)  建物に出入りしやすい昇降口、玄関
分かりやすい位置に昇降口及び受付を配置し、車いす使用者が通過可能な幅を確保するなど、安全かつ円滑に通行できるように配慮。
(8)  操作がわかりやすい建築設備
スイッチ、コンセント、手洗い場等の設備は、大きなものを使いやすい位置に配置。
(9)  利用しやすい家具
黒板、机、いす各種棚等の家具は、利用者の体格等に配慮して設置。
(10)  適切な照明設備
適切な照度、照明器具の位置等を計画。
(11)  明確な色彩計画
色相や明度の差に配慮した計画。

第3章 今後の推進方策
(1)  学校施設のバリアフリー化に関する指針の策定
学校施設のバリアフリー化等に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意事項等を示した指針を策定し、関係者に周知徹底。
(2)  計画・設計手法等に関する事例集の作成
学校施設のバリアフリー化等に関する具体的な計画・設計手法等についての事例集を作成。
(3)  研修会の実施
施設のバリアフリー対策に関する知識の習得のための研修会等を実施。
(4)  補助事業等の活用
地方公共団体等の設置者は、学校施設のバリアフリー化を一層推進するために、国庫補助制度を活用。

(大臣官房文教施設部施設企画課)

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