競争的研究費改革に関する検討会(第7回) 議事録

1.日時

平成27年6月4日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

霞が関ビル35階 東海大学校友会館「阿蘇の間」

3.議題

  1. 研究人材を巡る課題への対応について
  2. 中間取りまとめ骨子(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口主査、大垣主査代理、有信委員、井関委員、上山委員、甲斐委員、佐藤委員、角南委員、竹山委員、知野委員、橋本委員、藤巻委員、若山委員

文部科学省

常磐研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、義本大臣官房審議官(高等教育局担当)、岸本科学技術・学術政策局次長、村田科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官、松尾振興企画課長、柿田科学技術・学術政策局人材政策課長、行松基礎研究振興課長、鈴木学術研究助成課長、唐沢科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室長、瀬戸学術機関課学術研究調整官、中野振興企画課学術企画室長、髙山振興企画課競争的資金調整室長、岩渕基礎研究振興課基礎研究推進室長、前澤学術研究助成課企画室長、

オブザーバー

奈良科学技術・学術政策研究所所長

5.議事録

【濵口主査】
 それでは、定刻となりましたので、競争的研究費改革に関する検討会を開催させていただきます。委員の皆様、大変御多用中、御出席いただきましてありがとうございます。
 それでは最初に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【松尾振興企画課長】
 議事次第に書いてございますが、本日は4種類の資料を配付させていただいております。資料1がA4横のタイプでございまして、資料2、資料3、そして参考資料1、A4縦のものでございます。4種類配らせていただいております。
 もし落ちがありましたら、お申し付けいただければと思います。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。本日は、残された論点であります人材に関して議論をするとともに、本検討会の中間取りまとめ骨子(案)に関する議論を行うこととしております。
 では、議題1の研究人材を巡る課題への対応に入りたいと思います。ここで、競争的研究費改革の観点から人材について論じるために、まず人材政策全体はどのような方向になって、そこに対して競争的研究費改革で何ができるかということを考える順番となりますので、まず、文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課の柿田課長から、文部科学省における研究人材に関する取組について発表いただくことにしております。その後、事務局から競争的研究費改革の観点から整理した資料について説明いただいた上で、まとめて質疑応答と議論を行いたいと思います。
 では、まず柿田課長、10分程度、恐縮ですが、よろしくお願いします。

【柿田人材政策課長】
 人材政策課長の柿田でございます。6月1日に着任いたしました。よろしくお願いいたします。前職は官民交流で日立製作所に2年間出向しておりまして、民間企業における研究開発活動について、様々な体験とかを勉強させていただきました。私、着任したばかりでいささか不十分ではございますが、本日は資料1に基づきまして、本日の議論となります、資料2で出てまいりますけれども、論点、そこで御議論いただくにあたりまして、素材提供という意味で資料を準備いたしましたので、御説明させていただきます。
 それでは、資料1の1ページから、まず最初、主に全般的にデータ関係でございますけれども、1ページ、大学院在学者数推移ということで、昭和35年から平成25年までありますが、このブルーが大学院の博士前期、そしてグレーが博士後期課程ということでございます。黄色は専門職学位課程ということで、このようなトレンドで在学者数は推移しているということで、最近は少し減少傾向にあるという状況でございます。
 2ページ目が修士課程修了者の就職率でございます。まず、棒グラフの青い部分がマスターを取って就職している人数、それから黄色がドクターコース、後期課程への進学者数ということです。折れ線グラフは、上の方の青い線が就職率、直近では約74%が就職していると。それから、折れ線の赤い線が博士後期課程の進学率、10%を切っているという状況でございます。
 3ページです。博士号取得者の卒業後の状況ということでございます。博士課程修了者の就職率は、近年、横ばいの傾向ということでございます。ちょっとこのグラフもいろいろなデータが入っているんですけれども、この棒グラフの中で紫色の部分が就職している人を示している部分です。そして、その右側の円グラフですけれども、全体で約半数程度が就職しているということなんですけれども、その内訳といたしましては、円グラフの右側、大学教員が23%、医師等が25%、左半分、様々な機関での研究者、その他ということでございます。
 4ページですが、これはちょっとデータではないんですけれども、博士号取得者が独立した研究者に至るキャリアパスの在り方ということで、下の方にキャリアパスのイメージと書いておりますが、大学と企業ということを並べて書いておりますけれども、まず、大学では博士課程の学生の段階があり、そしてその後、大学のラインでいきますと、ポストドクター、いわゆるPDというような形で、あるいはその他の資金を得ながらポストドクターになると。そしてそれを経て、若手の研究責任者、助教、テニュアトラックなどもここに位置付けられます。そしてそれを経て、テニュアに至ると、教授・准教授職に至るということでございます。当然ながら、企業との流動ということも当然あると。このようなキャリアパスのイメージがあるということでございます。
 5ページは、次はポストドクターに関してでございますけれども、5ページのグラフは、2004年度から2012年度まで、途中、統計のとり方が変わったものですので、8年度から9年度でグラフが変わっておりますけれども、大まかなポストドクターの人数のトレンドを見ていただくという意味では、このグラフをお示ししておるわけでございますけれども、最近は少し減少傾向にあるということでございます。ただ、このグラフ、12年度で1万6,004人ということになっておりますけれども、これはカウントの仕方で、いわゆる延べ人数というようなことになっておりまして、少し多めに出ております。
 そこで6ページなんですが、6ページの円グラフで、ポストドクターは様々な財源で雇用されているわけでございますけれども、2012年度のポストドクター、ここは延べ人数ではなくて、ある意味、正確なポストドクターの数ということで、1万4,175人。それの内訳でございますけれども、右半分が科研費等々の競争的資金でございます。約43%がこういった競争的資金を財源としてポストドクターとして登用されているということでございます。そして、その他、運営費交付金といったような大学の自主財源、この辺が大きなところになっているということでございます。
 7ページは、先ほどの円グラフの内訳のデータでございます。
 それから8ページですが、これは大学、それからその他公的研究機関で分けた雇用財源のグラフでございます。下の方の大学、それから公的研究機関、ここを比較していただきますと、紫色というんでしょうか、青に近い色、ここが競争的資金に代表される外部資金でございますけれども、大学等は外部資金の割合が45.5%、公的研究機関は外部資金の割合は少し低くて、逆に運営費交付金等の自主財源の割合が高い、このような差があるということでございます。
 9ページから10ページにかけましては、ポストドクターであった方がその後どうなったかという、ある種、追跡調査をした結果でございます。先ほどの1万4,175人というデータがありますけれども、その統計の一環なんですけれども、2012年の11月に在籍していたポストドクターの方が翌年、2013年4月の時点でどうなったかということを示しております。例えば全体という上のグラフがございますけれども、そこの中のフェローシップというところを例にしますと、2012年の11月の時点でポストドクターであった人、そして2013年4月の時点でも引き続きポストドクターを継続している状態にあるという人が77.6%の一番多いところです。それから、その上の16.6%というのは職種を変更したということで、これはポストドクターから他の職、ポストドクターを修了したと、そのように理解していただければと思います。そのような方が約17%いるということでございます。下は、大学、公的研究機関で分けたグラフでございます。
 これを見ますとフェローシップ、ここは学振のPDに代表されるところでございますけれども、大学で見ますと、学振のPDの方が翌年の4月の時点でポスドクを終えられている割合、17%ということで、外部資金、自主財源と比べると少し高いということが見てとれます。
 それから10ページは、具体的にどういう職業に変わったのかということです。先ほどの9ページのグラフでいうところの職種変更に当たる部分の、どういう職に変わったかということを言っているグラフです。全体のところで見ていただきますと、同じくフェローシップを例にしますと、74.4%の方は大学の教員になったと。それから、14.2%の方は大学教員以外の研究開発職というようなことでございます。下の大学等のところでもそうですけれども、大学においては、大学の教員になるという方が非常に多い。逆に公的研究機関の場合は、大学教員以外の研究開発職ということで、引き続き、恐らく同様の公的研究機関に職を得たということであると考えられます。
 それから11ページですが、研究大学、いわゆるRU11に限ってのデータでございますけれども、その大学における任期付教員の雇用財源を調査したものでございます。平成19年度と25年度の比較です。まず、この横の棒グラフですけれども、これは人数を示しております。年齢別の人数です。まずここで見ていただきたいのは、任期がないポスト、テニュアということです。任期なしポストが、シニアの方が増えているということです。25年度の赤丸で囲っている、3つの赤丸がありますけれども、その一番上です。そこの60歳以上とか65歳以上、その辺の人数が増えているということで、シニア化をしているということです。それから、逆に任期なしのところで、若手、40歳、35歳、30歳とか下の方の年齢層、そこのところの人数が減っているということです。それから、左半分の方の任期付の部分につきましては、25年度におきましては19年度よりも任期付ポストが増えている。丸で囲っておりますのは、赤いのが内閣府の方で指定されている競争的資金、それからグリーンのその他となっておりますのは、いわゆるそれ以外の競争的な研究経費ということですけれども、全部合わせて、いわゆる競争的資金ということですけれども、そこで競争的資金の財源に任期付になっている人が非常に増えていると。それから、ブルーの基盤的経費においても、若い人の任期付の人数が増えているという傾向にございます。
 きょう用意しておりますのは以上でございますけれども、特に11ページでありますとか、9ページ、10ページ、この辺のデータも素材にしていただきながら、今の若手研究者の置かれている、特に任期付、若手を取り巻く環境、このようになっているということを御紹介させていただきまして、議論の御参考にしていただければと思います。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございました。
 それでは続いて、事務局から資料2の説明をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 資料2を御覧いただければと思います。研究人材を巡る課題への対応について(論点)というものでございまして、最初のところに書いてございますが、第3回、3月13日に開催いただきました第3回の検討会の資料に沿いまして、改めて整理をしたという位置付けのものでございます。
 まず、1.現状分析でございますが、濵口先生にお取りまとめいただきました人材委員会のレポートでございますとか、総合政策特別委員会のレポートで人材に関するところを改めて要約いたしますと、以下のようになるのかなということで、幾つかの段落にまとめて書いてございますが、ここのページで2つ目の白丸ですが、我が国の研究者の量的規模というのは一定程度拡大して、競争や流動性も高まって、研究者が世界に伍して切磋琢磨する環境自体は整いつつある。特にポスドクについては、先ほどもお話ございましたが、1万5,000人程度ということで推移して重要な存在となっているのであろうと。
 3つ目の白丸ですが、しかしながらということで、2行目に飛びますが、若手が挑戦できる安定的なポストというものが大幅に減少しているということもあって、しばらく飛びまして、真ん中ら辺ですが、研究者として肺っていくということに対する魅力が低下しているのではないか。一方で、シニア層の流動性が極端に低いということから、人材委員会のレポートに書かれた言葉でございますけれども、「流動性の世代間格差」というべき状況が発生してしまっているのではないかということであります。
 先ほど柿田課長から話がございましたけれども、RU11の調査によりますと、次のページの上の方に書いてある、先ほどと同じ図ですので省略しますけれども、こういう状況があります。
 2ページ目の下半分ですが、また、特に任期付雇用が多いとされる生命系につきまして、これも第3回の検討会でお出ししたデータではありますけれども、生命系について学術会議が調査した結果をここにもう1回出させていただいておりますけれども、下の左側の円グラフにあるとおり、競争的資金で雇われている人が半分以上、56%を占めている。さらに右側のグラフにありますとおり、上司や上司のグループに与えられた研究費がその研究財源の主体となっているという実態も、特に生命系にはあるということであります。
 3ページ目の一番上の丸にいきまして、加えて、第3期の基本計画以降、大学院教育の充実・強化のための取組、リーディングとかでありますとか、博士課程修了者の多様なキャリアパス開拓のための取組というのも進めてきているわけでございまして、キャリアパスの多様化の兆候というのは見られつつあるんだけれども、民間企業における博士号保持者の割合は依然低いままであるという実態があるかと認識をしております。
 2.と3.に具体的な対応の論点について書いてございますが、この2.と3.の2つの論点につきましては、何度も繰り返しで恐縮ですけれども、第3回の御議論の中で、この2つの論点について詰めろという御指示を頂いた論点について、それぞれ詰めていると、こういう整理でございます。
 まず、2.の方が競争力研究費における若手研究者雇用に係るルールの整備ということでございまして、最初の丸のところで、資料4、第3回の検討会の資料の記述をもう1回ここに引いておりますが、競争的研究費全般について、例えば研究プロジェクト終了後の若手研究者のパーマネント職への転換やプロジェクト中のキャリアディベロップメントに関するルール整備を検討してはどうかということが1つ目の論点でございました。
 (1)がこれまでの取組ということで、これまたちょっと古い話なんですが、平成23年の人材委員会の御提言に基づきまして、3行目のかぎ括弧の中に書いてありますけれども、競争的資金の競争的研究費の申請書には、雇用する若手の博士研究員に対する多様なキャリアパスを支援する活動計画、以下、この文章でも、「キャリア支援活動計画」というふうに略させていただきますけれども、具体的例として括弧の中に書いてあるようなことが例示されておりますが、を記載することとされていまして、審査の際に確認するということとされています。これに沿いまして、文科省関係の公募事業につきましては、原則として、この内容を踏まえた募集要綱ということになっております。
 (1)の2つ目の白丸ですが、例えば東北大の場合、戦略創造で雇用した若手研究者ということにつきまして、このキャリア支援活動計画というものを行った結果、この段落の一番下の方に書いてありますけれども、例えば学内でURAとして大学本部での業務に従事しているという事例も実際にございます。
 一番下の白丸ですが、しかし、このキャリア支援活動計画の内容というのは、主に研究機関による組織的取組によるものでございまして、それが全体として必ずしも十分ではなかったということから、この枠組みというか、この仕組みが十分機能してこなかったと考えられるのではないかということで、したがって、今回の競争的研究費改革の議論の中で、この点の後押しをすることが必要なのではないかという問題意識であります。
 4ページに移っていただきまして、一番上の丸ですが、特に、多くのポスドクを抱える研究機関におかれては、この点について特に強く先導的な取組が求められるのであろうということを書かせていただいております。
 では、どうするかということで、(2)の改革の方向性ですけれども、ここでヒアリングを頂きました農工大の事例にもあるとおり、間接経費も活用しつつ、研究だけではなくて、人材育成も含めた産学連携というものに組織として取り組むということは極めて重要であって、まず、このため、間接経費の適切な措置がこの面からも必要であろうというふうには考えられます。併せて、ちょっと違う論点を併せてということでつなげてしまっておりますけれども、キャリア支援活動計画の中では、テニュア化を含めた若手研究者の処遇の見通しというものも今後は含めていくことが必要なのではないかというふうに考えられます。
 2つ目の白丸ですが、また、キャリア支援活動計画というのを組織的にやっていただくにあたって、獲得した競争的研究費のPIの役割というものは相当重要なのではないかということで、後で出てきますけれども、PIの人件費に係る取組というものと併せてPIの取組を促すようなこととしていくことも大事なのではないかということであります。
 3つ目の白丸、その上でこういったキャリア支援活動計画に組織として本格的に取り組んでいただくというふうにしていくべく、競争的研究費の申請・審査の際に確認されるその計画の内容、そしてパーマネント職への転換も含めて、若手研究者がその後どうなったかという状況を研究機関全体としてフォローしていただいて、間接経費のところで御議論いただきました間接経費での取組実績の公表の一環として、この実績についても毎年公開するということをしていっていただくようにしてはどうかということであります。
 4つ目の白丸、例えばということで、この中におきましても、特に多数の任期付研究員を雇用されている研究機関におかれては、間接経費の活用によって、この問題について率先して取り組むことが望まれるであろうということを書かせていただいております。その流れですけれども、間接経費をこのような目的のために活用するということは、研究力の持続的な発展を確保するという点で極めて有効であろうというふうに考えられます。
 一番下の白丸ですが、なお、この取組の中で競争的研究費によって雇用した若手研究者につきまして、その期間の終了後、1ないし2年程度を基盤経費や間接経費などで延長雇用するということは、以下のこと、黒ポツを後で申し上げますけれども、2つほど付けておりますけれども、一定の意義があるのではないかと考えられますので、先ほど申し上げた取組を研究機関として公開していく中で、この取組をやられた研究機関というのは特にいい取組、要するにグッドプラクティスとして情報公開の中で積極的に発信していっていただいてはどうかということであります。
 一定の意義があるというふうに申し上げた理由が2つ、黒ポツで書いてありますけども、1つ目が、研究成果に基づいて評価されていくべきなんだけれども、その研究成果というのは、通常、論文とか特許として成立するのに1、2年程度必要だということから、1、2年程度の延長雇用というのは有効なのではないかという点と、5ページ目の一番上の方の黒ポツに書いてありますけども、仮にその研究成果を使って研究機関が組織として産学連携をしていくというふうに発展させていく、この流れができることは、我が国全体の科学技術イノベーションといいますか、研究政策の持続的最大化にとって極めていいことだと思いますけれども、そういった発展させていくにあたっては、きょうまでの成果がいきなりあしたからできるというわけではなくて、やはり準備に1年程度要するということ、この2点から、1年程度の延長雇用というのは一定の意義があるのではないかというふうに考えた次第であります。
 次に、3.で書いてありますけれども、いわゆるPIへの人件費の支出可能化といいますか、支出をすることに関してどうかという論点であります。
 一番最初の白丸ですが、研究者の研究時間をいかに拡大するかということと、社会経済の広範な期待に応える研究により多くの優秀な研究者に参加していただくようにするということは極めて大事なことであろうということで、2つ目の白丸ですが、このため、以下の3つ、下の方に丸1から丸3と分けて書いてありますけれども、この条件を満たす研究機関に雇用されているPIであって、かつ、自ら希望される方については、その人件費について直接経費からの支出を可能することを考えてはどうかということで、1つ目の条件という丸1が、支出された人件費の分だけといいますか、それに相当する分だけ学務等の業務が免除されるということが、その機関内のルールとして構築されている必要があるだろう。
 丸2番が、この考え方が、そもそも競争的研究費が研究代表者(PI)に研究に一層専念できる時間を提供するという整理に立つと考えられますので、機関においてエフォートの適切な設定と、それを可能とする給与体系のルールが構築されている必要があるであろう。
 それから3つ目が、年俸制によって外部資金獲得を中心とした、そういった業績が適切に評価される給与体系がルールとしてできている必要があるだろうという、この3つ上げております。
 一番下の白丸ですが、その際、当該PIのエフォートのうち、どの程度の割合を外部資金によって研究に充てることができるかについては、研究機関においてあらかじめ定めていただいておく必要があるだろうということと、それから最後、6ページ目でございますが、今度は、一番上の白丸ですが、他方、競争的研究費のプログラム側から見た場合には、少額なプログラムで人件費を出すというと本末転倒の話になりますので、一定金額以上のプログラムにおいてこの考え方を適用するということがまずあった上で、適用するプログラムにおいては、直接経費のうち、どれぐらいを研究代表者(PI)の人件費として支出するかという割合、これも定めておく必要があるだろうということであります。
 なお、研究機関としては、その分、学務をPIから減少させるという整理に立てば、その減らされた分の学務などを担う人員を別途手当する必要があると考えられますけれども、そこについても、うまく使えば、多様なキャリアの1つとすることができるであろうと。
 また、ということですが、本件につきましては、そもそも大学改革とか人材に関する、全体に関する政策と連携していくことが必要であろうと思いますし、中でも、第3回の検討会にも書かせていただきましたけれども、この件については、シニア研究者の人件費を含めた年齢構成に係る構造改革というのが大学のシステム全体の中で行われていかなければならないであろう、こういうことが前提であろうということからすると、大学改革などの議論も踏まえながら、こういったシニア研究者の給与体系といいますか、そこに重点を置いて、抜本的な取組を行う研究機関に対してのみ、先ほど申し上げたPIの人件費の一部支出を可能とするというシステムを導入する、可能にするということも考えられるのではないかということであります。
 4.が、引き続き検討すべき課題についてということで、ある意味、最後に申し上げたことを裏返し的に申し上げたような感じになるわけなんですが、最初の丸に書いてございますとおり、問題の根本にさかのぼって、より実効的な取組を進めていくということからすると、大学改革における取組と一体的に行うことが必要であるということで、繰り返しになりますけれども、例えばシニア層というのは、人件費の硬直化を打破していくことが必要ですし、その一方で、若手についてはより安定的な雇用が確保されなければならないということですので、最後の白丸に書いてありますとおり、研究人材政策全体の中で、このPIの人件費を競争的研究費から可能にするということもツールの1つとして対応していくという整理が、そもそも必要なのではないかというふうにも考えられます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。それでは、これまでの発表と事務局からの説明を基に、20分から30分、時間をとって議論を行いたいと思います。御自由に御意見頂ければと思います。有信先生。

【有信委員】
 ちょっと議論を複雑にしてしまうかもしれませんが、資料2の1ページに「我が国の研究者の量的規模は一定程度拡大して」というふうに、量的拡大を評価したような表現になっていますけども、実際には、大学院教育を見ている側からすると、日本の年間の学位取得者を人口比で比べると決して高くなくて、アメリカに比べてもまだ半分ぐらいなんですよね。これを量的に拡大していると評価するかどうかということが1つ疑問なのと、それからもう一つは、資料1の方にも示されていましたけども、博士課程への進学者が私は大体1万5,000人ぐらい毎年いると思っていて、ここのグラフだと7,000幾らという数字になっているんですけど、理学工学系で一番に深刻に考えられているのは、優秀な学生層が博士課程に行かなくなったということ。博士課程への進学者が減少しているのは問題なんだけど、それ以上に問題なのは、優秀な層が進学しなくなってきているという部分が問題で、これをどうしようかということで様々な政策を中教審の側でいろいろ議論しているわけですけども、1つ重要な問題は、例えばリーディング大学院のような施策をとると、比較的優秀な学生がそこに集まってくるわけです。その魅力の1つは、経済的な支援がきちんとしている、それから、具体的に様々な機会が与えられるというようなことがあるわけですけども、一番重要な経済的な部分について、大学院の学生に対してどれぐらいのことが行われているかというと、実際にデータを見てみると、博士課程学生の経済的支援の状況だと、支援なしというのは54%いるわけです。全く支援を受けていない博士課程の学生が54%いて、例えば生活費相当の受給者ということで180万円以上受けている人というのが、1割いないんですね。180万ぐらいのところで見てもですね。もちろんポスドク等々に対する支援のことも重要なんだけど、一番入り口のところで、優秀な人たちが博士課程に進んで、そこで学位を取って、研究者なり高度の専門的なプロフェッショナルとして活躍するということが、実際には将来のキャリアパスをより明確に示すということにもつながるので、入り口のところをやっぱり考えるべきで、そのための重要な部分は、博士課程の学生への経済的な支援をもう少し考えなければいけない。そうすると、ここで考えている、いわゆるポスドク等々に対する競争的資金の経済的援助というのを、博士課程の学生まで含めて、拡大して検討すべきだろうというふうに思います。
 もともと間接経費30%というのを産業界で議論していたときには、優秀な学生が経済的な問題で博士課程に進学できないようなことでは困るということで、むしろそれを支援するということに対する期待も含めて30%ということを産業界サイドとしてはバックアップしたわけですけども、それが現実的には、そういうふうに進んでいない。様々問題視されながら、博士課程のキャリアパスを示すとか何とか、いろんな手は打っているんですけど、どちらかというとネガティブな面ばっかり喧伝される傾向があるので、どこかでそれを断ち切らなければいけない。そのためには、1つは、入り口のところで優秀な人たちをできるだけドクターコースに行かせる。大学改革の制度的な面については、多分、中教審の中でいろいろ議論されて、就業年限等々含めて検討されると思いますけども、経済的な支援で間接費の議論をするときには、その枠を大学院の学生まで是非含めて、記述をしておいていただければというふうに思います。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。先生、どうぞ。

【甲斐委員】
 私は有信先生に大変賛成です。今の一番大きな問題は、よい学生が上がってこないということは深刻な問題で実感としてありまして、ポスドクの問題じゃないんですね。今の考えていらっしゃるのは、ほとんど若手人材を、余ってくるポスドクの就職に、魅力的じゃないからキャリアパスを付けようという話になんですけれど、それに対してテニュアトラックに乗せてあげるという話がありますが、実は若手の中で、今、助教が任期制ですよね。この任期制に移行したとき、実際にいる助教たちはすごく抵抗したんですよ、嫌だといって。それをかなり強引に、上からの圧力で押し付けて任期制にさせました。今まで助手という名前だったのを、教育もできる助教に変える。どうしても嫌な人は助手といって、テニュアに乗れないのにするか、どちらかを選べということで多くの助手の人は助教を選んだんですけど、その時点で5年の任期が付いた。それに本当にすごく抵抗したんです。彼らは、そこで一応テニュアトラックだったわけですよ、助手の時代に。それを強引に外させて任期制にしたんですね。これの弊害は今でもきていて、もっと若い学生は助教になったところで5年の任期付で出なきゃいけない。魅力がうんと減っちゃったわけですよね。5年で出るかなんていうのは、若い子にとってすごく心配な年限であって、研究がどのぐらいで出るかというのは分からないわけですよ。だけど、10年助手をやって、全然芽が出ない人がずっと居座る恐れがあるからって、そんなことはほとんどなくて、10年やっても無理だったら移ろうとしますから、日本の社会はそれで何となく、ほとんどはうまく回っていたんですね。でも、厳しい任期を決めたために、いい人たちが来なくなってしまった。若手の学生に対する給与の問題と、その後というのも、両方連関していると思うんです。給与は、すごく重要だと思います。学生給与というのは、真剣に国として考えてほしいことであって、これを間接経費でどうこうというだけじゃなくて、産業界がそういうことを期待していたというのは今初めて知ったんですが、そうではなくて、もっと国の政策として学生給与というのを真剣に考えるべきだろうと思います。
 ポスドクに戻りますけど、ポスドクをテニュアトラックに乗せるといいますけど、実は、非常に優秀な学生は助教になるんですよ。助教になれない人がポスドクになるんですよ。そのポスドクが出るときにテニュアトラックに乗せるポジションを考えるというのは少し違っていて、助教でさえその次に乗せるパスがないんですよね。それをもうちょっと考えるべきで、先ほどからこの流れを見ていますと、少しミスリーディングな気がするんですね。ポスドクが余っていいところにいけない、だからキャリアに乗せるようなのを考えてあげよう、そのためにお金がないからPIを年俸制にして、そこからお金を取ってとか、それで競争的資金が足せるようにしようとか、そういう話にどんどんなっていますけど、シニアも流動化させて、年俸制にして、シニアも減らして、その減った分を競争的資金で埋めるという話ですけど、最初は希望した人だけと書いてありますが、これを長い目で見ると、いずれ、ほぼ全員ということに変わっていく可能性を含めているわけですね。そういうふうにすると、若い人たちから見ると、どこまでいっても心配な感じがしちゃう。上をどんどん締めて若い人たちに回そうというふうに常に考えるんですけど、若い人たちから見ると、どこまでいったら安定して、ちゃんとしたポストに付けて、安定して、安心して仕事かできるんだろうというふうになると、魅力は半減していくと思うんですね。シニアが身を切って若手を助けようというのは、いずれ若手もシニアになるので、あんまりハッピーな政策に見えないんですね。もう少し全体のグランドデザインを考え直すべきじゃないかと思うんです。
 先ほどのテニュアトラックに乗せる話も、対象がポスドクだけであるのもおかしいですし、それに対して考える財源を上から外していくというのも少しおかしな話だと思うんですね。もう少し全体を考え直していかなければいけないと思います。ちょっと吹っ掛け、すいません。

【濵口主査】
 なかなか厳しい御意見が続いていますが、柿田課長、御意見ありますか。

【柿田人材政策課長】
 私自身もまた来たばっかりというのもあれなんですけども、先生方のおっしゃっている御意見、理解をいたします。そういったことで今、とにかくやらなければいけないこととしては、まさに、これからの日本を支える若手研究者にいかに希望を持って研究者への道に進んでいただけるかということを、まず考えなければいけない。それがまず大目標であり、そのために、では、現下の状況がどうなっているかということを、これまで数次にわたる基本計画を経て現在に至っているわけなんですけども、これまでの成果、それから先ほど甲斐先生もおっしゃった、国立大学といいましょうか、大学の人事制度における助教という問題、あるいは人材政策としてやってきたテニュアトラックの問題、様々変化がある中で、よい面と、ここのところは変えていかなければいけないなという面も出てきているんだなというふうに理解をしております。ですので、これからの新しい政策としてどういうことを考えていくかということを、省内でもこれまで、私自身はまだ十分かみ砕いておりませんけれども、これまでの議論の蓄積もありますし、また、不十分な点もありますので、先生方の御意見も十分頂きながら、また、一番大事なのは現場の、実際の研究活動のフロントで頑張っておられる方々の御意見もちゃんと聞いて、少しでもよい政策を作っていくということが大事だろうと思っております。
 極めて雑駁な総論的な話で恐縮ですけれども、月曜日に来たばかりで、決意表明に代えさせていただきます。

【濵口主査】
 学長側から見ますと、博士課程の質の保証のもう一つの大前提が、博士課程の充足率にあると思います。しばらく前に、運営費交付金の金額が大学院の定員から現員を基準にするものに変わりました。結果として、例えば、うちの大学でも数億、一気に予算減となりました。現員になると、要するに充足できていないから。そうすると、大学院の定員をとにかく埋めるように埋めるように力が働くと思います。その結果、質の保証がさらに悪くなっている傾向はあるなと。卵が先か鶏が先かみたいな状態でどんどん拡大している部分があるので、どこでとめるのかというのは実は根本的な議論がいるような気がします。全体の政策の流れの中にあるような気がしますが。

【有信委員】
 それは大学サイドの御意見だと思うんですけど、実際には60万の人たちが大学に毎年入って、そのうち7万人程度が修士課程に行って、その中の1万5,000人がドクターに進学しているわけですよ。この1万5,000人の質が保てないというのが、産業界から見ると、とても信じられない。60万いる中の1万5,000人の優秀な人たちをどうしてきちんと集められないのか、ここが物すごく問題だと思っています。そのための施策をとるべきだということだと思うんですね。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。どうぞ。橋本先生。

【橋本委員】
 幾つか簡単に言います。まず、先ほど来出ているように、分野によって大分状況は違うのかなという感じがいたしましたので、キャリアパス等々についても、そこは少し整理した方がいいように思いました。
 優秀な学生がどうしてドクターに行かなくなっているかということに関して、私の専門に近い分野では、ドクター時代のサポートは比較的、今、増えてきているんですね。ですから、優秀な方はほとんど金銭的サポートをとれるような状況に、私の周りはなっているようです。でも、日本全体でそうかというと、そうじゃないところもあり、有信先生の言われるとおりです。また、比較的サポートを得やすい状況になっているにも関わらず、優秀な人が博士課程に進まなくなっているという事実もありまして、それは、その後の心配が非常にあるからなのですね。話をしてみると、本人よりは親が心配するとか、彼女のお母さんが心配するとか、そういったたぐいのことですけれども、それはやはりドクターを取った後の、その先が非常に不安だというのが一番の理由に聞こえてきます。
 また、シニア層に関していうと、甲斐先生のおっしゃるとおりであるんですが、一方で、限られた財源の中でどうするのかということを考えていかなければいけなくて。でも、今いろいろ議論されている中で、活発に活動しているシニア層の方の給料を減らしてポストをなくすなんていう議論はされていないと思うんですね。活発な方は是非そのまましっかりと給与も得てやってもらいたいけれども、必ずしも活発じゃない人もいるわけです。そういう人たちも同じような給与体系になっているということが問題とされているわけで、その辺に対してしっかり評価を入れていきましょうということだと思います。そういうことも分かるような形でこの文章をまとめていただくとよろしいんじゃないかなと思います。
 あと3点、簡単に。質問2点ですが、1つは、柿田課長の御説明にあったポスドクの定義の中に、任期付の助教も入っているのでしょうか。ちょっとそこがよく分からなかったです。任期付の助教を入れているのか、入れていないのか。どうも数値的に見ると入っているような感じがしたのですけど。
 それともう1点、取ってきた研究費で研究代表者の給与を直接経費から払えるというときに、これは今、文科省の研究費のことを話しておられますけども、他省庁の研究費とか、あるいはもっと気になるのは、民間資金をそういうふうに使うことができるようにするかどうかということで、結構これは大きな話だと思うんですね。その辺をどのように考えておられるのか。私はそれは必要だと思っていて、その場合に、最後に述べられたような論点、すなわち、給与制度全体をしっかり見直さないとなかなか産業界の理解を得られませんので、そういうことは一緒にやる必要があるかなと思いました。
 あとこれは意見なんですけども、若手の研究者に関しては、ここでの議論とは別の流れの中で、卓越研究員という制度について、今、並行して議論されています。この競争的資金の枠組みとは違うので、ここではふれていないのでしょうか。しかし、若手のキャリアパスに関しては、卓越研究員という制度についても議論がなされているわけですから、それを分かるような形にここに入れていく必要があると思います。それから、その卓越研究員のポイントは2つあると思います。1つは、テニュアトラックを作り、若手に対して長めの10年ぐらいの期間に判断してもらおうというのと、もう1つは、若手が独立性を持って研究できる、研究室の中に閉じこもるんじゃなくて、研究室をまたいでいろいろ移れるような制度とすることです。その視点は実は大変重要だと思っていて、今回のこれも、直接経費ではもちろんそんなことはできないわけですが、間接経費で雇用するというときには、実はそこは制度的に入れられるはずなんですね。なので、そういう視点も考えていただくとよろしいかなというふうに思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございました。上山さん。

【上山委員】
 先ほどから出ています博士課程の学生に対する経済支援ということでいうと、やはりアメリカと比べて日本は非常に遅れていると思います。アメリカはスタイペンと言われている生活給付金、普通にいいところの大学でしたら年間で500万、600万もらうのは当たり前という世界だと思いますね。そういう意味で、博士課程の学生に対する経済支援というのは絶対に必要だということをまず申し上げた上で、この修士、博士の在学者数の推移というのを見てみますと、いかにもキャッチアップ型経済における大学院の姿だという気がします。なぜかというと、修士の方がはるかに多いわけですね。これは修士2年間、学部も含めて6年間ぐらいの専門を勉強した上で産業界に行くということを前提にしているような大学院の姿であって、本当は大学院というのは、基本的に博士課程なんですよね。博士課程が中心でなければいけないという形に、今のように知識基盤型社会になってくると、そっちに転換をしていかなければいけないのに、まだそうなっていないと。アメリカの場合は、プロフェッショナル社会がもう出来上がっていますから、あそこで博士をやるのに非常に長い時間が掛かるんですね。ロースクールも、メディカルスクールも、ビジネススクール(こちらは修士ですが)以外の大学院も専門家としての博士を輩出することを念頭においていますから、相当長い時間の博士、あるいは大学院というものを終えて社会に出ていくわけですが、多分、日本ではこのアメリカ型はなかなか難しいだろうと思います。そのことで最近よく思うのは、4年間の学部教育と、それからその後の5年間の博士課程というものの時間をどこかで短縮するような形を考えるべきじゃないのかということです。例えば、極端な話ですが、それこそ学部は3年ぐらいで、あと数年で博士が取れると。日本は、そんなに長い時間をかけて社会に出ていくことを容認できないような社会なんですよね。そういう意味では、多くの学生が基本的に修士ではなくて博士に進学できるような体制を作り、そして、そこで本格的な知識を持っている、専門的な知識を持ち、かつビジネスに出ていけるような、そういうプログラムに本当は転換していかないといけないだろうと思います。アメリカ型というのは、なかなか日本の中で成立しないとすれば、より短い時間で博士が取れるような、それで経済的な支援もちゃんと受けられるような形がいいのではないでしょうか。そうなってくると、もちろんその中には研究者になるような人材も含まれるでしょうが、それ以外の幾つもの領域をまたがるような多層的な知識を持つ専門人というのも、そこの中で作られていくという形に変えていかないと、やはりこのキャッチアップ型の経済の中に大学院からなかなか抜け出せないだろうと考えています。
 そういう意味でいうと、先ほどもちょっと出ましたけども、いろんな分野をまたいでいけるような人材を作っていくという意味では、博士課程ということでそれをやっていけるということだと思うんですね。
 もう1点だけ申し上げたいのは、実は新聞紙上で、文科省の別の委員会のところから人文社会系を減少させていくという記事を見ました。これは恐らく文科省の本来の意図するものではなかったのに、この一点にマスコミがすぐ飛び付いちゃうのだと思うのですが。しかし、特にイノベーションということになっていくと、近年でいうと、サイエンス・テクノロジー・アンド・イノベーションとなったときには、実はデザインという、新しい科学技術の実装化に向けての知識というのが求められると、これは人文社会系を入れ込んでいかなければならないというのが大きな流れになってきているんですね。むしろ科学研究者の方がイノベーションに関心を持ってくると、人文科学系のところはある意味で変えないといけないなというふうになってきて、例えばMITのメディアラボとか、スタンフォードのd.schoolとか、これはそこに行かざるを得なくなってきているわけです。その意味では、むしろ、古めかしいと言ったら申し訳ないんですけども、古典学をやっているだけの人文社会というのはなくなってきつつあって、それは分野をまたぐような博士課程の形に変わってきて、恐らくそういうところを経た自然科学分野でPh.D.を持っている学生は、産業界によって非常に魅力的な人材になっていく。割と短期の時間でそういう人材ができるような形にしないと、アメリカ型を追い掛けても多分難しいだろうという気がしております。

【濵口主査】
 知野さん、どうぞ。

【知野委員】
 ありがとうございます。若い世代が入ってこないということは、日本にとって将来大きなマイナスでありますので、間接経費を使っていろいろ工夫されようというのはよく分かるんですが、ただ、全体の印象として、対症療法的ではないかなというふうに感じます。たとえ採用が延びても、これだと1、2年ということで、1、2年後にはまた同じ問題が出てくるということで、もっと抜本的な対策が必要なのではないかと思います。
 それから、直接経費から研究代表者への人件費の支出ですけども、これはほかの人を代わりに雇う、その間、業務から外れるという下りもありますと、夏休み期間中の3か月というふうにお書きいただいていますけれども、もしこういう人がかなり出てきて、その期間も長くなるとしたら、そもそもこの研究機関でポストを保持する意味がいまひとつよく分からなくなってくるのではないかと思います。その辺の雇用の考え方みたいなものも明確にすることが必要かなと思います。
 最後の引き続き検討すべき課題のところにもお書きいただいていますが、先ほどの人材のグラフを見ますと、シニア層が増えているという。ここはこのままで、いろいろなことをやるということになると、今の社会情勢には合わなくなってきているようにも感じますので、この辺を含めて全体的な図を書くことが必要ではないかなと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 はい、ありがとうございました。上山委員。

【上山委員】
 今の御発言の中で申し上げたいことがあるんですけども、直接経費あるいは間接経費の一部から研究者の時間を買うというのがどうかという御質問だったと思うんですが、実は人文科学系を含めて、要するに研究者の時間をどう作るかということに、この研究費というのは充てられるんですね。バイアウトという名前で呼ばれている制度がありますが、実は前回、菅さんがおられたときに、自然科学でもそうじゃないのかなというふうにお聞きしたかったんですけど、人文社会科学で見ていると、特に人文社会科学は時間が重要なんですよね。その時間を、自分の研究費で外部の非常に優秀な研究者を外国から招聘して自分の授業を持ってもらうと、そのために自分の研究費でその人を雇う。かなり高いお金で雇うんですよね。例えばヨーロッパから雇ってくると、ワンクォーター、3か月、10回の授業をやってもらうために100万とか150万ぐらいのお金を出して呼んでくる。そうすると、ヨーロッパからわざわざ来て、アメリカで自分の授業もやり、アメリカの中の研究者と交わることができるという意味で、相当優秀な研究者がスタンフォードなんかにも来てくれるわけですね。そういう形で直接経費を使うことが、非常に大きな役割を果たしていると思います。恐らく自然科学でも同じようなことが起こっているんじゃないかということを前回お聞きしたかったんですが、研究者によって、理論を考えて、そしてデータを検討する時間をどう作るかということを経費の中の考え方に入れなければいけないという気がします。直接経費でやるか簡潔経費の一部を使うか分かりませんけども、是非そういうことをやっていただきたいなというふうに一言申し上げておきます。

【濵口主査】
 最近、ショッキングなのは、先生が言っておられるのがアジアの各国でもう起きていて、タイのチュラーロンコーン大学のあたりは、夏場、アメリカから研究者を呼んで講義をさせていますね。2か月なら2か月と。

【井関委員】
 それは研究費からではなくて、学部単位とか組織的に招聘しているということでしょうか。

【濵口主査】
 チュラーロンコーン大学の場合は土地をたくさん持っておって、そこでのホテルとかを使って、その収益でやっちゃう。あと、学生の納付金が実は日本より高い。

【井関委員】
 授業料が高いですね。

【濵口主査】
 授業料が高いです。その授業料の高い分はそこへ充てると、かなり明確にやっていますね。日本がかなりガラパゴス化している部分があると思うんです、この問題は。先生、いいですか。

【井関委員】
 先ほど教育の期間を短くすると、博士取得までが短期間で終了するというお話がありました。もしかしたら今は変わっているかもしれませんけども、10年以上前に私がイギリスに留学していたときは、大体学部は3年でした。4年という学部もありましたけど、3年で終わっていて、その後……。

【濵口主査】
 マスター、1年。

【井関委員】
 マスターもなかったです。卒業後、ぽんと大学院に入るんです。大学院に入って、基本は3年です。ところが、1年とか2年とか、そのあたりに、いわゆるハードルというか、テストがあって、テストといってもディスカッションですけど。それがクリアできたら、じゃ、本当にあなたは博士課程の学生ですよといって、3年で終わることを目標とする。ところが、2年目、そこをクリアできなかった人というのが、マスターの学位を取ったりするんです。マスターを最初から目的にしている人もいたはずですけれども。実際に私の身近にいたのですが、ドクターにはこの状況だと無理だよといってマスターを取って終わった子もいました。そうすると、すごく障害なくいくと6年。ただし、私は今、この話をしていて思い出したのですが、今の所属大学は医療系ですので大学院は4年で修了するようプレッシャーがかかりますが、一部の学生は5年とか6年、オーバードクターをします。でも、イギリスではそれを結構容認しているというか。早くに修了する学生は博士まで6年ですが、もっと長くかかっている学生は大勢いました。先ほど橋本先生がおっしゃったように、分野によって終わり方というか、必要な年限というのがどうしても違う。分野だけじゃなくて、研究領域によってですね。ですから、3年で終わってもいいし、5年ぐらい掛かってもいいじゃないかという、そこを少し文部科学省に柔軟に対応していただけたら……。

【濵口主査】
 ボローニャ・プロセスでは短くなっているんですね。1年と2年、もう明確に決まってきていて、ドイツの学長の中には、短くするのはアングロサクソンの考えだと反発があります。ドイツ型は、20代ずっと、30代初めまで大学院で勉強してもいいというのが伝統でした。ただ、日本と大きな違いは、それだけども、ドクターがちゃんと評価されて、企業のトップはほとんど博士号を持っています。だから、短いからいいというわけでもないと思うんですね。ここが難しいところですね。

【井関委員】
 そうです。研究領域によっても違ってくると思いますし。ただ、きちっと年限を決めるんじゃなくて、短く終わる可能性も、時間をかけて終える可能性も残すという考えがあってもいいと思います。

【濵口主査】
 そういうプロセスもあってもいいと思います。

【井関委員】
 私はそう思いました、今お話聞いていて。

【濵口主査】
 法科大学院が今失敗しておりますけど、ああいうトライアルをもう少しやる必要があるのかもしれないと思っています。どうぞ、藤巻先生。

【藤巻委員】
 私でよろしいですか。

【濵口主査】
 はい、どうぞ。

【藤巻委員】
 簡単なことを、ちょっとお話ししたいと思います。資料2の3ページの一番上の丸のところに、「民間企業における博士号保持者の割合は依然低いままである」と書いてあって、ここが一向に改善されないということが問題と思っています。今回の提言においても、実はそこに直接的に寄与することは何もなされていないのではないかという気がしております。
 先ほど橋本先生がおっしゃっていたように、分野による違いは当然あるとは思うのですが、我々のいる工学系では明らかにドクターコース進学を考える際、その先の就職というところを気にして進まない、優秀な学生ほど進まないというような状況が起きているのは事実だろうと思っています。ですから、どちらが先かという問題はあるのかもしれませんが、やはりドクターコースに進学した、Ph.D.を取った学生が企業において、産業界において不可欠な人材であるということを大学が示すとともに、企業の方もそういった方を採っていただくということが非常に重要なのではないかと思います。
 ドクターコースの学生に経済的な支援をすることは、優秀な学生を導くことに、一定の効果が当然あると思います。ですから、これには私も賛成をします。アメリカなどですと、当然、皆さんもらっています。優秀な留学生もどこに行くか決める際、結局はスカラーシップの様子を見ています。日本は余りよくないねということで日本以外に行ってしまうケースが、多々見られます。日本人に限らず、少なくともドクターコースの学生さんに経済的な支援をしていくということは、かなり重要な話ではないかと思っています。
 もう一点ですが、資料2の6ページの2つ目の丸の所です。先ほどもお話があったように、優秀な研究者の方、とりわけPIの方が研究に専念できる時間を作るということは極めて重要だと思います。そのために学務を減少させるということで、代わりの方をどなたか雇用するというようなことがここには書かれています。ただ、逆にそこに雇用された方の立場も少し考えなければいけない。また、学生の方の立場から見て、教育がしっかりと受けられるシステムとなっているかということも、しっかり考えていかなければいけないかなと思います。こういったところをもう少し具体的な形で考えていく必要があるのではないかと感じたところです。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 大垣先生、お願いします。

【大垣主査代理】
 研究人材ということですけれども、申し訳ないですけれども、そもそもという議論をちょっとさせていただければと思います。
 今の日本の大学の高校からの進学率は、男子で55%、女子で45%かな、平均で50%ぐらいだったと思いますが、修士課程の学生も博士の学生も元は学部の学生ですので、マスがあれば質が落ちるという議論がよくありますけれども、教育はそうではなくて、引き伸ばすのが教育ですから、マスがそもそもなければ始まらない議論であります。
 私は、この大学進学率の議論がずっと何となく曖昧というか、触れずに動いているのは少し奇異な感じがいたしまして、研究人材の議論ということであっても、そういうマスがないと始まらない。マスを大きくすれば、同時に海外からも増えるでしょうし、それから大学生を増やすということは、実は研究人材の職場が増えることでもあるんですね、であるべきなんです。そういうよい循環というか、基本的に科学技術立国として研究人材を増やしていくという政策の大元に、大学強化というか、大学生を増やすという政策があって、それが背景にあっていろいろな議論があるという方が、将来へ向けて非常に広がりがあるのではないかという気がいたします。

【濵口主査】
 本当に御指摘のとおりです。
 では、若山先生、佐藤先生。

【若山委員】
 どうもありがとうございます。博士のことについては私も賛成で、もともと博士課程というのは、学生ではあるんですけれども、職業だというように位置付けられるべきだと思っています。だから、授業料を払って、しかもスカラーシップもないというのは、いくら何でもという気がずっといたしております。
 ちょっと考えてみますと、今、留学生を増やすという動きもあるわけですけれども、むしろ留学生の方が日本国からサポートされているような印象を持っております。それはそれでいいんですけれども、そこもちょっと考えてみるべきだと考えております。
 先ほど分野ということもありましたけれども、それから卓越研究員というのもありましたが、以前、少し発言したかもしれませんけれども、未来像というか、将来どういう分野の研究者がどれだけいるのか、必要なのかということをやはり考えるべきであると思います。また、卓越研究員の場合は産業界の「産」が入っているというところが一つみそでしょう。やはり分野というか社会の問題、それから人類の問題というか、そういう課題を解決していこうと思うと、どうしても分野融合というか、インターディシプリナリーな、マルチディシプリナリーなものが必要になってきて、その中で上山先生がおっしゃったような人文社会系の人たち、もともとのディシプリンは法学かもしれないし、経済学かもしれないですけれども、そういう人たちと、例えばサイエンスと言われている、今のサイエンスとかテクノロジーと言われている人たちとが一緒にやっていくことが大切です。
 そういったところに人材、研究員のポストをあてがっていくということにしていかないと、きのうもRU11の会合で、ところで助教と卓越研究員、どちらが偉いのかなとか、そういう意見が幾つか出ていました。そこのところの明確化、位置付けというのは若い人にとっては非常に大事なことなので、加味していかなければいけないと感じていました。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 佐藤先生、お願いします。

【佐藤委員】
 大学院の問題が議論されていますが、もちろん奨励金とか、いろいろなサポートをすることは本当に大事だと思います。しかし、この問題は基本的にはやはり、前から言っていることですけれども、産業界と大学とのミスマッチが一番大きな問題だと私は思っています。
 何度も言っていますけれども、これだけ博士課程の定員が増えたのはアカデミイズムではなく、産業界、民間で活躍する人材が必要ということであったわけです。しかし、これだけ優秀な人材が博士課程に進んでも、結局は民間、産業界に必要とされていないとなれば、基本的にはキャリアが見えてこないわけです。親と恋人の話も出ましたけれども、まさに本人にとってそうであります。私の退職前の大学研究室からも少数ではありますが民間で活躍している博士課程修了者は出ていますけれども、採用していただけたのは外資系の企業のみです。残念ながら日本の企業は採ってくれません。そういう事情があるので、私はやはり、橋本先生など産業競争力会議にも出ていますから、産業界と大学と本当に協議してミスマッチを解消する議論を深めていただきたいとおもいます。我々の方ももちろん自分の後継者、狭い分野の専門家を作るようなことだけではなく、本当に日本の社会全体、産業に寄与できる人材はどうすれば養成できるのか考え、努力すべきです。ミスマッチ解消の方向がはっきりと見えてくれば、親の方も安心して大学院に行くように勧めるはずです。
 アカデミイズムの場に関しては、ポスドクの後、有期であっても任期の長い助教につけるなら、それはテニュアトラックみたいなものですから、それが保存される限りにおいては、若者は喜んでチャレンジすると思うんです。やはり産業界とのミスマッチが日本の大学院の博士課程の最大の問題であって、産業競争力会議もあるし、いろいろなところで産業界と大学の議論があるはずなのに、これが全然解決していないのが大きな問題だと思うんです。
 ちょっとすみません、もう一点よろしいですか。もう一点は、大型競争的資金の直接経費でPIの人件費がだせるようにするようにする件。大型研究費を獲得されている方は、多くは年配の方です。そういう方が直接経費で自らを雇用できるようになれば、優れた研究者が定年退職後も頑張れるといういいシステムになるとも言えます。これで日本の研究が更に進むというのはうれしいと思いますが、同時に、より若い世代が大型の競争的資金を獲得できにくい状況が進むということになるわけで、何か新たな方策が必要なのか、特にこの傾向が強いと思われる生物系の先生方のお考えをお伺いしたいと思いました。

【濵口主査】
 ありがとうございます。かなりいろいろ革新的な話でした。
 ちょっとお時間が押していますが、きょう、取りあえず御指摘いただいたことを資料2の中にもう少し盛り込めるかどうかということで、いかがですか。

【松尾振興企画課長】
 ちょっと、30秒だけよろしゅうございますか。

【濵口主査】
 はい。

【松尾振興企画課長】
 御指摘ごもっともでございまして、大学院生に対する経済的支援とかの話も総合政策特別委員会ではちゃんと指摘をされていて、産学のミスマッチの話もまさに産学官円卓会議、理工系人材の円卓会議みたいなものを作って、まさにこれからやろうとしているという流れが別途ある中で、まさに事務方も悩んだところが、この競争的研究費改革のことだけで、そこを全部こじ開けられるのかというトライをしたわけなんですが、やはり最後の方で、すみません、ちょっとへにゃっとなっているわけです。
 これは、やはり先生方おっしゃられたとおり、全体像の中で我々のツールをいかにうまくビルトインさせていくかということなのかなと思い立って、最後の方がそういう文脈になっているということです。高等教育政策、そして人材政策のところとちょっと相談をして、どういう位置付けで、どういうスケジュール感でやっていくかというのは、今、いろいろなことが本格的に動こうとしていますので、改めて整理をさせていただければと思います。

【濵口主査】
 一番難しい問題は、間接経費を増やすということは、各研究機関に自己裁量的な資金をある程度競争的に出すという考えだと思います。当然、各研究機関の独自の判断を尊重する方向が必要なんですよね。ところが、いろいろ条件や規制をてんこ盛りにしてしまうと、結局、荷札のついた資金に全部なってしまって、本来の研究機関が機動的に、それぞれの地域だとか、歴史性だとか、人材特性に応じた資金投与をできる、そういう融通性がひょっとするとなくなるかもしれない。特に人材の問題は、そういう議論の難しさをはらんでいるように、きょうはずっと感じております。もう少し議論を整理しながら、やはり間接経費をどういうように設計するかという本来の議論で進めさせていただければと思います。
 すみません、力量不足で時間がなくなっていました。実は、中間取りまとめの骨子案もきょうは御議論いただきたいんですね。いろいろな委員会が、今、かなりのスピードで動いておりますので、この会からの意見もなるべくタイムリーに全体の議論の中へ意見を反映させていきたいと思っておりますので、きょう、中間取りまとめの御議論を次にさせていただきます。人材のことは本当に皆さん一番力が入りますので、エンドレスになると思いますけれども、また改めてリターンマッチをさせていただくということで、まず事務局から資料3と参考資料1の説明をお願いして、あと御議論をお願いしたいと思います。

【松尾振興企画課長】
 それでは、資料3をごらんいただきたいと思います。分厚い資料になってございますけれども、13ページ目までが改革の中身について書いてございまして、それ以降は、これまでの検討会で出させていただきました現状整理、現状分析でございますとか、これまでの取組をそれぞれの分野ごとに整理したものを、参考幾つ、又は別添幾つということでそれぞれ付けているという整理でございますので、基本的には13ページまでのところを御説明申し上げたいと思います。
 最初の1.改革の必要性でございますが、この内容につきましても、前回、間接経費の必要性について御議論いただいた資料の筋と大きくは変わってございませんので、ちょっとはしょりながらいきたいと思います。
 1.改革の必要性、最初の丸の所ですけれども、前回、申し上げました古典的なリニアモデルというものだけではなくて、スパイラルに研究開発が進展していく状況があって、科学技術イノベーション自体の構造変化が生じていますと。
 2つ目の丸ですけれども、その中では、やはり多種多様な人材が結集したチームとしての対応が重要だということと、民間企業、民間においてはオープンイノベーションがキーワードということです。
 3つ目の白丸ですが、先ほどもちょっと御議論ありましたけれども、こういう中でイノベーションを実現していくには、人文社会を含めて多種多様な知識や価値と、それらの連携・融合が必要であるということをここに書かせていただいております。
 4つ目の丸ですけれども、こういった中で、競争的研究費というものが産業界を含めたステークホルダーから求められる研究成果を持続的に創出して、社会における役割を果たしていくには以下のような取組が必須ではないかということで、4つほどにまとめて整理をしております。
 (1)が「現代的要請」でございまして、繰り返しませんけれども、学術分科会などでも御指摘を頂いた4点につきましては、1ページの下の方から書いてございますが、科研費、そして戦略創造それぞれで取組が進みつつあって、2ページ目の一番上ですけれども、それぞれでの取組はしっかり進めて、学術研究・基礎研究の強化を行っていく必要があるであろう。
 2ページ目の一番上の白丸ですけれども、こういった現代的要請については、分野、組織、国境を越えて研究を遂行していくということなので、研究に要する経費についても追加的な対応を要することが考えられるということであります。最後の方に書いてありますが、研究費それぞれの性格に応じつつですけれども、全ての競争的研究費について、この現代的要請の概念は促進される必要があるであろうということです。
 2つ目は、産学連携の本格化でございます。前回の審議会で担当課長から申し上げましたとおり、産学連携・地域支援部会において産学連携の本格化の議論が開始をされているということが1つ目の丸に書いてあります。
 2つ目の丸ですけれども、そういった産学連携の本格化を促進していくためには、産業界からの研究資金の投入によって、大学の研究活動の幅を広げていくということが重要なんですが、その際、追加的に必要となる人的、要するに研究活動の幅が広がるということですので、追加的に必要となる人的・物的な研究基盤というものを整備することが不可欠だと。それらが並行して行われることによって、組織として産学連携が深化していくことが大事だということです。
 (3)は、研究基盤の持続性の観点でございます。従来からのデュアルサポートシステムという考え方は、特定のプロジェクトごとに発生経費を固定できない組織的な取組、例えば知財とか、安全コンプライアンスとか括弧の中に書いてありますが、そういったものを、基本的には運交金などの基盤的経費で支えることを前提としてやってきていたということなんですが、その基盤的経費が減少しつつある中で、間接経費の措置されない外部研究費について見ると、このような組織的取組が当然、難しくなっていって、それが研究環境の悪化を招く原因にもなっているでしょう。
 また、これまでの競争的研究費は、それぞれの機関での取組を内在化する観点から持続性が求められる取組といって、例えば若手研究者の話でございますとか、支援者の雇用でございますとか、スパコンを含めた研究設備・機器の管理、ジャーナル、ICT環境、そういった基盤インフラの整備について必ずしも継続性が確保されないということが繰り返されてきたということであります。
 3ページ目に行きまして、外部研究費の受入れというのは大変重要だと思っておりますけれども、その際、併せて大学等の研究機関の研究基盤というものには、その終了後も運営の継続性が求められるということをしっかり考えていかなければならない。また、そういった研究基盤を維持・活性化することは、後の外部資金の受入れを可能とするいい循環、循環を生み出すことになるであろう。もっと申し上げれば、人材の面、そして機器の面などでちゃんと持続性を確保することで、質の高い研究環境を持続的に確保することとなっていくと思われます。それによって、広く国、政府や産業界全体から見て、研究活動の成果をより質の高い形で持続的に活用できるようになるのではないか、そういう利点が生まれるのではないかと考えております。
 (4)は、研究時間の確保などの研究環境の向上ということで、いかにして研究者の研究時間を確保するかが課題ですということを最初に書かせていただいた上で、丸の2つ目ですけれども、大学の研究者目線で見ますと、アンケート調査の結果ですと、大学運営業務、学内事務手続の効率化とか、教育活動の負担軽減とか、研究関連人材等の確保ということが挙げられるわけですが、他方、組織として考えたときには、こういう状況の変化の中では、真ん中辺から書いてありますけれども、組織として制度的、政策的に対応すべき課題、繰り返しですけれども、産学連携とか、国際共同研究のための支援でございますとか、そういった組織としてやっていかなければならないことがかなり増えているということなので、競争的研究費改革の観点からこういったことを後押ししていかなければいけないだろうということであります。
 4ページ目、2.改革の具体的な方策ということですが、6つに分けて整理をさせていただきました。
 1つ目は、間接経費を活用した研究機関の組織的取組の強化ということであります。最初の白丸に書いてありますとおり、先ほど述べた今後の競争的研究費にとって強化しなければならない点を考えると、このためには組織的取組の抜本的強化が必要であろうと。
 2つ目の丸に書いてありますとおり、後で申し上げますが、3つほど黒ポツで書かせていただいたような間接経費の特徴ということを考えますと、この組織的取組の抜本的強化のためは、間接経費を活用することが最も有効なのではないかと考えられます。
 1つ目の黒ポツは、機関に配分されて使途の制限が比較的少ないということから、大学を含めた研究機関が、それぞれの特徴に応じて独自の取組を行うことが比較的容易であるということ。2つ目は、いわゆる基盤的経費というものと一体的に活用することができ得るので、現場において大学改革の取組の一層の推進にも資することができ得るであろう。3つ目が、競争的研究費を獲得した研究機関に対して、間接経費がより多く配分されていくということになりますので、研究機関としての取組に競争性ある好循環を生じさせることができるのではないかということと、所属する研究者がそれによってメリットといいますか、いい環境を手に入れることができていくということにもなりますので、所属研究者と研究機関とのいい協働関係、協働の面でも好循環を生じさせることができるということが挙げられるのではないかということです。
 3つ目の白丸ですが、間接経費のそういった特徴を含めて改めて整理をすると、今は競争的資金というものが原則30%措置されて、それ以外は余り原則はないわけですが、その競争的資金と、そうでないものにおいて本質的な差があるということは考えにくいので、それ以外にも措置することが自然であろうということです。
 下から2つ目の白丸ですが、その際、光熱水料が全国的に増加傾向にあるということを考慮に入れなければならない。
 一番下の白丸ですが、なお、この検討会でヒアリングいただいた経団連でございますとか、JST、名古屋大学、東京農工大学等におきましても、今後のイノベーションにおいては組織としての取組が大事だというような趣旨、そして別の会議でございますが、産学連携・地域支援部会で産業競争力懇談会、いわゆるCOCNさんがプレゼンをされた中でも組織的取組が大事だと。大学としての、何ていうんでしょう、信頼性を上げるような取組が、組織としてそういう取組が必要だということをおっしゃっていて、同様の趣旨の御指摘があったところであります。
 これらを踏まえて、間接経費を措置することは妥当だと思うんですが、具体的措置の在り方としては以下が考えられるでしょうということで、マル1は、競争的資金のみならず、文部科学省の全ての競争的研究費について30%を措置することを原則とする。
 2つ目は、すみません、CSTIのイニシアティブによって他省庁、そして民間からの措置についても働き掛けていくことを期待申し上げたい。ただ、その際、文部科学省といたしましては、産学連携の別途の検討と連携して、大学に対してどれぐらい間接的な経費が必要なのかという根拠、必要性の根拠については、より詳細な状況把握を行っていかなければならないと思っています。
 マル3は、研究費以外のシステム改革経費でございます。これについても一定の間接経費は必要だろうと思いますけれども、この割合等については別途、検討が必要であろうと。
 マル4ですが、これも繰り返しになってしまうので詳しくは申し上げませんけれども、諸外国と比べても研究費というのは増やしていくべきであろうと思われますので、一定の枠内でのやりくりではなくて、総額自体を伸ばしていくことが不可欠であろうという前提、考え方の上に立って、その上でという段落ですけれども、来年度以降の措置の仕方については、一番多いのは、今、走っているものにいきなり来年から間接経費を更に乗せて、どんと増やすというところから、新規で始まるものについて30%の措置を始めていって、五、六年かけて段階的に全部にちゃんと間接経費が乗っていくようにやっていくというやり方までいろいろ考えられるので、ここは行政的な観点から概算要求に向けて考えていくのがいいのではないかということです。
 6ページ目でございまして、マル5ですけれども、こういった措置された間接経費をどう使っていくかということについては、4行目辺りから書いてありますが、研究機関における外に向けた透明化、そして間接経費に関する説明責任というものを明確化しなければならないということなので、黒ポツに2つほど書いてありますけれども、研究機関が間接経費全体としての使用方針や、使用実績というものをしっかり公開していただくことがいいのではないかということであります。それと同じ内容を、しっかりファンディングエージェンシーにもレポートバックをしていただかなければならないだろうということで、ちょっと上の方に戻らせていただいて、併せてという所になるんですが、そういったことを求める上で、文部科学省は共通指針というものの見直しをしていって、公開というものを位置付けていかなければならないのかなと思っています。
 それから、マル6ですが、この間接経費の公開は是非やっていただきたい、指針に続けてやっていただくべきではないかと思うんですが、それのみならず、各研究機関における経営全体も併せて公開していただけると、取組例に書かれていることも含めた全体像を併せて公開していただけると、より透明性が増すというか、説明責任がより果たせるので、併せて公開していただけることが望ましいのかなということであります。
 6ページの下の(2)研究設備・機器の共用の促進でございますけれども、共用を進めることが重要であって、この面でも特に研究機関における組織的な取組が強化されることが求められるということであります。
 この検討会での検討を通じて、それをやっていくためには、マル1、直接経費で購入した機器の共用を一層進めるとともに、マル2に書いてありますとおり、間接経費の活用方策の一つとして、共有に係る組織的な取組を奨励すべきではないかということであります。
 7ページ目の一番上に行きますけれども、具体的にはということで、前回もちょっと申し上げましたが、実験系・工学系では数千万円から数億円程度とNISTEPの調査で言われているんですが、この範囲、又はその以下ぐらい、この辺をイメージして、この辺で定める適切な金額を超える比較的大型の設備・機器を購入する場合には、ここには合算で、幾つかのものを合算して購入する場合も含めますけれども、組織全体の管理の下で、外部も含めて共用のものとして運用することを原則としていただいてはどうか。その上で、そういった機器がどれだけその機関にあるのかというリストの公表、専門人材の確保、使い勝手の向上等が、機関によっては併せて行われていくことがいいのではないか。
 丸の2つ目ですが、こういった機器共用の取組というのは、オープンイノベーションの進展等も背景に考えますと、産学官の競争の場となり得るということと、若手研究者が先端的な研究に余り大きなお金を取れない段階であっても、先端的な研究に取り組むことを容易にするということからしますと、イノベーションというか、イノベーションシステムの構造化に資することができるのではないか、ということも言えるのではないかと思います。したがって、科学技術イノベーション全体ということとともに、研究者、研究機関の双方向、全体的にメリットがあると考えられますので、これは是非やっていっていいのではないかということであります。
 ただ、他方ということですが、どの辺で全体として組織的管理の下に置くべきなのか。これは分野によって、機関によっていろいろ考え方も違うと思われますので、どの辺で線を引くべきなのか、どういう仕組みで運用すべきなのか、どの時点から、例えば何年目から共用のものとすべきなのかといった具体的な運用の仕方については、それぞれの実情があるでしょうから、各研究機関において個別に検討していただくのがいいのではないかということであります。
 下から3つ目の丸ですが、各競争的研究費においては、審査のときに比較的大型の設備・機器が機関における共用の仕組みに従って取り扱われることを確認する、という仕組みにしてはいかがかということであります。
 下から2つ目の丸ですが、間接経費の活用方策の一つとして有効だと思いますけれども、そういうことを研究機関にちゃんと示して、いろいろな所に出てきて恐縮ですけれども、間接経費に係るいろいろな公開の中で、こういう仕組みがどうなっていて、どういうような実績があるということも、併せて公開していただくことがいいのではないかということであります。
 前回、申し上げましたが、なおということで留意点が幾つかございますので、4つほど申し上げます。1つ目の黒ポツは、検討内容によっては、要はこの原則に合わない、沿わない方がいいということは当然あるので、そういったものの例外はちゃんと認めてあげるようにしなければならないということ。8ページの一番上ですけれども、研究者に異動があると持ち出していいというルールになっているものがありますので、こことの折り合いをどうするのかということの整理が必要だということ。上から2つ目の黒ポツでは、前回、申し上げましたけれども、間接経費化する、間接経費として取り扱えるようにするという仕組みを考えるべきなのではないかということ。それから、最後の黒ポツは、既存の共用化促進事業との整合性をちゃんと考えなければならない。あくまでも行政的な観点ですけれども、そういった留意点を挙げてございます。
 (3)研究人材の問題は、先ほど御議論いただきましたことで、ちょっと大幅に変わるかもしれませんが、次回までにここを盛り込みたいということであります。
 (4)は使用ルールの統一・使い勝手の向上ということで、マル1に研究設備・機器の共用の一層の促進ということが出てきます。これは、規制緩和というか、ルールといいますか、そちらの方をここにまとめて書いてございます。先ほど申し上げた比較的大きなものを組織的に共用していただくとともに、それに該当しないものも、比較的小型のものも一層促進していただきたい、共用を促進していただきたいということから、黒ポツで3つほど書いてあるような規制緩和といいますか、ルール上の措置というものをしっかり図っていかなければならないであろうと思っております。
 一番下の所に書いてありますが、科研費、戦略創造もですかね、一部などでは導入済みですけれども、合算使用ができるということを原則として全て競争的研究費において取り入れることは、なかなかハードルが高いところはありますけれども、段階的になるかもしれませんが、しっかりやっていかなければならないだろうと思っております。
 それから、丸の2つ目は、いつも出てきて恐縮ですけれども、CSTIと連携して政府全体としてやっていかなければならないだろうということです。
 マル2は、全ての競争的研究費のルールの拡大ということで、これはちょっと行政的な観点で恐縮でございますが、今、ルール統一というのは、いわゆる競争的資金という競争的研究費の中の一部のものに対して、ルールの統一が図られているというのが現状でございまして、ここに書かれているような改革をやっていく前提として、もう全てのものにちゃんとルールを広げて、現場にとってできるだけ使いやすいものにしていかなければならない。ここは、その方針をしっかりもう一回書いているということであります。
 (5)はシームレスな連携等ということでして、1つ目の丸に書いてありますが、研究資金の制度政策全体を俯瞰的に設計して、それぞれの役割を明確にした上でシームレスな連携を考えていかなければならないということで、下の方にその際と書いてありますけれども、学術研究については裾野を広く、かつ一定程度腰を据えて、目的基礎については選択と集中を図って配分するということを基本的考え方とすることが適切であると加えております。
 丸の2つ目ですが、戦略創造なんですが、データベース、FMDBと呼んでいますが、戦略創造であるがゆえの特別な位置付けということから、ちゃんとデータベースを作って、PDCAをしっかり回していかなければならない、その取組はやり始めつつあるということなんですが、そこでまずしっかりとしたシームレスの連携の積み上げといいますか、実績の積み上げが図っていかれなければならないということです。
 ちょっと1つ飛ばしていただいて、9ページの一番下、CRESTですけれども、CRESTについてはもう何回か、前に申し上げたんですけれども、初めは少し小さく、そして、ある程度、数多くというんですかね、そこからスタートして3年程度で中間評価を行って、分野融合的にチームを組ませて、産学連携の方にどんどん、どんどんやっていくというスモールスタート方式というものの導入を考えていかなければならないであろう。
 10ページ目ですけれども、下流との関係についても強化しなければならない。
 それから、10ページの一番上の白丸は、ファンディングエージェンシー同士の連携をしっかり図っていかなければならないということです。
 2つ目の丸は、その上でということなんですが、研究費マップというのを、文部科学省も素案というものを今、作っているところですけれども、これを更に考えた上で、いつも出てきて恐縮ですけれども、政府全体のマップということも考えていかなければならないかなと。次の白丸に行っていますが。
 そうすることによって、研究者、現場から見た通覧性を高めることができるとともに、ファンディングの企画・運営にも役立ちますし、過度な集中を排除できる審査にも役立つのではないかと考えております。
 (6)は、各個別のプログラムにおける現代的要請への対応の強化ということで、マル1は融合的研究の促進ということで、ディシプリンの深化のみならず、学際的・分野融合的なものを促していかなければならないということで、科研費はやり始めています。
 それから、一番下の所ですけれども、戦略創造についても戦略目標の設定というものからやり始めているところですけれども、11ページの一番上に書いてあるようなことを含めて、これからも更にやっていかなければならないであろうということです。
 マル2は国際展開でして、1つ目の丸に書いてあります国際展開というのは、当然ですけれども、横串キーワードの一つとして全体的に促進していかなければならないということで、最初の黒ポツに書いてありますが、科研費については既にやられ始めておりますので、今後とも現場ニーズを踏まえた運用改善を行っていくことが必要であろう。途中には、新たな方策として海外の優秀な外国人研究者を日本に招聘して、国際共同研究の中核とするための方策などの可能性も検討したらどうかということも盛り込ませていただいております。
 戦略創造についても、国際ネットワーク構築への貢献も含めて、更に考えていかなければならないであろう。
 一番下の黒ポツですけれども、同じく戦略創造において、外国人研究者をPIとして招聘するプロジェクトに重点支援を行うことについても考えていってはいかがかということですが、下の方に書いてありますが、招聘に当たっては国際的な水準でサポート体制を組むことをちゃんと考えなければならないということが、12ページの上の方にわたって書いてあります。
 最後、アワードイヤーギャップについては、中長期目標期間をまたぐところは残念ながらまだ駄目なんですが、JSTでグッドプラクティスがありますので、こういった手法については全体的に広げていって、よりギャップを少なくしていくようなことをやっていかなければならないのではないかと考えています。
 最後、13ページ目でございますが、今後の課題ということで、昨年秋以降、産業競争力会議、橋本先生もワーキングの主査をされていますけれども、そこでの議論が始まって、CSTIにおいては第5期に向けた検討という大きな流れがあって、この検討もしていただいているところなんですが、最後の白丸に書いてありますけれども、この検討会で中間取りまとめをもし頂いたとしますと、その後ですが、横断的に更に検討が必要な事項については、CSTIとか、大学改革に関する検討などと適宜連携しながら、検討を深めていくこととしてはどうか。ここの中間取りまとめの結果に基づいて、個々の研究費についてはそれぞれの担当の委員会でより詳細な検討をしていただきながら、速やかに具体化していくこととしてはどうかということを最後に書かせていただきました。
 すみません、長くなって恐縮でございます。以上でございます。

【濵口主査】
 ありがとうございます。
 お時間、限られておりますが、きょうは、まず頭出しで、次回、もっと徹底的に議論をお願いしたいと思いますが、特に前半のところから少しずつ、議論できるところは進めたいと思います。
 まず、1ページ目から3ページ目までの1.改革の必要性の内容について、10分ほど御議論いただければと思いますが、いかがでしょうか。全体としては、きょう、お持ち帰りいただいて、よく読んでいただいて、次回、しっかり御意見をまた出していただくということにしたいと思いますが、前段の改革の必要性、ここは合意点はかなり形成されているかなと個人的には思っておりますが、いかがでしょうか。これでよしとなりますでしょうか。
 はい、どうぞ。有信先生。

【有信委員】
 改革の方向性については、もうコンセンサスが、大体取られていると思います。基本は、間接経費をきちんと確保するということと、もう一つは競争的資金というか、いわゆる国が補助している研究費の使い勝手をよくするという2つの大きな内容があると思うんですね。間接経費については割合書かれているんだけれども、使い勝手をよくするということは、多分、なかなか書きにくいと思うんですけれども、ここのところがもう少し分かるような方向性があるといい。つまり、前々から出ていますけれども、海外との共同研究等々をやろうとすると、日本の資金は極めて制限が多いということがあって、これは一気には改革できないかもしれませんが、その方向に向けた問題提起はやはりあった方がいいような気はするんですけれども、どうでしょうか。

【濵口主査】
 どうですか。

【松尾振興企画課長】
 分かりました。使い勝手をよくするというのは、何ていうんでしょうか、ルールの統一の項目にちょっと押し入れてしまっていて、それと別に、国際的な観点みたいな対応というのを別立てしてしまっているので。

【有信委員】
 だから、それを広げるか、どちらか。

【松尾振興企画課長】
 はい。ある意味、使い勝手というのが、何ていうんでしょう、すごく大事な概念だということを、もうちょっと目立つように最初の方に書かせていただくと分かりやすくなるのかなと、今、思いました。

【濵口主査】
 いかがでしょうか。
 質問ですけれども、知野委員、社会から見てこういう論旨というのはアクセプタブルでしょうか。ここ、一番大事なところで、健全な御意見を頂きたい。

【知野委員】
御指名いただいて恐縮です。

【濵口主査】
 ちょっと言い過ぎましたね。

【知野委員】
 改革の必要性があって、(1)(2)(3)(4)と来ていて、研究時間の確保など研究環境の向上というところで終わっていますが、例えば(5)次世代育成というようにつながらないと、何か今の研究者の言い分ばかりになっているような気がするので、そこが必要かなと思いました。
 以上です。

【濵口主査】
 ありがとうございます。重要な点がありました。若手研究者の育成のための機動的な資金の確保みたいな項目が要りますね。
 よろしいでしょうか。追加で少し入れさせていただきながら、1.はこのトーンで進めさせていただきます。
 2.へ入りたいと思います。改革の具体的方策、ここは一番大事なところなんですけれども、(1)間接経費を活用した研究機関の組織的取組の強化、この部分だけでも、きょう、しっかり御議論いただかないといけないと思います。
 どうぞ、上山先生。

【上山委員】
 すみません。私は、5ページのマル4の所、五、六年程度をかけて段階的に措置していくという、これはちょっと遅過ぎるかなと。国立大学については、ほかの所でも申し上げたんですけれども、恐らくもうそんなに時間は残されていない。
 2018年、19年ぐらいから、実は私立大学は本当に潰れ始めるんです。本格的に潰れ始めて、今は何とか持ちこたえていますけれども、そのときは本当に人が首を切られるという事態が恐らく起こってくる。そうすると、日本のような超平等主義社会においては、みんなで痛みを分かち合うために研究大学も予算を削るべきだみたいな議論がマスコミから出てきたときには、もう大変なことになる。
 それぐらい、この5年、ここ数年の間、本当に二、三年の間で国立大学に対する対応は危機感を持ってやらないと、そういう社会風潮が出てきたときには、もうディフェンシブになって終わってしまうと非常に危機感を持って思います。そういう最悪のシナリオをとても強く考えることがあって、5年、6年程度をかけてというのはやはり遅過ぎるのではないでしょうかというのが私の意見であります。

【濵口主査】
 ありがとうございます。

【有信委員】
 よろしいですか。

【濵口主査】
 はい、どうぞ。有信先生。

【有信委員】
 5年、6年は遅過ぎるというのは、私もそのとおり、全く賛成です。
 それと、やはりディフェンシブという意味でいうと、それが表れているのは、マル5、マル6という所で、公開性ということが言われているんだけれども、公開をするということは全く反対しませんが、事細かに公開の仕方まで記述をしていますよね。実際、例えば間接経費の使途については、ファンディングエージェンシーに対しては報告することになっていますよね。もう既に報告をしていて、それを更にどうするのかということだとか、大学にせよ、研究機関にせよ、財務諸表は毎年公開をしているんですよね。
 したがって、公開されている財務諸表を見れば全て中身は分かるという構図の中で、公開ということで、それぞれ首を絞めるような制約にならない範囲の記述にしていただければと思います。例えば間接経費に限って事細かに使途を書きなさいみたいなことで、ずらずらずらと書かせられるような話になってしまうと、使い方そのものにも影響してきますし、本来の目的とは違った方向に動く可能性もあるので、少なくとも使用明細というのは、現在、ファンディングエージェンシーに出している程度の内容で私は十分だと思っています。そのレベルで、もちろん公開性ということをきちんと書くのは構わないと思いますが、余り細かに規制するようなやり方は、そういうように取られるような書き方は少し抑えた方がいいかなという気はします。

【濵口主査】
 マル5、マル6をもう少し減らすということですか。

【知野委員】
 よろしいですか。

【濵口主査】
 はい、どうぞ。

【知野委員】
 今のマル6の公開の所ですが、こうやって公表していくと、やはり大学自身のアピール、PRにもなりますし、分かりやすくていいのではないかと思って読んでおりました。財務諸表が公表されていても、やはり普通の人には読んですぐ分かるというものではないので、手が煩わされるかもしれないけれども、大学自身、今、こうやって頑張っているんだという姿勢や意欲を示すためにも、このぐらいの項目は入れた方がいいのではないかと感じました。

【有信委員】
 いやいや、この程度の内容であれば、例えば名古屋大学のホームページには全部公開されているんですよね。だから、逆に言うと、間接経費によってこういうことを公開するというのと、大学の基本的な方針、情報公開の方針として公開するということがごちゃごちゃになると、それはまたおかしな話で、要するに、自由度を増やしながら、一方で手足を縛るというような形に見えない方がいいというのが私の意見です。

【濵口主査】
 松尾課長。

【松尾振興企画課長】
 よろしゅうございますか。

【濵口主査】
 はい。

【松尾振興企画課長】
 今の公開の所なんですけれども、有信先生から前からそういう御意見があって、ちょっと言葉は違いますが、ここに総額として、私、説明のときに全体としてという言葉使いもしましたけれども、余り使途を細かく、一つ一つが一体、何十円で何を買ったなんていうことを申し上げるつもりは全くなくて、今後よく気を付けますけれども、まさに全体としてどういう方針で使って、全体としてどういう実績をしていったかという、多分、そこのバランスがすごく大事だと私どもも思っていますので、変に細かく、変に縛るようにならないようにしたいと思いますし、知野委員おっしゃるように、大学が一体どういうことをしようとして、どうしているのかということが分かる程度には、分かりやすさの観点から見て、分かりやすいものにしていくというものとの両立をさせていかなければならないと思います。
 それから、前者というか、1つ目にございました措置の、予算要求の仕方なんですけれども、五、六年かけてというのを別に決め打っているつもりもないのですが、まさに既存分から全部、外付けで乗せて要求するやり方から、新規分からやり替えて五、六年で入れ替えていく、措置を全部し終わるというやり方までいろいろあるということを書いているので、例えば大学であれば大学改革が一体どういうスケジュールで、何ていいましょうか、次の3期の中で大学が実装されていくのかというスケジュール感ともちょっと併せながら考えていかなければならないと思いますので、ここは引き続き考えさせていただければと思います。

【濵口主査】
 若山先生。

【若山委員】
 最初の方の改革の必要性の所は、項目立ても比較的粒度がそろっていて分かりやすいんですけれども、例えば改革の具体的な方策の(1)の所を見ても、丸と黒ポツと少し粒度がばらばらで、説得力をここで失ってしまわないかとちょっと心配しますので、工夫をしていただければと思います。

【松尾振興企画課長】
 はい、分かりました。

【濵口主査】
 ほか、いかがでしょうか。はい、どうぞ。大垣先生。

【大垣主査代理】
 ありがとうございます。8ページの上から2つ目の黒ポツの所の表現なんですが、「検討する必要がある」というのは中に入っていることなので、余り取り上げる必要もないかも分かりませんけれども、「直接経費で共用機器を購入した場合にはその経費を間接経費と見なすとこができるなど、機器共用をさらに」と書いてあるんですが、これは経理的にはかなり難しいというか厄介で、そこの所属している組織が予算で措置を、プロジェクトに措置をするということを意味するのか。要は、余り複雑なことをここに書き込むと、これがスタートになって複雑なシステムが導入されてしまう心配があります。

【濵口主査】
 現場がどんどん細かくなってしまう。

【大垣主査代理】
 有信委員がおっしゃっていましたけれども、運用のところは自由な、何のために間接経費にしているかという辺りを忘れないようにする必要があるかなと思いましたので、基本方針を書き込むときにもちょっと細かい所は外しておいた方がいいのではないかという気がいたします。

【濵口主査】
 どうぞ、甲斐委員。

【甲斐委員】
 関連して、全体として具体的な方策を少し書き込み過ぎだと思います。例えば、7ページの最初の白丸の中に、「数千万円~数億円程度の設備・機器を頻繁に使用していることを踏まえ、その範囲以下で定める適切な……」という、この数千万円から数億円のその範囲以下というのがどういう意味だかよく分からない。数千万円以下ということですか、それとも数億円以下ということなのか、範囲以内なのかよく分からないですけれども、「定める適切な金額を超える」というのが幾らかよく分からないですけれども、「比較的大型」の後に「直接経費によって購入する場合及び……共用を前提として」となると、例えば1,800万円ぐらいの共焦点顕微鏡を買って、自分の研究を行おうとしたときも直接経費なんですけれども、それは公開して共用にしなければいけないのかとか、いろいろな細かい問題が出てきてしまうので、ちょっと書き込み過ぎだと思うんです。このように具体的に書かれてしまうと、これが原則になってしまうので、自分の研究費で、それを一生懸命使って集中的にやろうとしても、この金額だと直接経費であっても共用にしなければいけないのかとか、変なルールになります。
 あと、その丸の下から3行目に、「外部も含めた共用のものとして」というのが最後まで行って「原則必要、適切ではないか」となるんですけれども、これも機関に委ねた方がいいと思うんです。数億円のものであれば外部との共用ということを考えたルール作りもありますけれども、取りあえずこの機関の中でインテンシブに、内部共用というのもあり得ますから、ここに原則とか、適切とか書き込み過ぎかなと。もう少し柔らかく書いていただけたらと思います。

【濵口主査】
 お願いします。

【松尾振興企画課長】
 分かりました。前回、御議論いただいたために、イメージを持っていただくために一生懸命書き込んだことを、骨子の方にそのまま横滑りさせてしまったので、まさにおっしゃるような懸念があります。数千万円から数億円程度とか何とかという、何ていいましょうか、もともと大学等においてしっかり現場との間で決めていただければもういい話ですので、変な縛りになるような記述は、もう甲斐先生おっしゃるとおり、できるだけ外していきたいと思いますし、外部共用の所も、それがもうマスト、一律にマストであるかのような印象を、できるだけ外部共用はあった方がいいと思いますけれども、一見それが一律の原則に見えてしまうというのはおっしゃるとおりなので、変に縛り過ぎないような書き方にちゃんと工夫したいと思います。

【濵口主査】
 外部共用は、ノーベル賞受賞記念講演のときに中村さんが言っておられたんですけれども、徳島大学の機械を使えたので革新的な研究ができたと。地方の大学の機器を中小企業の方が使えるということは、実はとても大事だという意味のことを講演でおっしゃっておられたんですね。ここは議事録に残していただきたいんですけれども、国立大学は全国展開していますよね。今、地方の大学は大分へたり始めている。地方創生とかいう言葉がありますけれども、どういう価値があるかということを入れていくためには、やはりオープンイノベーションとも併せて、少し何かトーンが要るだろうなと私は感じております。
 そういうことで、ちょっとこんなことが入ってきたんですけれども、甲斐先生、意見があれば。

【甲斐委員】
 やはり私は書き込み過ぎだと思います。

【濵口主査】
 書き込み過ぎ。はい。

【甲斐委員】
 だって、その3行前に「直接経費によって購入する場合」も入っているんです。そうすると、個人の競争的資金で直接経費で買って使うというときに、必ず共用にしなければならないというのは強いと思うんです。

【濵口主査】
 そういうようになってしまいますね。

【甲斐委員】
 でも、大体そういう先生も、依頼があれば普通は公開していますし、塞いでいるわけではないんですね。ただ、直接経費で買おうと、原則外部も含めて公開しろというのは強過ぎる縛りではないかと思います。

【濵口主査】
 分かりました。
 橋本先生。

【橋本委員】
 私は、今回、限られた研究資源を有効に使っていこうと、そういう方向に学術会も大きくかじを切るというか、それを示すという意味においては、やはりここは肝だと思うんです。確かに、自分が取ってきた研究費で購入したものを人に貸すということは、研究者としては嫌ですよね。

【甲斐委員】
 嫌ではないです。全然嫌ではないです。

【橋本委員】
 そうですか。私は嫌です。嫌ではない人もいるかも分からないけれども、私はやはり嫌だと感じます。しかし、それをあえてやることが今、重要だと思うのです。なので、多少使い勝手は悪くなるかもしれないけれども、やはり国全体でやるという立場を考えて、そういうことに踏み込むということが重要ではないかと思います。ただし、いろいろなケースがあり、共有化がひどく研究を制限するような場合もあるので、いろいろな運用規定を設計すればいいと思うのです。しかし、原則は公開するという考えは重要ではないかと思いますので、意見として述べさせていただきます。

【濵口主査】
 どうぞ、甲斐先生。

【甲斐委員】
 私は全然嫌ではない方なんですけれども、共用として運用することを原則とすると、また運用の方法の委員会みたいなものがあって煩雑になるんですよ。ですから、数億円の機器を共通で買って、それは共通としてやろう、こういう委員会をやって、こういうようにして、このお金はどうしてとか、そういうことをやるというのは全然いいと思うんです。ただ、個人の直接経費で買ってどんどんやろうというのに、同じ運用方法を当てはめるためにまた雑用が増えるわけです。そういうことを個々の研究者にまで押し付けなくてもいいのではないか。ほとんどの先生は、依頼があればほとんどオープンにはしていると私は思っているので、不便はないと思うんですけれども、あらゆるものに広げていって、規則を掛けていって、原則こうせよということは、そういう縛りというのはなるべく少ない方がいいと思うんです。推進させるという、共用でみんなで買ったものは共用としてやるようにしなさいというのはいいと思うんですけれども、また運用の規定を決めろとか何か、そうなるとちょっとしんどいかなと思いました。

【橋本委員】
 すみません。ルールのようなものは個々に決めるというか、大きな枠を決めておいて、余りそういう、何ていうかな、そのために研究者の時間が取られるようなことはしないようにするというのは当然だと思うんですね。ただ、考え方として、研究費、直接経費は自分のお金だというように私たちは思っているんですけれども、これは国のお金なので、例え自分が取ってきたお金でも自分個人のものではないという視点で、それを全体で使うことを原則するという考え方、これが重要ではないかと思います。

【濵口主査】
 ここは少しボリュームを減らして、実際の実務に当たっては各研究機関の自主性と判断に委ねるという1行を入れていただければ、フレキシビリティーが出てくる。

【松尾振興企画課長】
 はい。今、同じような方向でちょっと考えていたところなんですが、まさに基本的な考え方ですね。ある程度大きなものは共用していただいて、組織的なところでやっていただくという考え方。ただ、組織的にどうするかということは大学によっていろいろありまして、大学として何か部門を作って、共用センターみたいにやるというところもあれば、もしかすると甲斐先生おっしゃるように、教員が拠出して置いておいたら共用で使われて、大学全体でそこにちょっとした支援を置いておくぐらいで、教員にインセンティブがありながら共用が進められていくようなやり方もあるでしょうし、もう現場によってやり方はいろいろ決めていただけばいいだろう。ですから、できるだけ手間の掛からないように、それがちょっと分かるようにしっかり書かせていただければと思いました。

【濵口主査】
 すみません、お時間になってしまいましたので、今の点も含めて、人材の点はこれから書き込んでいただくことになりますので、そこも含めて、次回、更に突っ込んだ議論をさせていただくということで、きょうはここまでとさせていただきたいと思います。本日、頂いた御意見は、文章の中に取り込む形で少し検討させていただいて、また次回、御検討いただくことにさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から、次回の日程について連絡をお願いします。

【松尾振興企画課長】
 次回は、もう1週間を切っておりますけれども、来週水曜日、6月10日の10時からお願い申し上げたいと思います。
 それから、ちょっと一言だけ、先ほど主査から言われて、時間の関係もあって参考資料1の御説明を省いてしまったんですけれども、CSTIで基本計画専門調査会の中間取りまとめが座長預かりということで5月28日になされております。内容的には、もう何回かこの場でも、原案の段階から御報告申し上げておりますので、細かい文言は変わっていますけれども、基本的にここで御議論いただいていることと、繰り返しになりますけれども、同じ方向性が共有されていると思っておりますので、そのことだけ一言御報告させていただきます。
 以上でございます。

【濵口主査】
 橋本先生に随分つないでいただいて、感謝しております。

【橋本委員】
 いえいえ、事務局にもだいぶご尽力いただきました。ただ、実は余り安心できないです。是非引き続きよろしくお願いいたします。

【濵口主査】
 お時間ですので、きょうはどうもありがとうございました。それでは、次回またお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします。今回、帰ってからは文章をしっかり読んでいただいて、最終版ですので、是非、目を通していただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

―― 了 ――

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