橋渡し研究戦略的推進プログラム中間評価委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成31年4月16日(火曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省17階 研究振興局会議室

3.議題

  1. 前回の討論について
  2. 委員からの情報提供
  3. 総合討論
  4. その他

4.出席者

委員

金倉主査、小安副主査、五十嵐委員、池野委員、井上委員、澤田委員、鹿野委員

文部科学省

仙波課長、遠藤課長補佐、砂専門官

オブザーバー

岩﨑PD(山梨大学 副学長)
中西PS(北九州市立病院機構 理事長)
楠岡PS(国立病院機構 理事長)
稲垣PO(日本製薬工業協会医薬品評価委員会 運営委員)
永井PO(神戸大学医学部附属病院臨床研究センター センター長)
北島日本医療研究開発機構(AMED)課題評価委員長(国際医療福祉大学 副理事長・名誉学長)
川口課長(日本医療研究開発機構(AMED)臨床研究・治験基盤事業部臨床研究課)

5.議事録

【仙波課長】  定刻になりましたので、ただ今から第2回橋渡し研究戦略的推進プログラム中間評価委員会を開会いたします。
 前回御欠席で、今回から御出席の委員を御紹介させていただきます。
 まずは、国立成育医療研究センターの五十嵐委員。
【五十嵐委員】  五十嵐です。どうぞよろしくお願いします。
【仙波課長】  それから、理化学研究所の小安委員。
【小安副主査】  小安でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【仙波課長】  それから、東京理科大学の鹿野委員。
【鹿野委員】  鹿野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【仙波課長】  本日は、レミジェス・ベンチャーズ株式会社の稲葉委員と京都大学の髙橋委員が御欠席というふうな形になってございます。なお、井上委員は所用により中座される予定となっております。現在、9名の委員中、7名の委員に御出席いただいておりまして、定足数である過半数に達していることを御報告いたします。
 また、本日は、日本医療研究開発機構(AMED)より、革新的医療技術創出拠点プロジェクトの岩﨑プログラム・ディレクター、中西プログラム・スーパーバイザー、楠岡プログラム・スーパーバイザー、稲垣プログラム・オフィサー、永井プログラム・オフィサー、北島課題評価委員長、そして、臨床研究・治験基盤事業部から川口課長に、オブザーバーとして御出席いただいております。
 なお、4月よりプログラム・ディレクター、プログラム・スーパーバイザー、プログラム・オフィサーの体制に変更がございましたので、ここで付言しておきます。
 それから、局長の磯谷は、別件がございますので、遅れて参加する予定になってございます。
 以降の議事進行は、主査であります金倉先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【金倉主査】  それでは、以降、私の方で議事を進行させていただきたいと思います。
 事務局から、本日の議事及び配付資料について、確認をお願いします。
【砂専門官】  ありがとうございます。それでは、議事次第を御覧ください。本日の議事及び配付資料につきましては、お手元の議事次第のとおりです。なお、資料1から資料2-3までの資料は、ペーパーレスとしており、メインテーブルのうち、委員のみ、お手元の端末に既に開いておりますので、そちらを御覧ください。
 また、オブザーバーの方の御発言は、原則、委員からの発表者への御質問や意見伺い等があった場合に、主査の指示に基づいて行うよう、お願いいたします。
 事務局からの説明は、以上となります。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 それでは、議題(1)に入ります。事務局から、説明をお願いします。
【砂専門官】  資料1を御覧ください。前回の討論及び議論のポイントを事務局においてまとめてございます。論点の整理といたしまして、論点1.橋渡し研究を行う意義、論点2.体制整備、論点3.シーズ研究費、論点4.人材を、前回設定いたしました。1枚おめくりください。
 前回頂いた討論につきまして、主な意見を事務局においてまとめております。論点1橋渡し研究を行う意義でございます。1.健康・医療分野の実用化研究の意義は何か。(1)学問として、なぜ推進すべきかにつきましては、医学研究では、候補化合物が見つかると、実用化研究とともに疾患研究が加速する特徴がある。動物実験、臨床試験に進むと、思わぬ発見に至ることは多く、新たな基礎研究の創出につながるとの御意見を頂いたと認識しております。また、以下同様に、(2)研究者自身が取り組む必要性は何かにつきまして、学校教育法や国立大学法人法でも定義されるように、優れた基礎研究を社会に還元する責務がある。エコサイクルが醸成途上の我が国においては、ベンチャー企業を介する企業導出が現時点ではまだ難しいため、アカデミアが代わりに橋渡し研究段階を推進する必要がある。(3)実用化研究による基礎研究やアカデミアへの貢献・メリットは何かにつきましては、基礎研究の成果を実用化することで、ライセンス収入や支援料収入により、運営費交付金に頼らない大学運営が将来的に可能になるのではないか。橋渡し研究支援拠点が地方大学を含む拠点外機関にも訪問・支援活動することで、地方大学においても研究者の実用化研究への志向が醸成されつつあるとの御意見を頂いたと認識しております。
 2.医療分野の実用化研究について、他分野(工学、情報科学等)と比べ、どの点に特徴があるかにつきまして、研究開発期間が他の分野と比べて極めて長く、また、研究開発早期の段階から見た、最終的な成功確率が著しく低い。医薬品は後になって改良ができないため、実際に企業が開発するか決めるにはかなりの確たるデータが必要となるとの御意見を頂いたと認識しております。
 3.橋渡し研究支援を産業界ではなく、大学である橋渡し研究支援拠点が行う意義は何かにつきまして、研究者は実用化する際に必要となるデータパッケージについて知識が十分ではないため、研究者に逐次助言する橋渡し研究支援拠点等の支援組織は研究者に近い現場(大学)で必ず必要となる。橋渡し研究支援拠点が学内にあることで、治験を行うことが当たり前という認識が研究者に醸成された。アカデミア発のシーズは革新的であるために、実用化する企業は最初からはなかなかそのシーズを信じないため、その間に死の谷がある。企業が信じるに足る程度まで、データの充足・特許・開発戦略などをその都度手助けすることが必要である。橋渡し研究支援拠点により治験を実施する体制を大学に整備することで、再生医療のようなアカデミアが牽引する新たなモダリティの実用化が滞りなく進んだとの御意見を頂いたと認識しております。
 4.その他の重要な議論といたしまして、(1)論点2-3にあたります、自立後(事業終了後)の橋渡し研究支援拠点の在り方についてどう考えるべきかにつきましては、国の予算を考えると、10拠点は多いのではないか。妥当な規模を今後検討するべき。将来的に、10拠点が全ての機能を持つ必要はないのではないか。再度、拠点間連携・機能分担等を検討すべき。ライセンス料だけでなく、医師主導治験などへの支援料で収入を維持することが重要。既に多くの成果を出しており、ライセンス収入で自立化は可能ではないか。自立できないのは拠点の努力不足ではないか。運営費交付金が減る中、必ずしも全ての拠点が一律に自立することは現実的ではないのではないか。アメリカでも、AROの自立化はハーバード大やデューク大等に限られている。
 次に、(2)論点3-2産学連携につきましては、産学連携が乏しいのは、企業の資金力や決断力が不足しているため、製造販売以外はアカデミアが行うべきではないか。産学連携については、互いの役割を認識した上で、協力しながら進めるべき。アカデミアは、患者へのアクセスが可能で、臨床データの収集からそれを用いた疾患研究・診断法確立は容易である。企業は資金調達や実用化するという点に長けており、企業側は最終ゴールを見据えて早期にアカデミアに開発助言することが重要である。再生医療等の新たな技術は様々な点で課題が生じるため、非常に早期から企業やPMDAの協力が重要である。日本の企業に限らず、グローバル企業も産学連携の相手として認識すべき。アカデミアのシーズは特許戦略が貧弱で、マーケティングが弱いのが問題である。アメリカは、資本力が高い企業があるのでベンチャーの売却先があり、エコサイクルが回るが、日本では厳しいので国内で完結することは難しいのではないか。エコサイクルの醸成については、ベンチャー企業の成功例を一つでも示すことが重要。
 また、(3)情報公開としましては、長期間、多額の予算を投じているため、国民、特に患者に対して、治療された患者の数、経済効果(雇用創出、外貨・内貨の獲得)等を整理して、公表する必要がある。本事業で支援されたシーズからの医薬品等の承認件数や、それらで治療された患者数等のFactsを整理すべき。
 また、(4)本事業におけるインパクト・変化としまして、平成19年度に本事業を開始した際に、日本の研究がみんな論文発表だけで終わっており、全く実用化されていないことが問題であったが、本事業を通し、研究者の実用化への意識が向上した。これまでに、多くのDisruptive innovationに資する成果を創出しており、メガファーマにも負けない成果を挙げている。本事業を通し、研究者の知財に対する理解が深まった。橋渡し研究支援拠点の基本的な基盤整備は完了し、実用化に必要な体制・施設がアカデミアに整備された。
 (5)人材育成につきましても、実用化研究の推進に当たっては、研究者教育のみならず、学生教育も必要ではないか。研究者に対し、実用化研究に必要な観点を教育することは重要。アメリカには、NCATS等による教育プログラムが存在する。
 (6)今後の討論の方向性といたしましては、橋渡し研究の意義等については第1期の時に整理済みなので、改めて議論する必要はない。Disruptive innovationを達成するために、さらに基礎研究をどのように強化するかを議論すべき。中間評価委員会で、社会や国民に本事業の重要性を周知する仕組みを検討する必要がある。これまで、本事業で得られた成果に関するFactsに基づいて議論すべき。成果につきましては、現在、AMEDの中間評価で取りまとめておりまして、第4回本委員会で報告予定としております。
 (7)その他といたしまして、本事業はDisruptive innovationを達成する事業であり、そのためには異分野融合を推し進める必要がある。アカデミア発シーズを実用化する上で、他の研究プロジェクトとの情報共有、連携などの横のつながりが重要である。単に実用化を急ぐのではなく、サイエンスとビジネスの両面でデータを検証して慎重に進めることが重要と、御意見を頂いたと認識しております。
 駆け足となりましたが、前回の議論の振り返りということで、まとめさせていただきました。
 事務局からは、以上でございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 では、議題(2)に移りたいと思います。今回は、小安副主査、鹿野委員、澤田委員の3名の委員から、本委員会での検討に資する情報について、御発表を予定しております。
 まず初めに、小安委員に、理化学研究所での橋渡し研究支援の状況に関しまして、支援者人材、体制を中心に、御発表を頂きます。資料2-1でございます。約10分を予定しております。よろしくお願いいたします。
【小安副主査】  小安でございます。1回目、副主査というお役目を頂きながら、出席できなくて申し訳ございませんでした。49ページもある議事録を読ませていただきまして、大変熱心なというか、福島先生の唾が飛んできそうな、そんな……。これは議事録から削除してください。議事録を読ませていただいて、私に何ができるのかといろいろ考えましたが、とりあえず、お題を頂いておりますので、理化学研究所で創薬・医療技術基盤プログラムというプログラムを走らせておりますので、この御紹介をさせていただいて、何をやっているかということを少し、議論のネタにしていただければと思います。
 これは理化学研究所全体の組織図でございますけれども、一番大きいのは戦略センター群でありまして、たくさんのセンターの中で、幾つか生命科学系の、特にミレニアム時期に建てられたものを中心としたセンターがございます。それ以外に、SPring‐8やスーパーコンピュータ「京」、バイオリソースなどを維持しているような基盤センター、そして、新しい分野を開くような開拓研究本部というのがございます。さらに、これらの基礎研究成果を社会につなぐという意味で科技ハブ産連本部というのを置いておりまして、この中に創薬・医療技術基盤プログラムというのがございます。ここで目指しているものは、基礎研究から生まれたシーズを、製薬企業における創薬プロセスや、医療の現場で実際に活用される技術に最適化させるために、シーズをテーマ・プロジェクトとして推進するということを実際にここでやっております。さらに、AMEDの創薬支援ネットワークにも構成機関として参加をさせていただいております。
 創薬支援ネットワークにおける理研の創薬支援体制でございますけれども、ここに描いてありますような、スクリーニングの部分、あるいはリード最適化の部分、こういうところでいろいろなテーマに対してサポートできるところを行っているというのが、現状でございます。
 ここの研究開発を牽引しているチームですけれども、皆さんよく御存じだと思いますが、タクロリムスを発見して開発された後藤俊男さんをプログラムディレクターにお迎えして、副プログラムディレクターはMDの方にずっとお願いしているのですが、現在は血液内科医の藤井眞一郎さんにお願いしております。そして、テーマリーダーというのが実際にシーズを持っている研究者でありまして、理研の中の人間のこともありますし、あるいは外の大学の先生方の場合、それから、AMEDの方から頂いたテーマ、そういうのも幾つかありますが、このテーマリーダーに対してポートフォリオマネジャーを付ける。これは、ほとんどが製薬企業での研究開発の経験のある方にいらしていただいて、個別にサポートしていただく。そして、それに対して理研の中の様々な研究センターの中に置いた専門的なチームが、こういうテーマを必要に応じてサポートすると。そういうような体制を作っております。さらに、臨床試験・治験等に橋渡しする段階になったときには、臨床開発マネジャー等、この方もMDの方ですけど、こういう方々にいろいろとサポートを得ながら出口に向かって走ると。そういうことを現在進めております。
 中に事業開発室というのを置いておりまして、ここも製薬OBの方が中心なのですけれども、企業や大学、外部研究機関との共同研究やライセンシング等のアライアンス部分を担当して、標的の発見から、シード創出、リード最適化等々の中で、様々なサポートをしています。私どものところでは出口を三つ用意しておりまして、基礎的な研究の、我々、シード段階と言っていますけど、この段階でMTA・共同研究で出すもの、あるいは、リード化合物の段階で、ライセンスアウトしたり、共同研究に持っていくもの、あるいは治験を始めた段階で企業に渡すもの、こういう幾つかの段階でエグジットというのを設定しております。プロジェクトごとに、どういうふうに進むかというのを、この事業開発室の中で外部とのアライアンスを模索しながらやっているところです。非常に重要な点は、理化学研究所は病院を持っておりませんので、自分たちの中で治験をやるということはございませんから、どうしても様々な病院とアライアンスを組むということが、非常に重要な部分になってまいります。
 ちょっと見にくくて申し訳ないのですが、お手元にも資料があるかと思いますけれども、これが私どもの構造でございまして、ここにプログラムディレクターと副プログラムディレクターがおりますが、こちらにポートフォリオマネジャーが何人かいて、ここに書いてあるのは、現在、プロジェクトというふうに、一番上の部分にあたるもののリーダーだけの名前が書いてありますが、これにさらに加えて、事業開発室、臨床を担当するマネジャー等々、こういう陣容がいて、そして、右側の部分、ここに顔写真がありますが、これが様々なセンターに所属して、そのセンターの中でセンターのミッションを担っているのですが、それ以外に、このプログラムに対して横串を刺すような形で様々な、ケミカルバイオロジーから、創薬化学、抗体の作成、計算科学、分子設計、タンパクの構造解析等々、こういうグループがそれぞれのテーマごとに必要な支援を行って、それぞれ出口に向かって走ると。そういうようなイメージで進めているところでございます。
 特に、ここの部分が実際にヘッドクオーターになるわけでありまして、テーマリーダーが提案する研究計画を確認し、アドバイスをする。全体の委員会を持っておりまして、シード段階から、テーマに進む、プログラムに進むなどということのアドバイスをして、さらに、先行技術や特許の調査等をする。あるいは、もちろん特許のサポートをしておりますが、研究費の支援やステージ確認等、こういうところで実際に、PMの役割をしている、進捗管理をしているということになります。
 幾つかお見せしますが、見にくくて恐縮ですけれども、これが、現在、プロジェクトと呼んでいるもので、この段階で言いますと、最初の標的の同定・解析がシーズのゼロ(S0)に当たるのですが、シードが出てきたところがS1からS3、リードの最適化のところがL1からL3、前臨床がP0、そして臨床試験に入るとP1、こんなふうに進みますけれども、プロジェクトと呼んでおりますのは、少なくともL3の段階に達して、間もなく前臨床に入る。すなわち、GLP試験とか、そういうところに向けて動いているようなところでございまして、今、これだけのテーマが走っております。下にありますのは既にエグジットしたものでありまして、ここにあります6件のテーマに関しては既にエグジットしていると。さらに、もう少し手前のものになりますと、リードが得られているものから、まだシードの部分で、これからリードの最適化に入るものというような形で、幾つかのプログラムがこのように走っています。中身に関しましても、感染症、ニューロサイエンス、先天性の疾患、消化器疾患等々、いろいろなシーズを扱っておりますが、それぞれに関して大事な点は、このプロジェクトを進めるにあたって当然のことながら資金が必要なわけですけれども、これに関しましては、企業からの共同研究で得る、あるいはAMEDの予算を使わせていただく等々、幾つかの手法を事業開発室の中でいろいろと議論をして、それに最適な方法を模索しているというのが現状でございまして、ここに書いてあるものに関しては、赤丸が付いているのは全て、企業との共同研究によって既に資金供与がされて進められているものということになります。
 実際にここから治験に行く、例えば一番上の人工アジュバントベクター細胞に関しましては既に医師主導治験に入っておりまして、実際には東京大学の医科学研究所において治験がなされているというようなことでございまして、他のテーマ、例えば、このテーマとこのテーマに関しては慶応義塾大学病院において治験を進めるという方向で、現在、計画が進んでおります。それから、これに関してはAMEDから資金を頂いて進めている部分になったかと思います。
 このような形で我々としては進めているのですけれども、最近苦労しているのは、シーズといいますか、テーマの数が以前ほど流れてこなくなっているというようなことで、テーマ探しにいろいろと苦労しているというのが一つと、それから、先ほどちょっとお見せしました、このスキームですけど、ここでサポートしてくださっている方々がたくさんおられるのですが、こういう方々のキャリアパスをどうするかということに関しては結構悩みがあって、現在、全部で140名ぐらいの方が仕事をしています。うち半分ほどは完全にこのプログラムに専任ですけど、半分の方は他のセンターの仕事と兼務しながらやっているということで、その人たちをどのように評価するかということが、研究所の中では一つの課題というふうな感じがしています。それからもう一つは、事業開発室に代表されるように、外の例えば製薬企業と結ぶような方々の陣容をどうやって確保していくか、進捗状況を管理できるようなポートフォリオマネジャーをどのようにして確保していくか、このようなあたりが課題かなというふうに感じているところです。
 少々長くなったかもしれませんが、とりあえず、私のほうからは、以上とさせていただきます。
【金倉主査】  小安委員、ありがとうございました。御質問等は、後ほどまとめて時間を取りたいと思います。
 続きまして、鹿野委員に、前に御所属の医薬品医療機器総合機構での御経験も踏まえて、橋渡し研究に重要なレギュラトリーサイエンスについて御発表いただきます。資料は2-2でございます。
 それでは、鹿野委員、15分ぐらいを予定しております。よろしくお願いします。
【鹿野委員】  それでは、御依頼がありましたので、橋渡し研究とレギュラトリーサイエンスということで、御説明をさせていただきます。
 医薬品の開発・評価の基本的考え方としては、医薬品のリスクとベネフィットを適切に評価する。そして、リスクをなるべく小さくして、ベネフィットが大きくなるような使い方を模索する、というようなプロセスと言えるかと思います。リスクの大きい医薬品であっても、それを上回るベネフィットがあれば、受け入れ可能である。他に良い治療法がない、致死性が高い、あるいは重い障害が残るような疾病の治療薬であれば、ある程度のリスクも許容可能であろうという考え方になるかと思います。このような考え方、特にリスク・ベネフィットの評価の考え方、それから、ベネフィット・リスクのバランスの評価、そういう使い方の模索という部分について科学的に体系化をしていこうというのが、レギュラトリーサイエンスと言えるかと思います。一般には、科学技術を人間との調和の上で最も望ましい形にレギュレートする、あるいは基礎研究の成果を社会にとって望ましい内容と方向に生かすことを目的とするというようなこととも言われているところでございます。
 こちらも、ここにいらっしゃる皆さん、釈迦に説法みたいな話ばかりで恐縮なのですが、一般的な医薬品開発の流れとしては、シーズになるような新規化合物の発見、事象の発見とか、化合物の発見ですね。そして、非臨床試験、臨床試験、承認審査を経て、薬価収載ということで世の中に出ていくというのが、一般的な流れかと思います。
 非臨床試験ですけれども、ここにいらっしゃる皆さん、釈迦に説法で恐縮なのですが、改めて御説明させていただきますと、一つは、薬効を評価する薬理試験。ここでキーになるものの一つが、非臨床POC(Proof of Concept)ですね。目的とするような薬効が得られるということを動物試験で確認をするということ。そして、もう一つ重要な部分ですが、ここはちょっとアカデミアの方では軽視されがちかと思うのですけれども、毒性試験。ヒトでは倫理的に実施できない高用量投与あるいは過酷な曝露条件下において、動物で試験をするということですね。その結果から、薬の安全性プロファイルを幅広く探索していきます。例えば、発がん性あるいは催奇形性ですね。妊娠動物に投与するなんていうのは、絶対にヒトではできませんので、そういうものは動物でしっかり確認をしておく必要があるということ。病理的な確認というのももちろんヒトではできませんので、そういうものも含めて、毒性変化を検出していくということが重要になります。そのようなデータを基に、副作用の予測、標的臓器把握、用量依存性確認、回復性確認等々、また、臨床試験の初回投与量の推定をするということで使われているデータかと思います。
 続いて、臨床試験になりますと、治験と書いてありますけれども、医薬品が有効性を示して、安全性が許容されるような用法・用量を決めるための情報を得るというふうに言えるかと思います。横軸はいわゆるI相、II相という開発の相、縦軸は目的別に表していますけれども、I相試験では臨床薬理的なデータを取る。II相のところでは探索試験ですね。それらのデータを基にして、III相で一般的には検証試験を行うというような形かと思います。この一つ一つの丸を縦に見ていったという感じで描いているのですけれども、試験の目的、計画、実施、解析、報告という一連の流れが非常に綿密に定められておりまして、アカデミアでたまに聞くのですが、これは信頼性の高い結果を得るようにデザインしているものなのですけれども、途中で中間解析してみりゃいいではないかとか、キーオープンして見ればいいではないかというような話がたまに出るというふうに聞くのですが、そうすると信頼性を損なう危険があるというので、一般にはやられない。もしやる場合には、それが結果に影響を及ぼすかどうかというのを十分に確認しなきゃいけないというのが、一般的な考え方になっております。
 また、これら非臨床試験・臨床試験につきましては、医薬品の承認申請資料のデータを用いる場合には、それぞれ基準に則った試験をやるということが求められています。非臨床試験については、Good Laboratory Practice(GLP)ということで、試験を行う施設の設備構造や機器の管理、その他、トレーニングとか記録保管、そういう面でいろいろと決まり事があります。Good Clinical Practice(GCP)についても同様ですけれども、臨床試験に関する計画・実施・モニタリング等々。他に重要な観点としては、被験者の保護に関する倫理的な部分というのもあります。これらの基準を満たすことで、試験の科学的な質とデータの信頼性確保を図るということになっています。
 そしてもう一つ、医薬品の評価で重要な要素の一つが品質になりますが、ここが割とアカデミアの中では見落としがちになるところではないかと思っています。普通、医薬品を販売したときに全ての市販製品ロットでもう一回非臨床試験や臨床試験を行って有効性・安全性を確認するのは現実的には無理な話ですので、どうするかというと、そういう試験で用いられたものと同等の品質を持っているものを供給できることをベースに、これを担保しています。ですので、品質試験については、試験法バリデーションのガイドラインであるとか、製法管理あるいは品質規格のガイドライン、不純物や安定性のガイドライン等々、たくさんの国際ガイドラインでこの辺の確認をするということになっていますし、製造販売後も一定の品質のものが作れることを担保するために、Good Manufacturing Practice(GMP)という基準が設置されているところです。これは、品質が有効性・安全性を支えているものだというのが、基本的な考え方になります。これは開発段階でも基本的に同じ考えになります。各試験でばらばらの品質のものを使うというのは一貫した評価ができないということなので、基本的には同等の品質のものを使う。つまり、同等の有効性・安全性を有するものを使うというのが、基本になっています。
 研究と開発を比較してみました。目的を見ていただきますと、研究については、真理の発見・探索、それから、より有効だとかいう差別化とか、そういうのが目的になるかと思うのですが、一般に効力とか作用機序の部分は非常に力を入れて検討されている。それが研究の基本的な目的になるかと思います。薬物動態あるいは対象疾患、例えば、あるターゲット分子があっても、それに関連した疾患としてどの疾患を対象に開発するかとか、そういうことは余り、研究段階ではそんなに重要視されていないと思います。用法・用量、あるいは非臨床安全性評価、それから臨床安全性評価、そういうものもそれほど力を入れていくというものはないかと思います。あと、品質が同じものが供給できるかというのは、それほどは重視されていない。また、求められてないということもあるのですけれども、GCP、GLP基準というのはもうちょっと先の話なので、余り考慮はされない。一方、開発は、医薬品としてそのデータを使うのであれば、これらについては、ほぼ二重丸というか、十分なデータが必要になります。1点、作用機序だけは、もしかすると研究段階と同じものは求めない。ある程度の作用機序が分かれば、そんなに詳細までを求めないという見解もあると思います。
 次は、イメージですけど、これ、アニメーションがうまくいってませんで、すみません。真ん中、例えばグレーの三角である論文を目指して研究をした。基礎になるデータに基づいて、どんどん、作用機序なり、より有効なものを開発するというのをやっていくのですけど、なれてないアカデミアの先生が割と陥りがちなのは、同じ考え方で更にやっていけばいいのではないかというふうにお考えになる先生がそこそこいらっしゃるという感触はあります。そうではなくて、有効性についても、用法・用量とか補足的な情報が必要ですし、品質、安全性という、また別の観点での情報が大変重要になるというところが違うのかと感じています。
 アカデミアの研究者の先生が開発を目指す際に陥りやすい問題例はありますかと聞かれたので、思い付く感じで書いてみました。特に基礎の分野の先生方とお話しすると、大体の方が特許を取ってないですね。分かるのです。非常にいいデータが出たら、まず論文で、そのときにまず特許と考えられる基礎研究者の先生って、それほど多くないのではないかと思います。こういうのがあるのだけどって相談されると、大抵、特許は取っていませんと。どの段階でどういう特許を取ればよかったのでしょうかという感じなので、これはもうちょっと何とかしなきゃと思うところです。
 それから、プロジェクト運営とありますけれども、ある分野の先生がいい成果を出されても、その周辺の情報をいろいろ集めていただかなくてはならないので、複数分野の先生方から成るチームを作っていく必要があると思います。例えば低分子であれば、合成・製造、それから、薬理試験をやる動物とかを使われる先生、あるいは、薬物動態、まずは動物での薬物動態を評価できる先生、それから、獣医さんなど、非臨床安全性評価ですね。動物の病理なんかを見られる先生とか、そういうチームを作ってやらなくてはいけないのだろうと思うのですが、なかなか、そういうふうに持っていかれる例は多くはないのかと感じています。
 それから、PMDAの方でもアカデミアを対象としたレギュラトリーサイエンス相談というものをやっているのですけれども、議事録で拝見すると、前回も出ていましたが、革新的技術ほど早期の相談が重要というのは、私がPMDAにいたときもそうなのですけど、革新的なものは分からないのです。早めに頻回に御相談いただくと、そういうことかというのが分かるということが一つと、あと、従来の、既存の規制で当てはまらないような新しいものは規制の枠組みから考えておかなくてはいけないので、それがある程度出来上がって持ってこられても規制の方が追い付いてないというケースが、最近はままあります。あと、基礎の研究者の先生がおっしゃるのは、基本的な薬事用語すら分からないのだと。例えば、これは希少疾病用医薬品ですねとか言うと、希少疾病用医薬品って何ですかと、定義も分からないとか。そういうようなところから、基礎の先生にはいろいろ、ハードルが高いところがあるのかなあと思います。ですので、企業、PMDA、AMED等で仕事をした経験のある先生がそこに参加されていると、比較的、コンタクトのハードルが低いのかと感じます。PMDAへ相談に行ったらどうですかと言っても、いやいや、まだそこまでは、そんなところまではなかなかという方も、結構多いのかという気がしました。
 それからもう一つは、先ほど申し上げた品質の問題になります。有効成分の構造や製剤組成ですね。低分子なんかは側鎖を変えて、ちょっとずつ、よりいいもの、よりいいものでやりたいというお気持ちは分かるのですけれども、そうすると一貫した評価ができなくて、それぞれの試験で違うものを評価している場合に、全体としてどうなのかという評価が難しくなったりとか、あるいは、抱合体とか製剤の剤型をいろいろ検討されている場合にも、そういうものをがらっと変えてしまったりとかするというのがあって、データ全体としてどう考えたらいいのか、迷う場合があります。これも、当たりをつけているような段階ではもちろんそれでもいいのですけれども、どこかの段階で一貫した評価をしていくというのを考えなくてはいけないのだろうと思います。製造方法も、特にバイオなんかは製法変更というのをよくやられるのですけれども、不純物とか、特に糖タンパクでは糖鎖が培養条件で結構変わりますので、代謝も変わりますし、ADCCなんかの場合の抗体だと、フコースの側鎖の量とか、そういうのでも活性が大きく変わるとか、いろいろなケースがありますので、そういうものは注意していただく必要があるのかなと思います。あと、生物由来製品の規制というのは割と、アカデミアの先生からすると、ちょっと分かりにくい、扱いにくい問題かもしれません。一番ポピュラーなものとしては、培養に用いる血清とか、生物由来の原材料について規制があるのですけれども、感染性のチェックとか、そういうものについて、ちょっと面倒くさいという、そういうハードルはあるかと思います。そして、GMPグレードの品質という言葉をよくお使いになるのですが、正しい、薬機法的な、薬事のGMPとは若干違うのですけど、要するに、医薬品としてヒトに投与できるレベルの品質ということだと理解しているのですが、そういうものには、例えば、原材料レベル、どの辺から注意が必要なのだろうという、これはちょっとケース・バイ・ケースのところもあるかと思うので、そういうのもこまめに相談をして、PMDAに相談に行っていただいた方がいいのかなと思います。
 それからもう一つ、非臨床試験の問題ですけれども、非臨床POCですが、ターゲットバリデーションが不十分なケースというのがあります。例えば、ターゲットにしている標的分子が本当にその病気に関係しているかというのに関して、十分なデータが取られていないケースであるとか、動物を使ったときに、それが本当にヒトの病態モデルとして適切なモデルなのかという評価であるとか、そういうようなところが若干甘いというケースも散見されますし、効果と薬物動態との関連性というのも見ておいた方がいいのにと思うときもあります。先ほど申し上げましたように、非臨床も安全性というのはちょっとおろそかになりがちです。POCをやるときに、薬理で有効性を見るだけではなくて、せっかく動物を使っているのだから、中を剖検して、全部、徹底的に網羅的に情報を取ればいいのにと思うのですけど、そこまで余りやられてなかったりします。それから、GLPが適用されるということで、実は必要がない試験まで全部GLPでやって物すごくお金が掛かったとかおっしゃるケースもあって、その辺も事前に相談された方がよかったのかと思います。非臨床試験は、いわゆる毒性試験と一部の安全性薬理試験だけはGLPが求められるのですけど、薬理試験なんかは不要なのですが、薬理もGLPでやられる先生とか、たまにいらっしゃいます。それから、臨床試験を実施する前に最低限やらなくてはいけない非臨床試験とか、治験の前にはあるのですけど、最近、臨床研究法も施行されて、この辺もちょっと注意が必要なのだろうと思います。
 臨床試験についても、先ほどもちょっと申し上げましたけど、目的と試験のデザイン、試験の適切な実施、医師主導治験では特に、データをCDISC標準に対応する必要があるとか、そういうのがあるのですが、この赤字で書いた部分は、最近はアカデミアのAROの方々が大分なれていらっしゃるので、そこは大分対応が進んでいるのかという感触はあります。でも、それ以外の基礎に近いところはまだまだ、いろいろ問題があると思っています。
 そういう意味では、研究と開発というのは、赤字で書きましたが、まず知財。それから、研究と開発というのは、どこかの時点で、別ルートで進めないといけないと思います。それも、タイミングであるとか、そういうところはケース・バイ・ケースなのだろうと思います。
 実は、PMDAにいるときに、科学委員会という外部の先生方に集まっていただいて各トピックを議論するというプロジェクトがございまして、そこで「アカデミアと企業の連携による創薬促進」というテーマで議論をして、2017年に報告書を出しております。これは、理化学研究所の後藤先生なども御参加いただいて、非常によくまとまっていると思いますので、御興味があれば、是非、御覧頂きたいと思います。
 それから、ちょっとお時間が過ぎてしまいましたが、先駆け審査等の制度的な面も説明してほしいということで、2枚ほどスライドを入れました。先駆け審査指定制度というものが実はもう始まっておりまして、画期的な治療法や診断方法であって、世界に先駆けて開発、日本で最初あるいは世界同時に承認申請をするもの、顕著な有効性が見込まれるものについては、指定をされますと、データが出たらすぐに事前評価という形で、相談の範疇なのですけれども、事前に出たデータをどんどん評価をしながら、III相試験も走らせる、検証試験を走らせて、最後に承認審査をするというような形です。実は、審査パートナー制度といって、PMDAの職員、割とベテランの職員が開発に伴走して、アドバイスをしながら一緒に開発に参加するような形をとっています。アカデミア発のシーズが、この指定制度を受けて承認されたものが、もう既に幾つか出ております。
 もう一つの制度として条件付き早期承認制度というのがあります。赤字で書いていますが、検証的試験をやるのが難しい、例えば希少疾患などで書類が集まらないとか、そういうものであって、一定程度の有効性・安全性がそれまでのデータで得られている。そういうものは、製販後に有効性・安全性の更なる確認をする、調査をするということを承認条件にして承認するよという制度ができています。これは平成29年10月に通知が出ましたが、たしか既に2品目、希少がん関係のところでこの制度を使って検証試験なしで承認をして、市販後の情報収集で対応するということをやっているという状況です。こういうところの制度をうまく使っていただけると、特に希少疾患とアカデミアが得意とするような分野でうまく活用いただけるのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 それでは、最後に、澤田委員に、製薬会社というお立場から、産学連携について御発表いただきたいと思います。資料は2-3でございます。約10分で御発表をお願いしたいと思います。
【澤田委員】  では、医薬品産業の現状と産学連携への期待ということで、お話しさせていただきたいと思います。前回の会議におきましても企業とアカデミアはどういうふうにすみ分けていけばいいのかというようなお話もございましたので、まず、医薬品業界、産業における現状ということで、お話しさせていただきます。
 ここに、開発中止数と承認数の推移ということで左側にお示ししていますが、プロジェクト数はどんどん増えてきています。ただ、その一方で、承認されていく薬剤の数というのは実はグローバルに見たときに余り変動はありませんで、その一方で開発を途中で中止するもののプログラム数はどんどん増えているという意味からしますと、やはり成功確率というのはどちらかといいますと低下の方向に行っている。その一方で日本は、最初に開発しているものよりも、若干、他での様子を見ながら開発が進んでいるものもありますので、実は、日本で開発を始めて承認されるものの比率というのは一見高いというような格好になっていますが、この数字を見ていただくとお分かりのように、米国で圧倒的に承認されている薬剤数が多いということになります。
 一方で、開発経費ということで見ますと、新薬1剤あたりを創出するためのコストというのは、年々、本当に指数的にと言っていいくらい増えておりまして、その一方で一つの薬剤の売上げというのは逆に低下の方向に行っている。そうしますと、売上げは減って、成功確率も減って、しかも開発経費だけ上がっているということになりますので、特に臨床試験に入る前後ぐらいのところの化合物の回収可否ということを見ますと、実はほとんどのプログラムで回収ができないという結果になっているというのが、今の医薬品の現状になります。
 私どもも今まで産学連携を幾つかやってきていまして、そのうち幾つか、弊社のもの、あるいは他社さんのものも含めて、御紹介をさせていただきたいと思います。この一つは、本来、橋渡し研究で御紹介するものとはちょっと違うのですが、弊社で今、非常に大きな収入源になっているHIVの薬なのですが、これは、米国において、シーズ、今よりもはるか以前の病気の原因を追求するためのファンドということで非常に大きなファンドをNIHに与えていまして、そこで出てきたターゲット分子を基に開発を進めたということで、非常にそういう基礎研究が重要であるということをここでもう一度強調させていただきたいと思っておりますのと、もう一つは、実はとんでもなく時間が掛かっておりまして、山のように低分子化合物を途中で作っておりますが、臨床に入っておきながらも結構ばんばん失敗して、臨床に入った化合物だけで実は5化合物。開発を始めてから最初の化合物が世に出るまでに、実は20年以上掛かっている。これぐらい、開発リスクというのは高いものです。下手だと言われれば下手なのですが、というところもあるのですが。
 もう一つは、最終的にドルテグラビルという化合物を製品化しているわけですけれども、この化合物とファースト化合物を比較しますと、vitroの活性で実は10の2桁オーダーで違います。100倍、活性は強くしていますし、耐性に関するデータも非常に強くなってきていますので、このあたりは恐らく、アカデミアと一緒にやっている場合ですと、そこまでハードルを上げなくても、もっと途中段階で臨床にどんどん進めていった方がいいではないかというふうにきっとなっていただろうなと思います。ですから、これは最初にどういうクライテリアをちゃんとクリアしないと前に進めないと。これをきちんと設定した結果として、最終的な化合物が選定できて、うまくいった。これはアカデミアと共同させていただく上でも非常に重要なことになるだろうなと思っています。
 一方で、これは中外さんが大阪大学と共同で創薬されたアクテムラの事例ですが、実際に、最初の受容体の発見、抗体の作成、疾患との関連、このあたりの特許が1991年で、これは抗体ですので化合物を次々見ていくという必要はなかったのですけれども、そういう意味では比較的、疾患をどうやって選ぶかというところでかなり苦労されたものの、阪大における臨床研究の成果なども活用されて中外製薬さんが最終的に製造・販売されて、これも非常に大きなブロックバスターになってきていますが、その上市というのが2005年ということで、そういう意味では、これについてもやはり十数年は掛かっているということになります。特に抗体等に関しては、化合物として特定するのは比較的容易なのですが、初期投資は製造のところを最初にフィックスしないといけないという点がありますので、極めて早い段階で数億という投資が必要になるのが常ということで、そういう意味では中外さんがここにかなり早い段階で数億という投資を決められたということが、ここにつながったというふうに考えています。
 前回、レプチンの話もしてくださいということがありましたので、一応、レプチンについてもお話をさせていただいています。これは、残念ながら国内ではなくて、ロックフェラー大学がレプチンを同定していましたので、海外にライセンスがある化合物を用いて京都大学で臨床研究をなさった結果として、脂肪萎縮症に対してレプチンが非常に有効であるということを臨床で示されたものです。2001年からこの研究の開始申請をされまして、2004~5年あたりに何例かのデータがやっと出始めたというところです。その結果として非常に良好な臨床効果が認められましたので、それを国内で何とかできないかということでお話を頂いたのですが、当初、アムジェンが持っていたものを、お話を頂いたときにはちょうどアミリンがグローバルの権利を買い取ろうとしていたときでしたので、国内導入しようと思いますと3桁億払えという話がありまして、当然ながらそれはできないということで、アミリンとの契約が成立するのを待っていたということで、2009年にようやくライセンスの契約を締結して、医師主導治験を始めていただいたということになります。これはスーパー特区の中で実施したプログラムになります。
 先ほど、京都大学が実際に医師主導治験を国内でされた、その前に臨床研究をされているのですけれどもという話をしていますが、その前に実は、米国のNIHで同じく21例のデータを出されています。アミリン社がFDAに協議をしまして、NIHのデータを基に申請するということで、ローリング・サブミッション方式による審査をするということで、実は2012年4月にUSで申請されて、10月に承認。そのデータを使わせてもらって2012年7月に申請して、そこに京大の医師主導治験のデータを載っけるという形で、2013年3月に承認を得ようということで考えていたのですが、実は、NIHの21例は医師主導治験なのですが、アミリン社が相当にクリーンアップをする必要がありまして、そのクリーンアップに非常に時間を要しまして、全くこのスケジュールどおりにはいかなかったということがございまして、京大のデータの方が先にファイナルレポートが出てしまったということがありまして、2012年7月にUSの申請のない状態で申請しまして、スーパー特区の最終期限であった2013年3月に何とか承認まで行ってスーパー特区の成果を上げたいという、内閣府からの強い御要望がございまして、米国で申請していないCMC、製造関係のデータを全部、国内のためだけに、このときアミリンは既にBMS(ブリストル・マイヤーズスクイブ)に買収されていたのですが、BMSに依頼をしまして、それこそ毎週、電話会議をして、それを何とか対応してもらって3月承認を果たしたということで、最終的には日本が最初の承認国になった。これは、日本の医師主導治験がそのまま申請資料として使えたという意味では、画期的な話だったかなというふうに思います。
 産学連携への期待ということですが、これは、皆さん、何度も見ておられる図だと思うのですけれども、新薬シーズはどこからもたらされるのか。米国が圧倒的に多い。その大きな原因の一つとして、大学あるいはバイオテク関係からもたらされているものが非常に多いということになります。米国ですと、アカデミアの基礎研究と製薬企業などの実用化研究の間に、バイオベンチャーが非常に大きな存在として君臨しています。このバイオベンチャーが育つ一つの原因として、文化もやはりあるのだろうなという話はしていまして、挑戦を尊んで失敗を許容する文化。日本の場合ですと、1回ベンチャーを創って、それが破綻してしまうと、なかなか立ち直れないし、再チャレンジができない。ただ、米国などでは、再チャレンジは簡単にできる。さらに、こういうバイオベンチャーもあるのですが、加えて、基礎研究からバイオベンチャーのところも含めて、潤沢な官民ファンドがあって、その研究の下支えをきちっとしているというところがあります。日本型としては、アカデミアと製薬企業の間にバイオベンチャーがまだそれほど育っていないというところがありますので、橋渡し研究が当然ながら必要になってくるのだろうなと考えています。
 一方で、製薬企業の戦略ということなのですが、旧来は、低分子医薬、生活習慣病のようなブロックバスターで、大きくインジケーションされていた。ただ、それがバイオ薬品などにも変わってきていますし、さらにアンメット・メディカル・ニーズの領域、これは、かなり広い効能ということよりは、むしろ特定の患者さんを対象にしたような、そういう治療薬の開発に変わってきている。また、薬効評価につきましても、旧来からヒトのvitroの系なども使ってはいましたが、非臨床のモデル、こういうものを多々使っていた。それに対しまして、ビッグデータであるとか、iPS細胞を活用した系を作ることによって、薬効評価ができるようになってきている。こういうところでも、アカデミアというのは非常に強力な、データあるいはリソースをお持ちであるということになると思います。また、創薬開発の生産効率がどんどん悪化してきているということから、それぞれの企業においても、自前でカバーできるプログラム数というのは、どんどん縮小の方向に行っています。また、企業間でもかなり連携を始めているという状況になりますので、当然ながら、自社だけで閉じるのではなくて、オープンイノベーション、外部との連携による強化というのは非常に重要であるということで、各社ともに、産産連携も含めてですけれども、産学連携を強力に進めているという状況になります。
 その一方で、これはちょっと刺激的過ぎるかと思ったのですが、新規薬剤標的に関する論文データの再現率は実は余り高くないというペーパーが出ておりまして、実際に再現しようと思いますと、ある程度、薬効は見えるのだけれども、少し薬効が弱くなるとか、あるいは効果が現れる範囲が少し限られた範囲に限定されるとか、そういうようなことも含めて、本当にきれいに再現できる数というのは必ずしも多くはありません。
 そして、実際に連携させていただいている中で、先ほどの知財を出す前に公表されるのはさすがに余りなくなってきてはいるかと思ってはいるのですが、優れた研究なのだからちゃんと注目しろというような態度で来られる場合が結構ございますが、企業側といたしましては、現時点でどこまで実用できるのか、ビジネス性というのはどうなっているのかというようなところを客観的に判断させていただきたいと思いますし、研究者の方々、当然、その領域では第一人者の方々ですので、そこの研究に関しては口を出さないでほしいということを言われることも多々あります。ただ、産業化に向けての共同研究でございますので、そこに向けて本当に必要な研究とは何なのかというところにフォーカスさせていただきたいというところが、時々、話が合わなかったりもしています。先ほどの話ですが、チャンピオンデータでお話をされることが、まだ、ままございます。企業側としては安定した再現性を求めていく必要がありますので、どうやって再現性を高めていくのかというような議論は、かなりしつこくやらせていただく必要があります。知財を申請したのですぐに公表したいと言われるのですが、知財を申請しても、私たちとしてはその知財をより補強していきたいと思いますので、そのデータ補強が完了するまでは公表を控えてほしい。通常1年ということになりますけれども、こういうようなディスカッションなどは今もなおさせていただくような事態に陥っています。
 ということで、産学連携そのものはイノベーションの源泉だと思っておりますし、何とかこれをうまく活用することによって日本の財産を本当に最大化していきたいと思っているのですが、そのためには、基礎研究を創薬にいかにつなげて、創薬で人類に貢献していくかということになるわけですが、アカデミアは、まず、サイエンスの追求。公表したい。早く知財を保有したい。特にいろんなファンドが知財の数に依存している事例がありますので、先生方は結構、知財の数にこだわられます。で、研究資金が欲しいと。一方、私たちとしては、本当に実用化できるかどうか。そして、権利化できるまではパブリケーションは控えてほしいと思いますし、知財の数ではなくて、強い知財、価値のある知財を作っていきたい。そして、バジェットには当然限りがありますので、その中で優先順位を付けていくようなディスカッションもさせていただく必要があるということになります。
 産学連携の成熟のためには、仕組み、経験・知識、人。人がかなり大きい部分を占めているとは思うのですが、まず、仕組みとして、研究のゴール。特に、先ほど言いましたような、かなり細かいクライテリアも含めてきちんと合意することが非常に重要だと思っておりまして、そのために、知財をどのように取るのか、どのように強化していくのか。そして、そのために企業とアカデミアの責任分担、役割をどのようにするのかということを明確にしていく必要があると考えておりまして、そのための産官学の推進体制をどういうふうに組んでいくのかというのが重要だと考えております。また、海外で産学連携をやっても、パートナーとして議論をさせていただくことが多いのですが、まだまだ、相互理解、対等なパートナーという認識を必ずしも持っていただけてない事例も多少ございます。そういうことも含めて、相互理解と異文化・異分野に対する知識、あるいは理解しようという姿勢等も含めて、こういうものは必要だろうなと思いますし、人という点では、相互理解の接点を探ることができるようなコーディネーターであるとか、あるいは横串を通してプロジェクトをマネジメントできるプロジェクトマネジャー、産学両方の経験を持っている研究者等が非常に重要になってくるだろうなと思っています。ただ、今、非常に大きく、激しく、薬事、育成等も含めて技術の進化も進んできていますので、経験を持っているだけではなくて、常にネットワークを張りめぐらして新しい情報を取っていくような人でないと、またここも難しいだろうと最近は思い始めております。
 以上でございます。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 以上、小安委員、鹿野委員、澤田委員から、三つの御発表を頂きました。短い質問がございましたら頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。では、議題(3)に移りたいと思います。議題(3)は、議題(1)(2)を踏まえました総合討論でございますが、総合討論に入る前に、事務局より進め方について説明させていただきます。ただ、この後、井上委員が所用で御退席予定と伺っておりますので、先に井上先生に、これまでの御発表等を踏まえまして、御意見とか御感想がございましたら、伺いたいと思います。いかがでしょうか。
【井上委員】  山梨大学の井上と申します。感想になりますけれども、鹿野先生と澤田先生のお話を伺って、アカデミアが陥りやすい問題点というのは非常に当てはまるなと思って、何度もうなずきながら聞いてしまいました。例えば、特許を取っていないということはなかったのですけれども、数があればいいということでやたらめったら取ってしまっていて、後で全然使い物にならなかったというような例はたくさんございましたし、あと、PMDAに早い段階で相談ということも、そんな恐れ多いことはできないというような思いを強く持っておりましたし、ターゲットバリデーションが不十分であるとか、安全性は度外視して新規性などにばかり着目するというような点が、我が身を振り返ってございました。創薬を支援していただくときに創薬の世界とアカデミアは文化が違うなというのをすごく感じておりますので、教育とセットで助けていただけると非常に良い創薬支援となるのかなと思いました。
 以上になります。
【金倉主査】  貴重な御意見、ありがとうございました。井上委員におかれましては、時間になりましたら御退席いただいても人数的には差し支えないということでございますので、よろしくお願いいたします。
 議事進行に戻りまして、総合討論の進め方につきまして、事務局から説明を頂きたいと思います。お願いします。
【砂専門官】  再度、資料1を御覧ください。議論のポイントといたしまして、論点1.橋渡し研究を行う意義、論点2.体制整備、論点3.シーズ研究費、論点4.人材を前回設定いたしました。今回は、議題(2)での発表が論点2から4に資する情報提供でございますので、少々幅広いですが、本日と次回の2回で論点2から4までを御議論いただければと考えております。なお、前回は論点1を御議論いただいておりますこととともに、討論の内容を委員会の冒頭で説明させていただいておりますので、適宜、御参照いただければと思います。
 説明は、以上となります。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 それでは、資料1の論点を参考にしつつ、総合討論に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、意見がございましたら、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 どうぞ、五十嵐委員。
【五十嵐委員】  それでは、一言、意見を述べさせていただきたいと思います。私ども、小児医療でシーズを含めて創薬をしなくてはいけないということで、やってはいるのですけれども、例えば臨床研究中核病院になるには、データマネジャーは何人いるかとか、様々な外的な資格要因がございます。ところが、現実、小児分野においては、例えば、治験一つやるにしても、成人に比べて数が大変少ない。病気はたくさんあるわけですけれども、一つの疾患にそういうものを投入しても、そこから上がってくる収益というのは成人に比べると10分の1とか100分の1で、初めから成立できないという問題があります。しかし、それでもやらなきゃいけない。内科の先生に任せられない、外科の先生に任せられないということで、小児の中でもやってはいるのですけれども、そこでやはり、今日もお話が出ましたが、研究も分かり、臨床研究を推進する上でのいろんな知識・経験のある方というのが圧倒的に少ないのですね。そういう人たちを何とか確保すると同時に、先ほど小安先生もお話しになりましたけれども、そういう方たちをどうやってキャリアアップしていくか。これは全て、AMEDで働いている方もそうでしょうし、厚労省もそうでしょうし、文科省でも多分そうだと思うのですけれども、そういう新しい職種の人たちを、給与の面も含めて人生という一つの非常に貴重な舞台の中でその人たちをどうやって花開いていかせるかという、そういう体制が非常に少ないのではないか。小児の方は特に、それがなかなか参入してくれない。せっかくいい人が来ても、すぐ取られちゃう。大学に取られちゃうというなんていうこともあるのですけれども、そういう状況で何とかして、先ほど井上先生は教育ということもおっしゃいましたが、目的を持ってそういう人たちを育てていく。それから、その人たちに経済的な支援も含めて、これは研究費から行くのか、他の形で行くのか分かりませんけれども、何かそういうものを作っていただかないと。つまり、戦略的に人を育てるようなことを考えていくのが、これから必要ではないかと考えています。
【金倉主査】  ありがとうございました。
 いかがでしょうか。今、体制整備、人材の確保という面と、それからもう一つは、国立成育医療研究センターが拠点になるにはなかなか難しいという要件を……。
【五十嵐委員】  なれないです。
【金倉主査】  そういう中で橋渡し研究をどの様に進めていくかということだと思います。
 小安先生、いかがでしょう。例えば、理研なんかは病院がないのですけど、橋渡し研究をどのように病院とマッチングをしたり、臨床研究を進めていくかということで、何か参考になるようなことがございましたら。
【小安副主査】  いや、参考になるかどうか。伺っていて、とっても難しいなって考えて、先ほど教育というお話があったのですけれども、いわゆるアカデミアの研究をしている人が、シーズができて、これでとにかく社会に貢献したいと思ったときに、何ができるかということがほとんど分かっていないというところからスタートするわけですね。ここが非常に、みんな困って。特許を出して公表して、悪いことをしたと思ってないわけですよ、簡単に言うと。自分はちゃんとしたことをしたのだ。でも、おっしゃるように、全くそれで不十分だというようなことは誰からも教育を受けてないというのが、多分、現実だと思うのです。理研の場合で言うと、後藤さんに来てもらってプログラムを作って、彼がいろいろなセンターを行脚して、特にライフ系のセンターですけど、話していくと、段々、みんな分かってくるのですね。そういうマインドを持っている人はなるほどといって今度はそっちの方に行くのですが、そこで次に戸惑うことは、結局、僕らのところでもMDのPIが結構いるのですけれども、自分でもやりたいと。自分でPMDAに通って一生懸命相談して、それに合うようなデータをきちんと出してやっているのですけど、でも、それをやっている仕事というのは、一切、論文にならない仕事。本人は情熱の塊だからいいですけど、それをやっている下の研究員の人たちは、このキャリアをどうするかというのは、横で見ていると、とっても心配になります。ここら辺はどうやって解決したらいいのだろうかというのは、余り解がなくて、大きな悩みです。ですから、そういう意味で、さっき評価ということを申し上げた。こういうプロセスをどういうふうに全体として評価して、その人がちゃんとそれで評価されて次のステップに行かせてあげることができるかというのは、今、僕らは解がないので、非常に苦労しています。それは、体制を作ればいいのかというと、サポートはできるのですけど、それだけでは物事は動かないというのが。ですから、同じところではないかと思いますけど、そこは非常に苦労している。
【金倉主査】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。企業サイドから見ると、どういうところを改善すれば、もう少し……。企業のようなキャリアパスが十分にはないということがあるのかもわかりませんし、大学の方々もキャリアパスがないので、どちらかというと、先ほど言われたように、大学に移ってくるわけではなくて、何年かすると大学からCROとかに移るということも多くて、割と人が育たないということはあるのかもわかりませんが。
【澤田委員】  確かに、公表しないと成果になかなかならないというのと、知財をいつ出すかという、そのタイミングの問題は非常に難しくて、なぜか世界中でほぼ同じような研究が同時進行で進んでいるということが実は結構よく起きています。そういう意味では非常にその気持ちは分かるのですが、ただ、知財化をできるだけ早く進めるということで、パブリケーションの時期をコントロールする。企業側からすると逆に知財はできるだけ後で出したいというのはあるのですが、リスクがあるのは、共通認識ですので、そこはまだ議論ができるかなというふうには思います。ただ、そこをどのタイミングでどこまで補強して出すべきかという議論はきちんとできたらいいなというふうには。
 知財に関しては、企業側でも決して、そんなに能力の高い人が大勢いるわけではないです。今、私、知財も管掌していますが、実は主要な国の判例とかもレビューしに行っていまして、レビューした結果を基に、過去出した知財の内容について、今だったら本来どういう出し方をしているべきかみたいなディスカッションもやってもらっているのですね。そういうことをアカデミア個々それぞれで実施するのは多分難しいだろうというふうに思いますので、そういうアドバイザー的な機関をどこかに集約しないと難しいかなあという気はします。
【岩﨑PD】  ちょっとよろしいですか、オブザーバーの立場で。
【金倉主査】  どうぞ。
【岩﨑PD】  是非、この辺の議論をもうちょっと詰めていただいて。最初の段階で、橋渡し研究というのは必要だということに関しては、恐らく多くの方が賛同されると思うのですね。ただ、今現在の状況は、御承知のように橋渡し事業をやっているところは大学という非常に奇異な組織体の中にあって、橋渡しは一つの事業だと思うのですね。今、五十嵐先生もおっしゃいましたし、小安先生も指摘されましたけど、事業を支える人のいる場所がないのですね。大学は御承知のように、教育職か、事務職か、病院だと医療関係で少しありますけれども、そういうカテゴリーしかない。こういう事業を支援する人の居場所がないのですね、正式に。今は、各大学、工夫をしながら、例えば、URAだ、何じゃらかんじゃらといって、そういう方にもある程度ポジションを与えるような工夫をして、やっと雇用しているというのが現実だと思うのですね。ただ、そこにはもちろん、例えば教員職だったら、教育職のグレードがこうなって、簡単に言えば、助教から、講師、教授というような一つのステップがあって、最近は教授の魅力も薄れてきたみたいですけれども、いずれにしても、一応そういうステップをたどる。それをたどるために何をしたらいいのか。では研究をしようというモチベーション、こういうシステムがある。ところが、支援の中の仕組みであると、そういうステップがなくて、最終的にどうなるのか。給料はどうなるのか、待遇はどうなるかというような、基本的なところが非常に脆弱で、ステップアップどころではない。5年もたてば、どこかに行かなきゃいけないみたいな。是非、この橋渡し事業というのは国として必要な事業で、国の貴重なアセットを、世界中の患者さんにベネフィットを供給できる、研究から実用に移るところの非常に大事な部分を賄っている事業であるという意識を持っていただいて、それはもうちょっと恒常的な組織といいますか、そこへ行って頑張ろうという若い人を一人でも二人でも増やせるような仕組み、もうちょっと恒常的な仕組みを、文科省の方として、国として、どういうふうに組織を作るのかというところを考えていただかないと、なかなかこういう事業は難しい。
 以前は企業の方で、いわゆる研究所とか、中央研究所スタイルみたいな、医師ではない、PhDの方々を遇しながら、それはそれなりのステップアップを図れるシステムがあったと思うのですけど、中央研究所スタイルというのが今はなかなか難しくなってきていると。研究者として、やりたいと思っている方は、私は少なくないと思うのですね。それをどこでやったらいいのかというところを見付けられることが非常に今は難しくなっているので、一つの解はこういう事業なのではないかと。この事業が恒常的な組織・システムとして、例えば拠点と言われるような大学にはあると。どこにでもあるというのでは、ちょっとまずいかもしれませんけれども、幾つかのところにあるというようなことになれば、そこで頑張ろうという方が出てくるだろうというふうに思いますし、逆に、そういうふうにしないと組織的な改善というのは見込めないのではないかなというふうに思いますので、そういうところからも、評価委員の先生方、いろいろと御提案を頂ければありがたいなという気がします。
【金倉主査】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。鹿野委員、いかがですか。レギュラトリーサイエンスの面から見ても、そういう人材はやはり。
【鹿野委員】  今、岩﨑先生がおっしゃったように、どこの大学とかにもあるというよりは、幾つかの拠点になるようなところにそういうしっかりした体制を置くとかいうふうにしていただいて、アカデミアの方はまず、どこに相談に行ったらいいのだろうというのが最初は分からないと思うのですね。知っている人は、理研でやっているとか、AMEDでやっているとかっていうのは知っているのですけど、基礎に近い人はほとんど御存知ないので、もしこの研究成果を社会のために役立てたいと思ったときに相談に行けるところであるとか、あるいは、そういうところから講師の先生が特許も含めて基本的な知識を講義に行くとか、そういうような組織があるといいのかと思います。
 レギュラトリーサイエンスと一言で言いましても、大体、PMDAにいた人とか、製薬会社にいた人とか、開発・評価に関わった経験のある人がそれぞれ、どんどんOBで出ていますので、そういう人たちのせっかくのノウハウも生かしていただきつつ、そして若い人も育てていけるような、そういう組織体制があるといいのかなと思います。
【金倉主査】  池野委員、いかがでしょう。ちょっとアメリカの香も入れていただいて。
【池野委員】  すみません。失言はないようにします。前回、失言してしまいました。すみません。
 文部科学省なので、僕、教育ってすごく重要だと思って。実は今日午前中、とある、ちょっと言えないのですけど、某医学部の有名な教授と話して、「PMDAって何?」みたいな。超有名な教授ですよ。その程度なのですよ。
 もっと言うと、今、プレーヤーとサポーターの話をしていて、サポーターはもちろん重要ですけど、プレーヤー自身が野球の仕方に気付いてなかったら、バットを持てないわけですね。その辺の教育が全く欠落していますよね。本来、それを人文学部に教えるのは変な話ですけど、医学部とか、PhDを目指す学生とかには、少なくとも商品化するための最初の関門である特許というものをね。特許をやらなかったら、論文出しちゃって、グレースピリオドが切れた後に出したらどうなってしまうかとか、そういうところをスタンフォードでは当たり前に教えているわけですから、なぜ教えないのかなと。その中で、いや、私は特許を取りたくないのですと。あえて論文。大学は怒るとは思うのですけれども、それはプレーヤーの選択でいいと思う。というのが一つ。
 あと、さっき言った商業化のプロセスですね。正にバイオデザインとか製薬のSPARKというのは、どうやって物ができていくか、何が重要なのかというのを教える、教育ツールなのですよ。教育なのですね。だから、文科省たるもの、プレーヤーの教育というものにもっと力を入れた方がいいのかな。要するに、裾野を広げる意味ではですね。というのを一つすごく思った。
【岩﨑PD】  途中で申し訳ないけれども、今の医学教育の時間を考えると、正直言って、残念ながら、そんな余裕はないのですよ。6年間といっても、専門は4年間とか何とかで、実習はせないかん、何はせないかんって、ふうふうなんですよ。そういうのを入れたいと思っているところは、アディショナルな時間で、医薬開発学とか、そういうことをやらざるを得ない。そうすると、そういうことにある程度知見がある先生がいる大学ならできるけれども、そういうところではないと全然できないというか……。
【池野委員】  医学教育を変えればいいではないですか。
【岩﨑PD】  変えられないですよ。
【池野委員】  例えば、医師国家試験で必ず出るとか。
【岩﨑PD】  一方で、医師国家試験に創薬関係の話が少し出てきたのですよ。そうすると、勉強するのです。まだメインストリームではないのですよ、残念ながら。医学部は、診療はやっぱり、8割、9割、9割5分かもしれない。だから、それに対する診断。診断も今は日進月歩でいろいろな情報が多くなっているので、古いことを言ったって仕方がないけれども、私が学生のときは、リンパ球って、そういうものがありますぐらいだった。CTを輸入して、やっとがんセンターに入るというような時代と、今の学生を考えると、学習量が相当になっちゃっているのですよ。そういう中に、医薬品の開発とか、新しい、明日の医療を支えるためにそういう技術をどういうふうに入れ込むかというのは、それこそうまく有機的に入れないと、今の現場でやってくれと言っても、なかなかできない。今、実習をしないといけないというようなことで、実習に結構時間が掛かるのですね。現場の先生方も疲弊しているという現状も一方であるというところの中に、この教育をどうやって入れ込むか。現実は、本当に根っこのところから議論をしないと難しいのだろうと思うのですね。
【金倉主査】  池野先生、それほど捨てたものではなくて、ちゃんと拠点のある大学はそういう教育もある程度はしていて……。
【池野委員】  もちろん、もちろん。
【岩﨑PD】  中西先生のところは非常に先進的にやっていらっしゃるのですね。それは非常に規範になるところだと思うのですけれども、みんな同じように、九大のような仕組みはいいなあと思いながらも、なかなかとれないというのが現実ではないかな。
【池野委員】  いいですか、僕、途中で、まだ続きがある。
【岩﨑PD】  すみません。
【池野委員】  あと、さっき知財のことを言ったのですけど、数で勝負ってやめましょうって、僕は思っているのですね。数で取ると維持費が大変になって、自分で自分の首を締めていて、結局、ライセンスアウトも誰もしてくれないというのは最悪ですよね。だから、文科省の評価基準ですけど、一番重要なのは、幾ら生んだかとか、誰が買ってくれるかとか、そういう指標でやるべきであって、例えば、スタンフォードの場合はOTL。これも、日本は金がないので、金がある、物量のアメリカだからできると言ってしまったら、そのとおりなのですけれども、外部の専門の人間がそれを評価して、大体、採択率は30%なのですね。例えば、僕が新しい知財が10個出ましたって持っていくと、7割は自分でやってくださいと。だって、それは金にならないからと。30%だけ、大学が全て、国際特許まで持ってくれますと。そのときはある程度アウトソーシングして、例えばウィルソン・ソンシーニとかモリソン・フォースターの知財専門の会社にアウトソーシングして、それでしっかりとストラテジーを組んで、いわゆる戦略的な特許を取ってもらうというのが、大学のOTLはやっているわけですね。そういうことをしているというのが、アメリカの現状です。
 もっと言うと、橋渡しの拠点が必要かどうかという話なのですけど、金があれば、これは全部、例えばCROにアウトソーシングしちゃってもいいのではないかなって勝手に思っちゃったりするのです。学内でやる必要はないというのがアメリカの例えばスタンフォードの発想で、僕はスタンフォードにいるのでスタンフォードのことしか知らないのですけれども、GLPは絶対、アメリカの学内ではやらないです。というのは、GLPというのはプロフィットを目的としているアクティビティーなので、スタンフォード大学はノンプロフィット・オーガニゼーションなので、やってはいけないとなっているのですね。だから、そこから先は自分でファンドレイジングしなさいと。自分でファンドレイジングするときに一番重要なのは、ニーズとアイデアと知財ですと。だから、これがないやつはそもそも、橋渡しをやっても、どうせどこかで崩れますよということで、そこは最初にびしっと諦めている。スタンフォードのやり方がいいかどうかは別として、そういうふうにやってスタンフォード大学は知財を稼いでいるというところですね。
 では日本で、橋渡し研究、そして、その次の臨床研究中核病院が何施設必要か。前回も言いましたけど、アメリカは人口が4倍ぐらいいて、移民とか留学生とか入れるともっと数は多いのですけど、その割には日本の方がはるかに多いですよね。日本はある意味、数で勝負なのかもしれないですが。アメリカの場合は、数は少ないけれども、多分、クオリティーとか内容で勝負だと思うのです。だから、全部平等なのが本当にいいのかというのが。こういうことを言うと、皆さん、いろんな大学から来られているので怒られちゃうと思うのですけれども、この国はGDPがあれだけ落ちてきているわけで、お金がないのだったら、そろそろ選択と集中というのを真剣に考えないとちょっとまずいかなというのが、僕の意見です。すみません。
【岩﨑PD】  いえいえ。
【北島AMED課題評価委員長】  いいですか。
【金倉主査】  どうぞ。
【北島AMED課題評価委員長】  池野さん、先生は、スタンフォードをバックグラウンドで、物事を考えたり、発言したりしているのですよ。例えば、知財に関しても、日本の各大学が知財センターというのを確立してきているのです。そこで全て知財を申請することによって、リサーチャーと大学の取り分とか、それから、製品化へ持っていくまで、あるいは国際知財、それを全部指導するという、知財センターがいろんな大学で確立されています。
 それから、いわゆるシーズとか、そういう見分けとか、スタンフォードのバイオデザインコースというのは、日本で4大学でしたっけ? それができたけど、ただ、それの評価をきちっとしてないのですよ。作ったはいいけど、ではそれはどうだったのと。やっぱり、バイオデザインコースというのはこれから必要なので、そういうもののクオリティーをもう少し上げていく、それは必要だと思います。
 それから、そういうのを学ばせるのに、我々、自分の大学では、4年生のときかな? いわゆる科目の自由選択ができる。半年間は基礎へ行ってやりたい。細菌学教室でやりたいとか。あそこにいるけどね。細菌学へ行きたい、あるいは漢方をやりたいといって、結構、外国で発表するまで学生が成長されていくのですよ。ですから、そういう特別なカリキュラムを作るというのは、日本の大学でもできるのです。スタンフォードではなくても。そういういいところをもう少しやったら、それを必ず評価してほしい。
 それから、この橋渡し研究も、1億ですか? 基盤整備費が出ましたよね。それを出したはいいけど、それがどうなっているのという、そこの評価をきっちりやって、次のステップに進ませると。何も成果が上がってないではないかとか、それはしっかり評価すべきだと思います。だから、池野さんのいいところはちゃんと吸収するから。
【池野委員】  すみません、僕はアメリカ人なので。ただ、魂は日本人なので、許してください。
【岩﨑PD】  今、知財の話になったので、ちょっとその辺の話をしたい。今でも、研究者には論文の方がプライオリティーは高いのですよ。それは、論文を書けと言われているのですよ。それが科研費のベースになっているし、それから、大学ランキングなんていう、役に立つか立たないか分からないけれども、ああいうのがあって、どこかの人が日本の大学をトップ10に幾つか入れるとか言っているではないですか。あれもベースは論文数で、あとは、サイテーションとか、そういう質のところも入っていますけれども、基本は論文なのですよ。あそこに知財数というのは出てこない。数で勝負するのがいいのか、どうか。スタンフォードは、うまくそこが両立していると思うのですよ。論文が少ないわけでもない。スタンフォードのレベルは非常に高いですよね。だから、論文数もある。サイテーションも、非常にインパクトの高い論文を出している。一方、起業させるというような、知財の方面も充実している。そこをうまく両立させているというのは学ぶべきところで、日本はどっちかになっちゃうのですよね。一方では、論文書け、書けと言っているではないかと。これが大学のランキングを上げるためのあれだから。一方では、論文を書く前に、知財だ、知財だと、どうでもいいような知財を出しちゃうみたいなところがあるわけで。ただ、昔に比べれば、日本はそういうところの意識が変わりつつある。昔は、知財とか、そういうのは要らないよというのが一般的だったけど、知財も考えなきゃいけないという研究者が増えてきているのは事実で、それはこういう事業の一つの成果だと思うのですよ。ただ、この次のステージになって、どうやっていい知財を取るのかという知財戦略をどうするのかということと、論文とのバランスをうまくとる方法というのを考えなきゃいけなくなっているのですね。それはトータルとしてのパワーが違うからと言われちゃうとそれまでなのですけど、その辺は、それこそエデュケーションとか、指導とか何とかっていうので……。
【池野委員】  やっぱりそうですよ。指導・教育をしても評価されるし、起業しても評価されるし、もちろん論文を書いても評価されるし、あと、人間としてどうなのかとか、評価基準が一つだけではないというか、総合評価で、インパクトファクターも分かりやすくていいのですけれども、スタンフォードの先生、インパクトファクターは決して高くないのに教授をやっている人が一杯いるのですね。やっぱり、他のところが優れていたりするのですよ。あれはいいあと思う。日本だと、インパクトファクターがないから駄目ですよって、いつもいろんな先生に言われるのですけれども、スタンフォードの教授の方がインパクトファクターは低いのだけどみたいな。でも、他のところですごく頑張っている人がいるので、そういう評価が……。すみません、これもまたアメリカの「たられば」の話になっちゃいますけど。
【岩﨑PD】  でも、今の評価の方は、さっきの話だと、先生が言うには、プレーヤーの方の評価をどのようにうまくマネージするか。一方では、サポーターをどう確保するかという、こっちの方と両方あって、そういう議論を起こすためには、日本で行っている、文科省がもう15年やろうとしている橋渡しの事業、こういうのがなければ、恐らくこういう議論というのはなかなか出てこなかったのではないかな。何となく我田引水的な話になってあれですけど、珍回答かもしれない。申し訳ないです。
【楠岡PS】  池野先生が先ほどおっしゃっていた、拠点を作らずにCROに頼む、知財は知財部へ頼む……。
【池野委員】  これはちょっと極論です。すみません。
【楠岡PS】  いやいや、本来、それは正論です。というのは、素人の集団がやるよりも、専門家に任せた方が、ずっと効率よく、いい仕事ができるわけですけれども、問題は、AROに関していつもつきまとうものは、AROはチープCROかという議論が常にあって、もちろん研究費が足りないのでチープCRO的なことをもともと考えていた節もなきにしもあらずは確かなのですけれども、一つは、先ほど来ある、特許という言葉は知っていても、自分の仕事が特許にどうつながるか分かってないとか、あるいは、仮にそれを特許にしたいと思っても、それをどういうふうに特許に結び付けていくか。ただ特許さえ取ればいいというのではなくて、それが社会的に役に立つためにはどういう形で特許を取っていかないといけないか。それを更に製品なりへつなげていくかという、そのプロセスに関しては、研究者は確かに、この事業が始まる前はほとんど分からなかったところに、外部から少しそういうことが分かる人が入ってきて、そういう方向性、研究者の目を向けたという、一つ大きな点がある。
 二つ目は、確かにそういうことができる人はなかなかいなかった中でいろいろ育てながらやっと今までのところまで来たわけですけれども、まだまだ規模としては、本格的なCROに比べると、かなりでこぼこがあるというところ。あるいは、知財戦略にしても、とにかく知財を取ることだけに一生懸命で、それのストラテジーまではまだなかなか行っていないというのが現状です。だけど、これはそういう方向で進んできて、今、発展途上にあるというところでは、将来、今までのCROとは違う、AROとしての特徴、アメリカのAROとはまた違う、日本独自のAROとしての特徴を持たせる方法をどうすればいいかというのは、一つ考えていかなければいけないところです。確かに、その方向性は出てきているのではないか。
 もう一つは支援人材の問題ですけれども、アメリカの場合は、要するに支援人材というのは、1か所にいるのではなくて、自分の得意分野のプロジェクトに参加して、それを完成させると、次、自分が得意と思うところへ移っていって、そのときに履歴書に自分はこのプロジェクトに関わってこう成功させたと書くことで給料が上がっていくわけですけど、残念ながら日本はそういう人材の流動性が極めて乏しくて1か所しかいないので、そうすると、給料でもある一定の上限以上はなかなか上げられない。特に、今のように常勤職がなかなか得られないようなところだと、どうしても下がってしまう。ある意味、人材を流動化させると、結局それは人件費の高騰になって、AROにとっていいかどうか分からないですけれども、人材の流動化の中には、AROもあり、起業もありで、いわゆるアメリカ式の回転ドアみたいなものを日本でこの分野において作っていくというようなことをしないと、なかなか給与面とか、あるいは、それによって後に続く人に自分も取りたいと思わせるようなキャリアをなかなか組み立てられない。これは、次に発展させるためには非常に大きな問題。ただ、先ほどベンチャーのところで文化の違いという話があったと思うのですけど、日本の場合は人材流動性が極めて乏しい中で、かつ研究費等にも制約がある中で、どうやって今までやってきたものを更に次へ続けていくかということをちょっと考えないと、今は飽和点には来ているのだけれども、次の発展にどうつなげるか、なかなか難しいというのが、実際、いろんな拠点をお伺いしても、そういうところが一番大きな問題として、各拠点も認識されていると思う。なかなかそこのところが、今までうまくいってきたところを次に発展させるときには、今までのことを続けていたのでは絶対駄目ですけど、次は何をすればいいかというのがなかなか見えてこない。
 例えば、先ほど来、知財の話がすごくなっていますけれども、多分、10年前はこんな話すらできなくて、とにかく特許を取りなさいという段階だったのが、とにかく特許は、取るものはちゃんと取るようになったけれども、変に取たがために発展できなくなってしまったという弊害が見え出したというのは、むしろ一つの進歩ではないかと考えられると思う。
【金倉主査】  どうぞ、小安先生。
【小安副主査】  ちょっと違った視点になると思うのですけど、全部CROでするのは、実際難しいなと。
【池野委員】  もちろん。今、極論を言っただけです。
【小安副主査】  というのは、理研で見ていても、プロジェクトマネジメントがものすごく大事で、ここでやめるという決断をするということがすごく大事なので、それができないと、研究者ひとりで走っていっても、絶対成功しない。私、しばらく前に苦い経験があって、企業と共同研究でやっていて、サルでPOCまで取れたのですけれども、結論は何だかというと、いろいろ計算するとコストが合わないからやめるって、企業に引かれたというのがあります。それは、途中までは正しいことをやっていたと思うのだけど、もうちょっと早い段階から製品化するというところまで考えたアドバイスというのが欲しかったという経験があって、そういうことを考えると、アカデミアの中で、そういうプロジェクトマネジメントをして、きちんと見てあげる人がどれだけ育てられるかということで、文科省がそういうところをやってくれるといいなと思った。教育を司っているのは文科省だと考えると、アントレプレナーというか、皆さん言うのだけれども、そういう、プロジェクトを完成させていくというところにきちんとアドバイスできるような人材というのが欲しいなと思いますね。
【金倉主査】  永井先生、どうぞ。
【永井PO】  今、CROとAROの話が出ているので、AROを持っている者として、一言だけコメントなのですが、CROとの違いは、院内あるいは学内の研究者の教育という大きなミッションを持っているということ。それから、研究者側に立ってCROとの交渉のインターフェースをするということで、そこが全くCROと違うなという、そこだけ補足させてください。
【金倉主査】  どうぞ。
【池野委員】  せっかくアメリカから来たので、ちょっとしゃべらせてください。正にそのとおりで、皆さん、そのとおりだと思います。要するに、また失言になっちゃうかもしれないけど、10年前の戦争の仕方ではなくて、現時点で実弾を撃っている人たちに銃の撃ち方を教わった方が正しいと思うのですね。何を言いたいかというと、スタンフォードは、初期の段階でこれは商品として価値があるものかどうかというのを評価するのは、いわゆる実戦で戦っている人たちが外から来てくれて、アドバイスするのですね。なぜかといったら、学内の人はアドバイスできるわけがないと。そもそも実社会で撃ってないわけですから、現地で。刻々と科学技術は変わっていますよ。3年前と今は全然違うので、そういう意味では外部の人間がうまく入れるシステムが必要ではないかなというのが一つ。
 先ほどAROとCROの話があったのですけど、スタンフォードもAROはあります。Spectrumという、国のお金と、いわゆる財団から。何をターゲットとしてやっているかというと、二つだけです。レア疾患と小児疾患です。CROとか、ビジネスが見向きもしないものだけに対しては、Spectrumというトランスレーショナルリサーチセンターをフォーカスしてやっています。なぜかといったら、それはアカデミアの義務なのですね。というところで、大きくスケーリングできる、製薬会社が興味を示してしようがないやつは、自分で起業してやってくださいというのが、方針ですね。
【金倉主査】  どうぞ、中西さん。
【中西PS】  ちょっと前までAROにいましたものですから、永井先生がおっしゃったみたいに、CROだけでは絶対駄目です。AROが必要。なぜかというと、日本のアカデミアには開発に関する基本的な知識や経験を持っている人がいないから。それはAROでないと、外部の人からの教育ができない。それともう一つは、AROは、各研究者、まだ発表もしてない研究者を回りながら、そこでシーズ探索をしていっています。実はそれは、見つかるだけではなくて、そこで研究者を教育できているのですね。ですから、そういう意味でAROは絶対なきゃいけないと思います。実際に、デュークみたいな大きいのはアメリカにないかもしれないけど、今、薬の開発、臨床試験に関しては、CROよりAROの方がたくさんサポートしている現実もありますし、問題は、それが全部、拠点の大学の中になきゃいけないのか、ちょっとストリートの隣にあった方がいいのか。アメリカはほとんどストリートの隣にあって、だけど、エフォートを管理しながら、そこの研究者はAROに結構出入りするし、つまり、大学からするとAROはなくてはならないものだし、AROからすると大学はなくてはならないもの。ただし、そこにお金と人の自由度があるというのが非常にうまくいっている。大学そのものは、アメリカでも大学の価値は大学にあるのですね。ですから、私はずっと以前からそう言って、余り皆さんの同意は得られてないようですが、AROは大学の外にあった方がいいのではないかとずっと言い続けている人間です。とはいえ、文部科学省がそれをできるかというと、できないのですね。私自身は、AROという組織には大学の優秀な人材をきちんと教育する機能を与えていただきたい。そして、それを与えるという意味での、国のお金のサポートがあればありがたいと思っている。さっき五十嵐先生がおっしゃったみたいに、私どもが割とやれた理由は、未来医療の人材のプログラムを採択いただいて、そこで構築できた部分があったのですね。なぜAROで教育するのかと大学の中でありましたけれども、AROの人間でなきゃできない教育フィールドというのは、山のようにあります。ですから、そこをちゃんと考えていただければ、多分、AROの体制、組織、そして教育というのがつながるような気がいたします。
【池野委員】  スタンフォードのAROで大事なのは、さっきレア疾患と小児と言いましたけれども、もう一つ、最も重要なのは教育ですね。だから、僕も缶詰で、SpectrumのAROの勉強の合宿を1週間受けました。むちゃくちゃ勉強になりましたね。3年前に受けました。ちゃんと修了証をもらって。ということで、AROは間違いなく教育というのが必要だと思います。
【仙波課長】  北島先生もおっしゃったとおり、今の大学の中でいろんな取組みがなされていて、これは皆さんの方が御承知だと思うのですけれども、様々なプログラムというのはいろんな形で、文科省の中だと、高等局の専門教育課や医学教育課、科政局の人材政策課、産業連携・地域支援課などがそれぞれ、アントレプレナーや知財、高度医療人材など、様々なプログラムというのは立つのですけれども、そのプログラム支援というのは5年とか10年という時限付きです。経常的にそのプログラムを支援し続けるというのはなかなか難しいので、そこは、岩崎先生がおっしゃったように、現在の教育のコアな部分、一番医学教育者として持たないといけないリテラシーの根幹の部分にこれが入っていかない限りは難しいのではないかという気がしています。そういう意味では、我々もこの橋渡しの中でも人材育成プログラムというのが立って、正に先ほどもお話が出てきたみたいに、バイオデザインだとか、九大のだとか、幾つかプログラムは走っています。走っているのですが、それもやはり時限付きなので、そういうものをどのようにして経常的なものにしていくかというのは、我々も手を変え品を変え次のプログラムを出していくというのでは追い付かないというのが、皆さんの御議論だと思います。
 そこで育成される人材というのは、誰を育成するのか、プレーヤーなのか、サポーターなのかというのが、もう一つの議論になってくると思います。プレーヤーの方々がAROの中に一時的に入って、永井先生もおっしゃっていましたが、そこから出ていってというふうな形がうまくできるのであれば、それが一つの教育機能になるのかもしれないので、ARO自身が中にあることというのは、そういう教育的機能というものが必要なのであれば、我々はそれを支えていかないといけないとは思うのですが、いかんせん15年続けてくるとなかなか圧力もあって、どういう形で卒業させていくかという議論が中心になってくるので、そこは、先生方のお知恵を頂きながら、次の支援の在り方というのも考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【金倉主査】  いかがでしょうか。なかなか難しい。ただ、AROが大学から離れてしまって本当に自立できるのかどうかというところは問題があるような気がするのですが、私が病院長をやっているときには、未来医療センターのある職員の人に病院からお金を出してテニュアの人にするというようなことはできるのです。そういうことであればできるのですが、本当に大きな組織を大学が運営するというのはなかなか難しいので、文科省なり、厚労省なり、何らかのサポートがないと難しいのでしょうけど、文科省ができることは何かということと厚労省ができることは何かということを考えてやっていくということが重要ではないかなと思います。文科省でどこまでできるのかということと、臨床研究中核病院と拠点とをどう擦り合わせて運営していくかということは重要で、厚労省も人件費的にサポートできるところはサポートできるのではないかと思うのですけど。
【岩﨑PD】  今、大学そのものが社会の中にどういう役割を示さなきゃいけないのかというのを問われている時期でもあると思うのですね。例えば、大学院改革だ、何だかんだと。大学の中に閉じこもっていてはいけないと。社会にどういう貢献ができるかと。こういう事業は、そういう面から見ると、その辺は非常にマッチする部分だと思います。学部教育の中に落し込むのは難しいかもしれないけれども、例えば大学院の改革にうまくこういうものを連動させながら、大学全てかどうかは別として、人材教育システムとしてこういうものを根付かせて、恒常的な組織にすると。例えば高等教育局の方々とその辺を話しながら、大学は今、社会に対して開かれた存在でなきゃいけない、社会に貢献しなきゃいけないというところと、一つ、医学とかいうところをマッチする。
 それからもう一つは、異分野と融合というのも今叫ばれているので、ライフサイエンスは今、御承知のようにいろいろなモダリティが入ってきて、単に医学、薬学をやっていればいいいう状況ではない。だから、逆に言うと、いろいろ新しい仕組みを考える、いいチャンスだと思うのですね。ライフサイエンスの中だけでそれが全部完結できるかというと、それは難しいので、もっと議論を広げて、深めて、多くの方々に、こういうところの事業といいますか、活動が非常に大事だということを認識してもらって、新しいシステムに組み込むということを考えていく必要があるのだろうと思います。
【仙波課長】  どこまで文部科学省ができるのかという議論をすると、大学の教育は初等中等教育とは違って学習指導要領とかがあるわけではありません。私が出向させていただいた大学で大学のカリキュラムの見直しに参画をさせていただいたのですが、高等局の審議会の方は、カリキュラムで育成される人材が正しければ、カリキュラムの内容についてまでは踏み込まないという形のやりとりです。だから、こういう医療系人材にとって特許の知識が必要であるという流れは、そこまで教育内容に踏み込んだ議論というのは、高等局とやったとしても、皆さんそうやりなさいという形にはならないのが今の高等教育行政という感じがします。ただ、それを押し留める形にもならない。だから、我々としては、それを支援するために、いろんな報告書を出したり、いろんな議論をしたり、そういうことはできると思いますので、そういったところはサポートしたいし、さっきから言っているように、お金の支援みたいな形で、様々な形で、そういうことをやったらお金を付けますよというのは、何となくニンジンをぶら下げているようで嫌なのですけれども、それはできるというのが、多分、役所ができることの形です。教科書検定のような形で、今新聞を賑わせていますけれども、これをやらないと大学ではないですよというような言い方が大学はできないということが、少し隔靴掻痒というか、やりづらいし、やりがいがあるところだし、先生方のお知恵を借りないといけないところではないかという気はしています。
【北島AMED課題評価委員長】  今言われたように、大学教育におけるカリキュラムの統合、要するに、岩崎さんなんかは厳しく言うけれども、統合していいカリキュラムってあるのです。そういうものを変えて、先ほど僕が言ったように、何年生のときに自主学習といって自分で選択できる。そういうところに、知財とか、トランスレーショナルとか、そういうコンセプトを植え付けるカリキュラムを作る。それから、バイオデザインというのは、いろんな大学が大学院レベルでバイオデザインコースを設定して、そこに次の学生がステップアップで入っていく。学生時代にそういう基礎を学べば、バイオデザインのところへ入っていきます。スタンフォードのバイブルみたいな厚いのがあって、それを日本語に訳しましたよ、僕は全部。ですから、そういうのも活用して、是非、大学院にそういうコースを作る。
 それから、橋渡しの拠点、池野さんは10も必要かなんて言うけれども、これは、最初から苦労して作ってきて、実際に成果を上げてきているのですよ。この拠点がなかったら、橋渡しはここまでできなかった。今度、橋渡しの拠点の自立化をやってもらいましたよね。次は、AROの機能を充実させるとか、そういう工夫ができるのではないかと、拠点の中に。その辺をもう少し考えて、次のレベルアップを。それは文科省で考えられると思うのですね。是非、お願いしたいと思います。
【金倉主査】  楠岡先生。
【楠岡PS】  カリキュラムの話なのですけれども、ついこの間まで厚労省でも同じような議論をしていて、これは文科省にお願いしてカリキュラムの中に入れてもらうべきだということで初めて担当者が調べると、もう既にコアカリキュラムには、TRの全部ではないですけど、前臨床から後ろは含まれているのですね。しかも、国家試験の出題基準にも大分前から入っている。ただ、先ほど岩﨑先生がおっしゃったように全体のボリュームがものすごい中で、そこだけちょっと入っていても、なかなかそういうところまでは手が回っていないのが実情なのだけど、一応、今、コアカリキュラムとか出題基準には入ってはいるという状況までは来ている。
【金倉主査】  どうぞ。
【稲垣PO】  教育のところで、大学の中でひょっとしたらと思っているのは、今、実際に支援に入っている人材の人たちが、看護師さんとか、薬剤師さんとか、そういう人たちがメインになっていることを考えたときに、医学部医学科だけで考えていると、ちょっと厳しいところもあるのではないかなと。医学部でも他の学科はありますし、薬学等を巻き込んだ形で、一つの大学としてこういう人材を作り出すと。出てきた人材がそれぞれ活躍できる場所が、医学科だけではない、病院だけではないところも含めてできるようにならないとうまく回っていかないような感じがしていて、特に、現実、実際行っている人たちのことを考えると、他のところから入っている人たちですので、そういう形で見てもいいのかと思うところもあります。いかがでしょうかね。
【金倉主査】  おっしゃるとおりで、医歯薬だけではなくて、AIとか、広い領域での医療・医学になってきているので、もちろん、もう少し広がりは持たないと駄目でしょうし、大学院ももう少し広がりを持った大学院でないとなかなか難しいのではないかと思うのですが。
 議論が尽きないところなのですけど、もう少しこの議論をフリーに続けさせていただいて、また、文科省の方々にも知恵を絞っていただいて、いい案を練っていきたいと思いますが、次回に引き続きたいと思います。
 議題(4)として、事務局より、連絡事項について、説明をお願いします。
【砂専門官】  本日は、長時間に渡りまして大変有益な御議論を頂きまして、誠にありがとうございます。事務局より、お礼を申し上げます。
 さて、本日の資料につきましては、会議終了後、ホームページに掲載いたします。また、本日の議事録につきましても、事務局にて案を作成いたしまして、委員の皆様にお諮りして、主査の確認を経た後に、ホームページで公開いたします。
 次回の第3回は、6月19日9時半から11時半、文部科学省で開催いたします。委員の皆様におかれましては、何とぞよろしくお願い申し上げます。
【金倉主査】  それでは、本日の中間評価委員会は、これにて閉会させていただきたいと思います。活発な議論、どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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